とあるボルダーその3

2002年 5月 8日記
 連休の前半の日、月で相棒とジムの仲間とで、とあるボルダーエリアに行った。土曜日に御岳で少し遊んでの続きである。

 土曜日の夜7時頃何時も車を止める駐車場に到着する。所が、山の中の駐車場だから電気など無いはずなのに、電気が幾つも点いていて明るい。なんだろうと近付くと運動会用のテントが有って、そこの人に車を止められる。なんかイベントをやっているらしい。イベントにきたのかと聞くから、先に行くというと、一般車だから通してくれと仲間に伝えて通してくれる。普通の林道のはずだから止められるのもおかしい訳だが、そんな山の中でイベントをやると言うのもなんか変な感じがする。

 何時もの天場に行くと前夜から来ているはずのジムの仲間がいない。どうしたんだろうか。もしかするとあのイベントで何時もの駐車場が使えなくて別のエリアに行ったのかと考えたりして、少し別の道を通って戻って見るが、仲間の自動車は見当たらない。恐らくもっと奥の行き止まりの所でテントを張っているのだろうとは思ったが、そこに行く手前の林道の一部がぬかるんでおり、いつもひやひやしながら通る所を通らなければならないので、仲間が居る事を信じて、今夜は何時も仲間がテントを張っている所にテントを張る事にする。

 途中山の中に突然現れる畑の所で、鹿が二匹我々の自動車の前を横切って行く。かわいらしい多分子鹿であろう。帰りに同じ所を通ったらやっぱり自動車の前を横切った。

 8時にはもう寝袋に入ってしまう。今回はラジオも蝋燭も忘れてしまったようだ。なにもすることがないから、大分早いが寝る事にする。

 案の定6時には起き出す。昨夜は少し寒かった様だが、朝はそんなに寒くはない。

 なんだか遠くから微かにドンドコドンドコという低い音が聞こえて来る。なんの音だろうかと少し気になったが、沢の音に比べれば遥かに小さな音だからなんかの自然の音だろうということにする。

 適当に食事をして、コーヒーを飲んで、8時頃に支度を始め、9時頃に多分仲間がいるであろう場所まで移動する。

 途中、我々のテントの近くの沢のそばにテントが一張り建っていた。

 予想通りというか、予想以上に道がぬかるんでいる。木などが敷かれてはいたが、相当に深い泥濘になってしまっているようだ。恐る恐る突っ込むが、案の定途中でエンストをしてしまう。やってしまったかと心配しつつエンジンを駆けてクラッチを放すと車は動きだす。乗用車でもさすがはノンスリ入りの4駆車だと、改めて感心する。

 一番奥まで進むと自動車がいっぱいいる。その中に仲間の車もある。いるとは思っていたが、安心する。一台分スペースが空いていたのでそこに車を止め、仲間のテントまで行くと、仲間の一人が食事を用意していた。他の仲間はどっかに散歩に出ているようだった。

 車で少し待っていると、仲間の車が動き出したので、後を付いて行き、何時もの駐車場に行く。すると、ドンドコドンドコさっき微かに聞こえたと同じ音がする。ここからのリズムマシンのベース音だったようだ。それにしてもすごい音だ。

 使えないかと心配した駐車場は一般客用に空けて有ったのか、車はそんなに多くはない。その代わり、下の広場にはいっぱい車が停まっている。テントも沢山建っている。キャンプをしながらの音楽関係の催しのようだ。

 降りて支度を始めると、仲間が、昨日から明日まで三日間このイベントをやるらしいと教えてくれる。昨日などは登っている間中ドンドコドンドコ頭を揺さぶられるような大音響が響いていたらしい。チュウニングをやっていたのか、今よりももっとすごい音だったと言う。よくこんな大音圧の中で平気でいられるものだ。これは大変な事だ。

 その駐車場から少し下った道端の駐車場に車を置き、ボルダーエリアに向かう。今回のエリアは山形県エリアと言う所らしい。今回初めての所である。日本一美しい初段と日本で二番目に美しい初段がある所らしい。

 5分も登らない所にボルダーが現れる。そこから上には幾つものボルダーが見える。この時期、下草が全部無くなるので、ボルダーが良く見える。これがもう少し季節が進むと下草でボルダーが見えなくなってしまうから、今迄気がつかなかったというか、今迄開拓をしなかったエリアらしい。今回はこのエリアの開拓が目的のようだ。

 そのボルダーの前に荷物を置き、付近のボルダーを見に行く。確かに幾つも適当な大きさのボルダーが存在するようだ。

 荷物の所まで戻って、その岩の林道面のスラブでアップする事にする。一番左が一番やさしいらしい。まずはそれでアップする。続いて右側のくの字状に登る課題を登って見る。最初が出難い。教わったのとは少し違うスタンスとムーブでスタートする。そして、途中の膨らみにマントル気味に乗り込む所で巧くゆかず途中までクライムダウンして飛びお降りる。やっぱりスラブは恐い。何しろホールドに信頼が置けないものが多い。おまけにスタンスも心許ないのが多いし。

 その課題の右のカンテを廻り込んだ所に一寸した壁がある。カチを使ってスタートしてリップを取れば終わる課題である。最初はスタートのホールドがちょっと持てないかと思ったが、仲間のもう少し上が効くとのアドバイスを受けて少し背伸び気味にその教わった場所を持ったら身体が上がった。あとは伸びればリップが取れる。上に抜ける。

 仲間が昨日登ったと言う日本一美しい初段の存在する岩を見学する。林道側の薄被りの面の真ん中にシンクラックが一本走っている。扇型に近い奇麗な形をした岩だ。その左の面がやはり薄被りで、一見何にも無いのっぺりした壁なのだが、良く見ると、ポケットとかフレークが張り付いた感じの所が僅かにある。それを繋いで登るのが初段らしい。確かに奇麗な課題だ。

 その岩の上には2本のハンドクラックが走る岩がある。その岩の右側の面はポケットがあちこちにあるスラブ状の壁になっている。そこを磨けば10級か9級の課題が出来るかもしれないと、ブラシで磨き始める。

 丁度顔の前当りにポケットがあるから、先ずは、それに良さそうな適当なスタンスを磨き出す。下地が少し傾斜しているから、出だしがなんとなくいやらしい。もう少し適当なスタンスを探す。適当な小さなポケットが2つほど見つかる。

 一歩岩に立てば、あとは適当な少し大きなポケットが適当に散らばっている。磨きながら上に登る。

 この大きなポケットだが、意外とリップが無いと言うか、浅いと言うか、持ち難かったりする。或はサイドにしっかり持てたりするが、ガバガバガバとはいかない。左手甘いポケットの上の縁をピンチで持って足を上げて右のサイドに効くポケットを持つ。そのポケットで次の左足を上げる。すると一寸した外傾した棚が持てると下からは見えたのだが、その外傾したバンドと言うか棚と言うかが悪い。僅かなリスがあるから持てる事は持てるが、想像していたより悪い。

 その棚からはリップまでは一手である。足を上げてリップを見るとノペッとしていて、ホールドになりそうな物はない。わぁ、最後が悪い。10級や9級にはならないかも。

 膝をガクガク言わせながら、リップの苔を落とす。しかし良さそうなホールドは出て来ない。だめだこりゃ。少しクライムダウンするが、少し高いスタンスに乗り込んだ所がホールドが悪いから降りられない。仕方が無いからそこから傾斜の上の方の地面目掛けて斜めに飛び降りる。

 着地時に、地面が少し斜めだから足首に少し圧力を感じる。別にたいしたことはないが、ちょっと心配する。なにしろ、歳を取ると極端に足首が硬くなるようだから。静的には曲がるのだが、動的な曲りに付いて行けない感じになるのだ。

 上に廻ってリップを磨いて見る。しかし、本当のマントルをする辺りは恐くて近付けないからあまり磨けない。仕方が無いからまた少し下から足を探って登って見る。

 少し斜めにトラバースしたい時のスタンスが登りながらだと巧く磨けない。その辺に足があればと思うのだが、傾斜はそんなに無いから、スメアが出来ればと思うのだが、苔が付いているから足が置けない。仕方が無いからリップを精一杯手を伸ばして磨いて見る。すると左の方にポケットを発見する。よし、これでマントルできる。

 しかし、左の方のポケットで足は相変わらず左に出せないからマントルが出来ない。ポケットを持ち変えたり、リップのもっと奥を探ったり何とか抜けようともがくが、段々膝が笑い出して来る。仕方が無い。再び飛び降りる。今回はマットを敷いたからマットに降りる。

 良く見ると、リップのもっと左の方に大きなポケットがある。苔が有っても十分に乗れるポケットである。あれを使おう。

 またまた登りだす。リップの一本指のポケットからずっと足を左に開いて大きなポケットに乗ってマントルをする。そして、上に登って降りるための道を作る。ついでにまっすぐ登るラインのリップの分厚い苔を剥がす。すると、リップの少し奥にカチが2ヶ所出現する。これを使えば足を左に大きく開かなくても登れそうだ。

 仲間の一人がカンテ付近のリップを磨き始める。その下に大きなポケットが有って、それをサイドに使えばリップが取れるかも知れない。結構面白そうな課題が出来るかもしれない。果たして、リップにおあつらえ向きのポケットが二つ出現する。

 そこを登って見ないかと言ってもらったので、登って見る。右手で大きなポケットガバを持って、サイドに引きながら足を上げて左手をリップまで伸ばす。少し遠いから右手を引付けて一生懸命左手を伸ばす。リップの一寸した皺を中継して、やっとポケットを捕らえる。それを取ってしまえばあとは簡単なマントルである。2手か3手だが結構面白い。

 日本一美しい初段の岩に行って見る。

 下から仲間の知り会いらしい人達の一団が登って来る。この上の岩塔を登る予定らしい。さっき駐車場で支度をしていた人達のようだ。で、少しお話しをしている。その時、そのうちの一人が去年やはりこのボルダーの前を通った時に目を着けていたラインが有るというと、仲間がそれは昨日登ったと言う。あれが登れたのかとかなんとか話しをしていると、どうもその人の言うラインと仲間の登ったラインは違うらしい事が解る。それで実際に壁の前に行って話すとやはり、その人のラインは右の方の途中にポケットがポコンとあるラインであった。出来れば8はあるのではと睨んでいたとか。

 その人達は上に登って行く。もう独り山梨の人がやって来る。御岳や小川山で良く会う人だ。山梨だからここは何回か来ているのかと思ったら初めてだったらしい。下の方の岩で大分登って来たらしい。

 その人と、仲間がさっきのポケットの課題の下に横たわる太い倒木を少し動かす。でないと、ポケットから次のポケットに飛んだ時にもろに倒木に落ちてしまうからだ。

 山梨の人と仲間二人はその岩のクラックの初段やカンテの課題等をやるらしい。小生は荷物を置いた場所に戻る。

 その岩の林道を向いて左隣にも少し大きな岩がある。その岩のこっち側のカンテとダイクを使って登る課題が3級位らしい。行って触って見る。

 右手のカンテはそこそこ持てそうだ。左手のダイクがスローパーチックで少し持ち難い。少しホールドを探るとダイクの最初の所よりも少し上が持ち易い事がわかる。足を少し高めのカンテに求めて離陸する。しかし次の手が出ない。降りてカンテのホールドを試す。

 カンテも最初の所から少し上を持てばそのまま次のリップが取れそうだ。再び離陸する。右手で次のリップが取れる。足を上げて、左手を出そうとするが、バランスが悪く左手が出ない。右足をもう少し上げて、左足をダイクにヒールフックすると身体が安定し左手が出る。そこはもうガバだからあとは心配はない。

 リップに立ったが、その上にもまだ岩は続いている。しかし、その上はなんか登に登るのはいやらしい。岩も磨かれていないようだ。荷物を置いた所にいた仲間にその後はどうするか聞くと、そこまで登らずに、そのまま壁をトラバースして降りたと言う。リップに立たなくても良かったようだ。そのまま壁をトラバースしながら地面に降りる。

 荷物の所まで戻って、食事をする。といっても、実は昼食用のパンを買うのを忘れてしまい、昼食は茹卵一つしか無かったのだが。

 さっきやって出来なかったスラブの課題に再度挑戦する。さっきは途中の膨らみにマントルできなかったのだが、下から見て、スタンスを発見していたので、今回をそのスタンスに乗って見る。すると、苦労せずにふくらみの上に立つ事が出来た。後は右斜め上に行って、リップのガバポケットを繋いで上に抜ける。

 昨日も御岳で遊んでしまったので、今日はもう既に疲れているし、明日もあるからと、日本一美しい初段の岩に行って、仲間の登りを見学する。

 仲間は左のカンテの課題に挑戦している。丁度逆三角形の面を持つカンテである。被ってはいないが、両方のカンテが直角より大きく、持つには厳しいカンテを両手両足で挟んで上のリップを取りに行くと言う課題である。先ず出だしが核心の様だ。スタンスもホールドも無いという感じである。それで出て甘いリップを取ってから奥のホールドを取ってマントルすれば終わりらしいが、そのマントルも悪いようだ。

 別の仲間が苔苔の岩を磨いて、ダイクを使う課題に挑戦している。ダイクからリップが遠く、大分苦労している。結局その日は成功はしなかった。

 ジムの仲間をJRの駅まで迎えに行く約束らしいので、少し早めに切り上げ、スーパーまで買い出しに行く。お弁当が半額だったので、結局お弁当を買ってしまった。

 今晩はまた、あの泥濘を越えて仲間に合流するのも大変なので、昨晩と同じ場所に戻って二人だけでテントを張る。明るい内に食事も済んでしまい、することがないから6時過ぎには寝てしまった。

 11時頃に起きると、相棒も起きたので、コーヒーを沸かし、お菓子を食べて、少しお話をする。イベント会場から僅かにドンドコ音が聞こえて来る。まだやっているようだ。

 翌日5時頃起きると、まだドンドコ音が聞こえている。夜中中やっていたのだろうか。

 6時頃からゆっくりと支度をして、ラーメンを作って9時頃出発する。

 昨日と同じ駐車場で待合わせるが、まだ早いので、以前登った事のある岩を偵察に行く。葉っぱが無いからか、以前と少し印象が違うようだ。なんか回りがもう少し広い気がしていたが。

 自動車に戻ってもまだ少し早いので、イベント会場の駐車場まで戻って待つ事にする。

 相変わらずドンドコやっている。その音に合わせて何人かが踊っている。相棒が看板も垂れ幕も無いし、なんとなく宗教色を感じると言う。そう言われればなんとなくそんな気もする。

 仲間が来たので昨日の駐車場に移動する。

 新たな仲間を加えて、昨日とは違う山梨エリアという所に行く。

 丁度山形の岩を縦半分に切ったような面を持つ真ん中にクラックの入った、全体に斜めにリスの走る岩がある。先ずは、この岩を磨いて登ろうと言う訳である。

 全面苔だらけだから、ホールドやスタンスになりそうな所、或はこの辺にスタンスが欲しいと思われる所をブラシで磨く。一通り磨いて、それぞれが磨いた所を登る。

 クラックの左側、クラック、その右側、左側のスラブ面と、おおざっぱに4つの課題が出来上がる。

 左側の面のスラブはまだ十分に磨けていないから、易しいのだが、恐い。そこを仲間の一人がノーハンドで登る。でも、他の人は出来ないからやらない。

 クラックは、レイバックやフェース登りで登る人、忠実にクラックをたどる人、それぞれである。

 小生は、右側の一手課題を登る。出だしが悪いが、出てしまえばリップを取ってマントルでお終いである。4級くらいかと思ったが、5級位らしい。

 真ん中のクラックがちょっとくねくねする所があるので、細波岩と命名される。多分そうすると真ん中のクラックは細波クラックということか。

 一通り登ったので皆で上の方に岩の偵察に行く。綺麗な壁を持つ岩がある。ポケットもある。しかし、その岩の上は結構厚い苔と言うか土が被っている。壁を磨き始めた仲間が、上の状態を確認して、諦める。

 その外にも結構大きな岩がある。沢にはゼンマイも出ている。岩を磨けば幾つか課題は出来そうな場所だ。

 昨日のエリアに移動する。

 昨日仲間が挑戦していたダイクが走る岩に行く。

 この岩はそんなに高くはないが、真ん中辺にクラックが走り、その左側の壁の真ん中に斜めにダイクが走っている。ダイクから上はホールドらしい物はない。仲間が挑戦していたのはそのダイクの真ん中辺を直上する課題である。

 なかなか登れないからと、別の仲間が先に登ってしまう。それではと、続いて小生も挑戦する。2回目か3回目にやっとリーチでリップを取って登る。最初に挑戦していた仲間も登る。

 クラックの右の壁も磨いて登る。その右も磨く。一番左も磨く。ここにも4本か5本の課題が出来る。さっきの岩に続いて、この岩も一応全課題を登る。難しくないからだが。

 上では昨日の甲府の仲間が昨日の課題に打ち込んである。別の、仲間と一緒の天場にいた人達はその上のクラックの課題をやっているようだ。なんだかんだ、道から見えるからか、結構人が来るようだ。

 昨日小生が磨いて登った壁のある岩に行く。クラックが2本ある岩である。

 その右のクラックの右側の壁が登れるらしい。因みに1級とか。仲間が二人登ったので、小生も真似をして見る。

 スタートは小生の苦手な浅い2本指ポケットである。離陸すら出来ない。2〜3回やって見る。やっと身体が上がった。しかし、身体が一瞬浮いた程度で、すぐに落ちる。すぐに諦める。

 そろそろ夕方である。3日も続けてやったから、休み休みやったとはいえ、慣れないブラシ掛け等もやったから、疲れている。引き上げる事にする。

 途中から合流した仲間を一緒に同乗させて、帰る。

 途中甲府市内のファミレスで食事をし、大月市内から渋滞していたので、大月から秋山村経由で相模湖に行くつもりが道を間違えて上野原に出てしまい、上野原が少し渋滞したが、無事相模湖から中央道に乗って11時過ぎには千葉まで帰り着く。

 今回も下の道でそれほどの渋滞に会うことも無く、順調に走ることが出来た。秋山を回る道が早かったかどうだかはわからないが。


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作成年月日 平成14年 5月 8日
作 成 者 本庄 章