広田のボルダーその2そして岩手の立石神社のボルダーに行ってきました

   東北気侭な一人旅その3
2005年12月 6日記
 高田の道の駅で5時頃に目を覚ます。まだ早いからとまた寝ようとしたのだが、その後はなかなか寝付かれず、うとうとしながら7時過ぎまで横になっていた。

 8時過ぎに出発し、広田半島を目指す。一度走ったことのある道だから、何となく見覚えのある道である。

 前回、広田の岩倉海岸と言うことで行った場所は、メインの場所ではなく、あまり登られては居ない場所だったらしいし、黒崎仙峡に至ってはボルダーに到達すらできなかったので、今回は、仙台の友達に教えてもらった広田のメインの場所と黒崎仙峡のボルダーが目的であって、共に始めての場所である。

 最初は広田海岸に行くことにする。

 分岐場所らしい所に到着したので、一応分岐してみたのだが、なんだかイメージとは少し違う場所である。今回の分岐場所は確か前回分岐した場所の少し手前の場所のはずなのだが。メインの通りまで戻り、その先を偵察に行ってみる。

 なんだかやっぱりさっきのところだろうか。またさっき分岐した場所まで戻り、友達に教えてもらった地図の場所を確認すると、どうやら偵察に行って引き返してきた場所よりはもう少し先の様だ。再びメインの通りまで戻り先に進んでみる。すると、引き返した場所の少し先で見覚えのある風景に出くわす。ここだここだ。

 細い道に分岐し、既に何台かの自動車が停まっている道の脇に自動車を停める。

 支度を整えて歩き出すと、作業をしているおばさんに出会ったので、一応その方に、自動車を停めた場所が地元の方に邪魔にならないかどうかを伺い、その先で少し遊ばせて貰う旨を告げ、先に進だ。

 岩のゴロゴロした海岸を歩いてゆくと、間もなく大きな岩に行く手を阻まれる。どこかその大きな岩を越えられる場所は無いか探してみたのだが、水際には無さそうだったので、結構急な斜面を少し登って、その岩を高巻く場所を探してみる。すると、その斜面の上の方に何となく踏み跡のようなものが見える。あんなところに道があるのだろうか。良く見ると確かに道に見える。その道まで斜面を登って行こうかとも考えたのだが、傾斜も結構急だし、足場も決してよくは無さそうだから、出来れば登りたくはないし、多分少し戻ればあの道に入る場所があるはずだ、と考え、戻ってみることにする。

 来たところを石伝いに戻ると、やっぱり斜面に登って行く結構しっかりした踏み跡が見つかった。

 その踏み跡を辿り松林の斜面を進むと、ちょっとした突端が岬状になった尾根状を越え、次の浜に下りることが出来た。

 浜に下りたが、ここを教えていただいた友達のHPにある写真のようなボルダーらしいものは見当たらない。再び、マークの付いた地図を広げてみると、まだ少し先の様だ。

 登るには大きすぎるし傾斜もない岩を攀じ登って行くと、その先にどこかで見たような岩が現れた。HPから落としてきた写真と見比べると、確かに間違いは無さそうだ。

 荷物を置き、パッドを広げ、暫し休息する。

 周りの岩はどれも高い。下地は全て岩盤である。やっぱりパッドをもってきて良かったようだ。

 前の海では漁師さんが箱めがねのようなものを覗きながら、竿で何かを取っている。そんな漁師さんの乗った小船が何艘も見える。声をかければ多分お話が出来るだろう。そんな近くで漁をしている。

 ストレッチも済ませ、先ずは偵察である。写真を片手に岩を見て廻る。

 これは、この岩か。あの高くて途中にクラックが走っているのはこれだな。じゃぁこの大きな岩は? 近くにある岩を一通り写真と照合してみる。続いて上の方に登って行く。

 大きな岩の反対側にも廻ってみる。こっちはもう対象となりそうな岩は無さそうだ。上の方のあそこに見える、空中に突き出した岩は多分写真のこの岩の裏側ではないだろうか。登っていって、裏側を確かめると間違い無さそうだ。でも、この岩はパスだな。だって、「 下地かなり悪いです・・・つーか、下地無いし・・・」だもの。

 荷物に戻り、写真を見直してみる。

 ここに来る時に、一応これだけはやってみようと思った「姫クラック」とかいうそれほど大きくは無さそうな、真中に縦にクラックの走った岩がまだ見つかっていない。これを是非とも探さなければ。

 反対側の上の方に岩を攀じ登って行ってみたら、一番上の方の茂みの中にあった。これだ。

 先ずは高くも無く、恐くも無さそうな、でいて、多分小生には無理そうなマントルのところを触ってみる。思ったとおり、離陸後のホールドがわからなかった。

 少し高い目の顕著なクラックの入った、最初に一番目立った壁を登ってみることにする。難しくは無さそうだが、高さがあるから、一応下にパッドを敷いて置く。まぁ、パッドといっても、今はやりの厚いパッドではなく、薄っぺらいパッドである。

 途中に横に走るクラック迄行き、そこに立って見たのだが、その上のホールドが判らない。ホールドを探っていたら、右側の端まで行ってしまった。そこをそのまま登っても良かったのだが、何となく左の反対側まで戻り、高いし落ちたくはないからと、更に左に逃げてしまった。

 他にも、その壁の右の少し低い壁とか、上の方のクラックの入った壁とかをちょこっと触り、写真にはない、見た感じ少しだけ面白そうな、それでいて易しかった、その場所の一番上のほうの三角形の壁を登ってみた。三角の壁は10級では少しかわいそうかな。

 いよいよメインの「姫クラック」である。

 そこへは、ちょっと岩の大きな段差を登らなければならない。パッドを背負っては動きにくいし、あまり高くはなかったからパッドは使わなくとも大丈夫そうだと勝手に決めて、靴と、足拭きマットと、大事な大事なデジカメと三脚を入れたサブザックを背負って登って行く。

 デジカメの三脚をセットし、触り始める。

 クラックが使えないか触ってみる。どうやら小生にはジャムは無理そうだ。少し背伸びをして、その上の狭いクラックにフィンガージャムをやってみる。それもやっぱり駄目そうだ。スタンスはクラックの淵のガバに近いスタンスが使えそうだが、ホールドが見つからない。クラックの淵しかないのだろうか。といって、クラックは垂直で手前に少しフレアしているから、レイバックでもちょっと厳しそうだし。リップの淵は少し高いところでないと手はかかりそうにないし。

 色々と思案をし、岩を撫でまわしてみるが、妙案は浮かばない。

 で、結局、左足、左手はクラックの少し高い、なんとか手がかかりそうな所で離陸してみるが、なかなか身体が上がってくれない。右足でやってみたら身体は上がったが、左手がすっぽ抜けて落ちてしまった。ここに来るまでは下地は土だと思っていたのが、実際は岩だったので、一瞬ヒヤッとしたが、結局はなんとも無く一先ずは安心をする。

 クラックの淵を何回かもっている間に、親指が僅かにかかるところを発見する。そこのところを持って右足で離陸すると離陸が出来るようになってきた。で、一応その離陸している姿をデジカメに納める。というか、そこから先に行けないから、セルフタイマーで撮ると、その辺のムーブまでしか撮れないのではあるが。

 離陸して、右手の丸っこいカンテにホールドを探ってみる。少し掛かる部分がある。が、そこを発見したところで力尽き、飛び降りる。

 次はその右のカンテを取ってから、その上の下から見える小さなフレーク状のホールドに手を飛ばしてみる。カスッただけでホールドは出来なかったが、掛かりそうな感じはした。

 右のカンテのホールドを取り、左足をクラックの左の壁にスメアしてみる。すると体勢が安定する。その状態で右手を出すと静かに右手が上がり、先ほどはカスっただけの上のフレーク状のカチホールドが持てた。そのホールドは、なんだか浮いてそうで、欠けそうな感じがしたのだが、何とかごまかして、身体を上げ、足をクラックにねじ込んだら、左手でクラックの左の岩の天辺のフレーク状のホールドを取る事が出来た。あとは岩の上に這い上がるのみである。やったー。

 小生の体感的には4級位なのだが、多分にリーチものって感じだから、5級とか、もしかすると6級とかって言われてしまうのだろうなぁ。でも、触ったときは登れるとは思わなかったから、素直に嬉しかった。

 ポツリポツリと小さな雨粒が落ち始めてきた。今日はこんな時間から雨が降るとは言ってなかった気がするのだが。でも、一段落したし、これを機会に、ここはこれで終わりにするか。そろそろ10時半頃にもなるし。

 荷物を纏め、来た道を戻る。既に漁師さんの小船は消えていた。

 途中、山道に入る手前の浜で海を見つめながら、一昨日買ったリンゴを海水で洗い、齧りついた。

 次は黒崎仙峡である。今回は地図も持参したし、何とか辿り着けるであろう。

 黒崎仙峡の駐車場に自動車を停め、一応トイレに寄って残っていたもう一つのリンゴを洗ってから出発する。

 教えられた場所辺りをうろつくが、それらしいところが発見できない。行ったり来たりあちこちうろちょろしてからそれらしく思えた崖を僅かな踏み跡を頼りに降りてみる。

 下の入江に出ることは出たが、なんだかそれらしくは見えない。岩だらけではあるがボルダーらしきものは見えない。地図で確認すると、なんだか一つ隣の入江にも見える。仕方がないから、またすごく急な滑る斜面をまたまた手にトゲを刺しながら、直に見失ってしまう踏み跡を何とか登り返し、隣と思しき入江方向の踏み跡に入ってゆく。

 こちらはやはり何回も人が降りているのか、何となく踏み跡らしくなっている。

 入江に下りると、何となくそれっぽい雰囲気を感じる。多分ここだろう。大き目の折り重なった岩を越え、その先の大きな岩盤を降りてゆくと、確かにボルダーっぽい岩が存在している。

 少し広くなった岩盤の上に荷物を置き、周りの岩と持参した友達の写真とを見比べてみる。しかし、はっきりとそれと確認できる岩は無い。やっぱり違うのだろうか。でもこの近辺ではここほどそれっぽいところは見当たりそうにないし。

 傍らの、ボルダーには高すぎる岩の壁を見上げると、なにやら金属ぽいものが光っている。良く見ると、確かにペツルの新しそうなハンガーである。その先を追うと幾つかのハンガーが上に伸びている。ここでクライミングをした人が居る事は間違いが無い。絶対の確信は無いが、ほぼ間違いは無いだろう。一人で迷うと弱気になるものである。

 ここも岩は高いし、下もしっかりと岩盤である。

 ハンガーの打たれた岩の横にくっついた、低いといっても5mは有りそうな少し寝た壁を登ってみることにする。その前に、この岩、降りてこられるのだろうか。

 岩の周りを廻って降り口を探す。横の大きな岩との間のクラックとか、岩の裏側とか調べてみたが、結局は、登ろうとしている壁の右の壁の易しそうなところを降りるしか無さそうに見える。そこで、実際降りられるかどうか登ってみて、降りられることを確認した。だって、一人で岩盤の上の高い岩から降りられなくなってしまったら、それこそ大変だからである。現に、一人ではなかったが、何回か経験あるし。

 ここも下は岩盤だから一応パッドを敷いて、目的の壁を右のカンテを使いながら登りはじめる。先ずは1mくらいのところのテラスっぽいところまで登り、右のカンテで身体を上げて行く。下からはホールドが無さそうに見えた壁は、探せば細かなカチっぽいホールドが有りそうな感じである。それに、スタンスも悪くは無さそうだし、カンテも僅かに左に傾斜しているから、手はカンテだけで行けそうである。しかし、この岩は意外とフリクションが効かない感じである。カチといっても何となく外傾している。慎重に手、足を選び、途中、カンテにヒールを架けたりしながらも、手はカンテだけで天辺直下まで行く。

 これからどうしようか。少し左に寄って、一番高いところをマントルしようか。一瞬考えたが、それは少し恐い。無理はせず、天辺のリップを持ってから、右のカンテを回り込み、右側の傾斜の無い壁で岩の上に上がった。

 先ずは一本登った。それにしても、ここは高い奴ばかりだ。今登ったのも5〜6mはありそうだったし。

 この場所には、広い岩盤の上にすごく大きなボルダーが一つ転がっている。その岩はあちこちに被った面を持っていて、高さは高いところだと10m以上は有りそうな感じである。その他には、今登った岩の横のこれも高さが10mを越え、ハンガーが打たれた岩くらいしか登る対象になりそうな岩は無い。もう小生に登れそうな岩は見当たらないのである。

 その岩盤の隣の岩盤に行くには、下に水の溜まった、幅2〜3m、深さ2mくらいの入江状のところを越えて行かなければならない。

 その入江を渡る場所を偵察する。

 入江の奥のほうは水はなくなるが、深さが深くなり、側壁の傾斜も増してくる。入江の入り口付近は高さが低く傾斜も無いが、水溜りの幅が増し深さも増してくる。適当な、渡れて登れる場所を探さなければならない。もっとも、深いといってもたかが知れてるから、靴を脱げば何の問題も無いのだが。

 幅も狭く、側壁も登れそうなところを選んで入江を渡る。

 隣の岩盤に移り、荷物を広げる。パッドに座りながら、待てよ、上潮で水面が上がってきたら、若しかしたらかえれなくなってしまうかも知れないと考え出す。それはまずい。十分注意して遊ぶことにしよう。

 こちらも運動靴のまま、あちこちと偵察して廻る。上の方の側壁がそんなに高くは無く、小生にも登れそうである。その上や、その先の方はどうやら快適に登れそうな場所は無さそうだ。

 荷物のところまで戻ってくる時に、入江の一番奥辺りに下ってくる尾根状のところを下ってきた。そのとき、入江の一番奥の辺りの側壁を偵察してみたら、なんだか幾らか凸凹が有り、登れそうに見えた。上潮のこともあるので、早速その少し高い側壁を降りてみたら、意外と簡単に降りられる。対岸を登ってみたら、これも簡単に登れた。ここ、いけるじゃん。これで潮を気にすることは無さそうだ。

 最初に目を付けた、3m弱の高さの、何となく被って見える壁を登ることにする。

 近付いて見たら、やっぱり壁の真中は無理そうに見える。ということは、やっぱりカンテからみしか無いか。

 一応上に抜け、先ほども降りた入江の奥の辺りに下りてくる尾根状のところを降りてきた。

 次はそのカンテの右側の壁である。こちらは僅かに寝ている。おまけに真っ直ぐ縦に細いクラックが走っている。これは楽そうだ。

 そこを登ると、もう登れそうなところは無い。時間は12時半を少し廻っている。そろそろお昼にするか。

 海を見つめながら、持参したパンをほうばる。

 本日は最終日である。最初の予定では最終日はお昼頃までの予定であったから、そろそろ帰ることにするか。でも、ETCの夜間割引の適用を受けるには、今からでは早すぎる。やっぱり出発は早くても5時頃までは待たなければ。今から温泉に入っても時間を持て余すし。そんなことを考えているうちに、そう言えば、昨夜、道の駅の情報端末に千厩まで1時間くらいと表示されていたっけ。千厩といえば、最近調べた立石神社があるはずだ。資料は持ってはこなかったが、大体の場所は記憶にある。それに神社だから、近くで聞けば判るだろう。ならば、立石神社に寄って、そこで時間を潰すか。登れなくったっていいや。そんな考えが浮かんでくる。そうだ、立石神社に寄って、一関から帰ることにしよう。

 帰り掛けに、ハンガーの打たれた岩の写真や、周りの写真を少し撮りながら、先ほど確認した場所で入江を越え、来た道を戻っていった。

 駐車場の脇は温泉施設になっている。普通だったら、最終日だから、温泉に寄ってゆくのだが、まだ予定も有るし、その温泉は前回に入った温泉である。なんの躊躇も無く、千厩を目指して出発することとした。

 カーナビに、覚えていた場所をインプットし、走り出す。

 一旦陸前高田まで戻り、気仙沼から284号で千厩に向かう。陸前高田から千厩までは1時間位いらしい。

 道は混んではいないから、順調に進みすぎて、284号から分岐する場所を通り越してしまったが、大した支障も無く、カーナビにセットした場所付近に到着する。丁度、おばさんが二人歩いてきたので、道端に自動車を停め、そのおばさんに立石神社のことを聞いて見たら、地元ではないから知らないと言われてしまった。

 自分の記憶では、この道から右折するはずだし、巨石神社ということで、結構有名な神社らしいから案内もあるはずだと、少し気をつけながら走っていったら、そこから二本目の分岐の交差点に、小さな判りにくい杭状の立石神社への案内があった。ここだぁー。

 その交差点を右折して、グニャグニャ曲がった道を少し登り加減で走ってゆくと、今度は、道の右側に結構大きな石碑に立石神社と彫りつけられていた。

 その石碑の手前に砂利道が分岐していたから、その林道風の道に入り、先に進む。

 幅は自動車1台分。結構踏まれていて、荒れてはいない。2回か3回位カーブを曲がったら、左側に立石神社参道と書かれた古びた看板が出てきた。その看板を行過ぎてしまっていたので、少し戻って、その看板のところを左折し、路面全面に落ち葉の積もった道を登っていったら、行き詰まりの所に神社が現れた。

 神社の脇は広場になっていたので、その広場に自動車を停め、神社の裏方向を眺めると、なにやら黒い大きな岩陰が見える。間違い無さそうだ。

 荷物をもって、神社の裏に廻ってみる。

 調べたときは、数個のボルダーがあるとしか書かれていなかったので、少し心配していたが、結構しっかりしたボルダーが幾つか目に入る。

 神社の裏はちょっとした斜面になっており、その先は平らな場所になっている。その平らな場所まで降り、回り込んでいったら、登れそうなボルダーが幾つも出てきた。って、そんなに多くはないが。

 でも、下地には濡れた枯草が積もっている。岩に生えている苔も濡れている感じである。条件は決してよくは無い。

 ボルダーとしては一番立派な、高そうな岩の前に荷物を置き、幾つかの岩を見て廻る。基本的には、苔だらけだが、垂直に近いかそれ以上の角度の壁には苔は着いてはいない。

 荷物を置いた岩を触ってみたら、すごく結晶が粗い。でも、風化した感じは無い。登れそうだ。

 最初に、その少し立派な岩の縦に走るクラックを使って登ってみる。その壁は少し寝ているが、上には帽子みたいな岩が乗っていて、そこが少し被った感じになっている。その帽子の付け根のクラックのリップを持ってみたが、あまりよくは無い。帽子側のカンテを掴んでみたが、これも持てない。どうも良さそうなホールドがない。靴のソールは濡れっぱなしだから、細かいスタンスにも乗りにくい。諦めて飛び降りる。

 2回か3回くらい同じ事をやってみたが、靴も濡れっぱなしだし、岩がガビガビだから、手も痛くなってくる。

 そこは諦め、どこか登れそうな岩を探してみる。

 傾斜が緩いと苔があり、苔が無ければ被っている。どうも丁度良さそうな岩はそうは無い。でも、何とか少し寝た壁に薄いフレークが張り付き、そこのあちこちにクラックが走っているみたいな岩を見つけ、その壁を登ってみる。リップには苔があったものの、壁の苔は僅かだったし、縦横にクラックが走っていたから、何とか登ることが出来た。でも、傾斜は緩かったが、苔の上に落ち葉が積もっていた下降路は少しだけ緊張した。ソール、濡れてるし。

 その岩の迎いに、高くて少し被った面を持つ岩がある。その少し被った面は大きくまーるく窪んだ感じになっており、なんだか面白い形状の面だったので、その面を触ってみる。途中までは何とかホールドがあったが、その先はホールドは無かった。

 そんなに高くは無く、結構被った面をもつ、その面のリップをいかにもマントルしなさいといわんばかりの岩を見つける。早速リップを持ってマントルしてみたら、意外と簡単だった。

 既に3時半を廻っている。何とか一つは登ることが出来たし、道の駅にでも寄りながら、ゆっくり帰ればそんなに早い時間でもないし、そろそろ帰ることにするか。ということで、先ほどの荷物を置いた壁の前に戻る。

 改めてその岩を見ると、その壁の左の端の斜め上方向に走るフレークが目に入る。これは一発、そのリップをトラバースしなければ。

 フレークのリップを両手で持ち、手を送って行く。しかし、ここもスタンスが細かいというか無いから、足がつかえない。2手目か3手目で既に手が耐えられなくなってくる。難しくは無いはずなのだが。ここも2回程やってみたが、諦めた。ソール、濡れてるし。

 そろそろ4時か、丁度良い時間かもしれない。

 荷物を纏めていると、ズボンの裾の草の実が気になってきた。触ってみたら、前回の東北合同合宿でもくっついてきた、ねばねばした奴だ。只払っただけでは全く落ちない。摘んで剥がしてやるにも手がねばねばしてきてしまう。少し摘んで剥がしてみたが、量も多いので、いやになってきて剥がすのを諦めてしまった。ったく、厄介な草の実だ。

 神社の本殿の前を通るときに、まだ挨拶をしていないことに気付き、仏教徒では有るのだが、一応手を合わせる。

 後は只帰るだけだからと、自動車に戻り、着替えを始める。Tシャツを脱ぎ、裸になって肌着に着替える。当然ズボンも、粘粘の実をいっぱいつけたまま脱ぎ、普通のズボンに履き替える。幾らかさっぱりした。ような感じになった。

 神社の参道を下っているときに、神社の石垣が少し張り出していて、道が細くなっているところが出てきたので、ハンドルを谷側に切りながらブレーキを踏んだら、足がブレーキペタルの半分にしか掛からず、踏み込んだら足がペダルから外れてしまい、危うく道から自動車が落ちそうになってしまった。幸い、そんなにスピードは出ていなかったから、ハンドルで元に戻ることが出来、大事には至らなかったのだが、もしかすると、挨拶無しに岩を触っていた祟りだったのだろうか。おまけに、境内で裸になって着替えをしてしまったし。今度からは、登る前に神様にご挨拶申し上げることにしよう。

 旧国道との合流点まで戻ると、正面の造成地の様な所に岩が見える。それも複数見える。やっぱりこの辺は花崗岩地帯だから、土を少し削ったりすると岩が出てくるんだ。

 旧道に合流し、橋を渡ると、その造成地に入るらしい道が川沿いに分かれていたので、その道に入ってみる。

 川沿いをほんの僅か走ると、再び造成地に道が分かれる。しかし、造成地の入り口にはロープが張られ、立ち入り禁止の看板があった。残念。もっと家に近い場所だったら中に入って岩を見に行ったのだが。

 すぐまた国道に合流し、ほんの僅か進むと道の駅が出てくる。道の駅「かわさき」である。

 実はこの旧川崎村だったか町だったかはEボートで有名なところなのである。って、Eボートといっても、ボルダリングよりももっとマイナーなスポーツだから知ってる人なんて誰もいないかも知れないが、以前、小生もこの川崎村だったかのEボート大会に参加しようと思った事が有ったのである。で、結局はその時は台風か何かで大会が中止になってしまい、その機会を逃してしまったのだが、そんな関係から、何となく親近感を覚えてしまっていたのである。

 道の駅の情報館だか交流館だかに行ってみたら、丁度そのEボート大会の時の写真が展示してあった。で、一生懸命今でも参加しているであろう昔の仲間の写真を探してしまった。

 写真が見つからなかったから、物産店の暇そうにしていた店員のおじさんに聞いて見たら、やっぱり今回も来たらしい。優勝は出来なかったらしいが。

 滅多に買ったことの無いお土産を相棒のために買い込んでしまった。

 このまま一関から高速に乗ってしまうと多分早く着きすぎてしまう。一関で食事にして、その先は国道4号線を適当に走ることにするか。カーナビをセットし直し走り出す。

 北上川を渡るとすぐに、自分はR284で一関を目指しているのに、カーナビは4号線へのショートカットの道を指示してくる。そんなことをしたら食事が出来ないじゃないか。カーナビを無視し、R284を走り続ける。

 一関の町に入る。道が狭いせいか、駐車場を持つお店は殆ど見えない。わざわざ少し混んだ駅前の道を通ってみたが、寄れそうな食事の店は見当たらない。仕方がないからそのまま国道4号に合流する。するとすぐに、吉〇家が出てくる。吉野〇か、一瞬躊躇してそのまま進む。大き目の橋を渡る。周りは暗くなる。もう町はお仕舞いなのか。その先少し走ったが、ますます寂しくなってくるから、仕方がないから、脇を並走する道に入り、先ほどの〇野家まで戻る。

 一応店のお姉さんに、仙台までの時間を聞いてみた。1時間弱だとか。そんなに近いのか。80km位だからとの答えが返ってくる。そうか、誰も一般道で仙台までは行かないんだ。

 まだ6時頃だから、カーナビの到着予想時間が1時頃になったら高速に乗ることにしよう。

 一度走った道を再び走り出す。

 沿道に灯りは殆ど見えない。安いガソリンスタンドがあったら給油しようと思っているのだが、そんなもの出てくる気配も無い。しかし、自動車は快調なペースで走っている。

 既に大分走った気がするのだが、カーナビの予測時間は0時頃を示したままである。カーナビが高速に乗れ乗れと五月蝿いのを我慢しながら、設定は高速のまま一般道を走っているのだが、一向に到着時間が遅れてはこない。このままだと、仙台まで行ってしまうかもしれない。

 自動車を運転しながら高速のサービスエリアで貰った地図を調べてみる。何しろ信号すら出てこないから、自動車を停めることが滅多に無いのである。

 R4号は仙台では高速から大分離れて走っている。一旦仙台に入ると、次の高速のインターは国見辺りになりそうだ。仙台市内が混むと大幅に到着時間が遅れる可能性もある。ということは、少し早めでも泉インターで高速に乗るのが良さそうだ。一応最終計画がまとまる。次はガソリンスタンドだ。

 さすが、だんだん町らしいものが出始めてくる。ガソリンスタンドも出始める。

 価格は126円。まだ高いか。

 123円が出てくる。この辺ならまだ出てくるだろう。

 古川に近付いてくる。周りにお店も並び始める。

 いつも入れている銘柄のセルフのスタンドが出てきた。122円だ。よし、ここで入れよう。

 カードを使って給油を始めたら、120円と表示されている。会員価格らしい。ラッキーッ。

 ガソリンも入ったし、食事も済んでるし、後は高速に乗って帰るだけだ。

 仙台泉で東北道に乗る。多分8時近かったと思うが。空いている。到着予想時間はやっと0時30分くらいになっていた。

 このカーナビの予想時間の計算には高速の場合は時速80kmの数字が使われているらしい。ということは、あまり早く走ってしまっては、午前0時前に高速を下りることになってしまう。すると、夜間割引がつかえない。どうしても時速80km前後で走らなければ。

 適当な大型トラックの後ろについて、ゆっくりゆっくり走る。

 安達太良のサービスエリアに入る。インスタントコーヒーの粉とコップを持って降りる。

 給茶機のお湯でコーヒーを入れる。サービスカウンターに置いてあった地図を貰ってきて、地図を見ながらコーヒーを飲む。

 矢板インターが近付く。時間は10時頃だったろうか。ここで降りて一般道を帰っても、時間的にはあまり変わらないかも知れない。一瞬そう考えたが、そうすると夜間割引の適用は受けられない。夜間割引を使って高速でかえっても金銭的にはそんなに変わらないかもしれない。多分高速の方が楽だ。そう考え直し、そのまま高速を走り続ける。

 東北道最後の蓮田のサービスエリアに入る。ここで最終調整である。といっても、既に23時50分くらいだったか。

 黒崎仙峡のトイレであらったリンゴがまだ食べずに残っている。偶々ポケットに入れたままだったから、そのリンゴを齧る。

 首都高が工事で渋滞しているところがあるらしい。しかし、埼玉から千葉方面では関係は無さそうだ。

 無事、24時過ぎに最終ゲートを潜り、首都高に入る。

 首都高も、相変わらず大型トラックの後につけて、トロトロ走る。がしかし、くっついたトラックは70kmくらいでしか走っていない。これはさすがに遅すぎる。結局、その先は90kmから100km位で走ってしまった。

 家に到着したのは1時をちょっと廻ったところか。ほぼ計画通りであった。

 で結局、今回も3日間で5箇所もの岩場を廻ってしまったなぁー。いや、4箇所か。どっちでもいいけど。


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作成年月日 平成17年12月 6日
作 成 者 本庄 章