靴のタイプで登り方が違う

2001年1月21日記
 最近、自然の岩に於いて、フラットソールつまり靴について幾つかのタイプの違うものを履き比べると言うことを行った。それも、1回だけではなく幾つかの場所で幾つかの課題で何回か行った。別に意識した訳ではなく、自然にそうなってしまった訳だが、その体験を基に靴に付いて少し考えてみたので、その事をお話しすることにする。

 先ず結論から言うと、靴のタイプで登り方が違うし、課題に因ってはそのタイプの靴でないと登れないということも有るという事だ。但し、これからの話しは自然の岩における小生の体験ということでお聞き頂きたい。

 幾つかの課題といっても、小生の登れるか登れない位の課題だから、3級からせいぜい2級の課題である。どちらかと言うと被りの無いカチからスローパー系の課題が多い。この辺の自分の限界グレードクラスの課題になると、ほんのちょっとした足への立ちこみ具合で登れたり登れなかったりするから、果たして靴の性能だけで登れたり登れなかったりするのかは疑問の多い所だが、いずれにせよ、靴の性格で足使いが違う事は間違いない事であり、それによって登れたり登れなかったりすることがあるという訳である。

 先ず、スリッパタイプの柔らかい靴の場合だが、当然の如く細かいスタンスに立つ為にはそれなりの足の力が必要になる。また極端に細かいスタンスにはエッジングでは立てない。スメアなりスメッジングで立つ事になる。しかし、このスメア或はスメッジングでも足の力が無いとしっかりと効かない。特にスメッジングの場合は、強い力で靴を岩に押し付けなければならず、なおかつエッジングする訳だから、足が非常に疲れるのである。

 傾斜の緩いスラブでの使用の経験が殆ど無いので、その辺の感覚はわからないが、小生にとっては、スラブに於いても、やはり少し硬めの靴の方が結晶への立ち込みなどがやりやすいように思えるのである。

 メーカーも言うように、スリッパは被った所での使用が良いのかも知れない。

 次は少し柔らかめのエッジングの効く靴だが、永年使って来たと言う事もあって、今の所小生にとってはこの靴がベストの様である。

 小さな結晶へのエッジングと言うような芸当は出来ないが、そこそこのスタンスには立てるし、一寸した結晶へはインナーエッジでのスメッジングが出来る。つまり、親指の付け根辺りの部分でスメッジングすることが出来るのである。

 このインナーエッジでのスメッジングだが、所謂カエル足状態での立ちこみである。こうすると小生の様な身体、特に足首の硬い者でも確実に岩から身体が離れる事無くそのスタンスに立ちこめる。従ってそれだけホールドへの負担を減らす事が出来るのである。つまりそれだけ悪いホールドに耐えられる。

 少し柔らかく、岩への食い付きも良いからこのような体勢でもフリクションが効く訳だが、これはスラブの立ちこみでも効いて来る。足首が硬いから、足をまっすぐにしては登れないので、足を少し逆ハの字にして登のだが、その様な状態でも、靴が少し硬いから、ソールに力が加わりフリクションを得る事が出来る。

 要は身体が硬い人向きとでも言えようか。

 最後は小生がカチ靴と言っている硬い靴である。

 ソールも硬いからエッジングは抜群である。ほんの少しの結晶でもエッジングできる。靴をフラットにして立つ事が出来る。細かいスタンスへの立ち込みはこれらの中では一番足の力を使わないで出来る。しかし、足を平にしてスタンスに立つ分足首は岩から離れてしまう。まぁほんの1cmか2cmにも満たない位だが、これが身体の硬い者にとっては、結構上体の体勢にまで影響するように思える。

 しかし、細かいスタンスに足の力をそれ程使う事無く安定して楽に立てるので、ホールドへの負担はそれだけ減らす事ができる。使い方に因っては結構使える靴なのかも知れない。

 小生、今まで少し柔らかめの靴を履いていた所為で、スタンスには踵を少し落とし気味で立つ癖がある。しかし、硬い靴でこれをやると滑ってしまう。やはり、その靴の性格に合わせた足使いでやらなければその靴の性能はわからないかも知れない。

 以上、極簡単では有るが小生の最近の経験から得た感想である。

 ここで、多分靴の硬さよりはソールの質による違いの方が大きいのではないかと言う言葉が帰って来そうだが、それは間違いの無い事である。ソールの違いは大きい。

 小生も、人工壁ではあるが、3種類のメーカーの3種類のソールのスリッパ靴を履いて来た。そして、その3種類とも同一メーカーの同一のラバーでリソールして履いても見た。確かに、リソール後の靴の性能は、同一のラバーでリソールした1足を除き、劇的に変わった。オリジナルのソールの時からその違いは自覚していたのだが、同じ靴でソールを変えて見て、はっきりとラバーの性能の違いを自覚した。

 あるメーカーのソールは最初から滑りやすく、最後まで滑りやすかったし、もう一つのメーカーのソールは、最初は滑りやすかったが、段々滑り難くなって来た。別のメーカーではほぼ最初から滑り難かった。そして、それは紐、スリッパ等靴の形式に殆ど関係が無い様に思われた。

 単純にソールの性能だけでいうとある程度の差が最初からあるように思われるが、靴の性能はソールの性能だけではない。足へのフィット感やアッパーの硬さ、伸び具合等、影響する要素は多い。従って、たった3足の靴で云々出来る物ではないから、それでどれがベストと言う事は出来ないかもしれない。

 最近小生の回りでは硬い靴を履く人が増えている。小生も最近硬い靴を履く様になった。そして、ようやくその硬い靴に馴れて来たようである。これからこの靴をもう少し履きこんで、その靴に有った足使いをマスターした後に、またこのような比較をして見たいと思う。


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作成年月日 平成13年 1月21日
作 成 者 本庄 章