とあるボルダーその9

2003年 6月 9日記
 ジムの仲間と3人で金曜の夜発土曜日帰りでとあるボルダーに行って来た。

 このボルダリング行が決まったのが金曜日の夜8時過ぎ。9時半の待合わせを10時にしてもらって、相棒の自転車を借りて、慌てて電車で待合わせ場所に急いだ。

 先ずは湾岸千鳥町から首都高へ。金曜の夜だが、意外と空いている。レインボウブリッジを通っても箱崎を通っても同じ所要時間だったので、運転手がまだ走ったことがないと言う箱崎経由で行く事にする。

 箱崎の合流までは順調に進んだのだが、三宅坂の分岐で渋滞し、なかなか進まない。ノムヒョン氏の来日でまた何処かで規制でもしているのだろうか。

 霞ヶ関方面からの合流の手前で発煙筒が焚かれている。やっぱり規制か。しかし合流部を過ぎると、もう渋滞はない。その間何も変わった事はない。何だったんだろう。普段の自然渋滞なら発煙筒など焚く訳もないし。やっぱり事故でも有ったのだろうか。

 中央道を順調に進み、須玉インターで少し嬉しい事が有って、何時ものコンビニで飲み物や食料を買い込み、何時もの天場に向かう。

 何時もの天場は車から少し下がった所だったので、暗くて行き難いからと、その少し先の沢沿いの道のすぐ脇の場所にテントを張る。

 買って来た飲み物で少しお話しをしてから寝る。既に2時を廻っていただろうか。

 朝8時頃起きだし、別口の仲間の何時もの場所のテントを見に行くと、まだ起きてはいない。テントに戻って、銘々で朝食にする。

 また、別口の仲間のテントに行き、起きだしていた仲間にその日の行動を聞く。皇帝岩でアップをする予定とのことなので、我々は一足先に皇帝岩に向け出発する。

 トイレのある駐車場で用事を済ませ、車はその駐車場に置いて、皇帝岩に行く。

 仲間は少し高い所でアップをするが、小生は恐いからその横の易しいマントル課題を触って見る。所が、これが登れない。いきなり足をリップまで上げなければならないから、アップには不向きかと、その裏の易しい課題に廻る。

 この課題、離陸が難しい。何回やってもなかなか離陸が出来ない課題なのである。今回も何回かの試行錯誤の末に、左のカンテを両手でレイバック気味に持って、左足を左の方の僅かな窪みに置いてやっと離陸し、右手でカンテの左側のガバを取る。このガバを取ってしまえば後は簡単。だった筈なのだが、足がカンテの右だし、なんとなくバランスも悪いし、ガバとは言っても持った方向が悪かったしで、右手1本で動く事が出来ず敗退する。

 その後、何回やってもカンテが持てず離陸が出来ない。

 諦めて、仲間が最初にアップで登った、易しそうな所を登って見る。右斜め上に細いバンドが登っており、ホールドはポケットが適当にある、という感じの所である。

 2mちょっと登ると、バンドも無くなり、左手のポケットで右足をスメアで少し高く上げなければならない所に来る。まぁ、ここが核心なのだろうが、飛び降りるには大分高い所である。右足を上げる為の足を探すが、巧い具合の足が探せない。落ちたくないからそこからクライムダウンする。

 別口の仲間の二人がやって来る。総勢5人になる。

 先に出来なかったマントルをやってみたら、何とか出来た。そのまま、一応、テッペンまで行く。

 別口の一人が先に小生が諦めた所を登っている。離陸のムーブは変わらない。やっぱりあれで良いのか。暫くして、別口のもう一人が同じ所を登る。その人のムーブは、カンテの左側は僅かな凹角になっているのだが、そのカンテの左側から適当なオポジションでスタートしている。

 ああいうのも有るのかと、早速真似をするが、肩が入らず、力が入らないので離陸出来ない。何回か色々とやって見たが、出来る気配を見出せない。やはり最初の人の様に、カンテの右から出るしか無いか。岩が少々湿り気味と言うことにして諦める。確か6級だったような気がするのだが。

 今度はマットを敷いて、また高い課題を登って見る。同じ所まで行くが、やはりスタンスを巧く見つけられず、降りる。以前は登れた課題なのになぁ。

 仲間が移動すると言うので、阿修羅という課題のある岩に行く仲間に付いて移動する。もう一人の仲間は千里眼という課題のある岩に行く。

 小生は阿修羅は出来ないから、荷物はそのままに、その上のクラックとスラブのある岩に行き、クラックを触る事にする。

 クラックに手を入れて、色々やって見たが、手が痛くて、巧くゆかない。こんなことが出来るのだろうか。なおもしつこくやっていたら、サムジャムが決まり、一瞬ぶら下がる事が出来た。

 気を良くして仲間の所に戻る。食べ物を少し食べて、荷物を持って、またクラックの前に行き、靴を履いて、さっきと同じようにサムジャムをやってみる。所が、手が痛くてぶら下がれない。折角何とかなるかもと期待をしたのに、駄目か。

 以前、もう少しで何とかなるかもと言う期待を持った、そのクラックの右のポケットから少し遠いリップを取る1級の課題のスタートのポケットを触って見る。普通に持つ分には支障は無いようだが、指を少し奥まで入れると中に水が溜まっている。ぶら下がって見たが、離陸出来そうに無い。諦めてその右の、穴がいっぱいある、苔だらけのスラブに行く。

 この壁は、以前は右の方からトラバースしたのだが、直上が出来そうなので、直上して見る事にする。

 左ポケットで離陸し、右ポケットを取って、左上の浅いポケットで耐えて、右アンダーポケットを取る所まで行く。やっぱり、右アンダーポケットが取れない。左手が甘いし、バランスもあまり良くない。スタティックに行けないのである。左足はスタンスらしい所に乗っているのだが右足が浮いているので、何とか右足を探す。右足適当なアバタを拾って何とか右アンダーを取って身体を上げる。

 これで一応身体が安定するので、両足を大きなポケットまで上げて、リップの少し下のちょこっとした丸いテラス状の所にある僅かな皺を捕らえる。傾斜は少し寝ているから、後は足を上げれば何とかなりそうだと思ったのだが、それ以外のホールドも見つからず、右往左往している内に手が張って来たので、急いで途中までクライムダウンし、マットに飛び降りる。

 所が、ここの下地は、悪くはないのだが、少し窪んでいて、おまけに少し傾斜している。案の定、窪みの法面に着地したために足首を少し多目に曲げてしまい、少し痛みを感じてしまった。

 歩くにはなんの支障も無いから、先ずは少し安心する。また、少し食事をして、荷物をかき回していたら、テーピング用のテープが出て来る。そうか、テープを持っていたのだ。

 下から壁を見上げると、ポケットが結構沢山あり、スタンスは十分に見える。先程の所からでも、右足、左足と適当なポケットが見える。どうも、全く足を見なかった様だ。

 それを意識して、取付いて見る。やっぱりアンダーガバの所で落ちる。しかし、今度は窪みの法面を避けるべく、傾斜の下の方に向くように身体を90度捻って飛び降りる。無事着地する。良かった。

 2回か3回目に、少し長めに休んだ後に、アンダーガバがしっかりと持て、先程の到達点迄行く。足を見て、足を上げて、先に上から確認してあった左の方のポケットを取ってマントルをしようとしたのだが、バランスが悪く、恐くてマントルが出来ない。左の方の大きなポケットまで左足を送り、なんとかマントルを返す。なんとか出来た。

 休んでいたら、別口の仲間の一人が登って来た。ここのエリアは山の斜面にボルダーが点在しているのである。

 その人が手にテーピングをして、小生が触っていたクラックの課題を登り出す。この人は小川山を開拓した仲間の一人だから、簡単そうに登ってしまう。確かに、このクラックは10aとか10cとかのグレード位らしいから、その道の人には難しくはないのだろう。

 先程、仲間がテーピング用のテープをくれると言ってくれたのを断ってしまったが、荷物から出て来た自分のテープを自分の手に巻いて見る。

 実は、クラックの為にテーピングするのは初めてなのである。見よう見真似で指の付根から掌にかけてテープを巻いて見る。握り拳を作ると何だかすごく窮屈である。こんなものかと思いながら、クラックに手を入れて見る。

 あんまり痛くない。力を入れても、十分に耐えられるのである。所が、やはりぶら下がると手が抜けてしまう。

 休みながら、テープの巻き方を聞いて見る。やはりきつすぎる様だ。巻く時は軽く握った状態で巻くらしい。まっすぐ伸ばした状態で巻いた物だから、握るときつくなり過ぎてしまったようだ。一度巻いたテープを解いてまた巻きなおして見る。

 大分具合が良くなった気がしたので、クラックに手を入れて見る。そんなに緩くもなさそうだ。そのまま少し色々とやって見る。手を入れる所を探して見たり、左右の手を変えて見たり、掌を返して見たり。しかし、なかなかしっくりと来る場所が見つからない。効いている感じのする所は何ヶ所か、また幾つか感じたのだが、その状態で離陸しようとすると、足が悪かったり、力を加える方向が悪くて効かなくなってしまったりしてしまって、どうも巧くゆかない。クラックに足を入れて見ても、巧く入らないし、方向もあまり良くないように思える。

 僅かに被っているから、しっかりと効いていないと足も効かないのだろう。なにしろ、クラックなんて、素手で何回か触っただけだから、教則本で何回か読んだだけだから、巧く行く訳もないのだから、いきなり10aはきついのかも知れない。

 クラックを一頻り登った仲間が小生が登った所を登っている。小生が左に逃げた所をしっかりと直上している。小生も早くあのような技術を身に付けたいものだ。

 もう少し易しいクラックを求めて、小生独りでさざなみクラックという課題のある岩に移動する。

 このクラックは少し右に傾いていて、稲妻のような形をしている。丁度掌がすっぽりと入る位の広さである。スタンスもクラック以外にも求める事が出来る。ジャミングを使わなくても登れる課題である。そこをあえてジャミングを使って登る訳である。

 最初は全てジャミング、足もクラックを使ってとやって見たが、クラックが傾いているから、なかなか巧く行かず、離陸すら出来ない。それでも、しつこく色々とやって見る。

 手に巻いたテープが緑色になっている。クラックの中はうっすらと苔が生えているようだ。気にしないで繰り返す。

 あまりに出来ないから、スタンスをクラックの外に求める。片方の手はカンテ持ちをしたり、クラックの中のホールドを持ったりして見る。まぁ、まだ初心者だから、ジャミングが出来る所でやれば良いやと、気持ちを切り替える。そうすると登れる。まぁ、当たり前のことである。

 その壁の左のすごく寝ているスラブを登って見る。クラックの左の縦に走るバンド状の所を登って見る。

 その壁の一番右の所も触って見る。確か以前登った所なのにとホールドやムーブを確かめるが、なかなか思い出さない。どうやるんだったっけ。

 阿修羅の岩に戻ると仲間一人と別口のもう一人の人がいた。仲間は、阿修羅ではなく、その左側の壁の課題をずっとやっていたらしい。阿修羅は触らなかったらしい。そして、その課題の核心を2回か3回越えたらしいが、遂に指の皮を破いてしまったらしい。仕方が無いから、指にテープを巻いて阿修羅でも触って見るらしい。

 暫くして、千里眼にいっていた仲間が戻って来る。倶利伽羅という課題が登れたらしい。その課題が何処に有ってどんな課題かは小生には良くはわからないが。

 阿修羅の岩の少し下にやはりクラックのある岩がある。そこに行って、そのクラックを登って見る。何回か挑戦したが、結構ジャミングで登れるようだ。

 別口の仲間のもう一人と、千里眼に行っていた仲間が、岩を少し磨きながらプロジェクトらしい課題を登っている。少し見学をしてから阿修羅の岩に戻る。

 戻る途中、なんとなく何時降り出しても可笑しくないような空から、遂にポツポツと雨が落ち出す。荷物を纏めていると、大粒の雨になる。仕方が無いからそこにいた4人全員で、阿修羅の岩の左側の薄かぶりの壁の基部に避難する。

 程なく雹が降り出す。結構大きな雹である。仲間がその雹に打たれる為に外に出る。結構雨も交じっているらしく、すぐに戻る。小生も真似をしてちょっと濡れて見る。やっぱり痛いより先に沢山濡れるのですぐに戻る。

 地面が所々白くなり出す。少し小降りになったのだが、またすぐに結構激しく降り出す。相変わらず大きな、雹が交じっている。雹はより大きくなったようにも思われる。

 庇から雨だれが落ちて来出し、その雨だれが岩壁を伝い出す。早晩、ここも雨宿りには適さなくなりそうである。何時まで経っても小降りになりそうにも無い。意を決して皆で車まで戻る。

 実は、最初に止めた駐車場はここから少し離れた所にある。そこで、指を怪我した自動車の持ち主が、怪我をした後にここのすぐ下の駐車場に車を移動して有ったのである。それが無ければずぶ濡れになる所だったのだ。それでなくとも結構濡れてしまったのだから。

 時間は3時を少し廻った所だっただろうか。別口の仲間は明日も登る予定であったのだが、結局我々と一緒に温泉に行く事にして、皆で温泉に行く。

 途中、道路は半ば白くなっていて、結構スリッピーだったらしい。相変わらず雨も強く降っていた。

 温泉の駐車場はほぼ満杯である。普段はこの時間はこんなものなのだろうか。いつも遅い時間にしか来ない物だから。

 相変わらず雨が強く降っていたので、温泉施設の入口まで送ってもらい、小生の持っていた折り畳み傘を運転手に渡し、小生ともう一人が先に温泉に入る。なんか運転手の仲間には申し分けなかったが。

 別口の仲間は次の日も登る予定だったから、テントは建て放しだったので、そこで別れ、我々3人は帰途に付く。

 こんなに明るい内の帰途は珍しいとかなんとか言いながら、途中まで下道を行くことにして、広域農道を暫く走る。

 その広域農道を途中でそれ、甲府の町に入ると渋滞が始まる。色々な事をしゃべりながら走っていたら、石和の手前の20号に出る交差点の右折を見逃してしまい、石和の町の中に入ってしまう。

 その交差点を過ぎると道は片側1車線になるので、渋滞が激しくなってしまう。石和の町で20号に出たのだが、既に食べ物屋は殆ど無く、仕方なく寄った焼肉屋は高かったので、すぐに出て、20号を甲府方面に逆走する。

 これがまた甲府に入る方向だから渋滞している。またしても仕方なく最初に見つけた食べ物屋に入る。

 ここも安くはない。失敗したと思ったが、既におなかも空いている事だしということで、そこに落ち着く。

 メニューの定食が1000円以上と言う中で、食堂の壁に張ってあった紙に、「奉仕品ひれかつうどん800円」とある。これだと言う事で、3人でこれを頼む。

 程なく来た物を見ると、ご飯が有ってうどんが付いている。漬け物に小鉢まで付いている。お影で久し振りに心身共に満腹感を味わってしまった。

 そのまま20号を相模湖インターまで走り、中央道から、首都高で出発点に戻る。到着は11時頃だった。

 帰りは、行きの様に高速でのちょっとした良い事は起こらなかった。少しだけ残念ではある。まぁ、起こらなくても当然ではあるのだが。


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作成年月日 平成15年 6月 9日
作 成 者 本庄 章