とあるボルダーその11

2003年10月14日記
 先の3連休にジムの仲間4人と仲間の友達1人、計6人でとあるボルダーエリアに行ってきた。仲間とその友達の2人は現地で落ち合うことになっていた。

 もう、皆さんお分かりのことと思うが、このとあるエリアとはかの有名なマルチピッチのクラックルート等が沢山あるエリアなので、英吉利帰りの仲間がクラックに目覚めたということもあって、今回は、何時ものボルダリングだけではなく、クラックのルートも登ってみようということで、珍しく、ハーネスにロープ、ガチャ類も持参することにしたのである。

 三連休の初日だというのに、朝7時30分に何時もの場所に集合ということにしたものだから、何時もより道が混んでいて、集合場所に5分程遅れてしまった。

 今までの経験から中央道が大渋滞かと思いきや、高井戸八王子間が渋滞しただけで、八王子以降は殆ど渋滞らしい渋滞は無く、11時過ぎには目的地に到着する。一応の今回の予定は初日はボルダー翌日はクラックというような風にはなっていた様だが、仲間の2人を除いて、クラック経験者は英吉利で目覚めた仲間くらいで、小生を含め残りの二人は殆ど未経験なので、状況を見て決めようと言う感じであった。

 何時もの駐車場で仲間の自動車を発見し、フロントガラスのメモによって、その仲間のその日の行動予定を確認する。

 それによると、皇帝岩、美しき日、阿修羅となっている。そこで我々は、先ず「美しき日」に行こうということにする。

 良く見るとその隣にやはり別の仲間の自動車が停まっている。最近は何時も週末はここで過ごしているらしい仲間の自動車である。

 駐車場の端には仮設トイレがいっぱい並べられている。上の広場に行くとなんたらオリエンテーリング大会会場とかの看板があり、テントも沢山準備されている。長い木の杭がそこら中に沢山置かれてもいる。どうやら何かの大会が行われるようだ。以前のなんたらフェスティバルだったかのように、一日中スピーカーの音が五月蝿く鳴り響くのだろうか。

 遊歩道を歩いていたら、オリエンテーリングの布製のポストが設置されている。やっぱりこのエリアでオリエンテーリングの大会が行われるようだ。

 出だしでちょっと道を間違えてしまったが、目的のエリアに到着する。

 実はこのエリア、遊歩道が網の目のように整備されており、どの道がどうなっているのか未だに覚えられないのである。何しろ遊歩道の規格が全て同じなのだ。幅が違う道が2種類あるだけで他は皆同じなのである。それで今回もまごついてしまったのである。

 少し被った凹角状になった岩に女性が一人取り付いている。他に人は居なさそうだ。こんな所に一人で来るなんて珍しい人だなーと思いながら、その上の「美しき日」のある岩に行く。

 皆は「美しき日」の岩でアップを始めるが、小生にはその岩にはアップで登れそうな所は無いので、その奥の5級だか6級だかの課題のある岩に行く。

 カチホールドからリップを取りマントルするという課題なのだが、意外とパワフルで、年寄りには少しきつい課題である。まぁ、何とか登る。

 「美しき日」の右が易しいというので、触ってみるが登れない。仲間は登る。それを見ると、悪い足で、上のフレークのアンダーを使っている。真似をしたが、とてもそのアンダーでは離陸が出来ない。足も良く分からない。2〜3回やって無理そうと思ったので、思い切り地面を蹴ってやってみる。すると、アンダーが持て、足がリップに上がった。

 アップで登った岩の前に、以前仲間と2人で来た時に、やることが無いからと、一人でしこしこ磨いた石がある。見た目はやさしそうだったので磨いたのだが、結構難しくて諦めた石である。その石にチョークが沢山付いている。聞くと、被った部分からSDで出る難しい課題があるらしい。そこをやっているらしい。

 小生が磨いたのはその課題の左の方だったのだが、見た目はぱっとしない小さな石だから、チョークがいっぱい付いているのを見ると、何か不思議な気になってくる。

 上のほうで声がするので、見ると、駐車場に自動車を確認した仲間達の様だ。もっと上のほうに行っていると思っていたのだが、こんな所で遊んでいたんだ。

 どうやら先ほど女性が取り付いていた岩が男性が一人になったらしいとの仲間の情報により、花崗岩は初めてという仲間と2人で行って見る事にする。

 先ほど女性が使っていたマットはそのままに、男性が一人で取り付いている。マットをお借りして我々も取り付いてみる。

 凹角の左の少し下のほうに丸い少し大きめのホールドがある。三角形をした凹角の頂点付近に縦のややガバホールドがある。凹角にはクラックというかリスというか、縦に一筋の割れ目が走っており、あまりよくは無いが幾つかのホールドを提供している。そこら辺を利用して被った凹角からリップに出るようなラインなのだろうと予想はするが、小生には手が出ない。仲間もそのラインをトライするがリップまで行けない。

 そうこうする内に先の女性が戻ってくる。遊歩道から上がってきたし、近くを窺っても人の気配が無かったから、別の所に行っていたようだ。

 色々お話を聞くと、東京からの人たちで、既に何回か昔某ジムに通われていた方に連れてきてもらっていたらしい。

 上で遊んでいた別の仲間の一人が降りてくる。その仲間にここの一番易しい登り方を聞くと、何しろここの主だから、凹角の真中のクラックの右側のフレーク状のホールドからステミングで右側のリップの上のスローパー気味のホールドを持って右に抜けるのが易しいと教えてくれる。

 やってみるが、フレーク状のホールドからだと次に動けないので、その上のクラックのホールドも使って離陸する。適当に足を開いてリップの上のスローパーを持ったのだが、次に動けない。

 先客が右足を右側のスラブにヒールをかけて登ったのを見て真似をする。足がズリズリとずれはしたが何とかスローパーの右上のガバに手が届き上に抜ける。

 その後、別のムーブを探るべく何回かやってみたが駄目だった。

 仲間が「千里眼」に行ったので、上に荷物を取りに行き、少し遅れて2人で移動する。所が、行く方向を戻る方向に間違えてしまい、引き返してより先の方向に移動する。

 「千里眼」に何人か人が居るようだ。しかし、仲間ではないようだ。仲間は大黒岩の上のほうに居るようだ。

 荷物を置きに「千里眼」の岩に行くと何人かいた人達の一人だけが残っていた。どこかで見たことがある人なので、「どこかでお会いしましたっけ」と聞くと、「小川山でも、御岳でも、三峰でも会ってますよ」と言われてしまう。これはまずい。

 その人が、千里眼のリップの場所を聞くから、多分左のほうだと思うが、あの人は何時も飛んでいるからあの人なら分かるだろうと大黒岩のほうにいた仲間を指して答えると、その仲間の名前を言うから、やっぱり結構近い人だったようだ。後で仲間に聞くと、先ほどの女性が連れてきてもらっている人として名前を挙げた人の内の一人と判明した。あの人が×××さんだったのか。

 仲間と2人で「千里眼」右のランジ課題を跳ぶ。丁度落ちる所に石が出ているので、その石を隠すように担いでいったマットを敷く。

 右手のカチを親指を架けて持つと持てると言うと、先客が、親指を架けると跳べないから親指は架けないという。そんなものかなぁ。小生には親指を架けないと持てないからなぁ。悲しいけどそう思ってしまう。

 親指を架けずにもってみたら持てた。離陸が出来た。沈み込んで跳んでみたらリップに左手が掛かった。指が擦れて少し痛くなった。わっ、跳べた。指が掛かった。初めてだ。やっぱり強くなったんだ。

 沢を挟んで向かい側の正面に大黒岩の一番易しいスラブ面が見える。大きい岩だから凄く立派に見える。仲間があそこは登ったのかと聞くから、初めて来た時に仲間が皆登って上で登ってこいと招くから、登るしかなくて登ったと答える。

 仲間の一人が「天の川」、だったと思うのだが、に挑戦している。大黒岩の右のほうのダイク沿いに登るラインである。少し高い、核心の真下には大きな岩が露出しており、その岩によって大きな段差が出来ている、怖い課題である。

 大黒岩の仲間がティッシュ無いかと聞くから、どうしたのかと思ったら仲間の足から出血してしまったのだという。生憎ティッシュの持ち合わせは無かったので、テープなら有るけどと答えるとともに、傷口を強く2〜3分抑えていれば血は止まるよと答えておく。

 その後2人で何回か跳んで、仲間の所に合流する。

 仲間が、花崗岩が始めての仲間に、ここ面白いよと勧める。大黒岩の7〜8mはあろかという、先ほど仲間に呼ばれて仕方なく登ったと説明したスラブ壁である。

 その仲間は、普通なら下から見上げただけでやめてしまうだろうその壁を登りだす。途中、真中より少し下辺りで、ポケットホールドで嵌ってしまったらしく、足を滑らせて落ちてくる。

 別の仲間がそこを登ってみせる。それを見て彼の仲間は再び登りだす。そして、最後のリップへの乗り込みの核心をこなし岩の上に立つ。スッゲー。降りてきた仲間にたいし、花崗岩が始めての人がこんなハイボールを登るか。仲間の無責任なコメントである。それに対し登った仲間は、最初の外岩の富士川でいきなり高いの登らされたから。それにしても、彼の足使いは見事だった。やはり流水に磨かれた滑滑の安山岩の富士川ボルダーのお陰なのだろうか。小生も少し触っては見たが、再び登ろうという気は起こらなかった。

 仲間が、前回やろうとして出来なかった課題のある岩で登っているので、その岩に行き、登れなかったところを登れるか聞いてみた。

 最初にトライした仲間は登れなかったが、別の仲間が登ってくれたので、小生も靴を取ってきて取り付いてみる。

 顕著なガバを右手アンダーで持って左手をリップの上のそんなによくは無いホールドに伸ばす。足を決めて右手を右少し離れたガバに飛ばす。足をスタートで使った大ガバに上げ、少し寝た結構ぼこぼこしたところの適当な窪みを使ってリップまで上げる。少し足を刻んで、左上だったかの少し見えにくい少し遠いガバを取れば終わりである。何とか一撃する。だったと思うのだが。花崗岩が始めての仲間も登る。

 出血した仲間が「千里眼」を跳ぶというので、小生も再びその横のランジを跳ぶ。マットはずっとこのランジ課題の下に敷きっぱなしであった。

 仲間が後ろに跳んでいると指摘してくれる。もっと壁に沿って跳ばなければならないと教えてくれる。そう言えば、岩の基部から少し離れたところの岩の上に敷いたマットの上に落ちてくる。後ろに跳んでいる証拠だ。本来ならばマットの無い岩の基部の部分に落ちなければいけないのだ。

 右手を意識して引き付けて跳んでみる。マットと岩の間に落ちる。やった、先ずは成功。後は飛距離だ。

 仲間も、同じように後ろに跳んでしまうらしい。やはり着地点が時々後ろのほうの木の根っこ近くになることがある。お互いに着地点を確認しながら跳ぶ。

 仲間の連れが先ほど花崗岩が初めての仲間が登った課題に挑戦している。途中で行き詰まり何回か落ちている。

 跳ぶのも飽きたので、再び仲間の元に戻る。別の仲間が「天の川」に挑戦している。

 その岩の上に綺麗なカンテを持った岩がある。このカンテは登りたいけど難しそうだからと諦めていた所である。花崗岩が初めての仲間が触っている。それを見て別の仲間が登ってくれる。そうか、最初に右手はカンテの少し上のほうを持って、左手はフェースのカチを使い、フェース側を正対で離陸するのか。

 真似をすると離陸が出来る。無理だと思っていた離陸が出来た。そこからフェースの少し遠いカチを取れば登れるのか。遠いカチは取れなかったが。

 3級くらいらしい。もっと難しいと思っていたのだが、次回何とか落とすことにしよう。

 仲間の連れが遂に登ったようだ。うーん、やっと登ったか。

 もう5時頃の様だ。そろそろ引き上げることにする。

 「千里眼」に戻って荷物を片付ける。仲間の一人は「千里眼」を何回か跳んで引き上げる。

 別の仲間がテントを張っているであろう場所のそばにテントを張ることにする。行くと、その少し手前の殆ど人が通らないであろう遊歩道がチップが敷いてあるし平で良さそうだと教えてくれたので、少しだけ戻って、遊歩道の上にテントを張る。

 それぞれ各自で夕食の支度をし、適当な飲み会が始まる。そこに先ほどの別の仲間の一人がやってくる。また暫くすると、犬を連れた仲間の知り合いらしい人がやってきて、向こうで宴会をやっているから来ないかと誘ってくれる。仲間の古いジムからの仲間らしい。

 皆で、適当につまみとか飲み物を持ってお邪魔する。

 そこにはもう一人小生も知っている人が居り、折りたたみの椅子を7人分準備してくれる。2人連れなのに折りたたみの椅子を、7つ以上持ってきていることに感激しながら、仲間に混ぜてもらう。その日の夜の12時頃にその人達の仲間が来るので、そうすればどうせその時に起こされるから、それまでは起きているのだといっていた。

 まもなく霧雨みたいな雨が降り出す。夜は雨だと天気予報が言っていたので、やっぱりという感じである。ところが、だんだん強くなりだす。東屋のような所にいたから皆で少しずつずれて全員が屋根の中に入る。

 その人たちは七輪も持ってきていて、それをテーブルの下に置いたら、凄く暖からしい。小生はテーブルからは離れていたから、少し寒かった。

 その人たちは犬を二頭連れてきている。さっきの犬だ。その犬が、鼻を摺り寄せてきたり、飛びついて来たりする。

 皆はルートをやる人の悪口を言ったり、それに反論したり、なんだかだ色々と話が弾んでいたが、小生は眠くなってしまったので、何時頃かは分からなかったが、一人先にテントに戻り休む。

 朝、6時頃に目を覚ますと、雨はまだ僅かに降っている。一人テントを抜け出し、上の駐車場のトイレまで歩いてゆく。

 駐車場には何台かの自動車が停まっており、幾つかのテントが張ってある。相変わらず何パーティーかがルートをのぼりに来ているようだ。

 自動車まで戻り、自動車のラジオを聞く。

 ラジオでは、その日は雨は午前中で上がるが、次の日は午前中は雨だと言っている。もう帰るしかないのだろうか。少しラジオを聞いてからテントに戻る。

 8時過ぎ頃には雨も止んだようなので、皆で起き出し、朝食の準備をする。

 食事をしていると、上の方から放送の声が聞こえてくる。暫くすると、地図を持った人たちがやって来だす。遊歩道の上にテントを張っていたらまずかっただろうか。

 どうせ登れないから、テントの外でうだうだしながらどうするか相談する。しかし、うだうだしているからまとまらない。

 オリエンテーリングの人たちが増えだす。でも、この遊歩道はコース上からは外れているのか、通る人はほんの数人しかいなかった。

 上を見てきた仲間が、タイツとスパッツで身を固めた人たちがウオーミングアップでいっぱい走っている、全国から1000人くらい集たらしい、地図はもらえないらしい、との情報をもたらす。そのうち沢山の人がここを走り抜けるかもしれない、とも言う。それは大変だとなる。しかし、そのままうだうだする。結果は、誰も走ってこない。上級者のコースは別だったようだ。

 昨夜お邪魔した場所の近くの皇帝岩に行ってみると、いっぱい人がいる。この岩のそばに308番とか書いたポストがあったのだ。子供連れとかグループとか、あまり走っていないから、初級者クラスの様だ。

 岩を見ると、濡れているどころではない。表面に水が浮いている。被った場所でも水が浮いている。これではその後日が照っても絶望的だ。次の日はまた雨らしいし。

 橋の下の岩なら登れるかもと、その岩に寄ってから温泉に行こうということになり、先にテントを張っていた仲間も含めて、自動車3台9名で移動する。

 上の駐車場の近くに行ってみると、交通整理の人たちが道を塞いでいて、自由に自動車で走れない雰囲気である。途中の林道の分かれ道のゲートにも人が居り、どうやらゲートが半分閉められていた様子であった。

 橋の上に到着し、先遣隊が偵察に行く。曰く、橋の水抜きの筒の先が岩の上に開いており、岩の上から水が流れていた。だめだ。

 戻って日帰り温泉施設に行く。

 駐車場はいっぱいで、周りの道路にまで自動車が溢れている。どうしよう。連れがそのまま山の縦走にでるというので登山口まで送っていった仲間を待つため、道路脇に自動車を停める。で、結局別の温泉に行くのも億劫だからと、総勢8名で温泉に浸かる。

 来る時に小生の自動車に乗った内の一人が、もう一台の仲間の自動車に移ったので、3人で出発する。内、一人が実家に寄るというので、20号線に出て甲府を目指す。

 やはり、20号線は混んでいた。

 そのまま20号線を上野原迄走り、渋滞する中央道に合流する。

 渋滞は渋滞だが、のろのろでも走ってはいるから、程なく小仏峠のトンネルを抜け、渋滞の無くなった中央道から首都高を千葉まで順調に走る。

 後日談がある。

 翌日目が覚めると、雨は降ってはいない。やっぱり。少しがっかりする。

 10時頃だったか、雨が降り出す。良し。やっと心が落ち着いた。その後雨は上がったが、少しでも降ってくれればそれで良かったのだ。実際はその後も断続的に、時には激しく、雨が降ったのだが。

 まだ続く。

 相棒曰く、「今日は一人でのんびり出来る日だったのに」


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作成年月日 平成15年10月11日
作 成 者 本庄 章