嘆きの岩

2008年 9月21日記

 以下は、嘆きの岩と呼ばれる岩の案内である。

 暫く来た道を戻って、また別の石に行く。今度は沢沿いの少し大きな石だ。高い所は4〜5m位あるかも知れない。下地も一番高い所の下が枯れ沢だから、決して良くはない。

 下流面の左橋に1級の課題が有るという。その右の逆層の壁には2段、その右のカンテはプロジェクト。そのカンテを廻りこんだ壁には初段。その奥にの壁には2級の課題という石である。それより易しい課題は無いらしい。

 最初は新有段者と裏の奥の2級と称する課題を見る。ポケットで、足は余り無く、小生には出来そうに無い。

 他の仲間がやっていた下流面の左の1級に挑戦する。

 1級だから、スタートのホールドが悪い。右は効かないフレーク気味のホールドをピンチ、左手は浅い少し窪んだ所を持ってスタート。足は左の方にガバスタンスが有るが大分ずれている。すぐ下に少し引っ込んだ十分に乗れるスタンスが有るが、スタートでは使えない。その右手の真下当りに斜めのカチスタンスがある。

 新有段者はその斜めカチスタンスに左足で乗りその後踏み替えて左手を少し遠い窪みに持って行く。この窪みも小生にとっては悪い。

 小生はそのムーブは全く真似が出来ないので、左のガバスタンスに掻き込むように乗り、右足を少し引っ込んだ場所に上げて右手を次の目の前のタテカチに移してから、右手真下のカチスタンスに移して左上の穴を取らなければその穴がとれない。

 でも、その穴が持てないから、次に少し高い目に左足を上げることが全く出来ない。1級はやはり遠そうだ。でも、これが面白いから、何回もしつこくやってしまった。

 裏の2級の右バージョンを新有段者が登ったので、真似て見たが、ホールドの穴が小さく、とても持てないし、次の穴が遠いので全く歯が立たない。何回かやっては見たが諦める。

 他の仲間は初段の課題に挑戦している。でも、なかなか手強いようだ。

 課題設定者が、2段の課題を登って見せてくれる。

 小さなホールドで足を突っ張って結構遠い外傾したこれがホールドになるのかと思われるホールドを持ち、ついで、左手をこれまたホールドには見えない一寸した段差を持ってリップを取る。このリップも外傾しているから、小生にはホールドではない。他の有段者もそれに挑戦する意欲は無いらしい。出来る気がしないようだ。その上には3段が有り、そして、4段があるのだから、まぁ、何と恐ろしい事か。

 仲間の一人が初段の課題でリップを取る所で落ちたらしく、大きな音がする。砂の上に落ちたように見えたが、右足の踵が石の上に落ちたらしい。動く事も歩く事もできたのだが、大事になっていなければ良いが。

 それを見ていたもう一人の挑戦者は挑戦を止めてしまった。もっとも、その少し前から他の所にいっていた2人組も合流し、既に5時近くなっていたので、一応今回の打ち止めとする。  ここには嘆きの壁という2段の課題が存在する。小生はとっても2段の課題など触れないから、その左隣の課題が目当てである。

 ここも、下地にちょっとした岩があるから、そんなに高くはないがマットを敷く。

 いざ岩を前にすると、どうやってスタートしたのか忘れてしまっていて、ホールドやスタンスがわからない。スタートしてから左上の遠いホールドを取りに行った事だけしか覚えていない。

 先ずはスタートホールドを探す。右手はこんなに悪いホールドだったっけ。左もこんなにかからなかったっけ。それに引き換え、足はたしかこれを使ったようなという顕著なスタンスがある。でも、そのスタンスに乗ってスタートはきつそうだ。

 結局、その顕著な斜めカチチックなスタンスは使わず、その左下の少し引っ込んだガバスタンスを使って、両手悪いカチでスタートする。次のホールドは何処だ。

 目の前にこれ又かかりのあまり良くなさそうな縦カチがある。これだろうか。持って見たら少しは持てる。しかし、身体のまん前だからあまり効かない。身体をもう少し左に持って行かなければ。

 左には大ガバのスタンスがある。一先ずあれに乗ろう。が、ほぼ垂直の壁だが、手が悪いので動けない。その前に右足を斜めカチスタンスに上げよう。でも、やっぱりなかなか右足も上がらない。

 少し休んで、再度ホールドを検討する。で、一寸した斜めのカチを右手の少し右上に見つける。こちらの方が身体が左に来るから横に引き易い。それで、右足を上げ、左足を大ガバに開く。すると、それまで遠かった次のホールドが取れる。

 このホールドは前回は殆ど持てるホールドではなかったのが今回は何とか持てる。どうも、今回は岩の銚子がすごく良いようだ。先の課題でも結構フリクションが効いていたし。

 右足をスメアで上げて上のホールドを探る。ホールドらしい物は見当たらない。リップまでは少し届かない。リップを持つためにはもう少し足が上がっていなければならない。飛び降りる。

 段々右手のサイドカチが取れなくなって来る。身体が剥がされてしまうのだ。左足を置く場所を探って見る。それ程顕著な違いはない。足を置く角度をインからトウ迄色々変えて見る。あまり変わらない。少しアウトでキョン気味にして見る。それ程力を入れる事無く素直に手が出る。これか。

 しかし、左足を最初からアウトにするとスタートがきつくなる。スタートはインサイドで岩に身体をくっつけた方が楽にスタート出来る。

 左足をインサイドに於いてスタートしアウトサイドに踏み変える。これで右上の縦カチが楽に取れ、右足が斜めカチに上がる。左足を大きく開いて大ガバに持って行き左手を少し遠いカチに持って行く。一応ここまでの手順は完成した。

 右足を一歩上げ、身体を上げる。左足は適当な所が無いから適当に置く。リップまではもう少しなのだが、もう少し届かない。少し頑張って手を出して落ちる。

 足を少し上げて見る。少しリップが近付く。しかしまだ少し足りない。

 左の方に細い木が生えているので、その木を使って少し上を偵察する。しかし、リップは飛んで止る感じでもない。もしかすると手が止らないかもしれない。そう言えば前回ここを登った人がリップも悪いと言ったような気もする。

 同じような事を休みながら何回かやって見る。段々右足が斜めカチに上げ辛くなって来る。またリップ付近のホールドを探る。

 まてよ、あれホールドじゃん。よおく見るとエッジが少し丸まったカチチックなホールドになりそうな所がある。よしあれを使って見るか。がしかし、既に指は終わっている。再び遠いカチから身体を上げる事は出来なかった。

 ここには、「嘆きの壁」をはじめ、初段の課題、1級の課題などがある。その1級の課題は小生も何回かトライしており、まだ全く登れていない課題である。

 仲間が「嘆きの壁」とか初段の課題を触っている間に、その初段の課題の右の壁の確か6級くらいとか言われた僅かに寝た壁を触って見る。

 この課題は以前来たときも出来ずに、その少し右側の斜面を少し登った所からチョンボスタートして誤魔化した課題なのである。最近は少しは強くなったので、若しかして登れるかとやって見たのである。

 浅いポケットで離陸して体は上がるのだが、その先が動けない。少し上にフレークがあり、そこが持てそうなのだが、そこまで手が届かない。

 なんとか体を上げ、左手をそのフレークに飛ばして見る。届かない。下地が傾斜しているから、落ち葉がいっぱいあるから、足が滑る。靴が濡れる。

 チョークを付けて、それを拭きとって、濡れた所を乾かす。またやって見る。両足を決め、体を上げる。フレークは無理だ。といって、スタテイックには手が離せない。動けない。やっぱり駄目か。

 実はこの課題、後で調べて分かったのだが、2級だそうだ。どおりで悪いわけだ。今度はそのつもりでやって見よう。

 皆の所に戻って、1級の課題をもう一人の仲間と触りだす。

 右手ピンチチックなあまり良くないホールド、左手ちょっとした窪み、左足は直ぐ下のガバスタンス。離陸して、右足を斜めのカチスタンスに上げ、左足を左のほうのガバスタンスに移す。その先が分からない。

 他の仲間も参戦する。

 確か、次の右手はその辺の縦カチだったようなと、小生が思い出す。その辺のホールドになるのだかならないのだか分からないようなところを別の仲間が一応磨く。

 別の仲間が、その磨いた所の少し下の縦カチを使って、左足をスメアで少し高く上げ、右足を大きく開いてガバチックなスタンスに上げ、右手をそのスタンスの上の方の少し出っ張った所のサイドを使ってリップを取り、上に抜ける。マントルも悪いらしい。

 もう一人の仲間もその縦カチを使って登る。

 小生ともう一人の仲間もそれを真似て、右足を開くのだが、腰が出てしまって、後ろの木に体が触ってしまって、なかなかそのスタンスに足が上がらない。

 段々足が上がるようにはなってきたのだが、足をスタンスに置ききれずに落ちる。その時、下を見ると岩があったので、その岩を避けるように足を開き落ちる。

 何回かして、左足をインナーエッジでスメアする感じでやって見たら、足が何とか上がり、左手でリップが取れた。しかし、右足がしっかりとは乗れていなかったようで、落ちる。

 次の試技で何とか右足に乗れ、左手でリップを取ってから、右手も少し膨らんだリップをとれる。左手は少し左のほうに浅いポケットがあるので、そこを探ったり、右手の良い所を探したりして、マントルの体制になろうとしたのだが、右足が少し滑り、置き直してもうまく行かず、もたもたしているうちに、そのまま後ろの木の枝を少し抱えながら落ちる。そのため、着地のショックは余り無かったが、その代わりに左腕の内側を思い切り擦りむいてしまった。あまり小細工せずにすんなんり落ちたほうが良かったようだと反省する。

 もう一人の仲間もその後何回かでそこを登ったのだが、小生はその後、中々左手の少し遠いホールドが取れなくなってしまい、何回かやっては見たが、その後の進展は全く無かった。結局この課題を登れなかったのは小生だけだったようだ。

 もう日も蔭ってしまったから、相当に冷え込んでいたようだ。

 仲間が、その裏側の初段の課題を登るのを見学して、もう一回だけその1級の課題を触って、別のエリアに移動する。

 いよいよ嘆きの壁である。って、「嘆きの壁」をやるわけではない。その左の1級の課題である。

 今回は多分上から落ちるだろうからと、自分のパッドを担いで行く。

 パッドを敷いて、取り付いてみる。

 ホールドが持てない。なんとなく滑っている気がする。ホールドを歯ブラシで磨く。

 離陸を試みる。左手が外れ、指の爪側の第一関節辺りの皮を擦り剥く。血が滲む。舐めて誤魔化す。

 3回、4回と続けてトライする。寒いから、一人だから、どうしてもゆっくり出来ない。

 離陸が出来ない。足の置き方か。左足のインエッジで体を岩に押し付けて立ち込んでみる。離陸できた。右足をカチスタンスに乗せることが出来ない。昨日はこの辺は何も考えずに出来たのに。

 やっぱり足の置き方か。直ぐ下の左足を離陸した後に少しアウトエッジ気味に置きなおす。右足が上がった。そう言えば昔、散々やってこのスタイルに落ち着いたことを思い出す。と言うことは進歩は無いのか。と言うことか。

 左足を開いて、左手を遠い次のホールドに伸ばす。届かない。右手が開かない。体が左に行かない。飛ばし気味に行っても取れない。何回その辺のムーブをやったことだろう。なにしろ、休むか休まないうちにまた取り付くのだから。

 やっと遠い左手が取れた。右手を縦カチに寄せる。左足を上げる。が、左足に全く乗り込めない。力が入らない。そうか、足は相当に疲れていたのか。道理で昨夜足がやけに攣った訳だ。今後何やっても、こりゃ駄目だ。早々と諦める。

 時間はまだ3時大分前だ。一応の予定は3時半ここ出発である。

 裏の初段の課題の下にパッドを敷いてみる。

 右の石の上から、少し高い水平カチを持って、左足をガバスタンスに置いて離陸する。両足を小刻みに上げて手を縦リスのフレーク気味のところを持つ、のだろうか。最終的にはスタートホールドに立ち上がるのだが。

 2回か3回ほどやって見たが、手がスタートホールドから移動できない。初段だからやはりまだ早そうだ。

 やっぱり湿気ていた。左端の1級の課題は苔が相当に戻っていた。

 昔の記憶を思い出しつつ、スタートホールドを探って見ると、とっても持てる状態ではなかった。スタンスも薄緑色だったし。

 1級の課題を触るのは諦め、裏の右端のスラブを触ることにした。多分、そんなに難しい課題ではなかったはずだが、こちらも苔が戻っており、一部濡れている所もあったし、指先だけがかかる小さな浅いポケットを使う課題だから、多分グレードも上がっているはずだ。

 下地の傾斜が結構きついから、靴が汚れないように適当に足場となりそうな場所に足拭きマットを置きながら、岩を触って見た。適当なホールドと足で離陸して見た。全く離陸ができなかった。

 手、足を探して見た。左手少し上のポケット、右足はアバタのスメアで離陸して見た。なんとか離陸はできた。そのまま左手を左上の2連のポケットを取ってみた。なんとか持てる。右手は。探したが、持てそうなものは見つからなかった。

 上に回り、右上の斜めカチとかその左の縦カチに見えるところとかを確認した後、その場所を下から磨いて見た。なんとか持てそうな薄カチが出現した。

 2連のポケットからその右上のうすカチを取ったら、左上のやはり薄カチが取れた。そのホールドで体を上げて行ったら、なんとか体があがった。後はリップ上のホールドになりそうなところを無理やり掴み、膝やお腹など、使える物は総動員し、なんとか岩の上にはい上った。

 それまでに何回落ちたことか。2回や3回ではなかった。その度にマットがずれたりして靴が汚れたが、それを手で拭き拭きトライを重ねて、やっとの思いで登ることができた。

 なんだか、すごく泥臭くはあったが、それなりに満足ができた。グレード? それは分からない。まぁ、そんなのどうでも良いことだ。何たって自己満足の世界なのだから。

 4歳の息子は、傍らの小川で元気良く遊んでいた。

 しばらくぼっとしながら、おにぎりを食べたりしてしばらく休んでいた。


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作成年月日 平成20年 9月21日
作 成 者 本庄 章