金峰山敗退そして御岳ボルダーその50

2003年10月 8日記
 先の日曜日から月曜日にかけて、相棒と2人で金峰山ボルダーに行くことにした。因みにこの金峰山ボルダーとは、金峰山頂付近に点在するボルダー群であって、既に今年の夏に仲間達が登っており、それなりの情報はもらっている場所である。

 日曜日、途中用事を済ませて、夕方近くに都内を出発する。地図を見ると、大弛峠への林道へのアプローチが結構面倒くさそうだったので、行くつもりで既に一ヶ月以上も前から目的地としてカーナビに記憶させてあった大弛峠を呼び出し、カーナビのルートをセットする。

 今日は大弛峠に泊る予定だから、そんなに急ぐことは無いということで、カーナビは一般道を使う設定にした。

 カーナビの指示するルートをちょっと確認すると、所沢から青梅方面に向かう道を指示しているから、当然、奥多摩から柳沢峠を越えて塩山まで行くのだなと納得し走り出す。

 かつて良く走った所沢街道を走り、途中牛丼屋で夕食を済ませ、所沢市内に入り、渋滞を少し走ると、青梅に向かう道を指示するから、素直に従う。ところが、少し走った所で、思いがけない道を指示する。その道は結構新しく出来た広い道だったので、もしかすると別な行き方があるのかと、半信半疑でその道に入り暫く進む。しかし、何かおかしい。このままでは飯能に行ってしまう。車を停めて、指示している経路を詳しく検証する。

 カーナビが指示する経路を検証する場合、広域を表示するモードにして大まかな検討を付けるのだが、広域にすればするほど細かい地名や道路が表示されなくなってしまう。目的地が100kmも離れていてそれを1画面で表示しようとすると、殆どの道路や地名などは表示されなくなってしまうのだ。おまけに地図表示を進行方向を上にするモードに設定してあるから、普段見慣れている地図とは感じが全く違ってしまっている。塩山側からの道がメインなので、当然そちら側からの道を指示すると思い込んでいる目には、まさか秩父、川上村経由の道が表示されているなどとは思いもしない。高速道路を示してはいないことだけを確認すれば、OKと思い込んでしまったのだった。

 そこで、今回は詳しい表示のまま、カーソルを操作しながら、経路を順を追って辿って見たところ、飯能から秩父に出て、中津川林道で三国峠を越え、川上村側から大弛峠に上る道を示しているのが分かったのである。

 おいおい、ちょっと待ってよ。いくら林道を走ることに抵抗がない小生だといっても、これはちとやりすぎではないか。中津川林道は全部ダートだし、川上村側から大弛峠への道なんて日本一の悪路と言われていて、おまけにいつも通行止めの道ではないか。そんな道を行かせるのかよ。当然引き返すことにする。

 所沢青梅間の道は結構走っている道だから出会えば分かるだろうと、Uターンせずに脇道に入り、そっち方面と思しき道を選んで走り出す。ところが、なかなか見知ったその道に出会わない。やっとそれと思しき道に出会ったので、右折してその道を走り出すが、やはり何か違う。相棒がここはさっき通ったという声を無視しつつ、尚もまたごちゃごちゃ迷走すると、やっと見知った風景に出会う。しかし、目指す方向とは全く反対を走っている。このままだと所沢市内に向かう大渋滞に突っ込んでしまう。慌ててUターンする。

 あとは何時もの道だから、カーナビの指示を無視し、奥多摩を目指す。そのうちカーナビも諦めたのか青梅方面の道を指示しだす。

 青梅に入って、軍畑に差し掛かると、カーナビはまたしてもしつこく軍畑から飯能方面に抜ける道を指示してくる。こいつ馬鹿か。その後も戻れとかなんとか余りにも五月蝿くしつこいから、自動車を止めてカーナビの目的地を柳沢峠に設定し直す。

 途中、奥多摩の少し先で、なんとなく新しく出来たような道に迷い込んでしまい、少し戻ったりはしたが、カーナビの指示通りほぼ順調に進む。

 柳沢峠の到着予定時間が最初は午後11時40分くらいを示していたのだが、峠に近づくに従って11時に近くなってくる。丹波山町を過ぎると、前後に自動車は居ないから、少しアクセルを踏んで見る。もしかすると、この調子だと峠到着が11時を切れるかも知れないと、助平根性を出して、少し頑張ってしまう。

 そのお陰もあって、11時丁度にカーナビから「目的地付近です」とのアナウンスがある。しかし、目的地設定が少しずれていたようで、本当の峠はもう少し先だった。

 一応峠の土産物屋の駐車場に入り、カーナビの目的地を大弛峠に設定しなおす。ところがここで、相棒が少し気分が悪いと言い出す。小生が少し頑張りすぎたためか、自動車に酔ってしまったようだ。まぁ、あんまり頑張ってもしょうがないし、下りだからと、その後はゆっくりと走る。

 大弛峠への林道に入ってからも、相棒の自動車酔いは収まらない。自動車の後ろに移って横になったのだが、やはり収まらないらしい。

 途中、平日の午前8時半から12時、午後1時から午後5時半までは、この林道は通行止めになるとの看板がある。それでは5時半までは降りて来れないではないか。反対側の川上村への道は通れるかどうか分からないし。

 少し考えていたら、相棒が、もうこの辺で休まないかと言い出す。丁度、林道脇が少し広い空き地になっていたし、ここから峠まではあと30分かそこらだからと、その空き地に自動車を入れ、仮眠することにする。12時を少し廻ったところだったろうか。因みに外気温は5度を指していた。

 この自動車は後ろの席を倒すと人が寝られる平らな空間が出来るので、そこにボルダリング用のマットを広げ、荷物を片付けて寝る準備をする。近くに僅かに人家がある場所では有るが、殆ど真っ暗である。

 4時頃目が覚めたので、そのまま一応峠まで行って見ることにする。

 途中、ほんの少し未舗装のところがあるが、殆どが舗装されており、程なく峠に到着する。

 峠には、多分山小屋のものと思しき軽トラ一台とワゴン車が一台とまっているのみである。外気温は2度位だったろうか。結構寒い。駐車スペースの一番下の所に自動車を入れ再び寝る。

 自動車の音で目を覚ますと、既に何台かの自動車が登ってきており、登山者らしい人たちが何人かいる。

 我々の自動車の隣に入ってきたワゴン車はどうやら川上村側から上がってきたらしいので、聞いてみると、やはり川上村側から上がってきたという。道は通れるのかと聞くと、悪路だけれども、通行止めではないという。この人たちは金峰山を「キンポウサン」と言っていた。やはり長野県の人たちの様だった。

 これで、2時3時でも帰ることは出来るということが分かる。じゃぁ行くだけ行って見るか。

 我々はそんなに急ぐことも無いからと、適当に朝ご飯の支度をはじめる。その間結構自動車が登ってくる。平日だというのにやっぱり人気があるらしい。

 なんだか白いものが視野に入る。あれぇー。雪かぁ。雪だぁ。なんと僅かに雪が舞いだしたのだ。どおりで寒いわけだ。でも、どうしよう。

 我々の自動車の隣の駐車禁止の柵をどけて自動車が一台止まる。そして、降りてきた一人の女性が、その近くの柵の裏側に置いてあった机と椅子を持ち出し、アンケート調査云々の看板を掲げる。なんとなくそれを見ていたら、その人がアンケート調査に協力してくれないかという。この林道の自動車乗り入れ全面禁止ということに対して賛成か反対かというアンケートの様だ。まぁ、積極的に反対はしないけど、積極的に賛成もしない。自動車で来れれば便利だし、現に来ているし、と答えておく。

 雪が少し強くなったが直ぐに止んでしまう。雪もそんなにひどくはならなそうだし、折角ここまで来たのだから一応行くことにするか。

 もってきたフリースを着込み、一応羽毛のチョッキもザックに詰めて、靴を履き替えようとすると、その靴が濡れている。靴に入れていた靴下はグチョグチョである。横に積んであったポリタンクの水がこぼれてしまったようだ。仕方が無い、何時ものタビックスを引っ張り出す。

 ザックだけを背負い、8時半に出発する。歩き出すと、また雪が降り出す。樹林帯だからそんなに気にはならないが、結構降って来たようだ。

 最初のちょっとした急登を暫く登ると、少し傾斜がゆるくなり、ちょっとしたピークを越える。辺りは既に白くなっている。服に掛かる雪も、払えば落ちるのだが、なんとなく湿っぽくなって来た気がする。

 少しだらだらと下ると、ちょっとした峠に出る。朝日峠とか言うらしい。

 登山者が一人休んでいる。ここまでで30分位い歩いている。我々も小休止するか。

 雪も結構降っているし、上着も僅かに湿ってきたので、我々も荷物から合羽を出し着込む。

 既に道も少しぬかるみはじめたところも出てきている。岩も濡れ始めている。このまま行っても、多分岩に登ることは出来ないだろう。せめて朝日岳まででもとも思ったが、我々は登山者ではない。ボルダリングをしに来たのだ。ボルダリングが出来なければ行ってもしょうがない。じゃぁ、無理することなくここで引き返すか。

 帰りは早い。程なく真っ白になった峠に戻る。それでも9時半位にはなっていた。

 ここでこんなに降っているから、下の廻り目平もだめだろう。どうしよう。

 結構下から自動車が上がってくる。駐車場には十数台の自動車が停まっている。既に通行止めの時間ではないのか。一台の自動車に聞いてみると、通れるという。雪だから仕事が休みなのだろうか。勝手に解釈する。

 となればと、荷物を適当に自動車に突っ込み、塩山目指して直ぐに出発する。

 前を走る一台の自動車に追いつき、これ幸いとくっついて下り始める。ところが、この自動車が途中の道路脇に止まってしまう。仕方が無いから、先行する。一応通行止めの時間帯だから、恐る恐る下る。既に雪は雨になっていた。

 途中で作業員の人たちが仕事をしている。なんとなく申し訳なくなって、相棒と一緒に会う人毎に自動車の中から挨拶をする。

 カーナビの自車を示す矢印が道から遥かに外れた所にあり、ルート外走行中と表示されている。GPSの精度って、今でもそんなに正確ではないのだろうか。

 カーナビの説明書によると、GPSの情報を基に、自分の走る方向や距離をセンサーで感知し、それを地図上の道に当てはめて追いながら、画面に表示しているらしい。そのため、急カーブが連続する、おまけに登りや下りで水平には走らない山道では上手く表示が追従しないことがあるらしい。

 どうやら、今回はそのケイスらしい。そう言えば来るときも、奥多摩の先で表示がわかりにくくなり、道を間違えてしまったし、この林道を登ってくるときも、カーブを曲がった先で、突然表示が道路を外れ、道路外のところを走り出したと表示されることが間々あった。あれらはこういうことだったのか。

 それにしても、今回は外れ方が酷い。遥かに道を外れている。一本道だからカーナビなど点けなくとも良いわけだが、付いているとつい点けたくなってしまう。それで、ぶつぶつと機械に文句を言ってしまう。嫌な性格のようだ。

 無事、昨夜泊まった場所を過ぎ、カーナビの表示も正常に戻って、塩山市内まで戻る。 さぁ、これからどうしよう。瑞牆もだめだろうし、やっぱり御岳に寄るか。結局もと来た道を引き返す。

 塩山駅の近くで、斜め左に入らなければならない所を、信号も無かったので、つい通り越してしまう。こういう時はカーナビは便利である。Uターンすることなく元の道に復帰するルートを指し示してくれる。お陰で、今まで通ったことの無かった塩山駅近くの賑やかなところを通ることができた。

 塩山市内で、塩山温泉という看板を見つける。相棒が寄って見ようかというから、どんな所か分からないし、日帰り温泉施設があるかどうかも分からないからと答える。

 柳沢峠への道の途中に「大菩薩の湯」という看板を見つける。寄って見るか。寄ろう。ということで、引き返して大菩薩の湯に寄る。塩山市営の温泉施設である。

 市民以外は一日千円、3時間までなら600円だそうだ。おまけに、休息室だけなら無料である。勿論持ち込みもOKである。1時間ほどゆっくりと温泉に浸かり、1時間ほど持ち込んだ昼飯などを食べながらゆっくりして、おまけに30分程相棒がお買い物をして、1時半くらいに出発する。既に雨は上がっていた。

 そろそろ御岳だ。さぁどこに行こうか。多分雨が降っただろうけど、とけたソフトクリーム岩と、中州のボルダーなら多分乾いていて登れるだろう。そのどちらかなら間違いがなさそうだが、出来ればデッドエンド直上をやりたいから、駄目元で先ずはデッドエンドにでも行ってみるか。

 3時頃、御岳の発電所脇の駐車場に到着する。道は少し濡れているところが有るので、やはりこちらでも雨が降ったようだ。これではデッドエンドはだめの様だ。

 寝具と化していたクラッシュパッドを自動車の荷物の下から引っ張り出し、支度を整え、歩き出す。

 一応デッドエンドに寄ってみる。岩は濡れてはいないようだが、やはり下地は湿っている。登って登れないことはなさそうではあるが。そのまま中州ボルダーを見ると、釣り人は殆どいない。

 中州ボルダーの下地は案の定乾いている。マットを広げ、ストレッチをして、レインボーハングを触ってみる。

 この課題、確か4級なのだが、小生には中々すっきりとは登れない課題なのである。

 右手リップ近くのカチ、左足を大きなスタンスに載せて離陸して見る。左手が届かない。右足で離陸して見ると左手のガストン気味のホールドが持てた。左足を上げ、右足をリップ近くのスタンスに持っていったが、その足が滑り、落ちる。

 靴を見ると、前回の御岳の忍者返しの岩の前で湿った下地を歩いたままだったので、底が真っ白である。一生懸命に擦ってみたが、なかなか取れない。仕方が無いから適当なところで諦め、また取り付いてみる。

 左のホールドを取って、右足を先ほど滑ったスタンスに上げ、左手を引き付けて右手をリップ状のところにもってゆく。少し甘い。もう少し下の少し奥のところを持つと、いくらかマシの様だ。まぁ、落ちることは無いだろうと、そのホールドで左手を上げる。

 今までとは少し違う。なんとなく余裕がある。最近はジムではグレードが大分にダウンしているのだが、やっぱり確実に進歩はしているようだ。

 少し休んで、ジャンピングフックを触ってみる。

 下地は高くは無いがそんなに低くも無い。相変わらず、ランジは易しいのだろう。というわけで、スタティックなムーブを探る。

 先ずはスタンスである。左下に結構顕著な斜めのスタンスがある。先ずはそれを使うか。右手は真中のリス沿いの水平カチ、左手は左のカンテの小さな三角の窪みを使ってみる。

 離陸は出来る。しかし次に動けない。ホールドを探す。リス沿いにガチャガチャした部分が繋がっているので、その辺を触ってみる。チョークがいっぱい付いているから、他の人たちもいっぱい触っている部分だ。幾つかホールドになりそうな感じの所はあるが、実際に持てそうな所は少し上の僅かにアンダーでガストン気味のホールドしかない。しかし、そのホールドを使うには体が上がっていなければ無理そうだ。

 足を探る。外傾したカチスタンス、淵の丸い水平スタンス、僅かな凹み、等など候補は幾つか有るが、いずれも細かかったり位置が悪かったりで、実際に使えそうなスタンスは無い。

 左のカンテの上のほうを探る。指が2本くらい掛かりそうなポケットがある。これが使えるかも。

 離陸して、カンテのポケットに手を飛ばす。直接には見えないから、なかなか上手く指が掛からない。

 このムーブをポケットの場所の見当を確かめながら何回か繰り返す。指が何回かポケットの淵に掛かる。しかし、保持は出来ない。どこが掛かるのだろうか。探りたいのだが、中々思う場所に指が掛からない。従ってどう持てばよいのかの見当もつかない。真横なら利きそうな気はするのだが。

 たまには飛んで見るか。

 足を探す。ちょっとした窪みでは足が高すぎる。それ以外は足が低すぎる、ような気がする。斜めの顕著なスタンスでは場所が悪い。以前はどのスタンスで飛んでいたのだろう。

 顕著なスタンスの右に小さな外傾スタンスがある。これを使ってみるか。右手は水平カチ、左手はカンテの三角のポケット。ねらいをつけて、少し沈み込んで、思い切り地面を蹴る。なんだか何時もより体が上がってゆく。なんだか、右足も蹴っている気がする。

 左手がリップの上のホールドを捉える。体が止まる。「止まったよ」思わず呟いてしまう。この呟きは少し離れていた相棒にも聞こえたらしい。相棒はこの小生の呟きを聞いてカメラを構えたらしい。

 初めてこのホールドに止まった。というよりも、今まではこのホールドにさわってはいても、このホールドを持つにはまだ数センチから10センチほど足りなかったのである。今までの下地の高さの中でも、高目かもしれないが、そんなに高い方ではない。今まで飛んでも横っ面しか叩けなかった高さである。

 慎重に右手を添えて足を決める。左手の指先が濡れている。ホールドの窪みに水が溜まっているらしい。慎重に手を持ち直して、右手を出す。そんなによいホールドは無いが、なんとなく適当に持てるから、適当に体を上げ、上に抜ける。やったぁ。長年の課題がやっと出来た。多分下地の関係で、本来のグレードではないのだろうが、一応は登れた。地面から直に飛んでも届かない高さで出来たのだ。

 でも、スタティックに登りたいから、今しばらく頑張って見る。しかし、なんとなく身が入らない。従って進展は無い。

 ここは諦め、平日なのでもしかしてと、丸こんにゃく岩に行くことにする。

 案の定というか、丸こんにゃく岩の下地は、湿ってはいるがしっかりと水面上に出ている。岩の付け根も水没はしていない。

 ここはシートを敷けば、靴を湿った砂に置かずにトライができるので、岩の前にマットを広げ、その少し前に人工芝も広げて、マットの上に座ってしばし丸こんにゃく中央のスタンスを検証する。

 相変わらず、悪そうなスタンスしか見えない。

 人工芝に移って、岩を触りながら手を探る。右手は3本くらい指のかかる縦カチ。左手もそれより少し悪目の縦カチ。それらのホールドを使い、右足は、悪目の斜め外傾スタンスに置いて離陸してみる。今までは離陸すら出来なかった。しかし、今回は離陸は出来る。ホールドが持てるのだ。間違いなく指が強くなったようだ。その直後に足が滑る。やっぱり。でも、離陸は出来るようになったようだ。なんとなく嬉しい。

 じゃぁ、次のホールドだ。

 左手のホールドの少し上にパーミングチックなホールドがある。左手をここに飛ばすか。

 何回かやってみる。しかし、なかなか目的のところに手が行かない。足も手を出すと滑る。

 もう一度スタンスを探る。やはりこの外傾スタンスしかないのか。そのスタンスへの足の置き方を色々と工夫しながら、何回か繰り返す。待てよ、その外傾スタンスの直ぐ上にスメアなら利きそうな面がある。ここにスメアか。

 やってみると、十分に離陸が出来、体が少しだが上がる。滑ることもなさそうだ。これだ。

 次は左足を少し上のカチスタンスに上げてみるか。

 そんな中、両手のホールドには親指が僅かに掛かる所があることを発見する。で、親指を架けて、ピンチっぽくもってやると、結構楽に左足を上げられる。以前、仲間の言っていたことはこれだったのか。

 離陸して、左足をカチスタンスに上げ体を上げる。上がることは上がるが、右足をリップの上に上げられるほどは上がらない。何回か繰り返すが進展は無い。

 先に探った左手のパーミングチックなホールドはどうか。やってみるが、左足を上げていて、体が岩から少し離れているためか、足を上げる前よりも左手が出ない。

 地面からそのパーミングチックなホールドを触ると、辛うじて持てる。ではと、左手をそのホールドに移して離陸を試みると、体が伸びているせいか、また、左手があまり利かなくなったせいか、次に足を上げるどころではない。だめだ。

 その辺の組み合わせを変えながら何回かやってみる。どうもしっくり行かない。どれもだめそうだ。そうこうするうちに大分疲れてくる。

 時計を見ると、既に5時を廻っている。そろそろ潮時か。相棒が何回かこちらにカメラを向けていたので、ここに取り付いている写真を撮ったかと聞くと、手がもう一手出てからと思い撮ってないという。この岩にしがみついている所でよいから撮ってくれと頼み、左足を上げたところで写真を撮ってもらう。

 まぁ、直ぐということは無いが、そのうちこの丸こんにゃく中央が出来そうだという気にさせてくれたということと、永い間出来なかったジャンピングフックのランジが出来たということで、一応の成果はあったということにして、帰り支度をはじめる。

 最近の御岳は何時も2時間かそこらしか居ないねとか言いながら、駐車場に戻り、それまで自動車に濡れたまま乱雑に積み込んであった荷物をある程度整理していたら、完全に暗くなってしまった。確実に日は短くなっているようだ。

 帰りは相変わらず下道を行く。そして、夕食は久しぶりでハンバーガー屋に寄って、少しだけ豪華な夕食にする。ゆっくりしていたら、コーヒーが飲みたくなってしまったので、コーヒーまで追加注文してしまった。

 後は何時もの道を何時もの如く、走る。

 平日の夜の都内は混んでいるとばかり思っていたのだが、意外に空いている。休日よりは多目のタクシーも、こちらがウインカーを上げると素直に入れてくれるしで、休日よりは自動車は多目だが、大変に走りやすい。渋滞も無く、お陰で、10時には家に着いた。

 二日をかけた割には2時間程しか居なかった御岳だったが、全てにゆっくりとした、大変に楽しいボルダリング行ではあった。

 そのうちまた平日に休んでゆっくりとボルダリングにでも行くか。


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作成年月日 平成15年10月 8日
作 成 者 本庄 章