瑞牆山頂のボルダーに行ってきました

2004年 7月24日記
 3連休の日月で相棒と二人で山梨の甲府周辺から瑞牆山に行ってきた。

 日曜日は、日帰りするというジムの仲間二人と、シークレットエリアの入り口で待ち合わせ、一緒に登るという予定なのだが、月曜日の予定は未定である。

 ジムの中間達は何時もの場所に8時集合ということなので、我々も家を7時過ぎに出発する。

 日曜日だから、道は空いている。首都高も空いている。しかしラジオから、中央道の高井戸から八王子が渋滞中との情報が入る。まずい。多分八王子以降も空いている訳は無い。これは奥多摩から柳沢峠を越えるしかないか。

 既に新木場を通り過ぎてしまっている。仕方がないから、レインボウブリッジを渡って、八重洲経由で池袋線に入り、高島平から所沢を目指すことにする。

 川越街道も空いている。所沢市内も混んではいない。なんとなく盆休み中の都心という感じである。

 青梅からは、何時もならば吉野街道を行くのだが、吉野街道の古里付近が渋滞中とのことなので、そのまま奥多摩街道を進む。

 家を出て2時間半ほどで順調に御岳駅前を通過する。何時もなら3時間は掛かる道だから、相当に空いていたということだ。

 吉野街道が奥多摩街道に合流する古里の交差点を通過するとき、吉野街道側を見ると、それほど渋滞している雰囲気は無い。渋滞は解消しつつあったのだろうか。

 鳩ノ巣を越える辺りから自動車のスピードが落ちだす。やっぱりこの先渋滞しているようだ。そうこうするうちに走っては停まり走っては停まりを繰り返し始める。完全に渋滞が始まったようだ。

 カーナビを見ると、氷川の手前に最近新しく出来たバイパスに通じる道に逃げられる道があるようだ。

 のろのろ走りながら、その道への分岐に近づくと、その道に左折するT字路を左折できないと書いた看板が現れる。そして、もう一枚の看板には奥多摩直進と書かれている。そんあぁ。

 その交差点に差し掛かると、左折禁止の標識は無い。別に左折しても良さそうだ。ということで、その信号を左折する。

 少し戻り気味に進み、バイパスに繋がる道に合流する。ともに二車線ある広い道である。

 途中、工事中のため一車線規正されていたが、特に待たされることも無くスムーズに交換し、無事バイパスのトンネルに入る。

 前後には自動車は殆どいない。多分あの看板のせいなのだろう。お陰で快適である。しかし、どうしてわざと混む方向に自動車を誘導しているのだろうか。

 再び奥多摩街道に合流すると、渋滞は解消されており、自動車の交通量がすごく少なくなっている。奥多摩駅前の道の渋滞のすごさを想像させるに十分な道の空き様である。

 小河内ダムを過ぎるとますます快調に走り出す。調子に乗って少しアクセルを踏で走ったら、追いつかれた前の自動車が道を譲ってくれた。

 そんなことが何回か有って、柳沢峠に到着する。そこまで、途中休息をしなかったので、駐車場に寄り、トイレ休憩を入れる。

 出発すると、カーナビの表示がおかしい。自車位置表示が道を大幅に外れている。山道を少しアクセルを踏んで走ると時々そうなるので、静かに走れば表示誤差が減るかもと思い、また、相棒が少し自動車に酔ったみたいだとも言うので、大分ゆっくり走ってみる。しかし、表示のずれは修正されない。仕方がないから、途中で止まって自車位置表示を手動で修正する。その後は表示がずれることは無くなった。

 塩山の町に入ったので、相棒に買出しは無いか確認すると、特に無いという。そのまま待ち合わせ場所に直行する。

 待ち合わせ場所に1時頃に到着する。しかし、仲間の自動車は見えない。少し先に水が湧いているところがあるので、そこまで進み少し休む。

 少し時間を費やした後、再び待ち合わせ場所に戻ったが、やはり仲間は見えない。時間も時間だから昼食にしようとしたが、日当たりの良すぎる場所なので、再度先ほどの水場まで戻り、大きな木の下に自動車を停めて昼食にする。

 待ち合わせ場所にはやはり仲間はいない。そのまま待ってもしょうが無さそうなので、支度を整え、我々だけでボルダ−エリアに登って行く。

 前回来た時に見ただけで触らなかった岩を中心に、そのうちの易しそうなところを幾つか登ってみる。

 そんなに大きくは無い岩のガバガバのホールドの有りそうな岩ばかりを選んだから、2回か3回掛かってしまったものも有ったが、登れない岩は無い。

 近くで、何か作業をしているような音がしている。ここの近くでは普段は工事関係の人達が働いているらしいから、もしかすると今回もどこかで働いている人達がいるのだろうか。なんとなくボルダリングに集中できない感じもするので、適当なところを幾つか登りった後、なんとなく最近に雨でも有ったような感じで、岩も下地も湿っている感じも手伝って、1時間ちょっと遊んだだけで引き上げることにする。

 自動車に戻る途中、前回仲間が登った岩が気になったので、その岩に寄り、靴を履き替えて、触ってみる。

 左手は少し下のカチ、右手は少し上の左下がりの斜めのカチ、足は右のほうのスタンスでスタートし、左斜め上のカチホールドを取りに行くというようなムーブなのだろうが、足もあまり良いのが無く、手もガストンになって少し遠いホールドを取りに行かなければならないから、その遠いホールドが取れない。例え取ったとしても、次のクロスの悪いホールドが、スタンスがすごく悪いので、とっても小生には持てそうに無い。2回か3回試しただけで諦める。

 自動車に戻り、またまた先ほどの水場まで戻り、手を洗って、水筒にその水を汲み、更にその水を少し多めに飲む。暑くは無いのだが、汗がすごいのだ。

 3時頃だったか、さぁ、これからどうしよう。ここは涼しくて良いのだが、近くにはテントの張れそうな場所は無い。別口の中間達が、瑞牆でクラックを登ると言っていたので、瑞牆にでも行って見るか。あそこは標高も高いから多分涼しいであろう。何しろ、今回は納涼が第一の目的なのだから。

 前回、奥仙丈エリアに行ったときに通った乙女高原が気になっていたので、この際だからその乙女高原に寄ってから、クリスタルラインを使って瑞牆にでも行くか。何しろ、クリスタルラインは標高2千メートル近くを走って行く道だから、多分涼しいだろうから。

 乙女高原を目指して走り始める。

 焼山峠でトイレ休憩。綺麗なトイレが作られている峠である。小楢山への登山道の出発点でもあるらしく、駐車場も作られている。ハイカーらしい人達が何人か休んでいた。

 そこから少し登って行くと乙女高原である。

 駐車場には自動車が何台か停められている。近くに案内板があるので見ると、この高原には幾つもの綺麗な草花が四季を通して咲き乱れると言うようなことが書かれている。

 駐車場の前の緩やかな斜面は、そんなに広くは無いのだが、綺麗な草原状になっており、その中にロープ柵によって作られた遊歩道らしい道が付けられている。そこを称して乙女高原というのだろうか。樹林の中にぽっかりと草原が広がっているという、考えてみるとなんとも不思議な光景である。

 駐車場の端っこからその遊歩道に入り、相棒と一緒にその草原の散策を始める。

 確かに色々の草が花を咲かせている。黄色いのも有るし、紫もある。赤いのもある。大きいのも有れば小さいのもある。既に枯れてしまったものも混じっている。

 看板には写真入で、花の名前やその花の咲く時期が書かれていたのだが、歩き始めると、その殆どを忘れてしまっている。あれは確か「シモツケソウ」だったような、そんな会話を交わしながら歩く。

 所々に小さな写真入の花の解説が書かれた札が下げられている。そうか、やっぱりあれが「シモツケソウ」か。「エンレイソウ」もあるよ。これが「ウスユキソウ」だよ。その看板を見た直後はそんな会話が交わせるのだが、暫く歩いた後再びその花を見つけても、「あの花なんだったっけ」となってしまう。歳はとりたくないものだ。

 道が何箇所かで分岐しているのだが、そのうちの周りの樹林帯に入って行く道に入ってみる。

 樹林帯に入ると、草原側のみにロープが張られた状態になる。そんな樹林の中の道を草原に沿って斜め上に登って行く。

 正直、樹林帯って何にも無いからあまり面白くは無い。というか、樹林帯はいつも徘徊しているから、あまり代わり映えがしないのである。でも、入ってしまったから仕方がない。先に進んで行く。

 暫くしてやっと草原に戻る道が現れたので、即その道に入る。

 草原の道では我々以外にも何人もの人達が歩いている。そんななかの一人の人が、草原の中の白樺林のところが綺麗ですよと教えてくれる。そういえばその人はなんとなく先ほどすれ違った人だったような。まぁいいや。

 その人の仰せに従って、白樺林の方に下る道に入る。

 確かに、今までの所よりは花の密度が濃そうである。そういう意味では確かに綺麗そうであった。

 そこから先のクリスタルライン沿いには前回行ったボルダ−エリアがあるのだが、そのエリアへの入り口の手前の林道の脇にあったボルダ−が、やはり気になっていたので、序ということで寄ることにする。

 途中の林道脇に見える岩を見たりしながら、エリアへの入り口の手前に到着する。

 その岩は林道の脇にある。支度をして、岩の下からどこを登るか観察する。

 左の方はホールドになりそうな場所はあるが、いかにも脆そうである。多分登れないだろう。

 左の方は登れそうだが、途中のテラス状で終わっており、高さはない。やはり登るなら真中だろうか。

 真中には僅かなクラックが走っており、そのクラックの左側には水平に走る細いクラックがある。それを使って上に上がり、右側によってから上に行くのが良さそうだ。

 この岩の下地はアスファスト舗装である。そして、高さも5mは有るだろう。おまけに、岩が脆いらしい。あまりやさしそうにも見えない。迷うことなく、自動車にマットを取りに戻る。

 マットを敷いて取り付いてみる。水平クラックのカチで離陸し、その水平クラックに乗り、立ち上がる。

 水平クラックのスタンスが欠ける。一瞬バランスを崩したが、落ちることは無く、別のスタンスに乗り換え、縦クラックの右側の縦ホールドを取りに行く。しかし、その縦ホールドが悪い。例え持って体を上げても、リップがまた悪そうである。持てそうなところが見当たらない。

 無理してもしようが無いからと、その場からクライムダウンする。

 折角用意をしてしまったからと、その左側の途中のテラスに立つところを登ってみる。カンテも使えるから、何とかテラスの上に立つ。

 瑞牆山の植樹祭会場の駐車場に到着する。まだ6時前だったと思うが、既に何組かのテントが張られている。しかし、仲間の自動車らしいものは見当たらない。

 以前良く一緒に登っていた仲間がテントを張る場所に行ってみると、仲間のものと思しきテントが張られている。そこからほんの少し離れた所にも2張りのテントが張られている。そのテントはなんとなく今回ここに来るといっていた仲間のテントのような気もする。しかし、誰もいないので、周りの散策に出かけることにする。

 以前良くテントを張った場所に行って見る。その場所は最近工事が入り、大分状況が変わってしまったと想像される場所である。

 いってみると工事はすっかり終わっており、大々的な工事が行われるのではと思われた橋も、実際はコンクリートの真中に丸い穴をあけただけの橋と言うよりは、沢をコンクリートで埋め、その真中に水を流す穴を空けただけという構造のものになっていた。結局、それほどの変化も無かったようである。

 その橋の先の林道も綺麗に舗装されていたので、その先に行って見る。

 程なく舗装はなくなったが、路面は綺麗に手入れが行き届いている感じで、気持ちよく走れるダート道になっている。ついつい先に進んでしまい、結局は信州峠に続く道の途中に合流した。

 黒森から再び植樹祭会場まで戻り、仲間のテントの前に行くと、先ほど今回来るといっていた仲間のテントと思われたテントに人がいる。しかし、停められている自動車は仲間の物ではない。自動車を停め、様子を伺うと、そのテントの前の人が話し掛けてくる。なんとなくジムの仲間のような気がしたので、自動車を降り、近づいてみる。

 なんだか知らない人達である。しかし、隣のテントの持ち主達はそのうちの一人が明日用事があるのでその人を韮崎まで送っていたのだと教えてくれる。

 知らない人なのに、なんで小生が隣のテントの持ち主の知り合いだとわかったのだろうか。もしかして以前あったことが有るのだろうか。なんだか訳が判らなくなってしまい、今回ここにきているだろう仲間のことを聞いてしまう。

 その仲間ではなかったことが確認できたので、以前何回かテントを張ったことのある、クライミングをするのに都合の良い、不動沢というところの駐車場にいってみることにする。

 駐車場といっても、林道の行き止まりのちょっとした広場なのだが、そこまでの道が悪く、最近は行かなくなってしまった場所である。

 相変わらず道が悪い。もしかすると、より道が荒れてしまった気もする。

 途中で一台の乗用車とやっとこさすれ違って駐車場に到着すると、自動車は2台か3台しかいない。仲間の自動車も見当たらない。

 それにしても、いつもならもっと自動車がいるはずなのに何で空いているのだろう。焚き火をしていた先客に聞いてみると、最近は植樹祭の会場にテントを張るようになったので、こっちまで来る人は減ったのではないかと言っていた。

 既に薄暗くなってきたし、またあの悪い道を戻るのもかったるいからと、その駐車場の一番奥にテントを張り、休むことにする。

 翌日の朝、少し早めに朝食の用意を始める。暫くすると、テントを打つ雨のような音がする。雨だろうか。相棒に雨かもと話しをすると、程なく完全に雨と分かる音がしだす。一瞬、ここに来る途中のぬかるみがますますぬかるんでしまって帰れなくなってしまうのではとの不安が頭を過ぎる。

 どうせ避暑が主目的だからどうでも良いのだが、やっぱり雨は降って欲しくは無い。万が一帰れなくなってしまったらなお困る。空はそんなに暗くは無いから多分本降りにはならだいだろうと自分に言い聞かせる。

 食事が終わる頃には雨は止んでくれた。

 昨夜寄った昔の仲間のテントに寄ってみようと、テントをたたみ、植樹祭会場の駐車場に行って見る。

 トイレでは掃除が行われていたが、無事用を足し、自動車に戻ろうとしたら、ここに来るといっていた仲間の一人が階段を登ってくる。やっぱり来てたんだ。

 挨拶をし、どこにテントを張ったか聞いてみたら、最近はいつも我々がテントを張る場所にテントを張ったという。ということは昨夜の到着かと聞くと、やはり、昨日は渋滞に会い、途中高速を降りて、我々と同じく柳沢峠を越えてきたという。で、序に、むかし道ボルダ−で遊んでいたので、ここについたのは夜になったということらしい。

 予定を聞くと、ルートを登るか、瑞牆山のハイキングか迷っているという。そして、瑞牆山に登る確立が高そうだとも言う。我々の予定も聞かれたのだが、我々にも予定は無い。一応、昔の仲間に挨拶だけしてくると、昔の仲間のテントまで行って見る。

 仲間はテントをたたんでいるところだったので、一応挨拶をする。序に隣のテントの人達のことを聞いてみたら、やはり小生は会ったことが無い人達だったようだ。なんとなく気配でそうではないかということで教えてくれたらしい。やっとすっきりした。

 その仲間の計画を聞いてみたら、やはりはっきりとは決めてはいないが、ショートサーキットという課題を登ろうかと思っているということだった。もし、隣のテントの人達とどっかに行くのであればご一緒させてもらおうと思っていたのだが、隣のテントの人達は小生のレベルではないし、昔の仲間も別行動ということだったので、先ほど会った仲間の計画に乗せてもらことに決め、昔の仲間と別れる。

 駐車場に戻り、仲間に瑞牆山に連れて行ってもらうことにして、いっしょに登山口まで移動する。

 植樹祭会場の中に縦横に作られた遊歩道のどこかからカンマンボロン経由で瑞牆山に登る登山道があるらしいのだが、その入り口がはっきりとはわからないらしい。適当に登って行く仲間に付いて我々も適当に登って行く。

 仲間の一人がまだ植樹祭会場の遊歩道の出来る前に歩いた道らしく、最初は南沢といわれる沢沿いに登ってゆくはずだという記憶を頼りに適当に遊歩道を上がると、幹にテーピング用のテープが巻かれている木が現れる。多分道しるべだろうとその道の先に進むと、殆ど無駄な道を歩くことなく登山道に入ることが出来た。

 沢沿いのなだらかな樹林帯の中の道が暫く続く。

 道沿いにボルダ−が現れる。どうやら誰かが磨いた岩のようだ。帰りにでも触ろうかと、観察だけで先に進む。

 この登山道沿いには、ボルダリングの対象になるかどうかは別として、結構ボルダ−が散らばっている。傾斜もそんなには無いし、結構踏まれた道である。途中、道標も設置されている。どうやら登山道として整備された道のようだ。

 沢沿いから外れ、少し道が急になってちょっとした尾根を登って行く。そして、程なく結構急な斜面のトラバースが始まる。でも、道はしっかりしているから不安は無い。

 少し疲れ始め、相棒にも少し置いて行かれだした頃にカンマンボロンの岩の基部に到着する。

 今回のハイキングの目的の1つは岩へのアプローチの確認と岩の偵察ということだったらしいので、仲間はカンマンボロンの岩のほうに登って行く。登山道から少し外れて行くから、道は少し厳しくなる。相棒も何とか登って行く。

 岩の右のほうに仲間の知り合いが開いたというルートが有るらしい。仲間はそのルートの出だしを偵察している。

 下から人の声が聞こえてくる。続いて人が現れる。朝挨拶に行った人達だ。朝話していた「ショートサーキット」という課題を登りに来たらしい。その課題はこの岩に有るらしい。仲間は早速その課題を教えてもらう。

 岩の左の面の7〜8mのクラックである。見た目もあまりぱっとしない、そこがルートなのかと、教えられなければわからないくらいの地味なクラックである。現に先にその課題の下を歩いた筈なのだが、ピンがあるわけでもないから、小生にはルートだと認識できなかった、というか、クラックだとも気が付かなかったくらいのクラックである。しかし、そのクラックのサイズが悪いらしい。なんだか登りにくい課題らしい。一度触ってみると、なんだか気になってしまうルートらしい。仲間もなんだか興味を持ったようだし、一緒に登らないかと誘われたようだが、一応本峰へということで先を急ぐことにする。

 別れ際に、大ヤスリからが意外と遠いよと言われて出発する。

 そこからは大面岩、大ヤスリを経由して一般の登山道に合流するのだが、急に道が急になり、悪くなってくる。所々崩れた場所が出現し、ロープが張られた場所が何箇所か出現する。

 それ迄頑張ってきたらしい相棒のペースが急に落ちだす。相当に足に来ている様子である。下りを考えると少し不安になりだす。その反面、仲間のペースに付いて行くのがやっとだった小生にとっては、相棒のペースに合わせられることになったので、大分楽になってきた。正直、相棒が良くもまぁ小生にとってもきつい若人のペースに付いてくると感心するやら、相棒にも置いて行かれるという、小生にとっては相当なショックも感ずるやらしていたのだが、やはり相当のオーバーペースだったということがわかり、少し安心する。

 樹林帯の傾斜が緩くなったちょっとした広場状のところに出てくる。小さな岩の上には幾つかのケルンが積まれている。先行していた仲間がそこで我々を待ってくれていたので、そのまま、そこで少し休ませてもらう。

 少し急なルンゼ状を暫く登って行くと、尾根の先端の岩峰とのコルにでる。尾根の反対側は少し眺望が利く。木に巻かれたテープには1950mだかのコルと、1850mだかのコルとの、2通りの場所が書かれている。仲間が地図で確認するが、1950mだかでは無いような気がするけれども、判然とはしないという。高度計では1950mをさしていたらしいのだが。

 尾根の反対側の斜面を少し降り気味にトラバースし、急なガレたルンゼ状を登りだす。先ほどのコルでも少し休息したとはいえ、やはり相棒の足は遅い。でも、何とか頑張っている。

 ちょっとした尾根状を登りだす。上から夫婦連れが降りてくる。奥さんのほうはウエストポーチだけという軽装である。こんな人がこの道を降りても大丈夫かなと一瞬思ってしまう。

 挨拶をすると、その夫婦の人が、もう少しで大ヤスリだと教えてくれる。

 その夫婦の旦那さんのほうが、小生にクライマーかと聞いてくる。まぁ、ボルダラーだがクライマーのはしくれではある。一応と答えると、小生のザックに付けてあった歯ブラシとヘキセントリックのアクセサリーでわかったという。そして、昨日ハイピークとどことかを登ったという。なんだ、やっぱりクライマーだったんだ。でないと、この道は降りては来ないだろうと、納得する。そして、お節介にも、こんな道を降って大丈夫か一瞬心配してしまったことを告げる。

 大ヤスリに近づくと、ヘルメットを被ったお兄さんやザイルを首に掛けたおじさんに出会う。やっぱりこんなとこまで登ってきて、結構登っているんだと感心する。

 間もなく大勢の人達が降ってくる。そして、挨拶が忙しくなる。急に人が増えてきた。そうか、一般の登山道に出たんだ。それにしても、この人数の多さはどうだ。改めて驚く。

 梯子を上ったり、ちょっとした岩を攀じ登ったり、結構急な道を登って行く。やっぱり瑞牆山は岩峰だから、一般の登山道といっても岩がゴロゴロしており、傾斜も急だし段差も大きい。ハアハアいいながらやっと山頂に到着する。

 山頂は岩峰である。大きな岩が林立している感じである。そのうちの大きな岩の上に立っているという感じである。

 仲間がフラットソールを取り出し、近くの岩を登り始める。小生も岩と岩の間が少し窪んだ、落ちてもその窪みに落ちるだけの高度感の無い岩を登ってみることにする。

 最初に目を付けたところはのっぺりとしていると感じたのだが、仲間が登るのを見るとそんなに難しそうではない。よし、そこを登ろう。

 頂上の岩からもう1つの岩の頭に移り、その岩から、岩と岩の窪みにずり降りる。

 最初はブランクだと思っていた壁にガバホールドがあり、その上にもガバに近いホールドがあったので、簡単に登る頃が出来る。

 今度はどその岩の向かいの岩を登るべく、再び岩と岩の窪みに降りてゆく。

 その岩は、右のほうに隙間があり、そこのカンテが使えるので、先ずはそのカンテを使って登ってみる。

 傾斜は無いから離陸は出来るが、ホールドを右側のカンテだけに求めるから、バランスが悪い。両手レイバックチックなホールドから左手をリップに持ってゆくところがなんとなく悪い。飛ばせば良いのだろうが、万が一リップが持てなかったら、岩だらけの、それも、岩と岩との隙間が空いていて、その隙間には底が無さそうな、そんなところに飛び降りなければならないのだ。それはやりたくない。何とか足を決めて、左手でリップを取りに行く。リップは見た通りのガバで、多少じゃりつきはしたが、十分に持てたので、少しリップをトラバースして岩の上に出る。

 仲間の一人が我々のいる岩峰の下に降りて、その岩峰を登って来た。最後は斜めのクラックで這い上がってくるのだが、下が結構切れているし、そのクラックのジャムもあまりよくは無いらしい。

 小生も岩峰の下のほうに降りてみる。岩と岩の間は隙間が空いていて、その隙間には底が無い。落ちたらやばそうなところである。でも、ハイ松が生えていたりするから、そんなに高度感は無い。

 仲間の一人が、先に登って来た場所の左のほうの高度感の物凄くある、落ちてはならないカンテを登りだす。それに、携帯を持ってきているから、ヘリの出動要請が出来るから大丈夫だとか、色々と野次を飛ばす。

 相当にアドレナリンが出たらしいが、何とか上に抜ける。

 その岩には丁度岩の天辺から1mくらいのところに水平にクラックが走っており、右のほうからトラバースして行くことが出来そうに見える。そのクラックでもう一人の仲間がトラバースを始める。

 そのクラックは指は十分に入るらしいのだが、岩茸が生えているらしく、なんだか怖いらしい。でも、無事トラバースが出来たのでもう一人の仲間もそこをトラバースする。

 いつのまにか降りてきた相棒がその光景をデジカメに納める。

 先ほどの岩の窪みの中の岩のスラブを仲間が登りだす。苔がついているから、簡単では無さそうだ。でも、スタンスを磨き、ホールドを見つけて何とか登りだす。ところが、あと一歩でリップが持てると言うところで行き詰まる。ちょっと跳べば届く距離なのだが、リップの状態が分からないし、落ちるわけに行かないから、ホールドを探す。何とかホールドを見付け、足を上げてリップを掴む。

 もう一人の仲間も、最後のリップを取りに行く所のムーブが少し違ったが、そこを登る。

 小生、スラブチックなところが最近は結構得手になってきているので、真似をしてみる。

 何にも無いと思っていた壁に小さなポケットがある。小さなカチもある。足は磨いてもらったところが使えそうだ。左足で離陸し、右足を上げて、持てないと思っていたリップに先の仲間の真似をして右手を出してみたら意外と持てた。左足を上げてそのリップの左のガバを左手で取ったらもうおしまいである。やっぱりスラブはうまくなったのかも知れない。

 山頂から携帯電話で誰かに登頂報告をしていた単独のおじさんに皆の登頂記念写真のシャッターを押してもらって、下山に掛かる。

 途中、山頂の隣の岩峰に寄り道するというので、相棒を登山道に残し、小生だけ付いて行く。

 大きな岩を回り込んでゆくと、結構広い岩棚にでる。右の方には瑞牆山山頂の岩が直ぐそこに見える。

 目の前には高い岩峰が聳えている。その岩峰の一部を登るらしい。最初はちょっと寄り道だと思って、相棒を登山道に置いてきたのだが、登るというので、相棒を呼びに戻る。

 仲間は10m位のクラックを登ろうとしているらしく、降り口を確認し始める。ところが、大きな岩だし、傾斜も急だから、降りるのが難しそうだ。降り口を求めて岩を廻ってみたら、傾斜がそれほどきつくは無い、岩がボコボコした凹角が見つかり、降りられることを確認できた。

 その壁には顕著なクラックが3本くらいある。そのうちの易しそうなところを登り始める。

 抜け口が悪かったらしかったが、クラックを抜け、その上に続く岩を天辺まで登って行く。

 続いてもう一人の仲間も登って行く。

 そのクラックは小生には無理そうだったが、その手前のカンテは登れそうだったので、そのカンテに取り付いてみる。

 ホールドは全部ガバだったが、安定はしていないから、慎重に登る。最後のマントルで少し手こずったが、少し右に行ったり左に寄ったりしながら上の岩棚に立ち、そのまま仲間のいる天辺を目指す。

 そこからは傾斜がなくなるから難しくは無いが、高度が上がって行くので怖さが増してくる。慎重に手や足を確認し、ルートを確認しながら天辺まで行く。

 岩峰の天辺にはピンが打たれ、シュリンゲが掛けられていた。

 隣の山頂から何人かの登山者がこちらを見ているようだ。多分我々が登っていたところも見ていたのだろう。

 今までに、この岩の上に果たして何人くらいの人が立ったのだろうか。多分そう多くは無いだろう。

 一通り周りの景色を満喫し、金峰山山頂の五丈岩も確認して、慎重に降る。

 小生が登ったカンテの左側のフェースを仲間が登る。そんなに難しくは無さそうだが、フレークが剥がれそうで怖いらしい。そして、抜けのリップのホールドの係りが良くは無いらしい。もう一人の仲間も登り、やっぱり同じことを言う。登ってみたかったのだが、最後のマントルのホールドが良くないらしいので、諦めることにする。

 仲間が小生の登ったカンテの右側のカンテを登ろうとしている。途中、ちょっと被った状態になって、ハング上のカンテを下からパーミング気味に持ち、その手で左に出て上に抜けるというムーブを見つけるのに何回か掛かったようだが、結局は仲間二人ともそこを登る。

 それを見ながら、小生はとってもそんな所は登れないからと、その右側の小さな岩の少し寝た壁を登ってみる。

 出だしが少しだけ手が悪かったりするが、出てしまえば直ぐにリップが持てる。

 続いて、そのままその岩の右側の面にトラバースして行く。リップは良いから、難しくは無い。やっぱり最後はマントルで上に上がる。結局降りる方が難しい岩だった。

 岩峰の基部を右側のほうに回りこんでみる。下のほうの壁の傾斜は緩くなり、あまり面白そうなところは無い。尚も回り込んでゆくと、垂直に近い傾斜になり、リップまでの高さも低くなってくる。しかし、ホールド、スタンスが豊富に出現するので、わざわざ登るところではなくなる。引き返す。

 仲間はまた別のクラックを登り始めたので、先ほど諦めはしたが少し気になっていた仲間が先に登った所を触ってみることにする。

 登っていって、真中辺のフレークを叩いてみると、確かに浮いた音がする。でも足が良いし傾斜も僅かに寝ているからと、そのフレークを使って一歩足を上げ、左側のクラックを掴む。そのまま足を上げればリップに届きそうなのだが、そこを上がってしまうと引き返すのが難しくなりそうだ。高さも5m近くになるだろう。マットを敷いている訳ではないから無理をせず、そこからクライムダウンする。

 仲間も一通り登ったとのことで引き返すことにする。

 登ってくるときに、相棒が相当に足に来てしまっていたようなので、下山は不動沢方向に降ろうかと仲間と話していたのだが、相棒に聞くと、大分に休んだので、登ってきたところを降っても大丈夫だという。多分、登って来たところを降るほうが時間が短いだろうから、登って来た道を引き返すことにする。因みに、後で調べてわかったのだが、その道はパノラマルートという登山道だったらしい。別に展望が利くという道ではないのだが。

 降りは、登りに想像したよりは楽に降れ、仲間に何回か途中で待っててもらいはしたが、何とかそう大幅に遅れることも無く、何とか降ることが出来た。

 登りに見ていった登山道脇の岩は、やっぱり朝、カンマンボロンで会った仲間達が磨いた岩らしい。そして結構手ごわい岩らしい。

 その岩の前に到着したのがまだ4時半頃だったので、一応触ってみることにする。

 登山道脇には赤っぽい岩と白っぽい岩が少し離れて存在する。赤っぽい岩を通り越して、先に白っぽい岩を観察する。

 岩の丁度真中辺に僅かなバンドが水平に走っており、縦には僅かなクラックが走っている。真中を行くにしてもカンテを使うにしても、いずれも悪そうだ。

 少し戻って、赤っぽい岩の前に行く。

 この岩の登山道に面した面は僅かに被っている。右よりの少し上のほうに僅かなバンドがある。それを使ってリップを取れば登れるかも知れない。

 左のカンテから壁の真中辺までリップが緩やかに登っている。そのカンテからリップをトラバースして行けば小生にも登れるかも知れない。そんな岩である。

 仲間が壁の真中にトライを始める。ところが、思ったよりもスタートホールドが悪いらしく、なかなか次のバンドのカチホールドが取れないらしい。

 右のカンテのホールドからなら次のカチホールドが取れるらしいので、そこからスタートしマントルする。しかし、マントルも易しくは無いらしい。

 小生は、左端のリップ直下のカチホールドでスタートしリップをトラバースしてみる。2手位は進んだが、その先のリップが悪く落ちてしまう。

 仲間が、小生がスタートしたホールドより下のホールドからSD気味にスタートし、登って行く。しかし、岩の頂点の部分がまん丸の感じでホールドが無く、マントル出来ずに飛び降りる。やっぱりその辺はホールドしにくいらしい。

 もう一人の仲間が、その少し手前の斜めのリップをマントルする。やっぱりその辺が妥当なところらしい。

 小生も真似をしてみたが、足がリップまで上がらず出来なかった。

 仲間達は正面の所にトライを重ねているので、小生は左のカンテのSDスタートをやってみたが、どうしても足が地面についてしまってうまく出来なかった。

 左のカンテを触ってみたら、意外ともてるところがある。そのホールドで次のカチホールドを取りに行ってみる。

 右足はカンテの少し高いところ、左足は岩の基部のスタンスに置いて左手を出す。ホールドに手が掛かるのだが、左足が切れてしまい、はがされてしまってホールドの保持が出来ない。左足の位置を変えてみたりおき方を変えてみたりしながら何回かやってみたが、結局駄目だった。

 仕方がないから少しチョンボして、いきなり取れなかったカチホールドを持ってスタートしてみる。

 左足を左のほうの少し高いところに上げてガストン気味に少し遠い左のホールドを取りに行く。しかし、そこも出来なかった。

 白い岩を触りに行っていた仲間が戻ってくる。やはり、バンドやクラックに見えたところを触ってみたら単なる皺だったらしい。

 そろそろ5時である。中央道の渋滞を考えると少し早いけれど、そろそろ帰ろうと言うことになる。普段のボルダリング行からすると大分に早い帰還ではあるが。

 多分この時間だと増富温泉温泉は大混雑であろうということで、あまり観光客の来ない武川の湯に行くことにして出発する。途中、中央道の渋滞は大月から30kmとなっていた。

 相変わらず武川の湯の駐車場は混んでいる。ここの駐車場が空いているのを見たことが無い。しかし、お風呂が混んでいた経験も殆ど無いので、安心して支度をする。

 時間がたっぷりと有るから、小一時間ということでお風呂に入る。洗い場は空いていたが、露天風呂はそこそこ混んでいた。その間、高速の渋滞は20kmに減っていた。

 夕食は、我々が少し豪華にとリクエストしたので、甲府市内で見付けた中華料理屋に入る。少し高そうな感じの店だったが、意外と庶民的な値段である。豪華といっても、「なんとかうどん」とか「牛丼屋のなんとか」からすればということだから、少し安心する。

 結局なんだかだで、8時頃に甲府を出発する。勝沼インター入り口の渋滞表示は17kmとなっている。仲間はそこから高速に乗るということだったので、仲間とはそこで分かれ、そのまま20号を走る。

 相変わらず20号の交通量は少ない。大月市内でも渋滞は無い。勿論上野原の街中も渋滞は無い。

 相模湖インターから小仏トンネルまではまだ渋滞中だったが、何時ものようにそこから中央道に入る。

 渋滞する本線に合流し、少し走ると、追い越し車線になんだか見たことのある自動車がいる。ナンバープレートを確認すると、勝沼から走って来たはずの仲間の自動車である。

 わぁーとか何とか言いながら、暫く斜め後ろを付いて走る恰好が続いた後、こちらの車線が少し前に出始め、ついに仲間の自動車を僅かに追い抜く恰好になった。すかさず、窓から手を振って仲間に合図を送る。仲間も気付き、こちらの名前を呼ぶ。そのまま少し追い抜いてしまったから一瞬の出来事だったが、なんとも奇遇な遭遇である。

 その後程無く、追い越し車線の走行速度が上がり、仲間の自動車が先行していってしまった。

 こちらは二人だけなので、その後も早く走ることなく、首都高速の渋滞も既に解消していたようで、順調に走り11時過ぎには帰葉した。

 なんだか計画があったような無かったような、殆どが成り行き任せの旅ではあったが、偶然の出会いにも助けられて、大変に楽しい旅になった。思わぬ楽しい山岳ボルダリングも出来たし。


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作成年月日 平成16年 7月24日
作 成 者 本庄 章