早川ボルダーその2

2002年10月 9日記
 土日で、相棒とジムの仲間4人の6人で、ジムの仲間の一人の案内で山梨県の早川に行って来た。

 金曜日の夜、9時半に西船橋駅前に集合し出発する。車は2台である。

 今回は案内をしてくれる人の実家に泊めて頂く事になっている。6人もの大軍で、それも夜中に押し掛けるのだから、迷惑な話ではあるのだが、その案内人をしてくれる人の申し出だったし、寝袋持参でお邪魔するということで、有り難くお邪魔する事にしたのだ。

 途中首都高の新宿の手前で少し渋滞した物の、他には渋滞も無く、次の待合わせ場所であるインターを降りた先のコンビニに到着する。出発と同時に車が離れ離れになってしまったので、このコンビニまではお互いにフリー走行となる。予想に反せず、仲間の車の方が先着していた。

 今晩のささやかな宴会のための買い出しを済ませ、仲間の実家に押し掛ける。

 夜中だと言うのにご両親とも起きておられて、色々とお世話を頂く。そして、なんと布団まで敷いて頂く。各人が寝袋持参であるとお話ししてあるはずなのに、本当にもうし分けない。お父様は皆のために水割りまで作って下さる。本当にありがたい。

 何だかんだで、1時位だったか、折角敷いて下さったので、皆有り難く布団に寝かせて頂く。

 翌朝、朝ご飯までごちそうになって、ご両親のお見送りを受けつつ、いくら申し出だとはいえ、やっぱりこれは少しご行為に甘え過ぎたかなぁと反省しつつ、8時過ぎに早川に出発する。

 途中増穂町だったかのコンビニで、その後の食料を買い出しし、市川大門町から中富町迄、富士川沿いに南下する。身延町に入る手前で南アルプスの北岳の麓辺りから流れ出す早川沿いの道に入り、ひたすら上流を目指す。

 我々の自動車は相棒と小生の2人しか乗っておらず、もう一台の車に4人が乗っている。この道は曲がりくねった、なだらかでは有るが、ひたすら広河原まで登って行く道である。その道を結構なスピードで走って行く。その自動車に小生がついて行くのだが、小生も結構真剣に走ってしまった。

 以前来た時に車を止めたトンネルの手前の橋の袂には、工事用の重機や小屋が置かれており、車を止める事は出来ない。先導車はお構いなく先に進んで行く。そして、トンネルを越えて、橋を渡った先の、小生も一度Uターンをした事のあるスペースに車を止める。

 そこだと、沢に降りるには急な崖の様な側壁を降りなければならない。普通にはとっても降りられない。支度を整え、歩き出すと、やっぱり道路を橋を渡り返し戻る方向に歩き出す。

 渡り返した橋の袂に一台の車が停まっており、運転手がその脇を少し入った所にエンビ管で引かれた湧き水を汲んでいる。いざとなったらここで水を汲める事を確認する。

 少しだらだら下りながら戻ると、ガードレールの下に梯子が作られている所がある。その梯子を使って道路の側壁を降り、藪をかき分けながら少し急な踏み跡を河原に降りる。

 ここのエリアは、以前来た時に遊んだエリアよりも上のエリアである。結構谷の深いエリアである。

 降りて行った所辺りに少し大きな岩がある。1級とか初段とかの課題があるらしい。小生がその日の内に登れるであろうグレードは3級迄である。少し難しかったり、被っていたり、疲れてしまたりするともう登れない。

 一緒に行った仲間は、相棒を除けば、それぞれ三段だ二段だという課題を登る人達である。一人だけ少し小生に近い人がいるが、その人でも、ジムのグレードでは2つ位は違うグレードを登る人である。そういう人達と同じ課題はとっても出来ないから、彼らがアップで登る課題をやって見るか、自分で課題を探さなければならない。

 相棒は今年に入ってからは、靴を履く事は無く、専ら石を拾い集めたり、たまに写真を撮ったりしている。以前はビデオを廻したりしたのだが、最近はビデオの電池切れが多く、滅多にビデオを廻さなくなった。特に普段のゲレンデではない時にはビデオを廻す事は無くなった。まぁ、ビデオテープが溜まり出すと、整理が大変だし、ビデオはムーブ研究用と、最近は割り切った使い方を始めたと言うこともあるが。

 仲間は、側壁に近い地味なマントル課題を触り出す。下が大きくハングしているカンテの丸っこい、そんなに大きくない岩だ。勿論小生は最初から触らない。近くの小さな岩の2手か3手のやさしい垂壁からちょい寝位の課題を勝手に設定して登る。

 最初は何でもありで登る。当然易しすぎるから次はラインを限定する。一つの岩の一つの面で3つか4つのラインを登る。皆登れると次はホールドを限定する。

 ラインを限定すると難しいラインが出て来るが、厳密には限定しないからやさしいラインにどうしても逃げてしまう。そのラインでホールドを限定すると途端に難しくなる。でも、別のホールドを探し出したり、スタンスを探し出したり、ムーブを工夫したり、それはそれで結構面白いのである。

 小さな岩で、せいぜい2手か3手だと、それでも長くは保たない。と言うよりも飽きてしまう。すると次の少し手応えの有りそうな少し大きそうな岩を探す。

 今回も側壁際の上が半分藪に覆われた感じの、結構奇麗な凹角を持った岩を見付ける。腰から下のハングの部分の足を巧く処理して、その上の凹角の中に入ってしまえばお終いの課題である。下地は大きな石があって少し恐い。

 右下の石の上から凹角の右のカンテのホールドを探る。その石から右手カンテで離陸が少しややこしい。カンテが真下に引く感じでホールドしなければならないから工夫しなければ持てない。色々探って、カンテを諦め、カンテから少し凹角に入った所のカチを使って離陸する。なんとなくバランスが悪かったような気がするが。離陸の足はどうだったか忘れてしまったが、次の足をリップの上の凹角の中に上げる。あとは傾斜の緩い凹角を2歩か3歩上がって上に抜ける。思ったより少し難しかった。

 仲間が少し大きな丸っこいカンテを持った岩に触り出す。この岩、何だか下地が少し下がって、登れなくなってしまった面があるらしい。その面の少し高い所に両手がかかりそうなスローパーチックな大きなホールドがある。しかし、そこまでのホールドが無い。下を見ると、壁から少し後ろに離れた所に一寸した石が出っ張っている。若しかしてその石から飛べば飛びつけるかもしれない。

 考えることは皆同じだ。仲間も目を付ける。だが、岩との間が少し離れていて、岩に向かって斜め上に飛び出さなければならない。岩に激突して落ちたら大変だ。最初の人はそこを果敢に飛ぶ。しかし、次の人は、飛ぶような格好をして、実はリハーサルでどのように落ちるか飛ぶ。あっ、それ、小生がやろうとしていたのに。

 次々とホールドに止り、上に抜ける。といっても何人もいる訳ではないから、二人なのだが。もう一人は止るのだが、マントルが返せない。

 小生は、最初は芸風ではないと、仲間が飛ぶのをただ見ていたのだが、なんだか面白そうなので石の上に立って見る。

 少し遠い。壁との間も空いている。一応マットを置いているのだが、そのマットが壁とその石との間に、すっぽりとはまっている。足が少しタカヒクになる。取れずに壁に激突したらどうしよう。一瞬脳裏を過る。構える。エイヤァで飛び出す。しかし、緩やかな弧を描いてマットに着地する。負けた。全く岩に触りもしない。恐くて飛べなかったのだ。

 その石の少し下流の右岸の側壁に、つるっとしたまん丸のカンテを持った2m足らずの岩を発見する。マントルが出来ないかと近付くと下地が悪い。落ちる訳には行かない。でも、カンテはそこそこ持てる。しかし、スタンスはスメアしかない。その左の面もマントルが出来そうだが、リップが更に持ち難くなるから右面よりは難しそうだ。

 仲間が一通り色んな石を触って一段落したようだったので、地味恐なマントル課題が有ると話すと、そのうちの一人が登ってくれる。簡単に右足フックで登る。ムーブはわかるのだが、小生にはその右足をリップまで上げることが出来ないのだ。

 もう一人の仲間も登ってくれる。その彼は、結構上までスメアで足を上げてからヒールフックをする。もしかして、あれなら小生にも足が上がるのではと真似をすると、辛うじて足が上がる。次はその足で身体をあげるのだが、なんとなく疲れてしまうのか、思ったようには身体が上がらない。何でだと思いつつ、幸いそのリップが奥に落ち込んでいる感じになっているので、上げた足をどんどん奥に持って行って、手に少し滑っているような感覚を覚えつつ、踵ではなく膝でリップを抱えるようにしてやっと這い上がる。落ちたら恐いから必死である。疲れてしまった。

 後は仲間のやっている課題のホールドを体験する程度の冷やかしで少し課題に触る程度で、もっぱらカメラマンに徹する。

 最近はなんとなくそんなスタイルが多くなって来ていたのだが、今回ではっきりと、この、相棒チックな、小生の新しいボルダリングスタイルが見えて来た気がする。

 仲間は最初に見た少し大きな岩の幾つかの課題に挑戦する。それを、近くの小さな岩を触りながら時々写真に納める。

 昼を過ぎてから、と言っても、登りだしたのが11時を廻っていたから、そんなに時間は経ってはいなかったのだが、別のエリアに移動する事にする。

 車に戻り、下流方向に走り出す。トンネルを抜けて、小生が初めて訪れた時に一時車を止めた、私有地につき立ち入り禁止と書いた看板のある空き地の少し先の道路際に車を止める。

 前にも感じたのだが、この私有地とは何処の事を言うのだろうか、道路脇のちょっと広くなった所を言うのだろうか、それともその看板の先の河原に降りる所を言うのだろうか、よくわからない。道路脇の一寸した広場なら駐車禁止位に書くだろうから、立ち入り禁止と言う表現はやはり、その先の河原に降りる部分を言うのだろうか。どちらにしても、先導車がそれを意識したかどうかは知らないが、その広場が狭くなって道路脇に少し延びている、一般的には路肩と目される場所に駐車した。

 少し下流に歩いて、杉林の中に入る踏み跡で河原に降りる。ここは以前一度来た事のあるエリアである。

 主なボルダーは流れの向こう側、即ち左岸にある。従って沢の流れを徒渉しなければならない。仲間は飛び石を使って対岸に渡る。それが、相棒には少しきつそうだったので、相棒を右岸に残し、小生だけ左岸に渡る。相棒を残したといっても、エリアはすぐの対岸だから、呼べば聞こえるし、大半は見える場所である。

 この場所は以前に来た場所の一番上流の場所辺りであろうか。以前の記憶がそれ程鮮明には浮かび上がらない。しかし、なんとなく、チョンボで石の上からスタートして、四苦八苦して登ったスラブの石のような石がある。でも、下地は全く違っている。もし、その岩なら、多分その岩に間違いないとは思うが、下地が水没し、今はスタートが出来ない。やはり、早川は下地は勿論、岩自体も変化が激しい様だ。この地域を勢力的に開拓している人に聞くと、ここの岩は、全体的に砂の上に乗った岩が多いので、大きな岩が倒れたり、流されたりするらしい。明らかに下地が掘れて地面に埋没してしまった岩もあるらしい。だから、過去に雑誌でこの地が紹介されたりしたが、その時も詳しい案内やトポは発表されなかったし、現在でも発表されたトポや案内図は無いのである。

 少し大きなポケットの多い岩がある。少し被った感じの面に左から右にバンド状の一寸したラインが走っている。下地はそれ程悪くはない。

 仲間がそのラインをトラバースする。3級位らしい。続いて、その壁の右の方を悪いポケットで直上する。それを見て、真似をしようとしたが、離陸が出来ない。薄かぶりのポケットは小生の最も不得意とするところだ。トラバースもポケットを使ったり、バンド状のカンテ状のスローパーチックなホールドを使うから真似はしない。

 そのトラバースのスタートの所のカンテの向こう側の壁を直上して見る。ガチャガチャした感じでホールドはソコソコある。一応上に抜けたから、次はトラバースのスタートから直上する。こちらは向こう側よりは少し難しい。途中のホールドを取るのに2回くらいかかったが、一応抜ける。

 より小生に近い仲間がこのトラバースに挑戦を始める。足があるようで無いような感じで、途中持ち変えが入ったりで結構苦労しながら結局上に抜ける。

 面白そうな感じがしたから、小生も真似を始める。スタートは左手サイドガバ、右手指の入らない小さなポケット、で仲間はスタートするが、小生は右手をその上のホールドに置いてしまってスタートする。次はバンドのカンテ状のカチチックなスローパー、というか、まぁガバ、或はポケット、どっちだったっけ。確かポケットは使うのだが。次は少し遠い、バンド状の所に飛び出した玉石状のホールドを取る。そのホールドで持ち替えて、バンド状のカンテを取るのだが、これが足が遠い。そのカンテ状のホールドを取れれば、そこは結構効くからあとはそこから上に上がれば良かったと思う。

 玉石状のホールドに行くまでに何回か掛かり、その先の結構効くホールドをやっととって、さぁ登れるかと言う所で、仲間の声援を受けつつ、力尽き、「アァ」の力無い声と共に落ちる。完全なるスタミナ切れである。限りなくガバに近いホールドをしっかりと保持しつつ落ちてしまう。悲しい事である。

 多分、この課題は登れそうだとの感触を得るが、今回この後、登れると言う感じがしなかったので、悔しいが諦めざるを得ない。

 仲間がやっている大きな岩のカンテの右側のそんなに難しくないらしい課題を小生により近い仲間がやっていたので、またまた真似をして見る。

 両手の大きなポケットで離陸し、カンテを取って足を上げて、リップの奥の見えない指の掛かるポケットでリップに上がると言う結構ダイナミックな感じの課題である。

 最初はリップの場所が良くわからず第一手目で落ちる。岩の上に登って、リップと、その次の見えないポケットを確認する。そして、2回目に登る。やったー。そんなに難しくはないのだが、ポケットでスタートしてリップに飛びつくと言う結構見栄えのする課題が2回で登れたので、結構嬉しい。一応本日の成果としよう。

 そろそろ5時に近付く。最後に上流部分を偵察に行こうと言う事になり、相棒を先に車に返し、仲間と上流を目指す。

 以前来た時は右岸を上流に進もうとしたので途中で行き詰まってしまったが、今回はそのまま左岸を進み、少し開けた所を抜けて谷が狭まり出す手前で右岸に渡り返し、本の少し行くと岩が見える。すっきりした奇麗な面を持つ少し高い岩である。その手前の岩や、対岸の岩にも課題があるらしいのだが、手前の岩は下地が水没していて今は登れないらしい。対岸の岩も奇麗な面を持った岩だが、下地は水没していた。

 その岩のすぐ上流に釣り橋がかかっている。そこまで側壁を登れば帰りが楽になるかもしれないということで、釣り橋まで登る踏み跡を探す。右岸は傾斜が緩く上がれそうなのだが、藪が濃く、踏み跡でもないと、マットを背負っては登り辛い。少し上流に一寸した沢形が有るのだが、灌木が被さっていて登って行けそうにはない。釣り橋近くでは踏み跡らしい物は見つからない。

 対岸は傾斜はソコソコ有るが、その側壁に釣り橋から沢に向かって斜めのバンドが降りている様な感じであり、そこは藪も濃くは無さそうだから登れそうな気はする。徒渉してそこを偵察に行った仲間も登れそうな気はすると言う。そこを使って釣り橋を渡って多分そこにあるであろう道を帰るかとの話もでる。

 見に来ただけ、のはずが、最初からわかっていたとはいえ、やはり仲間が登り出す。小生は登れる課題ではないし、既に体力も全くないので、カメラマンに徹する。

 仲間は代る代る何回と無くトライを繰り返す。上に抜ける仲間もいるし、惜しい所までで終わる仲間もいる。段々時間は迫って来る。既に時間は5時を廻る。仲間がヘッドランプの有無を確認するも誰もヘッドランプを持ってはいない。

 結局、元来た方向に引き返すのが無難だとの結論に達し、駆け足で戻る事にする。そして、もう駄目だと言うギリギリまでトライを繰り返す。

 仲間が支度を整えている間、支度の無い小生だけ先に出発する。が、程なく仲間に追い付かれる。仲間は本当に走っている。小生も走らざるを得ないから本気でついて行かざるを得ない。

 小生、昔、沢屋をやっていた頃、良くこういうゴーロを半日とか1日とか歩いた物だから、どちらかと言うと、こういうゴーロ歩きは得意中の得意だったし、現にカヌーをやっていた頃は、仲間に何故そんなに早く河原を歩けるのか不思議がられたものである。ところが、今回は思うように歩けない。まぁ、普通に歩く分にはなんの支障もないのだが、走るというか、急いで歩けないのである。足首のバネが無いからか、リズミカルにひょいひょいと石の上を飛んで歩けないのである。増してや走る事はほぼ絶望的なのである。

 まぁ、このゴーロを本気で走った仲間は本の1名か2名だったらしいから、そんなに仲間に遅れをとることはなかったが、結構本気モードのきついゴーロ歩きでは有った。

 そんな訳だから、お影様で、暗くなる一歩手前で辛うじて道路にでる踏み跡に入る事が出来たのだが、最後の徒渉は、最後の最後で足元を滑らせ水に濡れたくはないから、約2名の仲間と共に、将に靴を脱いでの徒渉をしてしまった。

 天場は、そこから少し下った所に結構快適な所が有ると言う事で、そこを目指す。しかし、既に真っ暗だから場所がわかり難いかもしれないと案内人が心許ないないことを言う。確かに、電気はないし、どこを走っても目印となる顕著な物は少ないから仕方はないが。

 役場を過ぎて、そろそろ中富かと言う所辺りまで下ってしまう。そこで、案内人が携帯で仲間に場所を確認する。すると、天場はもう少し上流だったらしい。まぁ、仕方が無い。

 戻って、ほんの僅か行き過ぎて、ようやく天場、といっても、単なる広場なのだが、に到着する。

 荷物は前回の時のまま殆どいじらず、持って来ているから、最低限はそろっているはずなのだが、ガスボンベが既に空に近く、ボンベを補充しなかった事に気付く。少々慌てるが、バーナーを買った時について来た半サイズのボンベを使わずにずっと持っていた事を思い出し、そのボンベを探し出す。案の定何時ものボンベは程なくガスが無くなり火が消える。

 新しいボンベに付け替えるといきなりすごい音がする。コックを開けたまま新しいボンベを付けてしまったのだ。慌ててコックを閉め、再びコックを開けて火を付けるが火が付かない。どうしたんだ。踏んだり蹴ったりか。一瞬焦る。

 鍋を下ろし丁寧に点火し直すと火が付いた。新しいボンベだから、何時ものようにコックを開けるとガスの勢いが強すぎて火が付かなかったのだろうか。そういう事にしておこう。

 久し振りの外岩だし、ヨセミテ帰り、フエコ帰りが集まったから、その辺の話題で盛り上がる。いつのまにか近くに点いていた街灯も消えている。先程から自動車も思い出して数えられるくらいしか走らない。ちょっと上流に来るだけでこうも違う物だろうかと思えるくらいに少ない。誠に静かな天場である。

 明るくなってから目が覚める。その間、一回も起きなかった。

 本日は昨日この場所を聞いた人が来るらしい。それを待ちつつ、先に行動を起こす。

 ここから少し下って、河原のボルダーに行く。最初は昨日行こうと言っていたドッ被りのボルダーに行くはずだったのだが、天気の関係からかその前に少し遊ぼうということでここに来たようだ。なにしろ、我々二人はただただついてゆくだけなものだから、その辺の詳しい事はわからないのだが。

 路肩の少し膨らんだ所に車を止め、その少し下流の踏み跡から河原に降りる。

 河原を少し下流に下る。流れの際に半分から下が少し寝ていて凸凹感があるものの、その上の少し傾斜の立って来る所はぺロっとしていて何も無さそうな岩がある。そこにも課題があるらしい。少し偵察して下流に向かう。

 程なく少し大きな岩が見えて来る。その岩の周りに荷物を置く。その岩にも課題があるらしいが、その岩の横の一段下がった流れの際に薄緑色のなんとなくでこぼこした岩がある。壁の真ん中には一寸した凹角というかクラックと言うか、そんな部分がある岩である。一見易しそうに見える岩である。

 仲間がその岩を色々見ている所を写真に撮ろうと、少し下流側の離れた水際の石の上に行くと、蜂が飛んで来て、小生の周りを飛び始める。見ると結構大きな蜂である。もしかすると小型黄色雀蜂とか言う蜂ではなかろうか。足長蜂よりは大型である。

 少し静かにしていたのだが、なかなか小生の周りから離れて行かず、飛び回っている。仕方が無いからゆっくりとその場から移動して仲間の元に戻る。暫くすると、多分先程のものであろう蜂が飛来するが、今度は程なくいなくなった。

 仲間はその岩の真ん中を登り出す。皆が登るとその右、その左と登る。それが終わると、左からトラバースを始める。

 何だかガスが出て来る。少し冷たい風も吹いて来る。若しかして、降るといっていた雨が降り出すのか。降り出すとすればそう先ではない。そんな感じがする。しかし、いつのまにか風も止んでいた。

 小生は一番右の一番易しいらしい所に挑戦する。左手サイド、右手水平クラックで離陸し、右のカンテに手を飛ばすのがスタートなのだが、スタンスを少し左の少し良いやつにすると、手がいっぱいいっぱいになってしまう。何回目かにやっとそのカンテを取ったのだが、そのスタンスでは次に動けないからまた別のムーブを探らなければならない。

 スタートにそのカンテのすぐ下のクラックを使い、足を少し高い所のやつを使うと簡単に登れる。でも、それでは易しすぎるから、また最初のスタートホールドでの挑戦を繰り返す。

 足を少し高い所に上げると、バランスが悪く、なかなかカンテに手が出せない。何回か挑戦して、身体を固めて見るが、なかなか出来ない。

 左足のスタンスへの乗り方を少し工夫してみる。すると、少し安定が増して来た気がする。それから2回か3回目にやっとカンテが取れ上に抜ける。

 次は真ん中の課題である。登れるグレードが小生により近い仲間がその課題をやっぱり相当トライするのを見物していたから、ホールドやスタンス、ムーブ等はある程度わかる。

 こちらも右手水平クラック、左手甘い縦のホールドで、左手で上のスローパーチックなホールドを取る。その所が核心で、あとは易しいらしい。

 こちらの水平クラックは甘くてあまりしっかりとは持てない。色々と持ち方を探る。すると、最初に指3本を水平に突っ込み、それから親指を添えて行くと少しは持てる事がわかる。それで、左足に乗り、左手を飛ばす。

 段々左足のスタンスへの乗り方がわかって来たのか左手が出て上のホールドに届くようになる。右足を地面を蹴り気味に出れば届くのだが、それでは取れた事にならない。しっかりと手を保持して離陸し、その後に左足に立ち込んで取りに行かなければ出来ても面白くない。

 ゆっくり離陸して手をすばやく飛ばす。充分距離的には届き出す。もう一歩だ。少し勢いを付けて立ち上がって見よう。すると、届き過ぎて、10cm位身体が落ちながらホールドに触る。でも、小生にはその衝撃には耐えられない。もう少し飛び方をコントロールしなければ。

 左手が少し引っ掛かって落ちる。今迄は触っても引っ掛かる感じはなかった。よし、もう少しだ。よし届いた。持てた。下から見た時は持ち難そうだったが、持って見ると意外と掛かるホールドである。足を上げて、右手をリップ上の甘めのホールドで中継してその上のカチを取り、左手をやはりクラックと言うか凹角と言うかの反対側のガバを取る。そこからがまた一つの核心の様だ。仲間もここで足が上がらず何回か落ちている。

 仲間は左足をリップの少し下のスタンスに上げ乗っ越して行ったのだが、小生にはそこまで足が上がりそうに無い。左手ガバの下にサイドに効くホールドがあるから、右手をそのホールドに移して、レイバック気味に身体を振って右足を上げて見る。あともう少しだ、上がった。しかし、色々と頑張り過ぎたためか、昨日と同じくスタミナ切れで、「あぁ」の力無い声と共にここで落ちる。まぁ、これで、見通しは立った。

 少し休んで、左手で最初のホールドを取って、足を上げ、右手を取ったら両足を上げ、左手を伸ばし、右手を寄せて右足を上げる。今度はこの手順で無駄なく動いて来たから、右足に乗り込め、更に上のホールドを探る。だが、このホールドが良いのが見当たらない。完全に足に乗り込まなければならない。右手を一手前のカチに戻し、乗り込むのだが、両手が低いから、身体が上がるに従って手が滑り出す。身体が上がってくればその分手の負担が減って来るので、少し滑っても耐えられるとはいえ、手が外れたら結構落ちる事になることは間違いない。左手のガバが少しは効いていたから、落ちるまでに体勢は作れたかも知れないが、その時はひやひやものである。まぁ、運良く岩の上に立つことはできたのだが。

 多分3級位だろうとのことだから、本日のノルマはこれで達成出来た。でも結構疲れた。

 仲間はその右の高い岩の課題に挑戦を始める。最初は2手3手で降りてくる。それが段々4手5手と延びて行く。各人が手を伸ばして行く。後1手か2手でリップが取れて終わる所まで行ったのだが、各人、そこからがなかなか延びない。結局諦めたのだったか。

 先程のスラブの岩に戻り、そのスラブを登り出す。小生はそんな課題は登れる訳はないから、近くの別の岩を偵察に行く。そして、より岸側の少し被った面を持つ小振りのボルダーを発見する。近付くと下地が悪い。しかし、ホールドは有りそうだし、3手くらいでリップが取れる。小生向きの岩だ。

 被った方は敬遠して、その右側の下がハングしている少し凹角状になった面を登れるかもしれないとか思いながら触っていたら、仲間の一人が来て、面白そうだと、被った面を登る。で、意外と簡単だと言う。スタートすれば次はリップが取れるし、ホールドはガバだと言う。ただ、下地が石だから恐いだけらしい。一度仲間の元に戻る。

 そこに、朝連絡を取った案内人の仲間と言うか、我々にも仲間の人が2人で現れる。もう一人の人も知り会いである。

 その山梨の人は、このシーズンはずっとこの早川に通っていたらしい。で、もしかすると内緒の話しなのかもしれないが、トポを発表する積もりらしい。

 再度、靴を持ってさっきの岩に行き、その石を登って見る。最初は恐いから右の凹角を左の石から登ろうと色々探るが、意外と足が無く、次のカンテのホールドが遠くて、思い切ったムーブが、やはり下にある石の所為で、出来ないから諦める。

 その左の被った方が出だしは易しそうな感じがしたから、そっちをやって見る。確かに左手のガバでスタートすると真上のテッペンが持てる。そこで持ち替えて、左の方に出れば岩の上のガバホールドが持てる。後は上に上がるだけだ。かえって降りる方が難しく感じたりして。

 次はやっぱり右の壁を登らなければ。足を探ると、ハングの少し下に奇麗なスタンスがある。これか。そのスタンスを使うと身体が安定する。しかし、次の右のカンテのホールドは相変わらず遠い。スタンスがより左よりになったから当然と言えば当然なのだが。決心が付かず降りる。右斜め上のホールドをデッドで取るのだが、その身体を振った先の下には大きな石が待っている。その途中も大きめの石が待ち構えている。飛び降りるには勇気が必要な下地なのだ。左手のサイドホールドもガバと言う訳でもないし。

 もう一度挑戦する。今度は観客付きだ。先程来た山梨の人である。そうなると飛ばざるを得まい。しっかりと身体を固め、少し右に出て、思い切って手を伸ばす。取れた。

 既にノルマも果たしているし、もうそんなに無理に登る気持ちも無いから、戻ってまた、仲間のトライを見物しながら時々写真を撮る。

 仲間が登る課題の右側に斜めにダイクみたいな感じのラインが走っている。しかし、結局は、若しかしてこれが使えないかとまた挑戦を始めてしまう。

 先ずホールドを探る。僅かに寝ているから、結構細かいホールドまで使えるはずだ。一応2つ程のホールドを探し出し使う事にする。僅かなフレークだ。次は足だ。この岩は下半分が結構でこぼこしているから、足も有りそうな感じなのだが、探すと意外と良さそうなのがない。

 何とかスタートスタンスを見付け、次のそれよりずっと良さそうなスタンスを見付ける。しかし、そのスタンスはスタートしてみると見えなくなってしまう。印を付けてそこに足を持って行こうとやっていたら、小生により近い仲間が、右手スタートのすぐ下のダイク状のところの丸っこい出っ張りをパーミングのガストンに持って、左足をより左の方のスタンスでスタートして、左手でカンテを取るのだと教えてくれる。

 やって見ると、右手を固めてスタートするから、左手が届かない。右手は、パーミングのガストンで固めているから、伸ばす事が出来ない。そのムーブではカンテは取れない。

 スタンスはそれを使う事として、右手を色々と探って見る。右手をガストンではなく、オポジションにすれば手が伸びるから左手が届くかも知れない。でやって見るとオポジションでも何とかスタート出来そうだ。幾つか試しながらやって見ると、離陸ができた。左手も出たがあと一歩で届かない。オポジションの場所を工夫してもう一度やってみたら左手がカンテに届いた。このカンテはガバだから、届けば後は足を上げるだけである。傾斜は無いから、手さえよければ足はいくらでもある。しかし、カンテの上の方がガバと言う訳には行かない。カンテをトラバースしようと思ったのだが、疲れそうだから早々にカンテに這い上がる。

 昨日から言っていた被った岩に移動する事になる。

 川沿いの護岸工事がされた側壁の上を暫く上流に進み、途中2m位の段差を飛び降りてもう少し上流で河原に降りる。そして、その先を暫く遡ると、大ルーフを持った大きな岩が現れる。通称山森道場という岩らしい。

 下流側と左岸側がルーフになっており、共に幾つかの課題があるらしい。岩自体は結構ガチガチしていて、ガバホールドもそこそこあるらしい。で、いかにもかけそうな感じのする岩なのだが、硬くて欠ける事はないらしい。今時の岩である。しかし、小生には全く手が出ない。圧倒的に被っているのだ。

 左岸側の上流側に2級のランジの課題がある。手も足も良いから格好のランジ課題なのだが、あまりに被っているから外すと背中から落ちそうで恐い。当然小生はパス。

 その壁の真ん中辺に易しいらしい課題があるという。小生に一番近い仲間が挑戦をしている。なかなか出口のリップからの処理が巧くゆかずてこずっている。

 その課題、3級らしい。本当かなと思いつつ、折角来たのだからと、一応小生も記念試登をして見る。

 スタートのホールドがガバではない。この傾斜では小生にはきつい。普通はそのホールドを両手でスタートして左手で次のガストン気味のホールドを取るのだが、そんなことは出来ないから、小生はその次のホールドとの両手でスタートする。身体を少しひねって上のホールドを取るのだが、そのホールドがまたガバではない。そのホールドからは左の少し遠い縦のガバらしいホールドを取るのだが、全く届かない。結局一手しか出ない。

 普段ジムで触っている130度の壁よりも被っているから、全く手が出ない。そんな壁を山梨の人は何回と無くトライを繰り返している。とても真似は出来ない。小生により近い仲間も小生には手のでない課題を何回と無くトライしている。で、結局最後には登ったようだ。小生はというと、それでも、この課題に3回くらいは挑戦しただろうか。

 この岩の左岸側は一寸したプールになっている。そこに仲間が石を投げ出す。所謂水切りと言う、石が水面上をぽんぽんと跳ねて飛んでゆく投げ方である。それに飽きると、対岸の岩壁の途中のテラスに石を投げてそのテラスに石が止まるかどうかやり出す。一方で、良い大人がなどと言っている。しかし面白いから小生も石を投げてしまう。

 仲間が下流側のルーフを登り始めたので、それを写真に納めようと下流側からデジカメを構える。足元を見ると、いかにもつるつるな少し寝た斜面をもつ岩がある。

 この川のボルダーは結構色々な岩質があるようだ。この足下の岩のような物も有れば、コンクリートブロックのような石ころの挟まった岩もある。ザラザラの岩も有ったりする。

 これは面白そうだ、ぜひ登らなければ。靴を持って来て登り出す。最初は手始めだから、2ヶ所ほどの一寸した窪みを使って上に抜ける。次はその窪みを使わずに登る。その横のラインを登って見る。まぁ、パターンは同じだ。そんなんでも結構疲れる事は疲れる。

 仲間も一通り岩を触り時間も良い時間になって来たので、もう一つ有名な「鋏」とかいう課題のある岩を見に行く事にする。

 沢床に降りて行くと、何やら石を運んでゴチョゴチョやっている人がいる。それを眺めている人もいる。その人達がマットが来たと叫ぶ。山梨の仲間らしい。その有名な課題の下地を石を積んで平にして、沢に転げ落ちないようにしているらしい。落ちて後ろに転ぶとそこはもうすぐに水が結構勢い良く流れている、石だらけの沢なのだ。

 我々はその周りの岩を2つか3つ見学に行く。その有名な課題のある岩の裏にある結構大きな岩のカンテが4級らしい。下の方を少し触ったが、あんまり良くない感じである。まぁ4級なんでしょうが。

 有名な課題の前に戻ると、その工事も終わったようだったので、山梨の人達のトライを見学する事にする。

 この岩も結構高い岩で、当然少し被っている。2手目のカンテぽい所も悪そうだ。その上は何処をどういくのだろうか。出口がまた少しハングしているみたいだし。何時も思うのだが、こんな所を最初に登る人達ってどんな人達なんだろうか。名前を聞けばあぁあの人かと大体はわかる人達だし、一緒に登っている人達の中にもそういう人達が居るから、どういう人達かはわかってはいるのだが、何故か何時もどういう人達なんだろうと思ってしまう。

 帰りに山梨の人に教えてもらった温泉に寄る予定なのだが、その温泉が今の時期は6時までかもしれないと言う事なので、5時頃に千葉組6人は一足先にお暇する。因みに、紹介された温泉はここより上流の奈良田温泉の女帝之湯という町営の温泉である。

 奈良田湖とかいうダム湖の脇の神社の所の町営駐車場に車を止め、坂道をだらだらと登って行くと温泉記念館だか資料館だかが併設された古ぼけた感じの建物がある。入口で一人400円を払って入ると、案内板がくねくねと曲がった通路に沿って奥に続いている。そして、建物の外に出てコンクリの坂を少し登ると湯殿があった。土足のままこの湯殿の入口まで行来てしまった。町営の温泉風呂だから、今時の日帰り温泉施設を想像してしまったが、今時の温泉風呂とは全く違う温泉風呂である。無料のコインロッカーが入口の受付の前に置いて有るし、休息所も別料金だし。まぁ、こっちの方が好感は持てるのだが。

 入ると、脱衣場があり、そこにはロッカーは無い。その横が湯船になっている。露天風呂はない。湯船は2つ並んでいる。

 温泉の落ち口のある湯船には先客が一人入っていたので、湯口から離れた湯船に入る。温めである。間もなく先客が出て、我々の独占となる。

 隣の湯船は温度が高いらしい。皆で隣の湯船に移る。確かにこちらの方が少し暖かめである。湯口にコップが置いて有ったので飲むと温泉の味がする。3つしかない洗い場で身体を洗っている時、その湯が温泉の匂いがしたから、将に正真正銘の温泉だ。洗い湯まで温泉なんて今迄殆ど経験が無い。そのせいかどうか、湯の出が悪く、なかなか湯桶に湯が溜まってくれなかったが。

 少し温めと言う事も有って、大分ゆっくりと湯に浸かってしまった。因みに、この温泉は11月迄は7時迄の営業であった。

 帰りは増穂町だったかの台湾家庭料理の店で皆で夕食を取って、そこで解散となった。

 そこから甲府まで、行きは案内人がいたので、裏道を走ったのだが、その案内人の乗る仲間の車とその中華料理屋を出た途端にはぐれてしまい、道路標識に従って普通の道を竜王町とかいうとこ等辺まで走り20号に合流した。

 普通なら、また少し遅かったから、甲府昭和で高速に乗る積もりだったのだが、中央高速がどっかの事故で渋滞しているとかだったので、そして20号も混んではいなかったので、何時もの通り、相模湖まで20号を走りそこから中央道、首都高を使って帰ってきた。お影で、家の前で丁度12時の時報が鳴った。辛うじてその日の内に帰りついたか。まぁ、微妙な所である。それがどうだという事ではないが、なんとなく気になることではある。

 金曜の夜から日曜の夜中まで、久し振りの遠出であったから、帰りは結構眠くて、途中ガムを噛んだり、飴を舐めたり、ジュースを飲んだりして、まぁそれなりに疲れはしたが、泊まる所には大変に恵まれたので、非常に楽しい旅行ではあった。

 甲府の人に感謝しなければ。


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作成年月日 平成14年10月 9日
最終改定日 平成14年10月15日
作 成 者 本庄 章