ストーニーポイント

2002年 3月 9日記

 第7日目である。

 7時起床。食事を済ませて、部屋の鍵を事務所の前のポストに入れて、8時に出発する。途中またボンズにちょっと寄る。

 来た道を途中まで戻り、I−10をそのまま走って、I−210からカリフォルニア118でストーニーポイントに行くつもりである。

 途中I−10に載ってすぐにガソリンを入れようとスタンドによるが、値段が高いので給油せずにまたI−10に戻る。セルフのスタンド同士でも結構ガソリンの値段に違いがあるようだ。

 途中I−215が交差する。この道にI−210と間違えて入ってしまう。すぐに引き返すべくインターを降りる。丁度そこにガソリンスタンドがあったので、給油をする。なんという町だかは殆ど覚えていない。というより、看板を探したのだが、結局わからなかった。

 再びI−215に戻るのだが、その乗り口がどこだかはっきりしない。小生はI−215のノースに間違えたとばかり思い、サウスに乗れと言ってしまう。乗ってから、運転をしていた団長が確か間違って乗ったのはサウスだったはずだと言ったが、すでに遅い。暫く進と、やはりI−10とは反対の方向に走ってしまった事が確認される。

 しかし、地図により、I−10に沿ってその南側をロスまでカリフォルニア60が走っている事が判明する。距離的にも変わらないからと、そのままI−215を南下しカリフォルニア60でロスまで行く事にする。

 I−10は途中で事故があったようだし、結構混んでいるらしい。しかし、こちらの60はそんなには混んではいない。まぁ、こちらも専用道路だから走り易さも変わらない。怪我の光明かも知れないなどと話しながら進む。

 カリフォルニア60を走るとI−210には直接は入れない。地図も買ったしということで、途中で合流するI−10からI−415で空港に行き、レンタカーの営業所を探す事にする。

 ロスアンゼルスに近付くと道が混み出して来る。分岐や合流も増える。そんななか、I−5とI−10とUS101と我々のカリフォルニア60が一箇所で交差する所を通る。地図で見ると五叉路になっていて、なんだかすごく複雑なインターになっている。何しろ3車線、4車線の道路がそのままの太さで分岐、合流をするし、ジャンクションだけでなく、インターにもなっているから、そこに乗り降りする道も加わってくるのだから、更にすさまじい。

 日本ならせいぜい2車線と1車線が別れたり、2車線に2車線が合流する位だが、そこは4車線と4車線が別れたり、それがまた3つに別れたり、4車線が合流して来たりで、それも五叉路になっているから、何がなんだかわからない状態で道が作られているのである。地図上で確認しても、あまりに線が有り過ぎて俄にはわからない。今考えても、団長はそんな中をよくも運転して来たものだと、感心してしまう。

 このカリフォルニア60はそのままI−10に合流する。この複雑なジャンクションを通過し、I−10に入ると道は空いてきた。トラックも殆どいなくなった。

 I−405に入って空港に近付くと、空港までと、レンタカー屋の営業所迄の案内板が出て来る。それを頼りに営業所を目指す。そして、団長から通り道の道の名前を覚えておけとの司令が飛ぶ。で、すかさず、もう一人の団員に、小生はもう覚えられないから、代りにしっかり覚えておいてくれと頼む。

 その甲斐あってか、ほぼスムーズに営業所に到達する。それを確認し、カリフォルニア1号でストーニーポイントを目指す。

 この道は太平洋沿いに走る道である。南国の海沿いの道、将にそんな雰囲気がぷんぷんとする道である。帰ってから確認すると、そこは、サンタモニカだったようだ。

 その道から今度はトパンガ通りと呼ばれるカリフォルニア27に入る。看板はすぐに確認できるが、実際の分岐は意外とわかり辛い道である。一瞬間違いそうになってしまった。

 今度は雰囲気が一変して、山間の曲がりくねった片側1車線の道となる。交通量も少ない。

 途中、観光地のような別荘地のような所を通る。地図を見ると、右側一帯の山がトパンガ州立公園となっている。どこか見晴らしの良い所に行きたいねと話していたら、右に入る道がある。それを右折して斜面を登って行く。両側には別荘のような立派な家が並んでいる。公園の駐車場という訳ではないが、駐車場が有ったので駐車場に入る。我々だけだ。トイレも有ったので、トイレによる。

 ここはあまり眺望は良くない。我々の期待した太平洋は山の向こう側だから全く見えない。

 登って来た道の交通量が、脇道にしてはやけに多い。この先まだ何か有りそうだと登って行く。相変わらず別荘地風の中の道だ。幾つか道は別れるが、上に上にと登る。公園の案内板がある訳ではない。すると、突然公園の入口が出現する。

 駐車場が有って、料金所みたいな建物がある。有料かもしれない。アメリカのこういう自然公園では入場料を取る所が多いらしい。お金を払って入るのも何だと、少し躊躇していたら、入口に停まっていたレンジャーみたいな人の乗った4駆車が下って行く。すでに12時である。お昼にでも行ったのだろうか。

 折角だから、お金を払っても行ってみようということで、先に進む。途中入口の駐車場で一旦車を止め、入口付近を偵察する。

 入口の料金所風の建物には人はいない。中に料金表の様な物が置いて有り、一日2ドル、老人は無料だったかと書いてある。しかし、人の目に触れる場所には置いてはいない。今は冬だから無料開放しているのだろうか。

 中に入ると、大きな駐車場がある。そして、その先は自動車は入ってはいけないらしい。自動車で山頂付近まで行くと言う野望は打ち砕かれたが、日差しも暖かいし、木が茂っていて気持ち良さそうなので、遊歩道を少し歩く。

 駐車場には何台か自動車が停まっており、人も何人か見える。我々の前後にも何台か自動車が入って来たし、出ていった。結構人が来ているようである。

 入口の近くに事務所らしい少し大きな建物が有って、その先の大きな駐車場の脇にはトイレがある。その脇にはバーベキューが出来る炉があるベンチが幾つか作られている。

 そこから何本かの遊歩道が伸びており、一本の道の奥には資料館らしい建物がある。少しそっちの方に歩いたが、すぐに戻り、左手の丘に登る舗装の遊歩道に入る。

 その先は草原の放牧場の様な牧柵があり、少し展望が開ける。その牧柵に寄りかかったり腰掛けたりして、少し眺望を楽しむ。その風景を眺めていたら、なんとなく伊豆の山を思い出してしまった。

 我々は、東洋人の、青年2人と中年のおじさんの3人組みと言う、なんとも不思議なトリオだ。回りの人達にはどんな風に写っていたのだろうか。

 実は、クライミングに行ったり、カヌーに行ったりする仲間はいつも、端から見ると今回のような不思議な取り合わせである。ゲレンデでは何の違和感も無いが、途中食事に寄ったり、遠出して、今回のように観光地を巡ったり、一般のキャンプ場で、バーベキューなどの大掛かりな炊事をする事も無くキャンプをしていると、よくそう思うのである。現に自分でも、カジュアルな格好の中年男性の2人組みなんかを目撃すると、あらぬ想像をしてしまう事が良くあるものだから、そう考えてしまうのか。

 草むらの中のベンチで慎ましい昼食をしていると、傍らの灌木にブルーの少し大きな奇麗な鳥がやってくる。デジカメを取り出して写そうとすると木の中に隠れてしまう。出て来たからとまたカメラを構えようとするとまた隠れてしまう。そんなイタチごっこの末に結局どっかに飛んでいってしまった。

 こうやって、緑の中にいるとホッとすると仲間が言う。気が休まると言う。確かに、ここ6日程は緑なんか殆ど無い褐色の世界にいた。地面が草で見えない経験は今回はここが初めてかもわからない。今迄に無い経験である。だからなのか、ここでは吸い込む空気も心成しか柔らかい気がする。

 峠を越え、再びロスアンゼルスの町中に出る。道路の両脇に分離帯で仕切られた道が作られている。そこに自動車が駐車されている。駐車専用の道なのだろうか。

 そろそろストーニーポイントの公園の近くだ。どこかに入口が有るのかときょろきょろしながら走っていると、公園風の場所を通り越す。そして、道が少し登り坂になり、その道路脇に自動車が何台も止められている。交通量は結構ある。なんとなくその辺から自動車専用道路の様相を呈している。

 その道の下に公園らしい広場が見える。ここだ。ここで間違い無い様だ。少し先の車と車の間の空いた部分に自動車を止める。信号の少し先というロケーションだから、自動車の流れが時々とだえるが、それが無ければ、交通量がお多すぎて運転席のドアを開ける事もままならない状態であろう。でも、皆止めているから真似をする。

 見ると、マットを使っている人が見えない。ここはマットは使わないのかと、我々もマットは置いて行く。

 道の法を下って、広場に下りる。その広場には大きなボルダーと少し小さなボルダーがある。金曜日の午後だからか、その廻りにはボルダラーが結構いる。でも、やはりマットは使っていない。

 大きなボルダーはボルダー1というらしい。結構高い。5〜6mはあるだろう。裏と表に課題があるらしい。表というか、南側はほぼ垂直に近く、ホールドも細かそうだ。裏は傾斜は少しゆるくなって易しい課題もあるようだ。

 その岩の奥の繁みの中にもボルダーがあるようで、小さな岩にSDで取り付いている人も見える。

 トポに従って、大きな岩山を回りこんでゆく。ここは、大きな岩山の周りと、その岩山にボルダーや課題があるらしい。

 スラントロック、パイルアップスの岩を見ながら、ターロックボルダーに行く。この岩もすごく大きな岩だ。垂壁や被った壁を持っている。高さは7〜8mはあるかも知れない。2/3あるいは半分位から上は傾斜はゆるくなってはいるが。

 この公園の横は厩舎になっている。馬がいっぱいいる。ポニーみたいな馬もいるようだ。感じとしては乗用場で、競馬馬ではなさそうだ。

 その岩の隣のB1ボルダーを見に行く。こっちは高さ自体は低くは無いが、そんなに大きくは無い。

 カンテを登る10aの星付きのザコーナーという課題をフランス青年が登る。続いて小生もいきなりアップ無しに登る。降り口は裏のほうの大きな木を使って降りる。団長は、残念だが、お休み。

 ターロックボルダーの裏側に回って、先日買ったボルダリングの雑誌に載っていた写真の課題を確認する。大きな穴から左上の少し抉れたリップに行くという特徴のある課題だ。ここにくる前にトポで多分この課題であろうと当たりをつけていた課題だ。将に思ったとおり、この岩のフーフアンドマウスという10aの課題だった。フランス青年が登る。そして、そのリップから上の5.0のスラブを登って上に行く。

 降りる段になって、スラブだから、いやらしいといいながら降りてくる。なんか下からいていると、本当にやばそうに見えてしまう。

 それを見ると易しくはなさそうだ。小生はその左の5.7とされていた課題だったと思った課題を登ってみる。

 足が滑って登れない。だめだ。フランス青年に登ってもらう。トポを見ると10+となっていて星も付いているスライムという課題らしい。何回かで、2手、3手と手を伸ばすが、左手が甘く、少し遠い右手が留まらない。その部分で3回くらい落ちる。

 ここの岩は硬質の砂岩だそうだ。柔らかくは無いが、百万人スタンスがいっぱいありそうだ。現に、ここのスタンスはつるつるだった。

 フランス青年は向かいのB1ボルダーの被った面の星印課題をやっている。確かザクラックだったと思うが。小生は雑誌の写真に有ったさっきフランス青年の登った課題を触ってみる。大きな穴からリップの下のホールドまでは何とか行くが、リップが遠くて取れない。ここで横に飛びたくないから諦める。

 どれも登れないのもしゃくだからと、一番左のリップまでが5.6の課題を登る。リップの上はゆるいスラブで5.2だそうである。高いけど、そして、そこを降りるのがさっきのフランス青年を見ていると少し不安になってしまったが、思い切って天辺まで登り、同じ所を降りる。こっちは少し傾斜はあるがスタンスがあるので楽だ。リップからは、左のカンテを左に回りこんで、5.4の課題をクライムダウンする。ここは5.4と言っても、そこそこ難しかった。

 キャップロック、ライオンズヘッド、ピラミッドロック等を見ながら、その先の岩の露出した潅木の中の道を少し登り、大きな岩山の側壁に出る。

 そこでは2人のボルダラーがボルダーを登っている。被った真ん丸いカンテである。結構難しそうだ。上半身裸のボルダラーが登って行くかと勧めてくれたが、登らなかった。ここは何処かとトポを示しながら、もう一人の人に聞くと、バックウォールだということだったが、そのトポには載っていなかったようだ。

 さっきの裸の人がこの先に良いカンテがあると勧めてくれたので行って見る。レイバックらしい。確かに面白そうだが、難しそうだから、少し戻って先に進む。すると、さっきのお兄さんが、すっきりとしたカンテを持つ四角い岩の課題を教えてくれる。ヤボアレートらしい。例のヤボの課題らしい。B1Rだ。下は岩盤で高さがあるのだ。いきなり少し高いカンテのホールドに飛びついてスタートするのだと、そこのところをやってくれる。とまりはしなかったが。

 その横のカルーセルロックという岩で若い女性が一人で登っている。道はそっちのほうに伸びているので、そっちのほうに行くと、その女性は帰るところだったらしい。挨拶をすると、ここにはすばらしいトラバースの課題があると教えてくれたらしい。

 裏に回ると、その岩の下のほうに鉄道の線路が見え、トンネルがあった。

 ここにはザローラーコースターという10+の課題がある。それをフランス青年が登る。続いて小生も登ってみる。

 最初は2手目くらいのガバが取れない。2回目は、そのガバからカンテを取って、カンテの少し奥に足を上げたが、うまく乗り込めず、次の手が取れない。3回目にはそのスタンスにうまく立つことが出来た。それで両手でカンテを持って、上のスローパーチックなポケットが取れたので、左足を手を使ってハイスタンスに上げ、その足に乗り込んでマントル気味に上のスラブに乗り込むことが出来た。この時、手が少し滑ったが、何とか耐えて上に抜ける。出来た。木を使って降りてくる。

 スレンダーランドT、Uという少し高い2つの岩を見学してハウェーの近くを通って、その先の側壁に行く。

 そこでは、さっきの二人のボルダラーが大ルーフのトラバースの課題をやっていた。3人で見学する。ホットツナ、星印の課題らしい。

 見学しながら、団長が色々と話をする。二人はここで会ったらしく、一人はサンフランシスコの大学から帰ってきて、ここに来たらしい。我々が日本人だというと、サンフランシスコの彼の彼女はトモコというと教えてくれる。どこに言ったかと聞いてきたので、ビショプとジョシュアだと答える。どこがよかったかと聞くから、ハッピーのシークレットコーナーだとフランス青年が答える。というような会話を交わしたらしい。小生にはわからなかったが。

 サンフランシスコの彼は中米の人の様な感じだ。彼らが我々にやらないかと誘ってくれたが、しばらく見学を続ける。

 この課題は最後のほうに遠いところが2箇所位出てくる。そして、最後も少し遠いところに飛びつく。途中も良くないホールドがあるらしい。

 最後の方の核心部を触って、何回かで出来るようになったので、フランス青年が最初から挑戦する。それを彼らは、3枚のマットをそれぞれ彼の移動に合わせて移動して行く。最初の遠い所を越えて、2つ目の遠いところで落ちる。

 彼らも同じような所で落ちる。でも、彼らの足が長い。すごく長い。ルーフのトラバースだから、トーフックやヒールフックを多用するから、なおさらそう見える。確かに本当に長い。その長い足を手と手の間に入れてフックをする。それを真似ると、楽だったらしい。

 団長も足ブラで最後の所に挑戦する。小生は足を使ってやってみる。左手をロックオフして右手で飛びつく。出来た。

 それを見たお兄さん達も、そこを足ブラでやる。でも出来ない。団長のやり方を真似したらできた。キャンパシングも技術が必要のようだ。

 小生が着ていたシャツの模様を見て、イェーとか何とか言ってくれる。どうやら、その模様はマリファナの葉らしい。アメリカではヤバイらしい。上と下のシャツを着替える。危ないところだった。

 少し寒くなって来て、サンフランシスコのお兄さんが帰ったので、我々も帰る。

 帰りは、元来た道を戻らず、その先のハイウェーの脇を歩いて路駐の場所まで戻る。本来はそのハイウェーは歩いてはいけないらしい。その為にかどうか、縁石の内側に踏み跡があった。

 帰りはそのまま先に進み、カリフォルニア118に乗り、I−405でロスまで戻ることにする。

 今夜は、例のチケット本で探した安そうなモーテルにしようと言うことで、地図でその場所を確認し、地図を見ながら走る。

 反対方向のI−405はずっと渋滞している。しかしこちらは、途中US101の手前で渋滞が始まるが、I−10を過ぎると空いていた。

 チケット本の地図とロードマップを両方見ながらハイウェーを降りる。しかし、出口で左折できず、反対方向に走らされる。適当な所で右に入り、何とか左折して本来の方向に走る。しかし、またまた右端を走ったために右折ラインに入ってしまい、手前で右折させられる。仕方が無いからそのままその裏道を通って、本来の道に出て右折して走ったが、その間にモーテルを通り越したらしく、先のハイウェーのインターに出てしまったので、Uターンをして、反対側のモーテルを探しながら走る。

 そんなこんなで、やっとモーテルに辿り着き、1ベッドで3人と交渉するも、だめと言われて、チケット本の価格にはならなかったが、疲れてもいたので、キングベッド2つの部屋に3人で泊まる。もっともジョシュアでもそうではあたのだが。

 このモーテルは電子レンジも冷蔵庫も無いジョシュアと同じタイプであった。しかし、コーヒーが無い。シャワーもぬるい。その代わりクローゼットみたいな部屋があって、そこにはソファーがあった。部屋も広かった。まぁ、何もかにもという訳には行かないものだ。

 

 今晩中にガソリンを入れておこうと話していたのだったが、やはり都会を走るのは相当に疲れるらしく、明日も早いしと、荷物を纏めて早々に寝てしまった。


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作成年月日 平成14年 3月 9日
作 成 者 本庄 章