小川山その19

2003年10月22日記
 土日にジムの仲間2人と3人で湯川の岩場から小川山に行ってきた。

 金曜日の夜に千葉を出発する。中央高速を須玉で降り、何時ものコンビに寄って、塩川ダム迄行く。湯川の近くには良さそうなテントサイトが無いということで、塩川ダムの適当な所で寝ることにしたのだ。

 何時もとは違う場所でテントを張る。メインの道から少し外れているから、風が少し強い感じはするが、静かで非常に良い所である。お陰で皆が起きたのは9時近かった。

 大急ぎで食事を済ませ、信州峠から湯川まで行く。

 湯川では、11時頃から5時過ぎまで、本当に久しぶりでルートを登る。お陰で5.8のルートでテンションが入り、頑張ってしまったので、非常に消耗してしまった。結局終了点まで行ったのもこのルートだけ。お恥ずかしい結果であった。

 夜は、岩場でいっしょになった方を誘い、佐久方面に少し行った丼屋で夕食を採る。この方、岩場に一人で来ていたアルパインの方で、非常に楽しい方であった。

 その方とはそこで別れ、ナナーズで買い物をして、廻り目平まで行く。小川山は3人とも、混んでいる所は嫌だと敬遠していたため、久しぶりである。間違いなく今期は初である。

 ゲートを入り、何時もの駐車場ではなく、西股沢沿いの林道を進むが、車が一杯で停める場所が無い。八幡沢の出会い近く迄行ってやっと1台分のスペースを見つけ、付近にテントサイトがあるかどうかを探る。幸い空きスペースがあるということで、車を停めなおし、テントの支度をする。

 小生ともう一人はルートは殆どやらないものだから、昼間の頑張りが祟り、早々に就寝する。

 翌朝、7時頃に目を覚ます。仲間はまだ寝ている。テントを這い出し、少し用事を済ませて、再びテントに戻る。

 湯川では折角持ってきたトポを忘れてしまったものだから、思い出しつつトポを少し眺めていたが、それ以外にはすることが無いからまた寝袋に入りうとうとする。

 9時になり、日が照ってきてテントの中が暑くなってきたので、皆で起き出し、外で朝食の用意をする。回りの人達は多分もう出かけたのであろう。静かである。

 本日もルートに行くつもりであったのだが、3人でルートというのも余り効率が良くないし、これといって登りたいという意欲も湧かなかったし、彼らは屋根岩2峰辺りに行くといっていたので、小生は屋根岩下ボルダーエリア辺りで登っていると言うと、結局、仲間もボルダリングをすることになった。

 この自動車の数、マットを背負ってうろうろしているボルダラーの数からすると、どこもかしこも大混雑であろうとの予想の下に、多分空いているだろうフェロモン大王に行こうということになる。

 天場の直ぐ下の沢を渡渉し、フェロモンの大岩に行く。

 誰もいない。しかし、岩はなんとなく湿気ている気もする。日陰の下地の岩は滑っている。

 仲間は真中の凹角状を真っ直ぐ上る3級の課題を触りだす。少し難しそうだったので、小生はその右横の5級の課題をやってみる。

 どこをどう登るのか余りはっきりしなかったが、適当なカチで右足をリップまで上げ、その足に乗り込んで上に抜ける。

 3級の課題はリップのマントルが悪いらしい。下部の出だしを少し触ってみたが、その先の少し遠いホールドが取れそうに無かったので、離陸しただけで降りる。

 3級の課題を登った仲間が、その凹角の右のメロンパンとかいう2級の課題をやりだす。ムーブが良く分からないらしい。結局ランジかも。で、リップに跳んで程なく終わる。

 仲間がその岩の上流側の右のほうのスラブが面白いというので、そのスラブを登る。例によって、仲間が登った後、小生も登る。6級らしい。

 フレークを使って、少し高い目のスラブを登るのだが、石の上からスタートする感じで、下地は良くは無い。落ちたら結構危ない課題でもある。

 出だしは問題なく出たが、途中、縦フレークを使って、そのフレークの左側に出て行くところがバランスが悪く、少し苦労して、怖い思いをしながらやっと上に抜ける。

 岩の上の松ノ木の茂みの近くに砂にまみれたスプーンを見つける。拾ってみるとなんとチタン製のスプーンである。そのスプーンがなぜそんな所にあるのか不思議では有ったが、そこにあったらそのうちどっかに流されてしまうだろうと勝手に考え、勿体無いからと拝借することにする。

 フェロモン大王はピンが抜かれた跡があるのだが、その一番高いリップの下は大きな岩が2つ3つあり、絶対に落ちられない課題である。怖いし、なぜそこまでリップをトラバースしなければならないか、その必然性が分からん、とかなんとか言いながら、その少し手前でマントルするベレンコ中尉という課題に挑戦する。しかし、マントルが結局はもう少しリップを先まで行かなければならないらしく、岩の上にもなってしまうので、2人ともマントルの前で飛び降りる。

 適当に遊んだからと、そこは終わりにして別の所に移動することにする。

 来る時は、濡れた岩の上に静かに足を置いて次の石に跳んだのだが、帰りはその濡れた石に飛び移る訳には行かないので、小生だけ、少し上流に迂回して対岸に渡る。仲間は来た所を戻る。何しろ沢は、地下足袋にわらじで、水の中をジャブジャブ歩くことしかしてこなかったので、小生は石を跳ぶ渡渉が非常に苦手なのだ。おまけに跳躍力も飛躍的に衰えてしまっているし。渡渉のあるエリアは嫌いである。

 次は、枯れ沢をそのまま登っていったただの大岩に行こうということになる。

 その沢の途中でキューブやビクターの岩の前を通るのだが、キューブの前には珍しく人が一人いた。しかし、ビクターの沢側には3〜4人しか人がいない。ビクターの裏から戻ってきた人がいたので聞いてみると、裏にも4〜5人しかいないらしい。キャンプ場のあの人達はどこに行ってしまったのだろうか。

 相変わらずただの大岩は高い。左端にはハンガーも打たれている。ボルダーとしてそのハンガー沿いを含め3本ほど課題が設定されているらしい。

 最初は昨日の疲れから本日は怖いのはやらないといっていた仲間が、荷物を降ろし、トライを始める。やっぱり見てしまうと登らずにはいられなくなるのだろうか。

 何回かトライするが、途中の遠い左の方のホールドを取りに行くのが悪いらしく、そこの手前で降りて来る。

 以前ここを登った仲間が、登って見せてくれる。結構思い切り跳んで左のホールドを取りに行く。そんなに低い所ではないし、横っ飛びという感じになるし、下地は悪くは無いが石は有るし、よくあれだけ思い切りよく跳べるものだと感心している間に、どんどん高度を上げ、天辺に立つ。一連の動きを一応はデジカメに収める。

 直ぐ上辺りから人の声が聞こえる。なんとかという有名なスラブ壁があるらしい。暫くすると女性が降りてくる。また一人、また一人、結局ばらばらと女性ばかりが4〜5人降りてきた。

 次はどこにするか。AITがやってみたい。で石の魂の岩に行くことにする。

 駐車場には自動車がびっしり。2〜3台分しか空いていない。昨夜、ここに来ていたらとっても空きスペースを見つけることは出来なかったであろうと話しながら、水晶スラブ下を目指す。

 犬岩の前に幾つか荷物が置いてあり、頭痛に取り付いている人が一人いる。しかし、静かの海の下にはマットは無い。頭痛を触っている人を見たのは初めてである。

 雨月岩の前には誰もいない。じゃあここにするかと荷物をおき、仲間が雨月に挑戦を始める。小生は雨月岩の下の岩を触る。

 クラックの右の、カチ、カチ、リップというムーブが中々できなかったので、やってみたら一発で出来た。3級が登れたと喜んだのだが、トポを見ると、3級の課題はその右らしい事が判明する。3級にしては易しすぎる気はしたのだが。

 3級の課題をトポと見比べると、右のカンテで離陸するらしいことがわかったが、次の手が見当たらない。左斜め上の遠いカチだろうか。離陸して飛びついてみたが届かない。何回かやったが、全く駄目。仲間も駄目だったらしいので、石の魂に移動する。

 一応ボルダーマットを背負っているから、歩くと疲れる。水晶スラブ下のエリアに着くまででハアハア言ってしまったから、石の魂へもハアハア言ってしまった。

 石の魂にも人はいない。仲間はAITをやり、小生は石の魂をやる。

 石の魂の下地は木の根っこが出ているので、迷わず担いできたマットを敷く。

 程なく、男女2人ずつのグループがやってくる。そして小生のマットの横に2枚の大きなマットを並べる。そしてそのうちの一人が石の魂を触りだす。そうか、小生は人がマットを敷いていると自分のマットは敷かずに人のマットを借りていたが、こうやって並べるのか。なるほど。だから、そんな所には絶対に落ちそうに無いところにまでマットが敷かれていたりするのか。

 スタートは最初は1つ下のホールドだと思ったのだが、その少し斜め右上にもう少し良いホールドがある。少し手を伸ばせばそのホールドがもてる。

 左手は小生は左のほうの水平の甘いカチを使ったのだが、普通は右手ホールドの直ぐ左下の最初に右手だと思ったホールドを使うらしい。

 この石の魂の出だしなのだが、以前は普通の人のスタンスでは離陸が出来ず、普通の人とは違うスタンスでやっと離陸していたように思うのだが、今回は、普通の人のホールド、スタンスで離陸が出来る。そして、次の左手が取れる。が、左足が切れ、落ちる。

 仲間の一人もトライする。足を見ると、1つ右側の足である。その足を真似したら、左手が取れた。

 後からきた人の一人は、この石の魂の穴を使うバージョンをやっている。この穴を使うバージョンは1級で、跳ぶバージョンは初段らしいのだが、多くの人が、跳ぶ方が易しいという。中には1級バージョンは出来る気がしないという言う人までいる。であるから、穴を使うバージョンでトライする人は今まで見たことが無かったのだ。

 仲間が、マットがほしいというので、小生のマットをAITの下に移し、その後は後から来た人のマットを借りる。

 後から来た人がカンテの凹角の課題を始める。この課題は以前に登ったことは有るのだが、その後何回か挑戦しても再登出来ないでいる課題なのである。

 スタートは凹角のリップとその左の大きな穴で離陸するらしい。そうだったのか。やってみたら離陸できる。そうか、それで、左手凹角のカンテか。やってみたが、左手が、体を上げてゆくと甘くなってしまう。

 AITの左のカンテのマントルの課題が結構難しかったことを思い出し、触ってみる。

 簡単にマントルできる。こんなにやさしかったかなぁ。7級だからこんなものだったのかなぁ。

 仲間の昔の仲間の3人組がやってくる。物凄く久しぶりらしい。そして、仲間はその人達の間ではどっか外国に行ったきり死んでしまったということになっていたらしい。まぁ、その人達の世界はそんな世界だから。

 その仲間の一人はこの石の魂に物凄く打ち込んだ末に登ったらしい。その人は小生も顔を見知っている人である。

 もう一人の人が、スタートホールドを触って、こんな痛いホールドは持てない。幻の光のほうが易しいよという。幻の光とは確か三段の課題である。そっちのホールドのほうが持ちやすいということらしい。確かに、石の魂のホールドは、それを持つために指の皮を厚くしておかなければ痛くて持てない、そんなホールドではある。

 スタートして、左手は人差し指を僅かな凹みに架け、他の指を被せてガストン気味に右手を取りに行く。その右手は普通に持つと凄く悪い。何回目かでやっと触ったのだが、余りの悪さにそのまま落ちる。全くかかる気がしなかった。

 この右手だが、持ち方にコツがあるらしい。このホールドは中指から小指の3本指のサイドと残りの2本指のピンチの併用らしいのだ。後から来た人の一人が指は離して持つのだといっていたのはそういうことだったらしい。

 その後から来た1級バージョンをやっている人が遂に最後の穴を取る。そして、その左手をリップに飛ばす。1級バージョンはそうやるのか。参考にさせてもらおう。っていつのことになるやら。

 仲間の昔の仲間は帰る。後から来た人達も帰る。

 仲間のもう一人が石の魂をやりだす。この仲間、マットは使わないのである。しかし、石の魂の下地を見て、一瞬マットを使おうかと言うが、マットなしで跳んで、無事着地が出来たので、やっぱりマットは使わずにやるという。しかし、マットがないと、思い切り飛べないから、難しくなるらしい。リップに手はかかっているから、マットがあればできるのになぁという感じであった。

 日が蔭って寒くなってきたので、MNPという課題がある分岐岩に行くことにする。

 ところで、このMNPだが、なんの略なのかということを石の魂に後から来た仲間の一人が話していた。答えは「まぁ、なんてすてきな、プロジェクト」なんだそうだ。真偽の程の責任はもてないのだが。

 分岐岩には10人ほどの人がいる。これじゃぁ駄目だ。

 この近くに「ローリングストーン」というすばらしいルートがあるというので、3人で見に行くことにする。

 カモシカ遊歩道を暫く登り、ちょっと広い所からちょっと脇に入るとある課題である。やっぱり息が切れてしまった。

 分岐岩に戻っても人が減っていなかったので、林のボルダーに行くことにする。

 鯨岩の前は物凄い人である。殆どのボルダラーはここにいたのかというくらいに人がいる。それを横目に、目的としたシェルにゆく。シェル・レフトが目的である。

 シェル・ライトは2級なのだが、マントルがやらしいらしいので、小生は仲間に勧められたスイールに行く。

 スイールはスタートホールドが真っ白だったので直ぐに分かった。しかし、それをどうするのか分からないし、マントルの3級らしいから見ただけで、その隣のアンブレラに行く。

 6級のマントルはなんとかなったのだが、4級のマントルが出来ない。

 両手でリップにぶら下がり、右足のヒールをリップにかけて体を上げるのだが、両手よりもヒールのほうが僅かに高くなる感じなので、体を上げることが出来ない。力が足りないのだ。足の筋肉が痛くなってしまうのだ。

 仲間の一人がやってきて、そのマントルをやってくれる。ムーブは分かっているのだが。

 その仲間がスイールを触りに行ったので見に行く。

 この課題、普通に考えるとどうやるのか見当の付かない課題らしい。パーミングのホールドが2つ結構きつい傾斜の中にあり、その右にカチホールドがある。そのホールドの上のほうには縦フレークのカチがある。それ以外は殆どホールドもスタンスも無い。

 結局、右足ヒールでマントルらしいのだが、傾斜がきついので難しいらしい。仲間も出来なかった。

 アンブレラのマントルをやる。少し勢いをつけて右足のヒールに乗り込んでゆくと体が上がる。右手を返そうとすると、右足ヒールが滑り、落ちる。何回か同じような事を繰り返したが、背中も使うしで、疲れてしまった。

 仲間のもとに返ると、もう5時近いらしい。そろそろ帰る時間である。

 チャイムがなって、6時以降は別料金になるというキャンプ場の放送が入る。5時15分に下るという仲間より一足先に支度を整え一人で天場まで戻る。

 途中トイレに寄ったりしたからなのか、自動車で着替えていたら仲間が戻ってきた。

 皆でテントを畳み、支度が整ったら、既に薄暗くなっていた。

 5時半頃に会計を済ませ、下る。

 川上村のふじもとというところで3人でカルビクッパを食べ、武川の湯に行く。

 ここはそんなに高くは無いし、露天風呂もあるしで、結構素敵な所である。

 8時30分ころ出発する。須玉まで少し戻る感じになるので、国道20号線を勝沼まで行き、高速に乗る。その間にも小仏トンネルの渋滞が数キロ減っていた。

 小仏トンネルの渋滞も流れてはいたし、三宅坂で少し渋滞したものの、他は全く渋滞も無く、順調に帰葉する。

 今回は、物凄く混んでいる小川山でも、場所を選べば、快適なテントサイトも得られるし、課題も独占できることが分かった。今まで敬遠していた小川山だが、小川山も捨てたものではなさそうだというのが今回のメンバーの一致した感想であった。

 巡り目平の駐車場が自動車で一杯でも、場所を選べば空いている快適なテントサイトは結構あるものである。マットを背負ったボルダラーが駐車場やテントサイト近辺を一杯闊歩していても、課題を選べば十分に独占できる課題は豊富にあるものである。いたずらに混雑時の小川山を毛嫌いする莫れ。以上が今回の収穫であった。課題は何にも登れなかったけど。10mの5.8のルートで2回もテンションが入ってしまって、完登できなかったけど。


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作成年月日 平成15年10月22日
作 成 者 本庄 章