笠間ボルダーその6

2000年11月21日記

 先日の日曜日、秋も深まって来たし、あの凄まじいやぶ蚊も収まっただろうということで、久しぶりに総勢5人で笠間に行ってきた。いつもの相棒は今回はお休みである。

 我々千葉グループは2人、他の3人とは現地で合流した。仮に小生とA氏、B氏とそのご母堂及びC氏とする。ともにクライミングジムの仲間である。因みにB氏、C氏は笠間は初めてであり、B氏のご母堂は現在手の故障でクライミングはせず見学のみの参加であった。

 11時頃現着、B氏グループは1時間ほど前に到着していたとか。石倉岩ではロープを出してルートを登っているグループがいる。以前ここでお会いした事の有る、何年振りかで笠間に来るようになったと言う方にもお会いする。仮にD氏としよう。

 ストレッチもそこそこに、最近買った新しい靴を履いて見る。やっぱりまだ少しきついようだ。ジムでもう少し履いてから降ろす事にしよう。

 B氏は早くもウェイオブザギルをやっている。この課題は小生にはまだ早いし、C氏がやさしい課題はないかとのことだったので、B氏親子を残し、3人でラブタッチの岩に行く。

 先ずはウオームアップにそれぞれでグリコを登る。C氏も登る。そして、ラブタッチ。実はこの課題は確かA氏も登れていなかったんじゃなかったかと思うが、ワシントン倶楽部と並んで、笠間での小生にとっての一つの懸案となっている課題である。

 A氏がトライ。足が上がるも失敗。C氏左のカンテを持って動けず。小生、左のカンテはスタテイックに取れるも、左足が上がらず。

 追っかけD氏も現れ、4人でセッションとなる。A氏登る。さすが。D氏、ラブカンテをレイバックで試みるが成功せず。

 ラブタッチは諦め、ハートビートカンテの岩に行く。A氏が、マジックフィンガーと言う課題に挑戦する。この課題は出だしがわからなかった課題だったのだが、枯れてしまって今にも腐って折れそうな木の根っこに乗っていきなり上の方のポケットを取ってスタートする課題らしい。A氏2撃する。ポケットに3本の指が入ったとか。小生ポケットを触って見たが、指が2本しか入らず、足も無いので諦める。例え足が有って、そのホールドに2本指でぶら下がれても、身体を上げると効かなくなってしまいそうなポケットだ。

 続いて、A氏、ハートビートカンテを登る。それを見てD氏、ハートビートカンテはレイバックで登るのだと言いつつ、最初のムーブを教えてくれる。確かにそのムーブでスタートすると、あの、憧れていた「関東の岩場」に出ている写真と同じ格好になる。小生、やってみてちょっと感激、調子に乗ってそのままレイバックで登り出す。途中ちょっと手に詰まったが、少し身体を開いて、その後はまたレイバックでなんとなく上まで行ってしまう。こんな高くまで登ってしまって良いのだろうか。少々不安になる。が、待てよ、もうすぐ上のリップが取れるではないか。すでにそこまで登ってしまっていたのだ。A氏がその石の上で最終ホールドを示して、「ここここ」と教えてくれる。やったー。登れるー。これが取りたかったんだぁー。最後の少し悪いマントルで石の上に立つことが出来た。

 この課題は、一応2級とグレーディングされている。今までのムーブではしばらく不可能だと諦めていた課題であり、もっと力のいると思っていた課題である。しかし、そんなに力を使う事もなく、難しいと言う感覚もなく登ってしまった。何だかわからないうちに登ってしまったと言う感じである。従って、登ったと言う感激はそんなには湧いて来なかった。

 小生の登りを見たA氏、この課題はなんか登れてもすっきりしなかったとかで再度レイバックで登り、やっぱりこれが正解ムーブと納得する。これでなんか花崗岩が見えて来たとも言った。小生も、スローパーのカンテを真横に引くと意外なほど効くと言う事は、以前にラブタッチで経験はしていたのだが、これほど劇的とは思わないでいた。それ程きれいに登れてしまったのだ。このムーブだと昔のグレードのDという評価も納得してしまう。一瞬、若しかすると2級は無くなってしまうかもしれないとも思った。でも、しばらくは小生がそれだけ上手になったのだということにしておこう。

 次はシンプル岩に移動する。B氏親子も合流する。

 A氏とB氏はシンプルアンドディープに挑戦する。しばらく両者の挑戦を見学したり、D氏からシンプルファイターの登り方を教わったりした後、皆でワシントンクラブに行く。やはり、笠間に来ればここを触らない訳には行かない課題だ。B氏にもぜひやらせたかった課題でもある。

 A氏、自分のムーブを思い出すのに何回かのトライを必要とした。B氏、さすが何回かのトライで登る。この課題、どうやら正解ムーブと言うものは存在しないようだ。過去に登った人及び今回登った人、それぞれ足も手順も違うようだ。それぞれの体形に合った足、ムーブが有るようだ。それだけ微妙なバランスの上に掌全体で石をホールドしているらしい。でないと、あの何にもないのっぺりしたホールドが持てる筈はない筈だから。

 今まで、このパーミングというホールド方法はどんな力で保持するのかという事が非常に疑問であったのだが、今回ハートビートカンテのレイバックでなんとなく理解できたような感じがする。まさに僅かに効く方向にホールドし力を入れていると言う事のようだと納得した。

 C氏はなかなか登れない。小生も相変わらず登れない。両者諦めて皆でシンプル岩に戻る。

 どうしてもラブタッチが登れないのが悔しかったので、シンプルアンドディープに熱中していたB氏を無理矢理誘ってラブタッチの岩に行く。先客が1人いた。

 ここも、さすが、B氏登る。足を左に集め、右手はあまり使っていない。やっぱりレイバックだ。ハートビートカンテだ。

 B氏、先に上に行くとの事でここで別れる。小生1人残って、B氏の登りを参考に、登り続ける。先ずは足を上げる。今までになく上がる。しかし手が上がらなくなってしまう。よし、次は手を上げておくことにしよう。パンパンと手を送って少し高くに手を上げる。足が滑る。手の上げ過ぎか。次は適度に手を上げる。足を上げる。上がる。手が出た。リップを掴んだ。うぉーやった。ラブタッチが登れた。結構長かったなぁ。

 ハートビートカンテにしろこのラブタッチにしろ、力で登ったと言う、或は細かいホールドに耐えられるようになったので登れたと言う、これまでの人工壁での過程とは全く違う登れ方で登れたのである。やっぱりムーブで登れたのである。ムーブと言うよりはバランスを見つけ出して登れたと言う感じだろうか。いや、全くの発想の転換と言った方が適切なのかもしれない。

 喜び勇んでシンプルアンドディープに挑戦していたA氏の元に行き、ラブタッチが登れた事を報告する。やっぱりレイバックか。とすればワシントン倶楽部もと、再度一人でワシントン倶楽部に行く。いつもの落ちる所の、ホールドする手が少し効いて来たような気がする。そしてその先の足を上げるムーブが起こせるようになって来た。しかし、やっぱり落ちてしまう。僅かに手が効く様になった気はするのだが、身体をホールドできる所までは行かない。

 落ちる所が少し進んだ所為で、落ちる時に左の前腕の内側を岩に擦るようになってしまった。お影で腕は摺り傷だらけになってしまった。おまけに右手のホールド地点の結晶がいつも中指の腹に当たるので、そこの指の皮が集中的にすり減って行く。そろそろ生理的な限界と諦め、シンプル岩に戻る。A氏、シンプルアンドディープに成功したとか。初の初段だそうだ。よかった。

 B氏、C氏も上に行っている事だしと、我々も上に上がる。

 石倉の頭に戻ったがB親子、C氏の姿が見えない。たまたま居合わせたD氏に聞くと、彼らは先に行くと下に叫んでから帰ったと言う。そう言えばそんな声が聞こえたようなとA氏。ちょっと遊び過ぎたかな。

 今回は久しぶりの目から鱗の一日であった。

 それにしても、この日の笠間は混んでいた。何しろ石倉スラブのルートを登っていた人達は勿論、扇岩のクラックを登っている人達がいたし、その他にも我々以外に2グループはいた。筑波のクライミングジムの存在が大きいのだろうか。

 またまた、それにしても、未だに蚊がいたのには驚いた。すごい生命力だ。


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作成年月日 平成12年11月21日
作 成 者 本庄 章