とあるボルダーその12

2003年11月26日記
 小川山に続けて、ジムの仲間2人と3人でとあるボルダーに行ってきた。

 途中にある温泉に十分に浸かってから、ボルダーエリアへの山道を走る。

 その山道の真中に両手を広げて立っている人が見える。一瞬そう思ってしまったのだが、立派な角を持った鹿が道路の真中で、お尻をこちらに向け、振り返る格好でこちらを見つめていたのである。ライトを点けたままゆっくりと近づく。しかし、逃げない。じっとしている。もうぶつかる直前くらいまで近寄って初めて逃げていった。

 このエリアではよく鹿に会うのだが、こんなに逃げない鹿は初めてであった。

 夜の8時過ぎに何時もの天場に到着する。

 前回使用したと同じ場所に自動車のヘッドライトを照らしながらテントを設営する。温泉に入ってきたことも手伝ってか、昨夜よりは大分に暖かい感じだ。

 近くでなんかの鳴き声がする。どうやらフクロウみたいな鳴き声である。本当のフクロウの鳴き声を知らないから、ふくろうかどうかは分からないが、先ほどの鹿といい、動物が豊富にいる地帯である。

 テントの中で、何時ものささやかな宴会が始まる。といっても、缶ビール一本程度の酒量であるから、飲むことよりはお話が主である。

 朝、8時過ぎに一人でテントを抜け出し、ここでずっと山篭りをしている仲間の何時ものテントまで行ってみる。といっても、ほんの百メートルかそこらの所である。

 何時ものテントの上に大きなシートを張り、その下にもう1つのテントが張ってある。将に基地といった感じである。

 既に仲間とその連れは起きだしており朝食の準備をしているようだった。昨夜は会えなかった連れの人とは久しぶりだったので挨拶をする。

 昨夜会った連れの人と話しをすると、ここの直ぐ近くで行われている工事はレストランの工事らしいと教えてくれる。うーん、ここもレストランが出来るようになったのか。

 9時に近くなったので、皆で起き出し、テントの外で、持参したパイプの椅子とクラッシュパッドのテーブルで朝食の準備をする。

 そこに、昨日小川山で会った同じジムの若者の自動車がやってくる。本日一緒に登る約束をしていたのである。我々はまだ食事が終わっていなかったので、若者達には近くの皇帝岩という岩で遊んでいてもらう事にする。

 山篭りの彼がやって来たので、本日の打合せをする。彼は新しく見つけたボルダーに行くとの事なので、小生ともう一人の仲間が連れて行ってもらうことにする。残りの仲間は「二刀流」という課題をやりたいとの事だったので、先ほど合流した若者達を案内しながら、若者達の自動車で、その「二刀流」のあるエリアに行くこととなる。

 準備を整えて、「二刀流」に行く仲間を残して、山篭りの彼を追って出発する。

 道路の端に自動車を停め、我々2人と山篭りの彼とその連れ2人の5人で新しいエリアを目指して歩き始める。

 そこは既に何回か来た場所のちょっと先である。

 先ず大きな岩が現れる。その岩はまだ手をつけてはいないらしい。その先に進む。

 結構踏み跡があちこちにあるらしく、ここも途中から踏み後が現れる。

 岩を抱いた大きな木が現れる。本当に大きな木である。これがもっと便利な所にあれば人が集まるのにとか言いながら暫し横目で眺めながら、先に進む。

 凄く大きな岩が現れる。そこには、その岩の少し下にもう1つ少し大きな岩もある。今日はこの岩を磨くらしい。

 荷物を置いて、少し先まで見に行ってみる。幾つかの岩が見えるが、ここの岩の密度はそれほど濃いという訳ではなさそうだ。

 序に、上に続く踏み跡を一人で少し歩いてみると、ここの地形が少しは見えてきた。葉を全て落とした樺の様な木が疎らに生えた、とってもすばらしいハイキングコースであった。

 戻ると、既に下の少し大きな岩の横に寄り添うように立っている、薄っぺらい岩の壁の苔を落とし始めている。山の彼の連れの一人はその少し大きな岩の向こう側の壁をロープを出して掃除している。そのもう一人の連れは、凄く大きな岩の壁の真中辺まで登ってしまっている。

 小生は、少し大きな岩に寄り添う岩の端っこのほうの丁度スタートにもってこいのポケットのあるところのリップを磨いてみる。

 今回はこのとあるボルダーに来る積極的な予定がなかったので、ブラシは持参しなかったのである。従って、山篭りの彼のブラシを借りての岩磨きである。

 リップの上からではスタートのポケットが見えないので、また下まで行ってリップの検討をつけなおすと、大分余計なところまで磨いてしまったようだ。

 靴を持ってきて、スタートしてみる。ポケットは深くは無い。従って良くは無い。辛うじて離陸はできるが、長くその姿勢を維持するのは辛い。離陸して直ぐに、少し右側の一段低いリップを取ってしまう。

 最初は、ポケットの真上辺りのリップを取る予定であったのだが、そのリップは右下がりの結構急な斜めになっており、少しスローパーチックだから、直ぐに日和ってしまったのだ。

 そこのリップはガバだから、両手でぶら下がって足を上げ、マントルを返す。マントルが凄く簡単な一手ものだけれど、その離陸の一手が少しきついから、9級かな。

 仲間が、その左隣の僅かに寝た壁を登って、小生に登ってみてというので、登ってみたら、確か易しいって言ってた気がするのだが、凄く難しい。結局、何回かやって、仲間の足とは違う足でやっと登る。その後のグレーディングで5級だとか。そんなものかなぁ。

 そのまた左の少し寝ていて、少し丸く出っ張った感じの壁を仲間が磨いているときに、その直ぐ右の凹角状のところを、苔の付いたまま普通の靴で登ってみる。少し斜めに登るから、階段を上るというわけには行かないが、ガバガバですごく易しい。一応10級。まぁ、10級マイナス。強いて言えば13級くらいか。でもなんとなく楽しめる。気がする。山篭りの彼が第二登を決める。

 その10級の左の壁が磨き終わり、仲間が登ったので、小生も登らせてもらう。

 傾斜はきつくは無いのだが、手も足も悪いから、中々登れない。ああだこうだして、足をあっちこっち迷ってやっと上に抜ける。因みにこちらは、後に4級とグレーディングされる。

 小生の磨いたリップのすぐ右側にジジャンで飛びついてマントルするという課題が、怖くて面白いと、山篭りの彼が言うので、仲間と見に行く。

 確かに、そんなに高くは無いから、飛びつけるのだが、下地が狭くて、その先がストンと1mくらい切れているから、失敗すると転げ落ちる可能性があるのだ。確かに怖いのである。

 仲間はその正面から跳んだが、小生は安全を期して、少し端っこを回りこんで、落ちても転げ落ちないだろうところで跳ぶ。こういう判断もボルダリングのうちということで。

 凄く高い岩を登っていた連れの人が、途中から、万が一のためにと、上からロープを垂らしておいて、実際にはそのロープは使わないのだが、上に抜けたので、皆がそこを登ることになる。因みに初登者はムーブは6級くらいだという。

 山篭りの彼と仲間が登る。続いて、トップロープでもう一人の連れの人が登る。易しくはない様だ。

 小生も誘ってくれたので、トップロープで登らせてもらう。

 山篭りの彼のハーネスを借りると、足が入らない。仕方が無いから、もう一人の連れの人と同じく、ロープを直接越しに巻きつけ、登ることにする。

 まず、ハングした出だしが出られない。2回目にやっと離陸し、少し寝た壁を少し左に2〜3歩登る。ところが、そこは磨かれてはいないから、怖くて中々進めない。そう言えば、もう一人の連れの人も、どうして磨いてないのかって怒っていたっけ。

 なんとか、縦フレークのあまりバランスの良くないムーブでその部分を登り、カンテからポケットを取る。ここは足が少し寝た壁を使えるからそんなに悪くは無い。少し悪いポケットで最後の大分かかるポケットを取って核心となるマントルを返すガバホールドを取りに行く。ここは少し遠く、初登者が飛びつき気味みに行ったところなのだが、静かに取ることが出来た。

 ガバといっても、完全なガバではない。10cmくらいの幅の棚で、奥に僅かな浅い溝があって、そこに少し指がかかるという感じである。

 ここは、リップ直下だから、高さが半端ではない。5mや6mより遥かに高い高さである。しかし、その直ぐ後ろに木が迫っていて、その木を上手く使えば寄りかかって休むことが出来そうなので、いくらかは恐怖が和らぐのかも知れないが、その木も結構揺れるみたいだから、完全に信用は出来ないようである。

 そのガバを両手で持って、左足をその棚に上げてみる。しかし、既に上腕は完全にパンプしてしまっている。もう駄目だ。テンションが入る。そして、木に寄りかかる。

 ロープをつけてて助かった。将に助かった。

 暫く休んで再度挑戦する。左足に乗り込み、左手でリップのホールドを探る。見つからない。またテンション。

 左足に乗り込み、左手でリップのホールドを探る。体を上げてゆくと、右手がすっぽ抜けそうになる。でも、ロープが有るから頑張って手を伸ばす。ポケットを触る。しかし、浅い。こんなんで体を上げるのか。諦めて、そこを少しチョンボして、その上のホールドで上に抜ける。疲れた。

 岩の上に立ってもまだなだらかな苔だらけの斜面が続く。その斜面の途中に座ってロープを解こうとしたが、怖くなって、そのままその斜面を這い上がって、平らになったところでロープを解く。

 この課題は小生には当分無理だ。とっても6級なんかじゃない。そう思った。

 少し休んでから、もう一人の連れの人が磨いた、下半分がクラックで、その上にポケットが続く課題をやらせてもらう。

 リップのポケットを持って、クラックに足を架けて離陸する。次のポケットを取ったが、バランスが悪い。足が滑ってぶら下がる。地面までは落ちていないから、そのまま足を置きなおして、次のポケットを両手で持つ。足を上げてその上のポケットを取る。リップに足を上げる。あとは階段の如くポケットを登る。やっと登れた。

 上腕の筋肉が痛い。もう駄目だ。完全に来てしまっている。暫く休んでも回復しないかもしれない。もう3日目だからなぁ。

 その高い岩の右の方を磨いて、山篭りの彼が登る。前半は薄被りの浅いポケット、リップでマントルして、結構起ったスラブで最後のリップという感じの課題である。出だしが難しいが、マントルからその上のスラブは難しくは無いらしい。グレードは1級だったか。

 山篭りの彼の連れ2人が先に帰る。

 その1級の課題の右のカンテと、そこを回り込んだ所のスラブを3人で磨く。そして、それぞれが磨いた所を登る。

 カンテは、最初は難しそうな感じだったが、ホールドが出てきて、4級だとか。

 そこを回り込んだスラブは、苔の下からいっぱいホールドが出てきて、結局10級。

 カンテが4級というので、小生も挑戦してみる。

 少しハングした所のフレークからリップ上のポケットを取り、そのフレークに足を上げ、カンテの反対側のポケットを取ってカンテを登って行くという課題である。

 最初はフレークからデッド気味に右手でポケットを取り、左足をアウトエッジに上げるが左手がポケットに届かない。

 2回目は、リップのポケットに手が届いてしまうので、いきなりポケットから出て、正対で左足を上げるが全く届かない。やはり少し横を向かなければ駄目なようだ。

 右手のポケットが体を上げてゆくとズリズリ滑る感じで抜けそうになってしまう。高さはないのだが、下地は少し傾斜しているし、パッドも敷いていないから、思い切って手を伸ばせない。

 休み休み、何回目かに、やっと左手のポケットが届くようになってきたが、そのポケットは少し浅く、本当はその少し上のもう少し効くポケットを取りたいのである。

 次の試技で、その浅いポケットで無理やり正対しようとしてみたが、全く駄目だった。それで、この課題はお終い。

 そろそろ暗くなりかかってきたし、「二刀流」にいった仲間を拾わなければいけないということで、切り上げることにする。

 その前に、山篭りの彼が、まだ登っていない課題を確認したいということで、下の少し大きな岩の課題と、小生の端っこの課題を登るという。小生もまだ登っていない易しい課題を登ることにする。

 まず、小生の端っこの課題である。

 小生は9級と言ったが、ポケットからその真っ直ぐ上のリップでマントルするほうが自然だということで、そのムーブで6級だったか。小生もそのムーブをやってみたが、マントルが返せなかった。

 少し大きな岩に廻って、先に登った課題のある面の左の面の右端を登ってみる。

 易しいって言われたのに、易しくない。疲れてるのかなぁ。足を教わってやっと登る。

 それぞれの岩のそれぞれの課題をチェックし、そのグレードを付する。結局1級から10級の課題が14本出来たらしい。

 帰りに、最初に出会った、少し大きな岩をざっと見て、その岩の反対側の方の少し小さい岩を見て自動車に戻る。

 山篭りの彼とはそこで別れ、「二刀流」から「楽園」に廻ったはずだという仲間を拾いに出かける。

 林道脇に荷物が置いてある。その場所は以前にも同じ仲間を既に暗くなってしまってから拾った場所であった。自動車を停めると仲間が脇から出てきた。

 時間はまだ5時にはなってはいない。

 何時も行く「武川の湯」に今日も寄る。

 駐車場がいっぱいで、既に1台の自動車が駐車場所を探している。我々の直ぐ後にも自動車が続いている。停める所が全くない様だ。

 仲間が、確か第2駐車場があるはずだというので、建物の前のその駐車場を出る。すると、その真正面辺りに第3駐車場の看板が見える。変則の十字路になっているから、そのまま直進すると、直ぐに砂利敷きの駐車場があり、半分以上が空いていた。

 この後、甲府の某ジムに寄らなければいけないからと、そこは30分くらいで切り上げ、国道20号線を走る。まだ6時過ぎである。ジムは8時までだから十分に間に合うということで、途中の中華食堂で食事にする。まぁまぁというところか。

 ジムに寄って、仲間が今度新しく出るビデオを受け取る。小生はパッドのオプションになっている増設パッドを購入する。

 結局、なんだカンダで1時間位お邪魔してしまって、8時半頃にお暇する。

 9時近いからと、勝沼で中央道に入る。渋滞は全く無い。

 ボルダーエリアからの道でもそうだったのだが、走行車線を走っていると、前の車が道を譲ってくれる。今までもそういうことが何回か有った。仲間に拠ると、この自動車のヘッドライトのせいだという。車高が少し高いし、おまけにHIDとかいう、明るい放電ランプが付いているのである。そのために眩しいから道を譲るのだという。確かにそうなのかもしれない。

 10時半には出発点に着いた。甲府から2時間位か。空いていれば、甲府って近いんだなぁ。


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作成年月日 平成15年11月26日
作 成 者 本庄 章