小川山その20

2003年11月26日記
 三連休にジムの仲間2人と3人で小川山に行った。相棒はお休みである。

 相棒が作ってくれた弁当の出来上がりが少し遅れたため、5分程遅刻して、午後9時5分頃に何時もの待ち合わせ場所に到着する。既に仲間2人は待っていた。

 渋滞は全く無く、首都高から中央道に入る。

 勝沼インター出口が渋滞中との表示が現れる。こんなに空いているのに、何があるのだろう。そんなに急ぐわけでもないからと、勝沼で降りる予定を大月に変更する。

 大月インターの出口表示に導かれ進むと、2車線のまま数キロを走らされる。なんか変なインターだと思っていたら、下りの場合は一旦河口湖線に入ってからインターに別れるという構造になっているらしい。今まで下りで大月インターを出たことが無かったから、少しびっくりしてしまった。

 国道20号を大型トレーラーの後ろの後ろに付いて暫くゆっくりと走ると、道が広くなった所でトレーラーが道を譲ってくれる。前の自動車が走り出したので、くっついて走る。

 途中、工事中で一車線に規制されている所を、全く待つことなく通過すると、反対車線に自動車が並んで停まっている。やっぱり3連休が始まる前夜だから、上りは結構混んでいるのだなぁとか言いながら走っていると、普通では国道を走りそうに無い、首都圏ナンバーの乗用車が多数混じっていることに気付く。九州ナンバーの大型トラックも混じっている。なんか有ったのだろうか。

 反対車線は尚も自動車が繋がっている。絶対に何か有ったに違いない。多分、勝沼インター出口の渋滞もそのせいだろうという話になる。

 さすが、笹子トンネルの暫く手前で反対車線の渋滞は解消していた。

 ラジオで中央道の上りで勝沼インターと大月インターの間が通行止めだと報じている。やっぱりあの渋滞はそのためだったのだ。それにしても、渋滞が解消した上り車線の交通量が少ない。やっぱり三連休の始まる前夜といっても夜の11時前後の中央道の上りの交通量はこんなものだったのだと納得する。

 石和の少し先から甲府駅の裏を通って広域農道に続く道に入る。

 コンビニを探しながら走るが、中々コンビニが現れない。やっと出てきたコンビニに寄る。

 そのコンビにはお酒を売っていなかったので、少し走って再び現れたお酒を売っているコンビニに再度入る。ところが、その先、幾つかの、しかもお酒を売っているコンビニが現れる。まぁ、概してそんなものなのだろう。

 1時過ぎ頃だったか、何時ものダムサイトに着き、テントを張って、少しだけ宴会をして休む。

 朝、目覚めると、風が少しある。この場所は何時も風が吹いているような気がする。もしかすると風の通り道なのかも知れない。

 テントを畳み、トイレのある場所に移動し、朝ご飯の準備をする。ところが、その場所も風が強く、外でコンロを使うのが難しい感じだ。

 昨夜、相棒が作ってくれたお弁当が有った事を思い出し、自分達で朝ご飯を作ることなく、皆でそのお弁当を食べることにする。

 お弁当を食べていると、大型の観光バスが入ってくる。何だろう。続いてもう一台入ってくる。兵庫県のバスと滋賀県のバスの様だ。こんなに朝早くにここに来る為には何時頃に出発してきたのだろうかという話になる。夜中に高速を走って来たのだろうか。それにしてもどこに行くのだろう。信州峠は大型バスではきついし。

 もしかして、昨夜、増富温泉に泊まったのだろうか。それにしては、ここでトイレ休憩するだろうか。だって、増富温泉だったらここから15分もかからないからなぁ。殆どの人たちがトイレに行ってるしなぁ。頻尿ツアーだったりして。でも、若い人もいるよ。とまぁ、馬鹿話を始める。

 今度は神奈川のバスが入ってくる。これは大変、人が降りてくる前にトイレに行かなければと、仲間2人が駆け出して行く。

 バスに近づき、バスの表示を見ると、秘境通仙峡の紅葉狩りと八ヶ岳横断道路ツアーと書いてある。通仙峡ってどこだろう、聞いたことが無い。後で調べて分かった事なのだが、我々がよく走る、増富温泉の奥の渓谷が通仙峡というらしい。全く知らなかった。

 そのバスは、増富温泉方面に走って行った。

 我々は、信州峠を越え、川上村の大きなスーパーに寄って昼食と夕食の買出しを済ませ、廻り目平に入る。

 前回と同じ場所まで入る。11月の下旬だというのに、人がいっぱいいる。人が来ないうちにと、良さそうな所にテントを建てる。

 仲間が、「幻の光」という課題を登りたいということだったので、一応マットを背負って石楠花エリアに行く。途中、結構ボルダラーが居た。

 忘却岩の前に荷物を置き、それぞれがアップを始める。小生も用意を整えていると、何時も持っている靴拭きマットが無い事に気付く。忘れてきてしまったようだ。下地が濡れている。靴が濡れてしまう。でも、仕方が無いから今日は足拭きマットは無しでやるしかないか。

 アップをしようと、その付近で一番易しい課題のあるもぐり岩を見ると、既に仲間がそのもぐり岩にある「幻の光」を触っている。邪魔するわけに行かないしなぁと、また少しぼけっとする。

 合間を縫って、もぐり岩の10級と6級の課題でアップする。ここは枯葉が積もっているから、靴は濡れなかった。

 なんだか凄い集団がやってくる。某ジムの集団らしい。しかし、どうやら岩の見学ツアーみたいな感じで、そのままどこかに移動してくれた。

 忘却岩の2級のマントルを触ってみる。下地のスタート地点に丁度石が少し出ている。そこに乗って出れば靴は濡れない。その石に乗ってスタートする。しかし、手順が悪くて、2手位で落ちる。

 仲間に、足拭きマットを忘れたと話すと、ここにマットが落ちていると教えてくれる。見ると、土色をした、20cm角位のマットが置いてある。誰かの忘れ物だろうが、ありがたく使わせて頂く事にする。

 少し考えて、少しやり方を変えて、少しだけ手が進む。しかし、斜めのクラックから手が上に上がらない。多分、あそこに両手を持ってこなければだめなのだろうと思いつく。

 今月の初めから、とあるボルダーエリアに篭もっている仲間が現れる。今回一緒の仲間の一人がこのエリアにいることを事前に彼に知らせていたらしい。

 彼はシャルマのプロジェクトを昨日登ったとか。今回、既に幾つかの新しい四段とか五段を登っているらしいから、今回は相当の成果があったようだ。

 その彼が、2級のマントルを登っている。見ると、さっき考えたとおりに手をそろえて上のホールドを取りに行っている。やっぱりそうやるんだ。

 左手クラックのサイドのガバチックなカチ、右手その上のクラックの少し悪いホールドでスタートして右足を凄く良いスタンスに上げ、左手を寄せて右手をそのクラックの切れる辺りの角っこのホールドに飛ばす。足を踏み変えて、左手をその横に添え、右足を開いて上のスローパーチックなホールドを取る。再び右足を左足の所に踏み変えて、左足はクラックにヒールを架ける。その左足と右手で体を上げ、リップを押さえ込むらしいんだが、体を上げてゆくと、右手がだんだん心もとなくなりだし、滑りそうになってくる。手が抜けると怖いから、諦めて飛び降りる。

 まぁ、多分そんなムーブだったと思うのだが、やっとそこまで漕ぎつける。しかし、その先のムーブは、右手の効き具合からして少し無理そうだし、少し被っているから、疲れてきてもいるしで、その課題は一応それで終了とする。

 仲間が、流れ岩の「流れの中に」という課題を登っている。先に、その仲間と、「ここは易しそうで意外と難しいのだ」といいながら眺めていた課題である。

 僅かに寝た、ほぼ平らな平面で、その面の真中辺りの高さにガバホールドがある。そのホールドでスタートして、木が生えている辺りまで登り、その木を避けながらその木の右の方のリップをマントルするという課題である。このマントルが核心らしい。

 最初、左のカンテを使えるかと考えて、少し探って見たが、左には行かないと言われて、それは直ぐに諦める。

 スタートスタンスを探してみたが、なかなか良さそうなスタンスが見つからない。右のほうに少し効きそうなスタンスをやっと見つけ、ガバホールドを両手で持って離陸してみる。なんとなくバランスが良くないが、出られることは出られる。

 次の手は、右のほうのミリカチというか、指先がわずかにかかるガストン気味の斜めの線状のホールドである。しかし、このホールドに体重を預けることは出来ない。降りて次のスタンスを探す。

 右斜め上に小さなカチスタンスを見つける。これか。チョークで印を付ける。

 離陸して、左足は適当にスメアして、右足をそのカチスタンスに上げてみる。しかし、そのスタンスが見えにくい。チョークで印を付けたといっても、少し多めにチョークが付いた指の腹で撫でただけだから、分かりにくい。何とか探りながら足を上げたが、上手く乗れていないようだ。従って次に動くことが出来ない。降りる。

 再度スタンスを確認して、足をそのスタンスに置く。今度は結構しっかりと置ける。右手を探ると、丁度頭の上辺りにやはりミリカチチックなガストン気味のピンチで僅かに持てそうなホールドがあるので、持ってみたが、方向が悪く、あまり良くないので次に動けない。何しろ、左足のスタンスが無いのだ。

 その少し右のほうにスタンスになりそうなところが有るから、それを使えないかとスタートの足を変えてみたりしたが、バランスが悪くなって、出来そうに無い。

 その辺のムーブを何べんかやっているうちに、何とか右足のカチスタンスにしっかりと立てるようになってきて、リップに手が届くようになる。しかし、リップまで伸ばした手はいっぱいいっぱいで完全に伸びきってしまっているから、ムーブが起こせない。全く動けないのである。やっぱり何とかもう一歩上がりたいとスタンスを探す。結果はやっぱり見つからない。仕方がない。諦めるか。

 仲間のもとに戻り、どうやったか聞くと、やっぱりガバホールドをサイドに引っ張って右足を少し高く上げてリップを取った後、左足をガバホールドまで上げてマントルしたらしい。やっぱりそうかと思ったが、足を上げる算段に失敗しての敗退だから、そのまま諦める。

 山篭もりの彼が昨日成功した課題の写真を撮りたいというので、皆でビクターの岩に移動することにする。

 途中、「神の瞳」という課題のある瞳岩に寄る。仲間の一人はその先の隠れ岩の「ミケ」という課題を見に行ったようだ。

 この岩の沢側に以前中々登れなくて苦労した「目薬」という7級の課題があることを思い出し、やってみる。

 以前は、余り良くない左手のホールドと滑りそうな足で立ち、右足を少し高いカチスタンスに上げる所が中々出来なかったのだが、今回は、何とか右足が上がり、抜けることが出来た。

 もう一人の仲間もそこをやったのだが、なんかすっきりしないともう一回やっている。これって、やっぱり7級ではないとの説にその仲間も賛同してくれる。

 その仲間が「神の瞳」という課題を触り、一撃する。なんか易しいらしい。山篭もりの仲間が来て、この課題は易しいといい、小生の二本目はこれではないかとも教えてくれる。

 この課題、最初は左のカンテが苔で使えなかったので、ほぼ直上したために今のグレードが付されたのだが、現在は左のカンテが使えるので易しくなったとの事である。

 触ってみたが、ホールドがスベスベだし、右足を高く上げ、次のカンテを取ることが出来ず、やはりまだ無理と諦める。

 途中で別れた山篭もりの仲間が、ビクターの岩に行く林道の途中で、自分の自動車で歩いていた我々に追いついてくる。見た目は綺麗な、近づいてきた時に一瞬振り返らせる位に大きな音を発てる自動車である。

 ビクターの岩には誰もいなかった。

 山篭もりの彼がビクターの沢側のプロジェクトになっていた課題に取り付いている所を写真に撮り、仲間の一人がその課題に触る。

 出だしの次のムーブは大きく両手を広げてアンダー気味のホールドを取りに行くらしいのだが、そこからのムーブが難しいらしい。山の彼もそこのムーブだけを何回か練習したらしい。仲間の一人もそこの所のムーブだけをやるために、足台となる石を山の彼がセットする。

 石の場所が中々決まらず、やっと手が届く位置を見つけ出したのだが、手がいっぱいいっぱいで、動くことは結構厳しいらしかった。

 皆で裏に回り、もう一人の仲間が The Two Monks を触りだす。小生はモファットトラバースをやりたかったのだが、仲間と競合するので、前々から疑問に思っていたコンパウンドのムーブを山の彼から教わってやってみる。

 このコンパウンドのムーブだが、やっぱり左手で斜めのミリカチを持って、その下のほうのスメアのスタンスでスタートし、右斜め上のポケットを右手で取り、リップに抜けるというものらしい。そのスタートのスタンスがスメアだから凄く滑りやすいのである。

 そのスタンスに左足を乗せ、左手はミリカチで耐えて右手を伸ばすのだが、僅かに届かない。何回かやってみたがどうしても届かない。戻って、山の彼に届かないと言うと、右足で出てみたらと言われる。また戻ってやってみたら、確かに届いた、しかし、そうするとそのスタンスで踏み変えなければならない。リーチがいっぱいいっぱいだから、とっても踏み返られない。やっぱり、小生には無理なのだと諦める。

 仲間が休んでいたから、モファットトラバースをやってみる。

 手順を思い出せず直ぐに落ちる。で、手順を思い出す。少し待って、思い出した手順でやってみたら、以前出来た所までは出来たが次には行かなかった。すると、仲間がその右手は1つ手前のホールドに置いて、右足を残したまま次の手はクロスで取ると教えてくれる。

 少し休んで教わった通りにやってみたが、とっても身体張力が足りず、クロスの手が出なかった。従って、この課題もそれでお終い。

 次は、ビクターである。

 仲間が、スタティック出る方法を試みる。しかし、手が届かない。すると山の彼が、左足を少し左のスタンスにキョン気味にやれば届くと教える。それで仲間はスタティックにそこを登る。

 小生もそのスタティックなムーブを真似てみる。しかし、手が悪いから、そのスタンスに左足を置くことが出来ない。これも直ぐに諦める。まぁ、小生には無理な課題ばっかりだから、当然ではあるのだが。

 The Two Monks を触っている仲間を残し、3人で、やはり写真撮影のため、静かの海のある不可能スラブの岩に移動する。

 不可能スラブの岩の前には荷物がいっぱい置いてあり、周りの岩に結構人がいる。しかし、その岩には誰もいない。

 山の彼が「豊かの海」を登る所を仲間が写真に撮る。

 ビクターに残っていた仲間が合流する。

 仲間が「静かの海」を触りだしたので、小生も触ってみる。一応今までの最高到達点までは一回で行く。で、これもそれで終わり。なんたって三段ですから。

 山荘から放送が流れる。そろそろ暗くなりだす頃である。ということで、本日のボルダリングは終わりにする。

 山の彼と別れ、テントに戻って、今朝方仕入れた材料でおでんを作り始める。

 先ずは白菜である。白菜? そんなのおでんにあったっけ。まぁ良いじゃないですか、おでん鍋ということで。

 何しろ材料のボリュームが凄いから、3回に分けて、昨夜の焼き鳥も入れながら、うどんまで入れて、おでん鍋を作り、3人でお腹いっぱいに食べる。久しぶりの満腹感であった。

 続いて、ささやかな宴会の後、11時頃には就寝する。

 朝方、寒さと尿意で目が覚める。5時である。

 テントから這い出すと、仲間の一人も這い出してくる。やっぱり冷えたのだろうか。

 朝の8時頃までに都合3回テントを這い出す。相当に冷えたようだ。

 広場の駐車場の方には日が当たっているようだが、八幡沢沿いの我々のテントサイトには未だ日は当たってはいない。テントの中でもシュラフから人の吐く息が真っ白に立ち上っている。川上村でマイナス4度くらいまで冷え込むとの天気予報だったらしいので、やっぱり相当に冷え込んだのだろう。自動車の温度計を見ると、まだマイナス4度であった。

 9時頃に起き出し、凍りついた昨夜の鍋の僅かな残りに新たにうどん二袋を加え朝飯を作る。十分に汁を吸ったうどんは十分に満腹感を与えてくれた。

 テントを畳み、自動車を広場の駐車場に移して、ルートをやるという仲間2人にくっついて屋根岩第2峰に行く。

 途中、靴を忘れてしまった仲間が靴を取りに戻ったので、2人で先に登ってゆく。

 既に先客がいたようだが、我々の目的のルートの取り付きには誰もいなかった。

 最初に、ボルダラーの仲間が、確か「カブトムシ」というルートに取り付く。

 一本目のピンが遠い。途中でキャメロットをかます。1ピン目から2ピン目のクリップに行く所が、ホールドの向きが悪いらしく、なかなかピンの方向に動けない。傾斜は無いから、レストは出来るらしいんだが、なかなかムーブが起こせないらしい。

 って、ボルダリングじゃないから、この辺にするが、結局、2人目の仲間が何回かテンションを入れながら上まで行く。その姿を少し離れた所から写真に収める。

 先に敗退した仲間も、テンションを入れながら終了点まで行く。同じく、その姿を写真に収める。

 一応2人の姿を写真に収めたので、最終目的地は「神の瞳」だと仲間に告げ、一人だけで下に降りる。

 途中、「石の魂」が気になったので、寄ってみると、知り合いの人がいて、山の彼に会うかと聞かれたから、明日は山の彼のいるエリアに移動する予定であると伝えると、山の彼への伝言を頼まれる。

 「石の魂」の下にマットが敷かれていたので、そのマットをお借りして、一応「石の魂」を触ってみる。しかし、スタートのホールドを1つ下に間違えてしまい、一手目が取れなかった。しかし、ここで指の皮を減らしてもということで、一回だけでお暇する。

 やっぱり林のボルダーエリアも気になってしまったので、クジラ岩に寄ってみる。

 今日は、駐車場は昨日よりもいっぱい自動車が停まっていたので、確実に昨日よりも人が多そうである。クジラ岩の周りには物凄い数のボルダラーがいた。

 以前御岳で何回かお会いした人に出会う。久しぶりの挨拶をする。

 自動車に戻り、一応パッドを背負って石楠花エリアに行く。

 車道を少し下り、エリアに入る太い道を使って沢沿いの遊歩道まで行く。そこで、「神の瞳」がそこより上流だったか下流だったか分からなかったので上流に行ってみる。

 少し歩くと扇岩が見える。間違えたようだ。戻って、遊歩道から瞳岩に降りてゆく。

 「神の瞳」の前にパッドが敷いてあり、チョークバックが置いてある。近くには荷物も置いてある。しかし、人は見えない。

 少し周りを探してみたが、人の影が見えないので、一応アップということで、昨日登った「目薬」の左の10級のスラブを登ってみる。10級って結構難しいのだなぁと思いながら、「目薬」も登る。

 誰もいないようだから、パッドをどかして、「神の瞳」を触ってみる。

 この「神の瞳」はほぼ垂直の壁の途中から始まる凹角状のコーナーに僅かなクラックが走っているのだが、そこを登る課題である。

 スタートは、左手が凹角の左のカンテの側壁にある甘めの下引きのカチ、右手はコーナーのクラックの淵のサイドホールドを持ってスタートし、右足を高めに上げて、凹角の左のカンテを右手クロスで取って左のリップに左手を飛ばすという感じらしい。

 先ずはカンテを取る所を目標にスタートしてみる。どうせリップまで行かないからと、パッドは敷かなかった。

 やっぱりカンテは取れない。休んでいたらパッドの主が現れる。女性である。

 暫く無言で、彼女は、パッドを敷き、終わったら小生のためにパッドを外し、小生は彼女のムーブを観察しそれを参考にしながら取り付くということをお互いに繰り返す。

 最初に教わった右足では高すぎるので、その少し下のスタンスでスタートし、そこから右足を高く上げて、このスタンスに体重を預けてカンテを取りに行ったらカンテが取れた。なるほど、そうするのか。彼女のムーブの分析の結果である。しかし、足が分からずそこで落ちる。

 暫くして、その彼女にどこから来たかと聞くと東京からと言う。ある人がここはやさしめだから小生の2本目の課題にすればと教えてくれたと話すと、山篭もりの彼かと聞く。一瞬どうしてと思ったが、どこのジムかと聞くと、その彼のいるジムだという。そうか、多分○○さんかと思ったが直接確かめることはしなかった。

 パッドに座りながら、そのパッドを使っていなかったから、このパッドはリップまで行ったら使うつもりだと話したりしながら、またお互いに試技を繰り返す。

 その彼女はカンテを取り、右足を右の壁の途中のスタンスに右足を上げ、左手をカンテの近い所に寄せて右足を凹角の側壁にヒールしてクラックのリップ直下のホールドを取りに行くという様なムーブを行っている。なるほど。

 リップを取るのはこのスタンスだと、凹角の始まる所の下にあるスタンスを教えてくれたので、カンテを取って左足をそのスタンスに持っていったら、リップが意外と簡単に取れた。右足を凹角のスタートホールド付近に寄せて、クラックのリップ直下のホールドをとりに行ったら、それも取れた。で、やっぱり、左手のリップを探っていたら落ちた。

 彼女が、その時はパッドを強いていなかったから、彼女のパッドを敷こうかどうか迷ったと言ってくれる。その彼女、ずっと小生のスポットをしてくれていたのである。口には出さなかったが、本当にありがたいことである。

 その後も、パッドは敷かずに、2回位リップを探って落ちることを繰り返したら、カンテが取れなくなってしまった。彼女もそうだったのだが、足が滑り出したのである。既に日が翳りだしたから、多分気温も下がってきたのであろう。

 既に小生のエネルギーも切れかかってきたようなので、そこを離れ、忘却岩に行ってみる。

 凄い人である。20人は居ただろう。

 こっちを見て、なんか言っている人が居る。えっ、よく見ると、小生の行くジムに来ている若者である。どうして。よく見ると、3人組である。昨夜は寒かっただろうと聞くと、今朝来たという。昨夜の1時頃に着いたらしい。その時の川上村の役場の前の温度計はマイナス3度だったらしい。

 彼らは引き上げる所だったらしいので、一応明日の予定を話し、別れる。

 忘却岩の下にはパッドが敷かれている。しかし、「忘却の河」のためのパッドらしく、マントルの下にはマットは無い。よしと、順番を待ってマントルに挑戦する。

 手順通り進み、右手をスローパーに上げて左足をフックし、左手でリップを探る。しかし、良い所が見つからない。探っている間に右手が抜ける。少し横になって落ちてしまう。ギャラリーが多いから、少し張り切ってしまって、ちょっと失敗してしまったようだ。反省しなければ。

 それを見ていた、「忘却の河」の下部のトラバースをやっていた若者が、マントルは左も有るらしいといって、小生のやろうとした左側に抜けるマントルに挑戦する。しかし、リップを掴みきれず、落ちる。やっぱりあのマントルは難しいのだろうか。

 また順番を待たなければならないし、ここはこんなものだろうと、昨日やっていた「流れの中に」に行ってみる。

 パッドが2枚敷かれ、若者が何人かで取り付いている。ここも順番待ちなのか。でもめげずに順番を待つ。

 一人の若者が、スタートホールドに立ち、「一撃か」といいながらリップを探っている。じつは、そこからが核心なのだが。もしかするとそこまで行くのにカンテを使っていたような気もするが。

 やっぱりホールドもスタンスも見つからず、リップを掴んだから終われで良いかとか言っている。ちょっとお節介かとも思ったが、やっぱり岩の上に立たなければと言うと、木を掴んでも良いかというから、そこからが核心なのだと言ってあげる。

 その彼、結局飛び降りる。

 少し空いたようなので、パッドを借りて、取り付いてみる。

 ガバホールドに両手を添え、昨日と同じスタンスでスタートし、左足スメアの後、昨日より高いところにちょっとした窪みを見つけたので、その窪みに右足を上げ、スメアで立ちこんでみたらリップに余裕で手が届いた。この足か。先ず左足をスタートホールドに上げ、続いて両足でそのスタートホールドに立つ。

 リップを探ってみたが、ホールドらしきものは無い。足も置けそうなところは見当たらない。どうしようか少し迷ったが、リップの傾斜は無いので、左手を返し、それに体を預けて、右足の膝をリップにかける。その膝で左足の膝もリップに架ける。両膝がリップに上がったから、そのままリップの上に立つ。出来た。

 若者が何人も見ているから、なんとなく誇らしい気になる。まぁ、何時もの至福の時である。

 そろそろ仲間も帰るであろう時間なので、気を良くして引き上げる。

 玄関岩の前に何人かの人が居る。仲間である。玄関岩のクラックやっているらしい。暫く見学して、皆で自動車まで戻る。

 今夜は、温泉に浸ってから、いつものとあるボルダーの天場に移行する予定である。

 ポリタンに水を詰め、幕営料を払って、未だ時間が早いからと、一路スーパーを目指す。

 明日の朝と昼の準備をし、川上駅前の食堂に行く。途中、よく寄る焼肉屋は閉まっていたようだった。

 久しぶりの肉となる焼肉定食を食べる。最近はどうしても魚料理が多かったのだ。

 いよいよ温泉である。

 何時もとは反対方向から入っていったから、何時もとは違う駐車場に自動車を停め、温泉に入る。

 山の彼の仲間に会う。山の彼も来ていると言う。

 ここの源泉は30何度かの温度だから、源泉風呂は冷たい感じである。一応源泉風呂に浸かり、沸かし湯で温まる。

 我々とは別の源泉の湯船に入っていたらしい山の彼がやってくる。小川山で頼まれた伝言を先ず伝え、色々と皆でお話をする。

 その後、我々3人だけでワイン湯とかの温目の湯に浸かり、都合1時間位湯に浸かってから天場に移動する。

 その後、例によって、ささやかな宴会の後就寝するのだが、その部分以降はとあるボルダー編に譲ることにする。


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作成年月日 平成15年11月26日
作 成 者 本庄 章