小川山その6

2000年12月11日記
 先日の土日でジムの仲間と相棒の3人でまたまた小川山に行った。

 今回は土曜日の早朝千葉を出発する。大した渋滞もなく、韮崎から茅ヶ岳広域農道、信州峠、ナナーズ経由で小川山へ。途中、松本ナンバーの車にくっ付いて行く。結構早い。仲間があの速さは多分クライマーだとの言の如く、廻り目平の駐車場まで一緒であった。

 駐車場には数台の車が有り、子ずれのキャンパーらしき集団も居た。

 駐車場横にテントを張り、用意を整えて水晶スラブ下のボルダーへ。

 犬岩でウォーミングアップ。10級からレイバック9級。あれー、この9級、こんなに難しかったかなぁ。(後で分かったのだが、レイバックだったんだ。正対で登っていた。)次は8級。一応ウォーミングアップ終了。

 ルナ4級に触るが、相変わらず出来そうに無いので、パス。

 次は不可能スラブ。ここは今まで触った事が無かった。先ずは一番右のカンテ6級から。名前がカンテだからカンテを使って登る。なんか易しい。次は湿りの海。名前が静かの海3段に似ているが、グレードは8級。仲間が先に登って、小生も登る。続いて一番左の5級の課題。やっぱり仲間に登ってもらって、小生も挑戦。少し難しくて登れない。

 仲間は前回からの課題である雨月へ。小生は残って、5級の課題に挑戦。その後2回か3回かかった。静かの海の出だしを触っていたら、一人のボルダラーが来たので少しお話をする。その人は京都から来て、日帰りで帰るとか。日本各地をあっちこっち回っている人の様だ。この静かの海を登ったらしい。その人曰く、この課題はテクニックだから何回かやっていればそのうち登れるようになるとの事だったが、再度出だしを触って、そんな物かなぁと半信半疑。登れたら良いとは思うが。相棒は、その間、松本ナンバーの車にくっ付いていった時に車に酔ったようだとの事で、傍らで羽毛服を懸けて鼾を掻きながら眠っていた。

 遅れて、仲間の居る雨月岩に移動する。

 仲間が雨月岩の下の岩からまた少し下がった所の岩の縦ダイク3級を見に行くとの事なので付いて行く。この課題、結構奇麗な課題だ。しかし、下地は良くない。岩が有るし。で、仲間がマットを持って来て登る。小生は、その左の、課題が設定されてはいないが、ガバがあってなんとなく登れそうな所を登る。だが、出口でホールドに詰まり、降りる。仲間が挑戦し抜ける。その仲間曰く、岩が脆そうでなんとなく恐い、との事なので、小生は止める事にし、仲間の登った3級の課題に挑戦する。少し恐かったが、カチカチだから3回目位に登る。

 戻って、仲間は雨月にトライする。小生は前回登れずになんとなく気になっていたその下の岩の三角のカンテの2級の課題を前回思い付いたムーブでトライすることにする。

 先ずは前回のムーブを試す。右手を手前のカンテ、左手を奥のカンテの少しガバで、右足をカンテにヒールフックしてすごく浅いポケットと言うか窪みを左手で取る。そして、右足を上げてその足に乗り込むと言うムーブだ。

 それまで仲間とやっていたムーブは右手と左手で手前のカンテを持ち左手を浅い窪みに持って行き、体を上げると言うムーブだった。これだと、左手も右手も効かず、体が上がらないのだ。

 小生の思い付いたムーブだと右手がややガバなので、少しは体が上がる。しかし、次の足が上がらない。もう少し右手を引き付けたい。もう少し奥のホールドが欲しい。そこで、奥のカンテの向こうの壁にホールドを探してみると、何とか持てそうな膨らみが有る。よし、ガバから次ぎはそのホールドを目指そうとトライするが、なかなかそのホールドに手が行かない。ならば最初からそのホールドではと試すと、離陸でき、なんとか体が上がってくれる。よしこれだ。

 次は左足を最初に持とうとしていたややガバのホールドまで上げる。が、なかなか上がらない。少し足を中継したり、左手も少し動かしたりしていたら、ズリズリと足が上がってきた。何とかなるかもとそのままもがく。もう少し足を上げたい。が、この辺が限界そうだし、何とかその足に乗れば乗れそうなので、思い切ってその足に乗って、右手をなんとかオポジションに変えたら、足がガバのホールドに上がってきた。しめた。その足に立って、上に抜ける。やったー。出来た。で、そのムーブを仲間に再現してもらったら、仲間は楽そうに登れた。

 このムーブ、黒本のトポより少し早めにカンテの三角のフェースに出てしまう感じがするし、少し奥のホールドを使うので、これで良いのか少し不安になるが、まぁ、登れた事にしよう。因みに小川山初の2級だ。

 相棒が起きてきて、我々が登るのをビデオに収めている。このビデオ結構嬉しいのだ。失敗している所を何十回と無く取っているのだが、そうしていないと登れた時の映像が取れないらしい。我々はいつ登れるかがわからないからだそうだ。

 仲間はまた雨月に挑戦している。小生も、この2級の課題をおさらいしようと頑張る。しかし、小生、その後どうしても再登できない。なんでだろうか。

 仲間が、小生の大きなマットを借りに来る。雨月の左に挑戦するとか。で、ついに雨月左を登ったとか。やったね。

 もう一人ジムの仲間がやってくる。彼は日帰りだ。3人で、下の岩のこの2級の課題やその左の3級の課題を登る。小生、左の3級の課題は前回何回かのトライで登ったのだが、今回は登れない。小生だけが登れない。やっぱり、2級の課題にトライを続けたために疲れてしまっていたのだろうか。そういうことにしておこう。

 仲間2人で雨月右に挑戦するのを見学する。日も陰り寒くなりだす。そんな中、先の仲間が雨月右も登る。雨月完全制覇だ。またまたおめでとう。彼はこの雨月が登れなくて夢にまで見たそうだ。本当におめでとう。多分ビデオも撮れていると思う。

 後から来た仲間が雨月右に挑戦する。小生も寒いから雨月に触ってみる。左足を左手の所まで上げるのだが、小生はそこまで足が開かない。従ってとっても足を上げるなんてムーブは無理。ストレッチが先の様だ。

 もう大分寒くなったので、仲間がまだ行った事が無いと言う屋根岩ボルダーに行って、易しい課題をいっぱい登る事にする。

 道端岩の前に荷物を置いて、先ずは一番上のピラミッドタキュールへ。すごく小さいが結構奇麗な石だ。ピラミッドタキュール7級を登る。カンテを使って頂上へ行くのだが、結構きつかった。次ぎは黒スラブ。踏み跡の下の岩だが、名前の通り黒い。で、なんか黒いせいか汚く見える。苔も生えてるし。ここはパス。

 次はマッターホルンだ。10級の課題を2本登る。ともに出だしが足が無く、やっと登る。仲間はトラバースの5級をやる。やっぱり5級よりずっと難しいとか。下がハングしたリップ上をヒールフックを使いながらのトラバースなのだが、小生の嫌いな課題なので小生はパス。

 どうもこういうあんまり人のやらない易しい課題は、グレーディングした人も、1回登っただけでグレーディングしているように思う。ここの課題は10級にしては難しすぎるように思う。ここまで来て10級の課題をやる人なんてそう多くはないのであろう。

 霜月岩に行って落ち葉5級に挑戦。ガバガバのポケットが繋がっていて、何とか登る。霜月3級は仲間が登るが、登れそうにないから小生はパス。

 皐月岩では皐月初段と花豆初段を見学。花豆なんかどう登るのか想像もつかない。その右の4級のマントルも出来る気がしない。

 もうすぐ暗くなると言う事で引き上げる事にするが、最後の最後として、道端岩の8級と10級を登る。8級は難しかったような気がする。多分。

 暗くなる前に天場へと途中急ぐが、この日は月が出ていてすごく明るそうだ。実際途中で暗くなったが、月明かりで明るかった。

 駐車場に着くと、テントの明かりが1つだけ見える。車も3台だけ。やっぱり殆どの人が日帰り。結局テントは2張りだけのようだ。

 我々は日帰りの仲間と別れ、前回目を付けていた141号沿いのレストランへ。

 このレストランは、入った時は我々のほかには客が1組だけだったのだが、川上第1小学校の団体が来て賑やかになった。団体の前で良かった。味もそこそこ、量も少し多目、このレストランは結構使えそうだ。隣には焼肉屋もあるし。

 そして、灯明の湯へ。ここも空いていた。すごくぬる目の露天風呂で少しうとうとしながら、結構ゆっくりと入浴し、花豆アイスを食べて天場へ。先のテントでは焚き火をしていた。

 テントに入ると少しマットが濡れている。相棒が仕舞った水のタンクから少し水が漏れてしまったようだ。でも、少しで良かった。

 シュラフを2枚重ね、羽毛のチョッキを着て寝ようとしたら、そのチョッキが一部凍っている。漏れた水がこの羽毛チョッキにかかり、凍ってしまったようだ。仕方が無いから、皮下脂肪が有って大丈夫そうな相棒の羽毛チョッキを借りて寝る事にする。

 ここまでやれば、やっぱりそう寒くはない。明け方少し寒い気はしたが、朝まで充分に寝る事が出来た。相棒は全く寒くは無かったとか。やっぱり皮下脂肪は偉大だ。

 朝はやっぱり寒かったが、日が照り出してから外で炊事をして朝食とする。もう一つのテントの人達はその朝飯の準備をする我々の横を通って岩場に出発していった。まだ寒いと言うのに、ルートクライマーはまめだ。

 風が少し有って、日が照っているとは言えやっぱり寒い。中が空っぽのテントが風でひっくり返ってしまった。そんな中、外で食事をしているとその横を自然観察の集団と思しき一団が通って行く。地元の人達か。何か少し恥ずかしかった。

 昨日の仲間は来ない様なので、我々だけで林のボルダーへ行く。仲間はこのエリアのボルダーは全部は見た事が無いと言う事だったので、クジラ岩の前に荷物を置いて、ウイスキーボトルを除く全ての岩を2人で偵察に行く。

 戻ると、東京からの3人組みが居た。内一人は知り合いであった。仲間はもう一人の人も知っているようだった。相棒は既にスパイヤーの一番右の9級に挑戦していた。

 ストレッチの後、スパイヤーの課題を全部やろうと言う事で、仲間は真中の5級を登る。小生は相棒のやっている一番右の9級を登る。

 このスラブの9級の課題は相棒がずっと登れずにいる課題だ。右のカンテの左を登るのだが、顕著なガバはなく、ホールドはスローパー気味なのだ。それも、結構高い所のホールドを持つ感じなので、相棒の様にリーチが足りないと、そのスタートのホールドを持つのも結構大変なのだ。それに、スラブだから、スタンスも、顕著な物はスタートのスタンスだけで、後はスメアリング気味のスタンスになる。リーチが有れば、スタートホールドからカンテを取れるのだが。

 次は仲間のやった真中の5級。これもスラブ。1手目、取れない。あれぇー。まずい。2回目、スタンスに立って、飛びついて、やっと止まった。やれやれ。

 さぁー、もう1年越しの小生の課題、その右の4級だ。

 このスラブ4級だが、殆どの人が、最初の少し高目のスタンスに足を掛け、地面を蹴ってその上の大きな甘い穴を取りに行っている。しかしこの課題は、黒本の著者に言わせると、スタティックに行く課題だそうだ。だから、小生は何とかそのスタンスにスタティックに立とうと努力しているのだが、ずっと出来ないでいる。右手は小さい浅いポケットと言うより少し凹んだ指1本の先っぽの腹が僅かにかかる本当に小さな穴、左手はやっぱり少し遠い同じ様な僅かな窪み、或は目の前のすごく甘い横皺。これらのホールドではどうしてもそのスタンスには立ち込めないのだ。

 例によって仲間に登ってもらう。仲間は最初のスタンスをその横に求め、その前にもっと下にスタンスを拾って、それを使って、そこに立ち込んで行く。見れば、確かにそこにはスタンスがある。それまでは余りにも皆が使うチョークの付いたスタンスに目を奪われ、その横のスタンスを見落としていたのだ。と言うよりも、それ以外のスタンスを探そうとはしなかったのだ。

 その下の方のスタンスは結構色々と探し、それらを使って立ち込もうとしていたのだが、尽く失敗していた。

 で、そのスタンスを利用させてもらって、試してみたら、それまでよりは立ち込めそうだ。足の置き方を幾つか試しながら、その後の何回かの試技で何とか立ち込めた。良し、そろそろと伸びあがって上の穴に手を伸ばすと、辛うじて届く。でも、結構甘いので、次に動けない。どっかに足を上げなければ。少し上に顕著なスタンスが有るのだが、少し高すぎて足が上がらない。そうこうするうちにバランスを失い落ちる。

 次にやったらまた立ち込めた。出来て見ればホールドへの負荷は殆どかける必要はないことがわかる。スタートのきっかけだけで後はバランスを取るだけだ。従って、左手はすごく甘い横皺。その手でバランスを取って、右手で上の穴を取って、その穴の上の方のより持てそうな所に左手を持って行く。が、届かないで落ちる。ようし、もう一度。今度は何とか次の足を上げてから穴の上を取ろう。

 立ち込んで、足を少し上げて、穴を取って、よし、少し効いてきた。次ぎはその穴の上に手が。よし、届いた。やった。やっと登れる。足を上げて上のリップを取ろうとする。結構遠い。見るとその横に大きな穴がもう一つ有る。それをねらって、やっと持って、ガバだ。よし、行けた。上に出るのに木が邪魔なので、エイ、木を持っちゃえ。どうせここまでくればどこでも上に上がれるのだから。

 やっと登れた。去年からの課題がやっと登れた。4級が登れた。嬉しい。本当に嬉しい。冬だから登れたのも有るが、完全に立ち込んで、スタテイックに登れたのがすごく嬉しい。スタンスを教えてもらったのだが、すごく嬉しい。

 そして、その後、その課題を4回も登った。結構安定して登れるようになった。スタンスに立ち込んで、最初は足が上がらず諦めていたスタンスに、手を使って無理矢理足を引き上げ、その足に再度立ち込んで、次の大きな穴を掴んでも登った。

 雨月岩での2級の課題は1回しか登れなかったが、この課題は何回も登れた。やっぱりそこが4級なんだろうが、やっぱり何回も登れたことがまたまた嬉しい。

 仲間がその左の方のライト・スパイヤー3級に挑戦している。なかなか登れないで居る。先の東京の人達も仲間に加わる。小生も加わる。色々な人が色々な登り方をする。そのうちの一人が左にホールドを求める。それを見て仲間が、あれだと、そのホールドを使って登る。で、登れる。続いて、この人は登って当然の人だったのだが、東京の一人も登る。

 真似をして小生もやってみるが、そのホールドが取れるものの、足は上がらなかった。東京のもう一人も同じ。

 仲間は、その横のレフト・スパイヤーに挑戦し出す。彼はライト・スパイヤーに挑戦しながらこのレフト・スパイヤーも触っていたのだが、ポケットを取ってからのホールドが分からないでいた所を、東京の人の一人にその人が以前登った時に使ったらしい次のホールドを教えてもらっての再挑戦である。

 で、結局彼はここも何回かの挑戦の後登る。スパイヤーの完全制覇である。小生は1級だから触らなかった。

 雪がちらつき始めた。わぁー雪だ。道理で寒いはずだ。駐車場方面の空は完全に雪模様だ。見ると東京の一人は完全装備である。でも、積もると言う雪ではなかった。この雪はその後弱くなったりしながらもずっと降っていた。

 東京のもう一人の人が叫びながらずうっとやっていたミダラ2段を見に行く。先ほどの一人も加わって2人で挑戦している。なんとなく白妙のニラを思い出す。でも、ニラよりはホールドは掛が良さそうだ。といっても2段。小生には別の世界だ。あくまでもニラに比べればと言う事だ。そのことを話すと、ニラのホールドはピンチなそうな。上はやっぱりかからないらしい。でもデッドで取りに行くのだから、やっぱり想像を絶する。

 この辺になると、このホールドに2秒止まって居られたから今日は調子が良い。前回は1秒だったけど、今回は1.5秒だから大分前進した。というような、そんな世界らしい。ものすごい世界の様だ。

 下に降りていったら、東京の人が穴社員を触っていた。で、出だしで足が滑ってしまった。見ると靴底が濡れている。雪による細かい水滴がマット一面についてしまったからのようだ。

 もう12時を回っている。そろそろ帰るとするか。1年越しの懸案も片づけたし、仲間は雨月を登ったし。

 駐車場に戻ると、昨日焚き火をしていた大分ナンバーの車は無くなっていた。

 今回もまた明野村の太陽の湯に寄って、ここでもすごくゆっくりして、韮崎から帰ってきた。

 中央道は三鷹までは全く渋滞無し。スキーを付けた車がちらほらと居ることは居たが、本当に空いていた。

 正月の小川山、どうしようかな。


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作成年月日 平成12年12月11日
作 成 者 本庄 章