奥山寺の遊仙峡に行ってきました

   東北気侭な一人旅その1
2005年12月 6日記
 相棒が何日か家を空けるというので、その序に、9月の下旬に行きそびれた広田半島にでも行ってみようと思いつき、木曜日の夜から一人で旅立つことにした。

 一応は広田半島がメインではあるが、これも以前から気になっていた、仙台の方のHPにちょっと書かれていた、遊仙峡にも行きがけに寄ってみるかということで、この2箇所の資料を適当に用意し、出発する。急に思い立ったものだから、荷物の用意に少々手間取ってしまい、出発は11時頃になってしまった。

 何時もは混んでいるだろうという事で、殆ど走ったことの無い、船橋から取手に抜け、294号を北上する、一番距離的に短いルートを走ってみる。ところが、これが失敗だった。294号に入るまでの道の信号が多すぎる。夜中に近いはずなのに、悉く信号が生きているのである。それでも、294号に入ると信号の数も減り、順調に走ることが出来た。

 高根沢町の宝積寺で国道4号に合流し、最近名前の変わった「さくら市」を抜け、矢板インターから東北道に乗る。既に2時を過ぎている。

 そろそろ寝るところを探さなければと、最初に出てきた矢板北PAに寄って見る。しかし、駐車場が狭く、寝るのに良さそうな場所が見つからない。やっぱりSA等の広い駐車場の方が、静かな場所は見つけやすいかもしれないと考え、那須高原SAを目指す。

 高速の単調な走りで、少し眠気を催してしまったが、無事那須高原SAに到着し、駐車場の真中辺りの、自動車の余り居ない場所に自動車を停め、寝袋に包まる。

 朝目を覚ますと既に回りは明るく、7時を過ぎている。本日は昼頃に到着できればとは思っていたが、あまりゆっくりもしていられない。自動車の中でインスタントラーメンを作り、インスタントコーヒーを飲んで出発する。

 村田JCTから山形道に入り、山形北で高速を降りる。

 カーナビの指示に従い、一先ずは山寺を目指す。山形市から天童市に入り、すぐまた山形市に戻る。有料駐車場が幾つか現れだす。やっぱり駐車料金を取られるようだ。駐車場が無料ならば帰りにでもお寺さんに寄ろうかとも考えたが、400円だか500円だかの駐車料金まで払って寄ることも無さそうだ。

 道がすごく細くなってくる。一応舗装はされているのだが、自動車1台がやっと位の細さである。これではこの先の二口峠越えの道が通行止めのままになるのも無理は無いかもしれない。そう思いながら走っていたら、家並みを抜けると、すれ違いが出来るくらいの広さになってきた。

 奥山寺方面へ分岐する林道に入る。自動車1台がやっとの広さだが、一応舗装はされている。とおもったら、やっぱりそのすぐ先で舗装は切れた。

 カーブの途中に、インターネットで見た写真と同じ、遊仙峡への入り口が現れる。その入り口付近は少し道が広くなっていて、1台位なら自動車を道の脇に入れられそうだったが、すれ違いのことを考えると、自動車は停め無いほうが良さそうに思われたので、そのまま、自動車が停められそうな場所を探してその先に進んでみる。

 そのカーブを曲がった先の左側に、雨でも降ったのだろうか少しぬかるんではいるが、自動車が2〜3台入れられそうな場所が現れる。

 一旦、そこに自動車を入れてみたが、その先の奥山寺キャンプ場跡地を見に行きたくなったので、そのまま先に進んでみる。

 少し走って、橋を渡ると、道の両側が広場状になっている。キャンプ場にしてはそう広くは無い。ここだろうか。何となくそうではない気もしたので、尚も進んでみる。

 急に道の落ち葉が濃くなり、道路の表面が見えなくなる。殆ど自動車は走っていない様だ。多分、橋の袂の広場辺りから山寺の岩場に入って行くのだろう、だから急に殆ど自動車の走っていない感じの道になったのだろうと勝手に考えながら、尚も進む。

 左にちょっとした道を分けて、程なく行き止まりとなる。今の道に入るのだろうか。バックで戻ってみたら、左に分けた道に見えた場所は、多分Uターンのための場所の様で、ほんの数m位で、その先は急な斜面になっていた。やっぱりさっきの広場がキャンプ場跡地だったようだ。

 最初の駐車場まで戻り、自動車を端に寄せて、上下の服を着替え、支度をする。

 だれだ、こんなところで雉を打った奴は! 踏みはしなかったが。

 仙台の方のHPでは、「遊歩道を歩くとすぐにボルダーが点在している」とあったので、渓谷沿いの遊歩道を歩き出す。

 すぐに岩が現れる。成るほど。でも、いわゆる礫岩といわれる、泥の中に礫が混じった感じの、脆そうな岩である。それに苔だらけである。

 沢筋を進むと、鉄の梯子が現れる。登って行くと、その先道は、岩の上を越え、対岸に渡っている。その辺りから、沢の傾斜が増してくる。岩の数も増えだし、お互いに重なりだす。

 所々岩にはステップが切ってあったりするが、鉄の梯子、鉄の梯子の橋、鎖、ロープ、等など、およそ遊歩道とはかけ離れたものが繋がっている。岩を攀じ登り、岩を飛び降りなければならないところも出現する。それより何より、駐車場と同じく、前夜雨でも降ったのだろうか、全てが濡れているのである。梯子の橋の上、岩の上に積もった落ち葉はビショビショである。

 これが「遊歩道」だろうか。やっと、HPに有った案内図の「下山コース」の意味がわかった気がする。これではまるで、初級の沢登りコースだ。下山道が無ければ早々に引き返していただろう。

 岩はいっぱい有るのだが、登られていそうな岩、登れそうな岩は見当たらない。本当に登れるようなボルダーなんて有るのだろうか。

 なんだかだで、もう大分登ってきてしまった。でも、それらしい岩は現れない。本当にここなのだろうか。引き返すったって、登ってきた所を下ってゆくなんて、そんなことやりたくないし。

 ほんの少し開けた所に出てくる。少し被った壁を持った岩が出現する。ここかなぁ。

 岩と岩が重なって洞窟みたいになった狭い所を抜けると、何となく登れそうな壁を持った岩が見えてくる。近寄って触ってみる。もしかすると登れるかも。でも、なんだか脆そうで、登る気にはならない。

 側壁の上の方にも岩は見える。でも、側壁の傾斜も結構きつい。藪が深いわけではないが、そこを登っていってまで岩を偵察する気にもならない。先に進む。

 岩と岩の間に渡した橋が水没している。鉄のパイプの部分は何とか出ているから、慎重にパイプの部分で渡る。

 丸っこい岩の表面を水が舐めている。やっぱり増水しているのだろうか。でも、行けそうな場所はそこしかない。どうしよう。意を決して、水の流れの中に足を置く。意外と流れがきつく、靴の上にまで水が乗ってくる。布の運動靴だから、すぐに水が染み込んでくる。その靴に体重をかけて乗り込んで、次の足を同じように流れの中に置く。

 歩き出したら、靴の中で「グチュグチュ」音がし始めた。

 垂直にそそり立つ大岩壁を眺めたりしながら、やっとの思いで、最後の岩小屋に辿り着く。結局まともな岩はなし。やっぱり外れだったか。

 仕方がないから、岩小屋の前の小さな岩に攀じ登り、セルフタイマーで写真を撮り、一応は登ったことにする。

 岩小屋とは、大きな岩壁の下部が抉れており、半洞窟風になっているのをそう呼ぶらしい。天井は、入り口付近でも手を伸ばせば岩に手が届くくらいの高さで、大ルーフ状を呈している。結構広い岩小屋である。

 その岩小屋の右奥辺りの壁がトラバースできそうな感じだったので、一応そこの岩壁に取り付いて、写真を撮る。でも、やっぱり脆い。

 岩小屋の前の小さな岩に腰を降ろし、持参したパンをぱくつく。

 空は曇っている。暖かくは無い。おまけに時折僅かではあるが雨が落ちて来たりもしている。あんまりゆっくりしていてもしようが無いからそろそろ下山に掛かる。

 当然下山コースを下る。でも、折角岩を登りに来たのに、これでは岩を登ったとは言えそうに無い。何とか岩を探さなければ。

 下り始めて早々に、登山道の脇に、そんなに高くは無い、何とか登れば登れそうな岩を発見する。ここは何が何でも登らなければ。セルフタイマーをセットし、一応SDで上に抜ける。

 落ち葉の下に白いものが見える。手に取って見ると、ザラメ状になった雪だ。そうか、雪が積もったんだ。

 まぁ、何とかボルダーらしいといえばボルダーらしいといえなくもない岩を登ったから、何とか良しとしよう。無理やりの納得である。

 草の生えた急な斜面の側壁の結構高いところに僅かな道を刻んだという感じの、ロープが張ってあったりする、恐い感じの道を暫く下ってくると、側壁の傾斜も緩んできて沢床も開け、林の中を歩く感じの道に変わってくる。

 道の脇に岩が現れる。待てよ、今までの岩とはちょっと違う感じの岩ではないか。礫っぽくないではないか。これならボルダーといえるかもしれない。藪を分けて岩を触りに行ってみる。苔は被っているけど、しっかりした岩である。

 道の反対側の斜面を見上げると、そこにも結構大きな岩があり、その下にも何となく面白そうな面を持った岩が存在する。これならボルダーと言えるだろう。

 荷物を置き、他の岩を探してみる。

 少し先に行くと、登山道脇に大きな岩があり、その岩には上から結び目をつけたザイルが2本垂れ下がっている。薄被り面には、なにやらチョーク跡らしきものも見える。「おっ!」である。

 近付いてみると、薄被りの壁にポケットホールドが刻んである。「むむっ」

 荷物のところまで戻り、最初に見つけた岩の周りを一回りし、登れそうな2面と降り口を確認する。

 岩及び落ち葉は相変わらず濡れてはいるが、岩自体のフリクションは結構利きそうな岩である。この先のルートの岩場である黒岩と同じく、安山岩という岩なのだろうか。細かな孔があいており、水分を吸収しそうな感じの岩である。

 見た目は下が少し被っていて、リップを乗っ越して行く感じに見えた壁だが、触ってみたら、いきなりリップのガバが持ててしまった。

 次はその右の登山道側の垂直の壁である。高さは2mちょっと、辛うじてリップには手は届かない。一番見栄えの良さそうな真中辺の壁を調べてみたが、残念ながらホールドが見当たらない。仕方がないから、右側のカンテがらみで登る。

 登山道の山側の斜面の、面白そうなスラブに見えた岩に行ってみる。

 下から見たときはカンテがらみで登ろうと考えていたのだが、思ったほどの傾斜は無く、真中をガバガバガバと登れることが判明し、少しがっかりする。でも、一応デジカメをセットしド真ん中を登る。

 いよいよ道端の大きな岩である。

 ザイル(古い言葉だが、クライミングロープのことである)が下がった面は、ほぼ直角の凹角になっており、コーナーの部分がクラックになっている。結び目をつけたそのザイルは多分下降用なのだろう。

 そのクラックのリップにレイバックして、上部を窺ってみたが、その面は岩が濡れており、ホールドも余り良さそうなものが見当たらなかったので、降りてきた。

 正面のホールドの刻まれた、少し被った面の別の場所も触ってみたが、小生に何とかなりそうな壁ではなかった。

 これで、堂々とボルダーを登ってきたといえそうだ。よかった、よかった。

 荷物を纏め、少し下ると、もう停めてある自動車が見えてくる。そうか、下山コースを歩くとすぐにボルダーが点在している、ということだったのか。

 左に入る踏み跡が見える。荷物を置き、入ってみたら、2つほどのボルダーが見える。下のボルダーに行ってみたら、僅かに寝た壁の真中に一本のクラックが走っている。高さは4m近くは有ろうかという高さである。これは登らなければ。靴と足拭きマットを取りに戻り、登ってみる。

 岩は濡れている。完全に濡れている。でも、ここは登らなければ。

 フレークのリップでスタートし、クラックを探る。サイズはフィンガーサイズ位か。ジャムを試みるが利きそうに無い。仕方がないから壁にホールドを探り、左のほうに何とか探り当てる。僅かなカチスタンスに足を上げる。乗り込む。滑る。落ちる。

 やっぱり濡れているから駄目か。でも登りたい。今まで使っていなかったチョークバックに手を突っ込む。

 その先、何とかクラックの右脇に斜めのカチホールドを探り出し、そこを両手で持って、フレークの淵に足を突っ張って身体を上げ、クラックの左側のカチスタンスに左足を開く。

 左手を左の壁に移して、右足をフレークの淵に置き、上を窺う。左足は完全にミシンを踏んでいる。そろそろ限界か。リップ直下のクラック付近のホールドを探っている最中に足が滑り、落ちる。少し上がっていたし、丁度小さな岩の淵辺りをカスッて落ちた感じだったから、少しヒヤッとしたが、大事には至らなかった。

 ふぅー、手がはってしまった。岩は勿論、靴のソール迄濡れてしまっているから、想像以上に力を使ってしまったのだろう。

 でも、ここでめげるわけには行かない。やっと見つけた、見た目にもいかにもボルダーという感じの課題だ。絶対に登りたい。

 少し休んで、先ほどのシーケンスを繰り返す。

 意外とスムースに同じ場所まで行く。一応、ソールにチョークをつけてからふき取り、スタンスにもチョークを塗っておいたから、今度は、少しミシンを踏んではいるが、先程よりはしっかりとスタンスに立っている。

 先ほどは使えそうに無いと思われた、少し甘く感じられたクラック付近のホールドをクロス気味に右手で使って、左足を上げてから乗り込んでみたら、身体が上がり、もう目の前にリップが迫ってきた。やったかも。慎重に手を出したらリップが取れた。やったぁー。ボルダーらしい課題が登れたー。素直に嬉しかった。多分乾いていたら、なんてことのない課題なのだろうが。

 これで、遊仙峡でボルダリングをしたと、胸を張って言える。

 折角だから、この課題の写真を格好良く撮ろうと、アングルを探してみたが、岩の前のスペースが狭く、結構高目のこのボルダーの写真を格好良く取れる場所が見当たらない。悔しいけど、諦めるしかない。

 余勢を駆って、もう一つのボルダーにもラインを探って見たが、そそられそうなラインは見当たらなかった。

 そろそろ3時である。さぁ、次の場所へ移動だ。

 支度を整え、遊仙峡の水で手を洗って自動車に戻ったら、一台の自動車が登ってきた。クライマーでは無さそうだった。

 さぁ、次は広田か。待てよ、ここは山形だ。ということは、若しかしたら秋田が近いかも知れない。地図を見ると、確かに近く見える。広田と比べても殆ど変わらないかもしれない。ということは、ここは一つ、男鹿半島の入道崎にでも偵察に行ってみるか。広田は既に一度行っている所だし。最初は駄目かと諦めかけたこの遊仙峡が、意外と登れたことにより、気を良くしての発想である。

 カーナビを入道崎にセットし、走り出す。

 何しろこの場所はカーナビの地図には道としては乗ってはいない場所だから、最初は地域外を走行中とのことで、到着予想時刻を表示していなかったのだが、正規の道に戻ったところで、カーナビは予想時刻を午前1時頃と表示している。わっ、遠いんだ。でも、高速は使わないもんね。

 国道13号線をひたすら北上する。細くなったり、街中をウネウネ走ったり、無料開放中とかで高速道路みたいな道を走ったり、とかしていたら、カソリンが乏しくなってきた。山形付近では1リットル123円だとか126円だとかだったガソリンが、遂に130円になってきている。でも仕方がないから、湯沢市内で給油したら、なんと1リットル133円になっていた。もっと早くに給油しとくんだった。

 途中、横手の少し先の「せんなん」道の駅に寄り、リンゴを買って、和風ハンバーグ定食で夕食にする。お茶がセルフだったので、自動給茶機まで行ってみたら、嬉しいことに、その傍らに、売店で売っているという、キムチと普通の白菜の漬物の試供品が置かれていたから、両方とも小皿に盛って席に持って帰った。

 地図を見ていたら、大曲辺りから田沢湖が近いことが判る。

 田沢湖は、ずっと以前から一度は行きたいと考えていた湖である。明日にでも寄れたら寄ろうと、レジの、綺麗なお姉さんに聞いてみたら、大曲から1時間も有れば行けることが判る。その時に、今夜はどこまで行くのかと聞かれたから、男鹿までだと答えたら、夜釣りかと聞くから、今夜はその手前で泊ると答えた。すると、カウンターの下から東北の道の駅の地図を取り出し、これをどうぞと言ってくれた。やっぱり庄内って親切な人が多いんだ。そして綺麗な人も。

 途中から、あたかも雨と自動車で追っかけっこをしているが如くに降ったり止んだりし出した雨の中を、秋田市内で合流した国道7号線をちょこっとだけ走ってから、海沿いの道に入り、「てんのう」という道の駅に到着する。丁度到着時には、とうとう雨に捕まってしまったらしく、ザアザア降りの雨になってしまった。

 暗い目の場所に自動車を停め、外に出たら、下は大変な水溜りである。慌てて別の場所に移動する。そうこうするうちに雨は止んでいた。

 トイレのほうに行ってみると、この道の駅にはお風呂もあることがわかる。中に入ってみたら、営業は10時までで、9時半までなら入れてもらえることが判る。料金は400円である。まだ9時少し過ぎだ。慌てて自動車に戻りタオルを持ってくる。

 露天風呂は無いがサウナがあったので、先ずサウナに入り、ゆっくりとお湯に浸かって、10時ちょっと前に上がってきた。

 雨は完全に上がっている。天気予報では明日は晴れるといっているし、多分大丈夫だろう。


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作成年月日 平成17年12月 6日
作 成 者 本庄 章