御岳ボルダーその61

2006年 7月 5日記

 雨が降るだろうとの予測の下、月曜日に休暇をもらっていたので、日曜日の夜は名古屋でゆっくりとし、東名の浜名湖で一泊した後、月曜日の早朝に浜名湖を出発した。雨だと思っていた天気は思惑に反して、晴れていた。

 月曜の朝ということもあって、浜名湖サービスエリアはものすごく空いていた。あんなに空いている浜名湖サービスエリアは初めてだった。

 東名も浜松を過ぎると急に空き出した。別に急ぐ旅でもないからと、大体時速80km前後で走って行った。

 わずかに霞んでいるとは言え、太陽の光がものすごく明るい東名をのんびりと走って行ったのだが、富士を過ぎてもまだ昼前だった。あまりにも天気がよく、まっすぐ帰るにはあまりにももったいない気持ちになってきた。どうしよう。相棒と相談すると、「埼玉に寄る用事があることはある」という。そうか、ならば、御岳で遊ぼう。すぐに決まった。

 厚木で東名を降り、国道129号で八王子に向かった。さすが平日の昼間、129号は混んでいた。

 八王子の町に入ると、雨が降り出して来た。天気雨かと思う間も無く、ものすごい雨になってきた。ワイパーを高速で回しても前が見えない。対向車の跳ね上げる水は容赦なく小生の自動車のフロントグラスに降りかかってくる。それも、バケツの水をぶちまけてくる感じでだ。車道と歩道の段差は既に側溝からあふれ出た水で全く見えない。とまぁ、ものすごい雷を伴った夕立だった。こりゃぁ、御岳はだめかも。そんな感情が一瞬頭を過ったが、ここまで来たのだからもう行くしかない。

 八王子の町を抜け、高尾街道に入った辺りからは、日も射して来て、夕立もほぼ上がって来た。

 あきる野市でいつもの睦橋通りに合流した。道は乾いていた。

 もしかして、こっちの方は雨が降らなかったのだろうか。

 梅ヶ谷峠で道が日陰に入ると、道路の表面が濡れていた。やっぱり。でも、吉野街道は乾いていた。

 途中のスーパーで天婦羅うどん弁当と飲み物を買い込んだ。その時、レジの小母さんに、「こちらは雨が降ったのか」と聞いて見たら、ものすごい雨が降ったと言った。で、その小母さん、堰を切ったように、「ちょうど出掛けだったので、乾していた布団を濡らさずに済んだ」だの、いろんなことをしゃべり始めた。月曜日のお昼頃だから、客はほとんどいないし、レジもその小母さんだけだったから、よっぽど暇だったようだ。

 途中、資料は持ってこなかったのだが、最近発表された軍畑の「裏御岳」に寄ってみた。

 舗装された林道を登って行くと、ゲートの前に一台の自動車が停まっており、仕事らしい小父さんが2人程いた。仕方が無いから、その自動車の大分手前で停まると、その小父さん達は、こちらを伺っているようだった。なんだか、ここの関係者のような感じだった。仕事の邪魔になるとは思わなかったが、なんとなく、その先行きづらくなってしまったので、そこから引き返すことにした。

 ゲートの前は少し広くなっているのだが、そこにその小父さんたちが自動車が停めていたから、そこでのUターンができない。仕方がないから、そこからバックで引き返して来た。

 玉堂の上の駐車場も自動車は3台位しか停まっていなかった。

 支度をして、お弁当を持って、日本一乾きが早いと言われる、とけたソフトクリーム岩に行くことにした。

 さすが、とけたソフトクリーム岩は乾いていた。そして、当然我々以外にボルダラーはいなかった。

 まずは、持参したうどん弁当を食べ、少しゆっくりした。

 いつもならカヌーが何艇か屯している中洲の瀞には胴長を履いた釣り師がいた。そうか、既に鮎漁が解禁されていたのか。しばらくはカヌーもできなくなったのか。

 まずはアップにと、「アンダー」を触ってみた。

 前回も触った課題だったから、スタンスが滑ることも無く、サイドの縦カチから出っ張りのちょっとしたスタンスを使って登ることが出来た。

 続いて、その左隣の5級の課題を触ってみた。

 この課題、最近は下地が下がり気味だから、少し怖い課題になっている。ちょうどスタートで使うリップで左手を返し、そのリップに足を上げるムーブが少し怖いのだ。ほかの人達は、右側のちょっとした四角い出っ張りの上のテラス状のところを持って足を上げるのだが、身体の硬い小生にはそのムーブでは足が上がらないのだ。

 前回はリップの左手を返して足を上げるムーブをやったので、今回は、右側のちょっとしたテラス状を使って登って見た。

 身体がそのちょっとした四角い出っ張りの左では足が上がらないから、そのテラスのリップで少し右に移動し、そのテラスに這い上がってしまった。

 次は、裏のスラブの左側に登ってゆく9級の課題だ。

 この課題、前回は、少し誤魔化してしまって、右に行ってしまったし、その後も9級とは思えないラインで登ってしまったから、今回は正しく9級のラインを登りたかったのだ。

 この課題の核心は出だしだと思う。まず一歩目が出られないのだ。

 スタンスを探し、ホールドを探ってみたが、少し暑いから、手もぬめるしで、相変わらず良いものが見つからなかった。

 また駄目か。即諦めて、その左側の9級のマントル課題を触ってみた。ラインはあまりはっきりはしない。まぁ、御岳の低難度課題は殆どそうなのだが。

 前回その課題は、少し右よりのラインで、本来のマントルではなく、カンテ絡みで登ったのだが、カンテにホールドがあまり無く、登りたいと考えたラインが登れなかったことを思い出した。マントルのラインはあまりにもやさしそうだからと、そのラインを触ってみた。

 なんだかホールドがあった。なんだかやさしかった。まぁ、大体そんなものだ。

 先に諦めた右側のラインを再び探ってみた。

 スタンスは2つほどの候補に絞れるのだが、手が絞りきれない。そんな中でも比較的使えそうなホールドで、思い切り指の上に指を重ねる持ち方をして離陸してみた。離陸が出来、次のしっかりしたスタンスに左足を置く事ができた。このムーブか。しかし、なんとなく地ジャン、といっても石の上からのスタートだが、地ジャンポイのだ。

 もう一度やってみた。静かに、スローモーションの如くに左足をスタンスに乗せに行っているから、少し勢いをつけてホールドを引っ張って身体を上げてはいるけれども、思い切り足を蹴っているわけではない。従って、地ジャンとも言い切れない。まぁ言えば、一瞬の引付による飛びつきとでも言おうか。これくらいのムーブは許すことにするか。

 再度その少し静かなスタートで離陸し、後はしっかりしたスタンスで上に抜けることが出来た。秋や冬なら9級かも知れないが、今は9級では無いのかな。そんな気がした。

 幾分気を良くして、すべり台岩の「すべり台」に行ってみた。これも前回触った課題だ。前回は、なんだかもたもたと登ったという記憶があったので、今回は何とかスムーズに登れるムーブを探すことにした。

 ここの場合はスタートホールドは決まっている。スタートスタンスは2つ考えられる。問題は次の左足だ。確か左足は2つ並んでちょっとしたポケットがある。左のポケットの方が大きくてしっかり立てるのだが、少し左に寄るから乗り込むのが少しきつくなる。しかし、確か昔は左の大きなポケットの方に乗っていた記憶がある。でも、今はそのスタンスが使いずらい。なぜなのだろう。

 それともう一つ。そのポケットスタンスに立てれば、後は苦労することはなかったように思うのだが、前回は相当に苦労したような気がする。これも、なぜなのだろう。まぁ、その辺を解明しようという事であった。

 スタートのスタンスは次に左のスタンスを使うなら左側の方が有利であろう。その足で離陸し、左足を左の大きめのポケットスタンスに乗せてみた。やっぱりそのスタンスには乗りにくく、次の手が出せなかった。

 降りて、色々と考えて見た。やっぱり右側の小さめのポケットスタンスなのだろうか。

 右側のポケットスタンスでやって見た。次に手は出せるが、少し上にあるガバホールドにはわずかに届かず、そのホールドをしっかりとはもてなかった。やっぱり左のポケットスタンスに乗ることを考えよう。

 この岩、胸辺りから下は垂直かやや被り気味、その上は滑り台のような傾斜のゆるいスラブになっている。スタートホールドはそのリップの上の傾斜のゆるいスラブ面のミリカチだ。

 そのミリカチで離陸し、次のスタンスが見えないから、少し身体を岩から離して、左の方のスタンスに足を伸ばす。そして、その左足に乗り込む。まぁ、そんな感じのムーブを繰り返していたのだが、その左足への乗り込みが身体が岩から離れているからか、なかなか出来ないでいたのだ。

 どういう感じでどうしてそういうムーブになったのかはわからないが、左足を左に出してから、両手を引き付け、そのまま右手の上に身体を預ける体制になった。そうしたら、腰が上がり、左手が上に出せるようになった。おまけに、腰が上がったせいか、それまで僅かに掛からなかった上のガバホールドにしっかりと手が掛かった。その体制になれればあとは簡単だった。そうか、この、カウンター気味に左足に乗るというか、右手に体勢を預けるというか、そんなムーブがあったのか。これでやっと苦労せずに登れるムーブが見つかった。でも、この課題、確か6級だよなぁ。なんにせよ目出度し目出度しであった。でもこのムーブ、すぐに忘れてしまうのだろうなぁ。

 次はオーストラリア岩の3級のカンテだ、ということで、オーストラリア岩に行って見た。

 ここは、下地の砂が濡れていることが多い。それは覚悟の上だったが、今回は、おまけに、右足を右に開いて使うスタンス辺り、つまり、登ろうとしている面のちょうど真ん中辺が上からの染み出しのような雫で濡れていた。

 それを見て、一瞬拭取ろうかとも考えたが、そこまでしなくともと思い直し、カンテ課題は諦めた。実際は、カンテがぬめるだろうから、多分登れないだろうとの思いの方が大きかったのだが。

 しばらく休んだ後、とけたソフトクリーム岩の凹角の所を触ってみた。前回ここを触ったときは、下にマットが敷かれており、そのマットの上からの離陸だったから、マットが無い状態での離陸に少々不安があったのだ。

 凹角の奥のクラックに左手を掛け、右手は右のカンテを掴み、左足を左の壁のスタンスにスメアし離陸するのだが、クラックが第一関節までしか掛からず、おまけにスベスベで滑りやすいので、つい最近まではその体制では離陸が出来なかったのだ。前回はマットが岩の付け根まで敷いてあったため、マットを使っての離陸となったため、手が少し上がり、クラックの保持が少し楽だったのだ。

 恐る恐る左足を左の壁に突っ張る様に力を入れてみたら、身体が浮いた。良かった。離陸が出来た。続けて、右足を同じく左の壁に突っ張って右手をクラックに伸ばしてみた。僅かに手が届かなかった。

 同じようなことを何回かやってみた。今回は前回やら無かった、凹角の右を登るつもりでだ。

 しかし、前回は簡単に取れたリップのところのクラックのホールドがなかなか取れなかった。何回かは、クラックの左手が滑って外れ、地面に叩きつけられるような格好で落ちてしまったこともあった。やっぱり前回よりは、数段かどうかは知らないが、状態が悪いようだった。

 それでも、何回か繰り返していたら、段々リップ付近のホールドが取れるようになったのだが、右足を右のカンテに上げることができたのは1回だけだった。

 とけたソフトクリーム岩の前に一人の釣り師がやってきた。相棒とその釣り師を見ていたら、相棒が魚が釣れたといった。でも、その釣り師は友釣りをやっていたので、糸の先には常に一匹の鮎が縛ってあるのだ。それを説明したら、納得してくれた。

 実は、友釣りを真近で見るのははじめての経験だった。で、しばらくその釣りを見ていたのだが、はじめは、おとり鮎が弱っているように見え、あんなので釣れるのかと思って見ていた。しかし、予想に反して、その釣り師は3匹か4匹の鮎を釣り上げていた。多分鮎の解禁直後の月曜日だったこともあるのかも知れない。でも、その前にいた釣り師は釣れていなかったみたいだったのだけどなぁ。

 そろそろ日も傾きかけてきたので、忍者返しの岩に移動することにした。

 遊歩道を少し歩き、忍者返しの岩の対岸まで行って見ると、対岸からでもはっきりと分かるほどに岩は濡れていた。全面というわけではなかったが、いわゆる染み出しで忍者返しの課題のスタート付近の壁が、上から下まで、見事に濡れていたのだ。仕方が無いから、またとけたソフトクリーム岩に引き返した。

 カヌーが一艇下ってきた。鮎釣り師はいるけど、その数はほんの僅かだ。それに鮎が釣れていればその釣り師はカヌーに文句は言わない。釣れていない釣り師に限ってカヌーに石をぶつけたりするのだ。多分、その辺を見越してカヌーの練習に来たのだろう。

 再び凹角を触ってみた。それまで履いていたエッジの丸まりかけた靴をリソールしたてのエッジのしっかりした靴に履き替えてやってみた。

 さっきよりも悪くなっていた。やっぱり靴ではなかったのか。それとも、疲れが抜けなくなったからなのか。

 どこからか童謡のようなメロディーが流れてきた。既に5時になったようだった。そろそろ帰るか。でも、なんだか物足りない気もするし。

 忍者返しに行く前に、一回だけ凹角の右側の面の3級の課題を触ってみたのだが、その時はリップの上のクロス気味に持つカチがぬめり、開いた左足に乗り込むことが出来なかったので、もう一回その課題を触ることにした。

 この課題、下地に少し大きめの岩が出ている。ちょうどスタートのホールドの下だから、その岩が邪魔である。先ほどはその岩に乗って離陸したのだが、その岩に乗らずに離陸してみた。

 リップの下のフレークのようなところの淵の縦カチを、そのフレークを挟むように両手で持って離陸をする。しかし、その縦カチは浅いからしっかりとは指に掛かってくれないのだ。石に乗って足を少し高くして離陸が出来れば、そのフレークを真横に持てるから、少しは手が効いてくるのだが、石の下から離陸すると、その縦カチを斜め下から持つことになって、あまり利いてくれないのだ。

 何とかそのホールドを誤魔化して、離陸し、右足を少し左のスタンスに乗せて横を向きたいのだが、なかなかその体勢になれないのだ。手に自信が持てないし、下は岩だから、必然的に飛び降りざるを得ない。

 何回か飛び降りていたら、岩を蹴って少し前かがみに着地するから、踵を少し浮かした態勢での着地をするようになっていた。この着地体勢が取れれば足首を無理に曲げられることは少ない。前々からそういう着地がしたいと思っていた着地体勢だ。しかし、この体勢で着地したとき、アキレス腱に大きな負荷が掛かる。それで無くとも腱が硬くなっている小生の身体だ。そんな体制で飛び降りることが出来るのかがものすごく不安で、積極的には試すことをしなかった体勢だったのだ。それが、高さはせいぜい1mくらいだったのだが、何の不安も無く、何の痛みも感じずにしっかりと着地が出来ていたのだ。ほんの少しうれしくなってしまった。

 そんな発見をしながらも、なおもしつこくやっていたら、段々とムーブの要領を掴んできたのか、一番しっかりしたスタンスに右足を乗せることができるようになってきた。

 そのスタンスに乗れれば、クロス気味にリップ上のカチホールドが取れる。そのホールドで左足を左のカンテ付近のスタンスに開く。ところが、その真下にはスタートに邪魔になる岩が出ているのだ。そこを何とか左足を開き、その左足に体重を移していった。

 やっぱりエッジのしっかりした靴のためか、それほど不安も無く足が開け、体重も乗ったので、そのままリップに左手をオポジションし、足を上げに掛かった。しかし、足をリップに完全に上げるまでは行かない。じゃぁ膝か。膝をリップにかけてみたら、裏地の張ってあるズボンだったから、膝が滑るのだ。すなわち、得意の膝が使えないのだ。

 既に開いた足に体重を移してしまっているから、フレークのホールドを取りには戻れない。登るか飛び降りるかしかない。しかし、下には岩が出ている。顎を岩に擦り付けてみた。気休めにもならなかった。左手をもう少し上げなければ。滑りそうな右手のカチで耐えながら左手を上げた。手首を返した体制のオポジションだから、なんとなく不安は残る。そろそろと足を上げる。つま先がリップに掛かる。多分そんな感じだったのだろう。やっとのことでつま先が僅かにリップに掛かった。思い切ってその足に体重をかけ、伸び上がったら、上のホールドに手が届いた。ふぅー。

 やっと登ることができた。落ちなくて良かったぁー。

 何とか3級の課題が登れたとのうれしさと、着地の要領を掴みかけたとのうれしさから、また凹角の課題に取り付いてみた。

 下地の石に着地しても、踵に痛みを感じることも無い。高さも、今までの飛び降り方では足首に痛みを感じるか感じないくらいの高さだ。やっぱりこの着地方法は使えるかも。それに、この方法だと、マットに踵が沈み込んで余計に足首を痛めるという心配もなさそうだから、マットも使えそうだし。段々高さを増して、試してみることにするか。

 しばらくぼけっとしていたら、鮎釣り師は既に移動していた。

 既に6時頃になっただろうか。最後になんとなく成果のようなものも得られたし、この辺で帰ることにするか。

 駐車場に戻ると、カヌーを積んだ自動車が入ってきた。ちょうど6時頃だった。そうか、日没まではまだ1時間ほどある。仕事が終わって一漕ぎしにきたのか。ゲレンデが近いとこういうことができるから、羨ましいなぁ。

 夕飯は久しぶりに牛丼屋に寄ってみた。われわれよりも後に来た人達も出て行ってしまったので、われわれが出るときには沢山いた客が一人もいなくなっていた。忙しい人しか牛丼屋には来ないのかなどと相棒と話しながら笑ってしまった。


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作成年月日 平成18年 7月 5日
作 成 者 本庄 章