とあるボルダーその2

2002年 4月18日記
 土日で、相棒とジムの仲間5人の7人で、とあるボルダーから小川山に行って来た。これはそのうちの、とあるボルダー編である。因みに、とあるボルダーとは例のボルダーである。

 土曜日の早朝、6時ちょっと前に家を出発、一路とあるボルダーエリアを目指す。土曜日の朝6時過ぎだから、渋滞はないが、そこそこ混んでいる。中央道に入ると、やっぱり石川のパーキングエリアと談合坂のサービスエリアは混雑と電光掲示板に表示されている。なるべく早く大月を抜けようと、レインボーブリッジのパーキングエリアに寄らなかった。その為、何処かでトイレに行きたかったので、混んでいないと電光掲示板に表示されていた藤野のパーキングに寄ると、狭い駐車スペースは既にいっぱいである。仕方が無いから、出口の道路脇に車を止めトイレを済ませる。

 その後は順調に韮崎のインターを降りる。この先はもう全く混む事は考えられない道だから快適に走る。

 前夜発の仲間が来るであろう駐車場に9時頃に到着する。これから山に登るらしい一団が支度をしている。しかし、仲間の車は見えない。何日か前に本日行くであろうボルダーエリアの地図を書いてもらっていたので、そのエリアを一足先に偵察に行く。確かに道路から2つ3つのボルダーが見える。地図を書いてくれた人のお師匠さんだと、「駐車場の先で行けばわかる」としか教えてくれないらしいが、その言葉が納得される。

 そのまま道を進むと昨年は通行止めであった林道が今回は通れるようになっている。その道は仲間がテントを張っているであろう場所への近道になっているので、その道に入り、その場所に行って見る。

 この周辺の林道は一般の乗用車がギリギリ走れるくらいの道が多いので、少し心配したが、殆ど走る車も無い様で、一ヶ所一寸した溝が横切っているだけで、なんの問題も無く彼らの3人のそれぞれの3つのテントが張られた場所に到着することができた。

 仲間の一人だけがその傍の大きな岩を眺めていた。近付いて挨拶をする。昨夜は遅かったようで他の仲間はまだ寝ているらしい。もう一グループの仲間はそこより少し奥に何時もテントを張っているので、そこまで独りで歩いて行くと、やはり、仲間の一人が食事の用意をしているようだった。

 我々も車の中で軽い朝食を済ませ、皆と一緒に先程の駐車場に移動する。仲間の一人がトイレに行くと、まだシーズンに入っていないからなのか、トイレが閉まっていたらしい。我々は先程、相棒はトイレに寄りたかったらしいのを知らずに通り過ぎてしまったのだが、それが正解だったようだ。

 駐車場に車を置き、少し歩いて道路に掛かる橋の袂から小沢に降り、すぐにその沢の斜面を登ってボルダーの所まで行く。下草は無いし整地されているという感じで歩き易いのだが、その掃除の時に集めたと思しき木の枝が一列に纏められ、それが数m置きに置かれている。その列に直角方向に歩く物だから、その木の枝の束を乗り越えなければならないのが一つの欠点である。

 その先には、その小沢沿いに幾つかのボルダーが点在している。仲間の一人が昨年遊んだ岩はそのうちの2つらしいのだが、それ以外の回りの岩も少し歩いて見て回る。しかし、というかやっぱりというか、何れも小さく、或は傾斜が無く、中にはSDで2〜3手という課題を無理に作れば作れそうなものもある事は有るが、ボルダリングの対象にはならない物が殆どであった。

 先ず、沢床から少し上がった所にある2つの内の一つの岩で遊ぶ事にする。ここには道路から見ると裏側のスラブチックな所に2つ、表の僅かに被った壁に斜めの浅いリスが2本ほぼ平行に走っている所に1つの課題が設定されている。

 沢とは反対側のこの岩の降り口となるカンテに触る。ガチガチしていて一見易しそうだが、その実上の方にホールドが乏しく方向も悪いので、意外と難しい。持ち難いリップのスローパーで登る。そのカンテの右側の方も登って見る。下はしっかりしたカチが有るのだが、上は左隣と同じくあまり良くない。

 アップはその辺にして、裏のスラブから始める。

 右はやさしい。大きなホールドで腰までのハングを越え、小さなホールドでスラブを2〜3歩登る課題である。その左は小さなホールドでそのハングを越えなければならない。従って難しい。数回のトライで、足を探してやっと越える。グレードはどれくらいなのだろうか。

 表に廻って、リスの所の課題を仲間が登る。1級位らしい。それを登った仲間はその壁の左隣の左上のリップに止るかどうかの挑戦を始める。仲間の一人がそのどう見ても我々には止りそうに見えないリップに止める。そこで、掃除を始め、本格的に挑戦が始まる。

 仲間の一人が、仲間のそのリップのスローパーホールドの持ち方を称して、モッキー持ちと言い出す。また、その登る姿をモッキーだと言い出す。このモッキー持ちだが、スローパーをパーミングではなく、カチ持ちというのか、指を立てて持つのである。掌のフリクションではなく、指の強い押し付けによるフリクションを使うのである。そういう一見止りそうに無い傾斜の強いスローパーを持って登る事をモッキーと言うらしい。この仲間、このモッキーにメチャメチャ強いのである。

 その後、3人でそこに挑戦し、一人が登ってその人曰く、初段だとか。どう見ても初段には見えないのだが。あとの二人がしつこく挑戦し、一人がリップのマントルまで行くのだが、なかなかそのマントルが出来ないでいた。その後何回トライしたかわからないが最後にはその仲間はそこを登る事が出来たようだ。

 その間、小生はもう一人の仲間と二人でその右隣の1級と言われる所に挑戦する。

 両手、あまり良くない斜めリスのところのホールドと右足でスタートし、左の比較的良いスタンスに左足を上げて、左上のリスの所のホールドを左手で取る。このホールドがスローパーチックで意外と悪い。そのまま伸び上がって右手でリップを取るのだが、このリップがまた悪い。仲間はそのリップに両手を添えて、奥のガバを取ってマントルしたのだが、我々にはそのリップでは両手添えは出来ない。

 何回も何回も足を探しながらリップに両手を添えようとしたが、右の方に右足のスタンスが無く、なかなか出来ない。そのうち、右の方にスタンスを求める事を諦め、右足をほぼ身体の真下の薄いフレーク状のスタンスに移し、左手で持っているホールドのあるリスの末端に左足を上げる事を考え出す。そうすれば身体が上がるかもしれないと。

 仲間はその足でリップから奥のガバを取って上に抜ける。その左足に乗れば最初に登った仲間のように上のガバに飛びつかなくてもそのガバが取れるらしい。結局その左足の乗り方を先に登った仲間に教わって、Tシャツ1枚になって、やっと小生も上に抜ける。

 再びグレードを聞いて見ると、2級になったらしい。左隣の課題が初段だから小生の登った課題は2級らしい。確かに、今の小生に1日で1級が登れる訳も無いから、2級と言われれば確かに2級かも知れない。ムーブも少し違うし。

 仲間がその課題の右の方の被ったカンテを登ろうとしている。例によってあるんだかないんだかわからないホールドと、これまたあるんだかないんだかわからないスタンスでスタートして、上の無茶苦茶方向の悪い薄いフレーク状のホールドを取ろうとしている。そこにいた他の仲間のグレードではないから誰も真似をしようとはしない。ただ見物するだけである。結局さすがのかの仲間も「むつかしいー、できない」を連発し諦めたようだ。

 その石の少し下に丸っこい岩がある。その沢側にスラビーな課題があるらしい。仲間が登るから小生も真似をして登って見る。丸っこい岩だから、出だしが腰くらいまで被っている。そこを乗っ越してポケット状のスタンスから、細い外傾した斜めのバンド状にスタンスを求め上に抜ける。手が無いから一歩踏み出すのが恐い。将にスラブである。

 仲間は、その穴の左横の穴の繋がる下地の下がった所から登ろうとしている。穴までは変なバランスで登るのだが、その上はホールドが全くないみたいだから難しいらしい。ブラシで掃除をして見てもホールドらしい所は見つからないらしい。小生は直接は確認していないが、結局は穴を足で使ってトラバースして小生も登った所に合流したらしい。小生も最初の1手を真似して見たが、最初に取るホールドが全く持てず、身体が上がって行かないのでその一回で止めてしまった。

 仲間が、小生が最初に登ったカンテのSDの限定課題を始める。先にも書いたが、ホールドが有りそうでない、結構難しい課題のようだ。もう一人の仲間は、その岩の道路側の岩を磨いて登っている。そっちはそんなに難しくは無いらしかったが、小生は触らなかった。

 ここは風が通るので寒い。段々限定課題などをやり始めたので、この沢の道路を挟んだ下流側に移動する。そこには1級の凹角の課題があるらしい。

 行くと、沢床に結構大きな岩があり、その岩の沢側の面が奇麗な被った凹角状になっている。その凹角には面の交わる部分にリスが1本走っており、そのリスはその上のリップ下で水平クラックとなってカンテ近くまで続いている。凹角からリップ下をトラバースしてカンテに出て上の壁に抜けると言う課題のようだ。

 仲間の一人が取付くために降りて行く。それを他の仲間が対岸の斜面で見物する。一人の仲間が近くで見たいと続いて下に降りる。

 スタートが沢床だから少しぬかる様な感じらしい。リスに手が入るのかと心配していたら、ホールドがあるらしい。細かいホールドを繋いで水平に走るクラックの縁のガバを取る所が核心らしいのだが、そこがなかなか取れないでいる。

 もう一人の仲間がしょうがないなぁとか何とか言いながら降りて行き、お手本を示す。それは、その少し遠いホールドを身体をひねってクロスで取りに行く、というものであった。それを見て仲間は、そんなクネクネムーブは出来ないようと言う。

 結局左手を、一つ上のホールドに飛ばしてからクロスで取りに行ったホールドを、飛ばさずに手順通りに行って、右手で飛びつくと言うムーブでやる事にしたらしい。

 見物のために降りて行った仲間がそのムーブでホールドを取り、トラバースして上に抜ける。このカンテから上に抜ける所のムーブがホールドが見えないので初見では難しいかもしれないが、結構面白いムーブのようだ。見ていても面白そうである。

 続いて最初の仲間も登る。ここはこの他にはあまり課題が無い様なので、過去に2回か3回程行った事のあるエリアに移動する事にする。そこは、このエリアに入って来るための道路が分岐する所の橋の下にあるエリアである。

 ここは道路の下の沢への斜面の途中にある大きな岩とその横にある少し小さめの岩がメインのエリアである。その大きめの岩には正面の壁に2つか3つの課題とその左側の壁に少し高い課題がある。その右の少し小さな岩には正面に一つとその裏側にも幾つか課題があるらしい。

 少し小さな岩の正面の課題は、悪いホールドでスタートしてクロス気味に右手で一段下がったリップをランジ気味に取りマントルでそのリップに乗り込んで行く初段の課題である。小生には離陸すら出来なかった課題である。

 仲間がそこを登る。その仲間はここを登ったと思っていたのだが、リップに地面から飛びついて登ったらしく、地面から静かに離陸しては登っていなかったらしい。小生も真似をして見る。

 左手アンダー気味の持ち難いフレークで、右手はカンテのアバタだったかで、右手をだしリップを取るのだが、なんと離陸が出来るではないか。続けて飛んで見ると、リップに触る事が出来る。これは若しかしてと、また飛んで見る。手がリップに掛かる。さっきよりもしっかりと掛かる。しかし、そのまま片手に体重をかけるのが恐くてそのまま飛び降りる。やっぱりまだ、飛んで片手でぶら下がるのは恐い。先週もジムで飛んで右手1本で止めた時、右肩が痛くなってしまったので、恐くて今回も無理に止める事はしなかった。

 前回、前々回と途中の一歩が踏み出せずに未だに登れていないスラブの課題を仲間が登ったので、小生も登って見る。

 最初はやはり、足が決まらず途中で飛び降りたが、二回目になんとか上まで抜ける。やっとできた。確か4級とのことだが、下に木が生えており、下地も良い訳ではないし、高さもあるから恐いのである。何しろスラブだから、高い所での一歩の踏み出しが余計に恐いのである。2年越しの課題がやっと登れたのである。もしかすると3年越しになるかもしれない。今回はフリクションも良かったのだが。

 仲間が左の壁の高い確か2級位の課題を登っている。小生はまだ触った事のない課題である。二人目の仲間が登ったので小生も取付いて見る。

 離陸して左足を上げそのスタンスに乗り込んで伸び上がって上のカチを取る所が核心のようである。最初はそのスタンスに正対して乗っていたから右手のサイドホールドで伸び上がれず上のホールドが取れなかったが、教えてもらって、2回くらいで上のホールドが取れる。そのホールドを両手で持って足を上げて伸びるとリップ状のカンテのガバポケットに右手が届く。で、実はこれから少しホールドもスタンスも乏しくなるのである。それに、既に2m以上上がっているから少し恐いのである。

 右手に頼ってスメアで足を上げて、外傾したあまり良くない所に足を上げたのだが次のホールドが無い。右足をカンテのガバホールドの手のところ辺りまで上げて、上のリップを取ろうとしたが、バランスを失い落ちてしまう。

 既に3m以上は登っている。下にマットはあったが、右足がマットを外れている。右足の踵に一瞬痛みを感じる。そして、後ろに尻餅を着くように倒れる。

 実は、この課題の下地は石が出ており、高さもあるから、少し恐いのである。そこを落ちてしまったのである。それも、後ろにひっくり返ってしまったのである。仲間がすぐに声をかけてくれる。はっきり言って、そんな所から落ちてはいけない所からの落下である。

 スポットに入っていてくれた仲間が背中から落ちるかと思ったと言う状態で落ちてしまった訳であるが、一応足から着地し、続いて足首の硬い小生の高い所から落ちた時の常としての、足でショックを吸収しながら受身の要領でそのまま尻餅を着く感じで後ろにひっくり返ると言う、どちらかと言うと、それなりの形で着地したので、本人には着地時の一瞬の右足の踵の痛み以外に痛みはない。強いて言えば、受身の時に打ったかもしれない右手の腕の外側が僅かに痛む程度であった。すぐさま立ち上がり、それ以外に痛みの無い事を確認し、両足に体重を架けて歩ける事を確認する。一応大事には至らなかったようだ。十分に自力で動ける事を確認出来た。

 まぁ、本人以上に回りの仲間に心配を架けてしまったようだが、大丈夫だと動いて見せて、一応安心してもらう。やっぱり高い所は慎重に登らなければ駄目だと、また、絶対にマットは使うべきだと自覚する。

 仲間が、沢の縁のすごく被ったルーフの課題をやりに行くらしいのでついて行く。途中、別の仲間が対岸の下が大きな石ころが転がっている高い丸っこい岩に張り付いている。掃除しながらラインを探ってるらしい。しかし、そのラインは落ちたら丸っこい岩の上だから、巧く着地が出来ないかもしれない、大変に危険なラインなのである。

 小生の落下現場を目撃した仲間が、その対岸の仲間に危ないからよした方が良いと声を架けている。確かに小生もそう思った。

 小生は仲間のトライを少し見て、少し休んだので、またさっきの課題に戻って再度取付いて見た。実は、その落ちた時のスタンス付近に両手で持ったカチスタンスが有った事をすっかり見落としていたのである。それを仲間に教えられたので、再度先程落ちた課題に挑戦したのである。相棒が少し心配してくれたが、挑戦を再開する。それを相棒がビデオに納めてくれる。

 2回目だから結構スムースにサイドカチからの遠いカチを取り、カンテのガバポケットを取って、手に使ったカチまで足を上げる。今度はさっきのような不安定なスメアではないから右手のガバに頼って左手を岩のテッペンのフレーク状のガバに持って行く事が出来る。ただ、そのガバフレークがなんとなく剥がれそうな感じもしたので、静かに使って慎重に岩の上に抜ける。登れた。上であんまり喜びはしなかったが。

 まぁ、その報告も有って、さっきの沢の側のルーフの岩の前に戻る。

 仲間がその近くのまん丸の岩のリップのスローパーだけでその岩を登ろうとしている。それを別の仲間が運動靴で登る。それを始めた仲間と小生はどうしても出来ない。ルーフを登った仲間がそこを、その隣のホールドも使って裸足で登る。ともに真正の有段者だから足にあまり頼らずに全身の力で登れるのだが、小生の様な非力なパワークライマーには全く離陸すら出来ない。スタンスを探すが使える物は見つからない。

 再度運動靴の真正有段者が登る。運動靴といってもクライミングのアプローチシューズらしいので、普通の運動靴よりはフリクションは効くらしいが、その登りを見ていたら、靴の爪先で岩を蹴っているだけである。実質足無で手で押さえ込んで登っている。小生には、特に今の小生にはそんな力などあるはずもない。諦めて仲間が登るルーフを見学する。先にやっていたもう一人の仲間はそこに残って一人挑戦を繰り返す。

ルーフの前からその丸っこい岩を見ると丁度仲間が登って上に抜ける所であった。結局小生だけが登れなかった様だ。といって、小生に登れるとは思えなかったから、再度挑戦する気も起きなかったが。

 仲間が仲間の仲間を駅まで迎えに行くとの事なので、そろそろ引き上げて、本日の天場である小川山に移動する事にする。多分6時近かったと思うが。


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作成年月日 平成14年 4月18日
作 成 者 本庄 章