とあるボルダーその8

2002年12月 7日記
 土日でジムの仲間ととあるボルダーから小川山に行って来た。これはそのとあるボルダー編である。

 土曜日の夜10時にジムの最寄り駅である西船橋に集合し、出発する。因みに相棒はお休みなので他にジムの仲間3人の4人である。

 今回は仲間の車に便乗し、テントを持って行く役だったので、荷物が結構多くなり、ザックが二つになってしまったため、また、1台の車に4人乗車になったため、何時ものボルダーマットは持って行かなかった。

 首都高から中央道を順調に進む。途中サービスエリアに寄り、例によって、仲間がハッキーサックをやり出す。暗いから、建物に寄ってやっていたら、蹴る玉が建物の屋根の上に乗ってしまう。まぁ、クライマーだから、どっからか回収しては来たが。

 このハッキーサックだが、お手玉の玉を足で操って、独りで遊んだり、蹴鞠の様に皆と地面に落とさないように蹴り合って遊んだりする遊びである。お手玉の玉みたいに殆ど弾まないから、足で蹴り上げなければならず、といって、そこまでグズグズで、全く弾まないと言う訳ではないから、足の甲に止めたりするのも難しいのである。

 須玉インターを降りて、近くのコンビニで明日の食料の買い出しを済ませ、何時もの天場に1時頃に到着する。そして、何時ものささやかな宴会の後2時頃に就寝する。因みに、来る途中の電光掲示の温度計によると零度であったので、そこよりまた大分登って来るここは、多分氷点下だったのであろう。

 夜中に背中が寒く何回か目を覚ます。羽毛のシュラフに羽毛服を着ているのに、歳はとりたくはないものだ。

 途中夜中に一回トイレに立った後、目を覚ますと既に9時である。しかし、仲間はまだ起きない。テントを一人抜け出し、現地集合の別の仲間がテントを張っているであろう場所まで、といっても高々歩いて1分か2分の所なのだが、行って見る。

 車が置いて有るだろう場所に車が見えない。テントを張るであろう場所も最近テントを張った形跡が見られない。どうしたのだろうか。途中の林道が一部舗装されていたから、その舗装された林道から分岐した先の、何時もぬかるんでいて走り難い登りのカーブの場所が若しかして舗装されて、走り易くなったということで、その先の天場にでも行ったのだろうか。

 テントに戻ると仲間も起きだしていたので、皆でテントの中で朝食の用意をする。

 朝食は各自がそれぞれに自分のコンロで炊事をする。と言っても皆インスタントの麺類なので、湯を湧かすだけなのだが。

 そこに本日落ち合う予定の仲間の車がやって来る。人数は2名。一人は女性である。もう一台自動車がやって来る。今来た仲間がここで落ち合う事になっていた人の車の様だ。何だか彼の雑誌の記事のための写真を取る事が目的らしい。

 テントを畳んで、我々も用意をする。雑誌の仲間は、取材のカメラマンと、今日写真を撮ると言うすごく高い岩を見上げている。

 先ずはアップにと、近くの小クジラ岩と言われる岩に行き、皆アップを始める。小生もストレッチをして靴を履いて見る。しかし、昨夜の寒さで風邪をひいてしまったのか少し頭痛がする。なんとなく体調が優れない。

 一応、小クジラ岩の左の方の、穴を使ってスタートして左の方のリップ下にある大きな穴を使ってリップ上に出る、そんなに難しくない所を登って見る。次はその大きな穴を直接取りに行く、今迄スタートの出来なかった、課題をやって見る。

 他の人は、穴の下の殆ど持てるようなホールドの無い所のスラブの穴スタンスに直接立ち込み大穴を取るのだが、小生にはそれが出来ない。仕方が無いから、少し右に寄って、右手を少し上のアンダーフレークというかカチというか、殆どかからない所を使って、スラブに立ち上がり、他の人が最初に立ち込む穴スタンスに足を送って、大穴を取るのだが、そのスラブに立つのがなかなか出来ない。少し右側から右手のアンダーホールドで右足に立ち込むから、どうしても身体が右に開いてしまうのである。

 何回かやってやっと立てるようになり、大穴を取る。しかし、この大穴がスロッピーで捕らえ所が無く決してガバではない。右のホールドと一緒に使えば使えるのだが、この穴だけでは悪い。何とか堪えて足を探るが、良い足が見つからない。当然落ちる。

 もう一人仲間が加わる。二人で同じような事を繰り返す。二人ともなかなか進展しない。どころか、段々立つ事すら出来なくなって来る。少し多目に休んでやって見たら立てて、左足を穴スタンスに置く事は出来たが、その後が動けない。もう駄目だ。小生は諦める。

 もう一人の仲間はその右の方の被った所の懸案であった初段の課題を登ったらしい。

 最初はチョークでカメラが汚れるから登らないと言っていた仲間の写真を取りに来た人達も、結局はあちこちと登っていた。

 そろそろ本番の出会い岩と呼ばれる、高さは多分7〜8mある、成書にはトップロープ課題の5.11dとして紹介されている課題を登ろうと、そちらに移動する。因みにその出会い岩は昨夜の天場のすぐ脇である。

 移動の途中、この小クジラ岩の林道を挟んだ向い側の林の中に二段と三段の課題が有り、その課題を触りに行く仲間がいたので付いて行く。

 その仲間に少し遅れてしまったので、その岩が何処だかわからず、最初に見える立派な岩の周りを探していたら、別の仲間がその岩の下の方に行くので、戻ってついて行こうとしたら、ここに来るといっていた仲間がやって来た。どうやら小生が一番最初にここに来たようだ。

 その二段の課題は、せいぜい2.5m位の高さの岩で、途中に斜め三日月状の狭いバンドが走っており、見た目にはあまりぱっとしない課題である。後から来たカメラマンにモデルの仲間がどれくらいのグレードに見えるかと聞くと、カメラマンは、2級、せいぜい1級位かと答える、そんな課題である。そこを三段ボルダラーが一生懸命やって、出来ないといっている。

 両手バンドのリップでスタートし、バンドの頭のスローパーを右手でとって、左手をリップに出せばあとはマントルと言う課題の様なのだが、その左手がどうしても出ないらしい。そして、そのムーブが核心らしい。因みに、最近ロッキーに来た背の高い外人さんなら、もしかすると地ジャンでリップが取れてしまうのではないかと言われる位に、見た目は地味な二段である。

 その右ののっぺりした壁が三段の課題らしい。リップのすぐ下にほぼ水平にリスが走っている壁の途中にある斜めアンダーの僅かなカチでスタートして、上の水平リスの右の方をとるらしいのだが、そこは誰も触らなかった。

 そこから、一人の仲間は黄金岩のあるエリアに行くといって、分かれて行く。黄金岩迄はここから結構離れているから歩いて行くと結構な時間がかかると思うのだが。残り全員は出会い岩に向かう。

 岩の下に生えている灌木をカメラマンが、持参した脚立で寝かせ、アングルを整える。もう一人のカメラマンは別の方向からカメラを構える。

 モデルになる人が着ているシャツが岩の色と非常に似ている暗い色をしている。それをカメラマンが、その色はまずいからもっと明るい色はないかと注文する。車に戻って、空色のシャツを探し出して来るが、連れの女性の物らしく、小さすぎてツンツルテンである。

 カメラマンが赤いTシャツを持って来る。モデルの人は、赤いTシャツを着る事に少し不満気である。でも、一応そのTシャツを長袖のシャツの上に着込み用意をする。

 空を雲が覆っておりなかなか日が射さない。しばし雲の切れるのを待つ。といっても、寒い。モデルも大変である。

 やっと日が射し始め登り出す。それを二人のカメラマンがカメラに納める。途中まで登った所で、カメラマンがモデルに、そこのホールドで少し待てるかと聞き、急いで岩の上に移動する。その間、モデルは既に多分5m位登った所で、レストしている。ほぼ垂直の壁だから、いくらホールドはガバだと言っていても、小生には出来ない芸当である。多分パンプして落ちるだろう。

 今度は、上からのアングルだと下の荷物が画面に入るから、荷物を退かしてくれと言う。ギャラリー皆で急いで荷物を片付ける。

 空が灰色だから、碧い空の写真が欲しいと言う。モデルは、今度は、上半身裸になる。しかし、なかなか雲の切れ目がやって来ない。雲の切れ目は見えているのだが、その切れ目の少しこっち側で、どうやら雲が湧いているようで、後ろには碧い空が見えているのに、なかなかその碧い空が岩の上までやって来ない。当然モデルは寒さに震えている。

 やっと、日が射しだして、再度登り出し始める。しかし、また直に日差しが消える。なかなか巧くいかない物だ。

 仲間の一人が、ここに来るたびに登りたいと思っていた課題だと言う事で、同じ所を登り出す。

 途中、核心の右手を取りに行く所で、左手もあまり良くは無いらしく、一度飛び降りる。その後、こんなのボルダーじゃないよと言っていた、カメラマンも加わって、マットを敷いて、3人で登り出す。

 やっぱり核心の所が判り辛いようで、なかなか先に行けない。先に登った仲間が、その所だけをまた登って見せる。

 それを真似して、仲間が上に抜ける。カメラマンの二人も、核心を抜けた後、それぞれ、最後の岩の上に抜ける所でちょっとためらったり、時間がかかったりしたが、結局2人とも上に抜ける。カメラマンの一人は岩の上で小躍りしていたから相当に嬉しかったらしい。

 因みに、この課題は、2級位とのことだが、相当に余裕が無いととってもチャレンジ出来る課題ではない。小生などは、ムーブ的にはこなしたとしても、途中のガバで完全にパンプしてしまって、レストしている間に落ちてしまう可能性もあるので、とってもチャレンジ出来る課題ではない。

 トップロープリハーサルと言う手も有るには有るが、やっぱり、一度でもトップロープを伸ばしてしまうと、その事実は決して消えることはないし、後にそれを悔やんだ時には既に取り返しは付かないから、出来ない物は出来ないと諦めた方がすっきりする気はする。もっとも、核心の部分での飛び降りは可能らしいから、その辺まではやって見てもよいかもしないが。まぁ、初段を何本か登れた暁の話しとしよう。

 黄金岩のあるエリアに行った仲間を除いて、皆で、トイレのある駐車場に移動する。但し、このトイレは既にシャッターで入口が塞がれ、使えない状態ではあったのだが。

 ここで、どうしてもやりたい課題があると言う女性が独りで別の場所に行き、残りの6人で二の谷というエリアに行く。そこで、やはり5〜6mの高さのある、高い岩の課題を登る写真を撮る。因みに今回のモデルは別の仲間である。

 この課題は以前、最初にこのエリアに来た頃に小生も登ったそんなに難しくはない課題である。とは言っても、今回のモデルにとっては初見であるから、結構大変だろうと思う。

 続いて、カメラマンの出会い岩の上で小躍りしていた人がその課題の左側の壁を登り出す。ギャラリーからそっちじゃない右だとか言われながらも、結局は上に抜ける。よっぽどハイボールが気に入ったらしい。あのスリルはたまらないものなぁー。一度味わってしまうと止められない気持ちもわかる気はする。

 カメラマンとモデルは日本一美しい初段の課題らしい阿修羅と言う課題のあるエリアに行くと言う。我々千葉組3人は、美しい日という、被った課題のある岩に行くことにする。

 この課題、何回か前に別の仲間と二人で来て、小生はその右の岩の左のカンテとその岩の向かいの小さな岩を磨いていた場所である。美しい日は、普通の人にはなかなか登れない難し目の初段と言う事だから、小生には触る事すら出来ない課題である。

 二人はその課題を触っているので、小生は、その右の壁の真ん中を登った後に、そこから駐車場側の緩い尾根上にある小さな苔だらけのスラブを磨いて、最初の立ち込みのみの一手課題を登った後、その尾根を越えた隣の谷の少し上の方にあるクラックを持った岩を見付け、そこに行ってみる。

 高さは2.5m位だろうか。高くはない。下地も木の切り株が有ったりはするが、悪くはない。しかし、上は厚い苔に覆われ、リップの状態はわからない。岩は斜面にあるから、岩から離れても岩の上が見えないのである。

 先ずはそのクラック沿いの斜めのガバホールドを磨く。ガバに見えたが、意外と浅い。第二関節まではかからない。でも、十分に持てるホールドではある。そのホールドの奥の少し上にもう一つ斜めのホールドがある。しかし、こちらの方がもう少し浅い。少し位置は低いが、先のホールドを使った方が良さそうだ。

 そのホールドを左手で使って離陸して、まだ磨いていない、リップ下のホールドを探る。しかし、どうも良さそうなホールドが見つからない。結局、クラックの終わる辺りのガチャガチャした辺りを使ってからマントルをする事にして、岩の上に廻り込む。

 岩の上に廻って見ると、そのリップから更に1m位寝た壁が伸びており、そこには苔が一面に付き、その上に落ち葉が敷き詰められている。フラットソールを履いたまま来ているから、なんか滑りそうでいやな感じである。何とかその斜面を降りて、抜けぐちと思しきリップの苔を剥がす。

 しかし、ホールドは出て来ない。スタンスはクラックの斜めのテラス状になった所が使えるから、ガバはなくとも良いだろうと、やっと見付けた一寸した窪みを一生懸命泥を払い磨く。

 降りて来て見上げるとリップ直下のホールドを磨くのを忘れていることに気付き、再度岩の上に戻る。しかし、下に見える荷物の位置がおかしい。寝ているとは言っても傾斜はあるし、泥もいっぱい残っていて、滑りそうでいやだったので、リップ際迄は降りなかったので、リップの所とか、その下の岩の面を確認しなかったので、大分右よりの所の苔を剥がしていたようだ。

 再度位置を確認し、苔を剥がし始める。やっぱりホールドは出て来ない。少し広く剥がして行くと、クラックのリスの延長が岩の上に縦方向に走っているのを発見する。これしかないか。そのリスの上部の泥を掻き出し、縁が丸くなっている一本の細い溝を磨き出す。泥を少し丹念に払って、リップ際まで行き、リップ直下のガチャガチャした所を観察する。そして、ポケット状のホールドを2つか3つ見付け、それを磨く。

 一応ホールドは見つかったので、登って見る。左手クラックの所の斜めのホールドでスタートし、足をクラックの斜めの狭い棚状の所に持って行って右手をリップ直下のポケットに伸ばす。身体を上げて、リップの上の縦に走る溝を左手で持って、少し身体を右に振って右足をリップ上に上げる。まぁ、そんな感じで登る。

 リップの上は苔のマットは剥がした物の泥は払いきれないので、まだ綺麗にはなってはいない。従ってリップの上の溝も泥が残っている。まだ十分に滑る。従ってそう簡単ではない。多分、雨で泥が洗われればもっと簡単になるだろうから、グレード的には7〜8級という所だろうか。もしかすると、9級と言われそうな気もする。まぁ、どうでも良いや。どうせ再登者なんかいないのだから。

 その左の壁は乾いたカサカサの苔だらけでは有るが、デコボコしていて浅いポケットがいっぱい有りそうな所である。出来ればその壁も登りたい。

 ホールドになりそうな所を磨いて見る。丁度、壁の少し左後ろに木の切り株が有るので、その上に乗ってリップ付近を偵察して見る。ここもリップは厚い苔の絨毯に覆われているから、結構な掃除が必要そうだ。それに、こっちのリップの上の壁はさっきの所より長いから余計に大変そうだ。

 既に薄暗くなり始めている。そろそろ時間だろうか。なんとなく仲間が呼んでいるような気がしたので、荷物、と言っても殆ど無いが、を纏めて仲間の基に戻る。やっぱり仲間も帰り支度をしていた。

 駐車場に戻ると、独りで登っていた女性だけが戻っており、阿修羅に行った3人はまだ戻っていなかった。我々は黄金岩に行った仲間を拾わなければならないので、一足先に小川山に向けて今夜の買い出し先であるスーパー目指して出発する。

 もう暗くなってしまっているし、若しやと言う事で、今朝の天場により、黄金岩のある場所に向かう。途中、こんなに暗くなってしまって、たった独りで林道の脇で自動車を待っているのかなぁ、等と話しながら行くと、道の轍が完全に凍っている所が現れる。やっぱり相当に寒いようだ。

 この辺だとスピードを落としゆっくり走り始めると、いきなり車の前に人が現れる。そんな感じで仲間が自動車に近付いて来る。やっぱり相当待ったようだ。既に真っ暗である。

 合流し、車の中で話しをすると、やっぱりハッキーをやったらしいが、独りでさびしいからすぐに止めたらしい。やっぱりあれも、何人かでやる方が面白いらしい。当然だろうけど。

 途中、夜や夜中に何遍も通った峠道で鹿が現れる。車の後席から見ると、大きな角が両手を広げているように見えたので、一瞬びっくりしたが、ここで鹿に有ったのは初めてである。そう言えば、最近はボルダーエリア付近でも鹿を良く見かけるようになった。何かったのだろうか。此処でも鹿が増えすぎているのだろうか。

 スーパーで手を洗い、後続の仲間を待って今夜の鍋の材料の買い出しをし、小川山に向かう。

 途中の電光掲示の温度計は5℃を示している。今夜は大分暖かそうだ。多分ゆっくり眠れるだろう。


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作成年月日 平成14年12月 7日
作 成 者 本庄 章