晴れてボルダリングの出来るボルダーの条件を考える

2006年10月 5日記

 折角開拓されながら、諸般の事情により閉鎖されてしまったボルダーエリアは多い。一時的な閉鎖を含めると結構な数になると思われる。

 最近の事例で言えば、兵庫の北山公園のボルダーエリアがある。幸い、関係者のすばやい対応と献身的な努力により、一時的な登攀の自粛で済みはしたが。福岡の黒木は、地主により、現在もボルダリングを禁止されているらしい。そういえば、小生が尋ねていったとき立ち入り禁止の立て札のあった鹿児島の中山も今なおボルダリングができないらしい。

 信楽のボルダーエリアも、残念ながら閉鎖されて久しいエリアである。そのほかにも、大阪の高尾山などは、コンペまで開かれながら、今は登ることはできない。そうそう、関東でも古くは結構登られていたと言う筑波山のボルダーが登攀を禁止されている。

 と言うように、小生の乏しい知識或いは頭でもこれだけの事例が思い出されるのである。

 公開されたエリアが閉鎖されたと言うのではなく、もともと公開されることなく、今後も公開されずに、一部の人達に因って静かに登られているエリアも多く存在する。いわゆるプライベートエリアだ。その中には、公開したくとも、公開してしまうと、登攀禁止、エリアの閉鎖を余儀なくされることが明らかなため、やむなくプライベートとしているエリアも結構あるように聞いている。

 例えば、滋賀の近江八幡国民休暇村周辺のエリアなどだ。エリアの地権者からのお墨付きが得られず、公にすることが出来ないということらしい。

 中には、最近公開された、岐阜の瓢ヶ岳のボルダーエリアの様に、地権者が財産区ということで、本来ならばプライベートな場所なのだが、開拓者達の努力により何とか財産区の人達の理解を得、公開に漕ぎ着けたエリアもある。

 前述のように、今までは、誰もが勝手に登っていたものが、ある時から登ることを禁止されてしまったボルダーが存在している。しかし一方では、昔から登られており、今でも何のお咎めも無く登ることの出来るボルダーも多くある。なぜなのだろうか。

 最初に、このように、あるボルダーでは登ることができ、あるボルダーでは登ることを禁止されてしまう条件とは何かを考えてみよう。

 まず、どんな岩が勝手に登れるかだが、国有地や公有地に存在し、誰もが立ち入ることの出来る場所に存在するボルダーの場合、特別なことが無い限り誰でもが登ることが出来るであろう。例えば、河川敷や渓谷内のボルダー、海岸のボルダーなどだ。

 では登れないのはどうか。誰もが思いつくことは、そのボルダーが誰かの私有物の場合は勝手には登れないということである。まぁ、その場合であっても、所有者の許可さえあれば当然登ることは出来る。

 登攀が禁止されている、あるいは、禁止されたボルダーの大半はこの私有地内のボルダーだ。所有者が立ち入りなどを禁止していれば最初から登れないし、所有者の許可を得ずに登っていた、或いは所有者の気が変わった、或いは所有者自身が変わったなどの場合は途中で禁止されることになる。

 このケースのボルダーを登っている場合、所有者の好意により登らせてもらっている、或いは所有者の知らないところで登っているということだから、登攀を禁止されても、文句を言うわけには行かない。無断で登っていた場合は論外だが、途中から禁止されてしまった場合は、所有者と気長に交渉するしか無いだろう。

 一般には誰でも登ってかまわないだろうと考えられる、国有地、公有地内のボルダーの場合でも、誰でもが勝手には立ち入ることが制限されている土地、或いは何らかの法律によりその立ち入り、使用が制限されている場合があって、そういう場合に、管理者から正式な許可を得ようとすると、ややこしいことになる場合が多いようだ。

 以下、これらの場合をいくつか考えてみたい。

 まず最初は、近江八幡国民休暇村の場合を考えてみたい。このエリアは国有林内にある。

 国有林内の場合、普通には、勝手に入り込んで勝手に登っていたとしても、大きく咎められることは少ないようだ。しかし、ここの国有林の場合、管理は営林署が行っており、国民の保養林として保護活用されているため、原則として一般人の入山を禁止されている。従って、公に営林署がボルダリングを行うために立ち入りを許可することは出来ないということらしい。と言うことで、静かに密かに利用させてもらっているということらしい。管理者が法律をそう解釈している限り、解決の道は見出せないであろう。

 この国有林内のボルダーについては、結構多くの一般に公開されているエリアが存在しているように思われる。しかし、それらのエリアでも、厳密に法律を適用すると立ち入りが禁止される場所があるかもしれない。いわゆるグレーゾーンと言うところだろうか。あまり四角四面に管理者の正式な許可をと、行動を起こしてしまうと登攀できなくなってしまうケースが出てきてしまうかもしれない。

 この国有林の場合、もう一つ自然公園法という法律がかかわってくることがある。即ち、「国定公園内では、樹木の伐採や地形の変更等には、許可又は届出が必要である」と言うことだ。無断で行うボルダリングを行うためのツタの撤去、下地の整備、ブッシュの刈り払い等は、厳密に言えば自然公園法違反となるらしいのだ。また、たとえ届け出たとしても、その行為には正当な理由が必要とのことだから、ボルダリングのための行為では認められないらしいのだ。と言うことであれば、国定公園内でのボルダリングも、出来なくなる可能性が無いわけではない。まぁ、既に誰かが整備してしまった場所で登る分には、その人の登ると言う行為自体は違反ではないだろうから、既に登られている場所が閉鎖されるということはないだろうと勝手に考えることは十分に可能だとは思われるが。

 この例は、茨城県内の「とある岩場」の場合に当てはまる。この岩場を開拓していた方が、ある方からその自然公園法に抵触するとの指摘を受け、公開を断念されたという経緯があったらしいのだ。

 しかし、この何々の法律に抵触する云々は、それぞれの法律を解釈する人によって、考え方が違ってくる場合が多いようだ。例えば、上の自然公園法の、樹木の伐採や地形の変更の解釈だが、どの辺までならその法律の趣旨に沿い、許される、或いは黙認されるのか、どの辺からが禁止されるのかが判然とはしない。例えば、自然公園内を歩く時、滑る場所に靴を蹴りこんでステップを切ったり、倒木を避けるために勝手に道を付け替えたりということまでその対象にしているとも思えないからだ。遊歩道の刈り払いや草刈なども、その都度許可、届出を行っているとも思えないし。ただし、草の刈り払いなどは正当な理由と考えられはするだろうが。

 国有、或いは公有地の場合でも、公務員宿舎、或いは学校用地など、明らかに一般人の立ち入りが禁止、或いは制限される土地の場合は私有地と同じ考えが適用できるのだが、林野や原野、河川敷や渓谷内、海岸の場合など、普通は一般人の立ち入りが許されるように思われる場所でのボルダリングが許されるかどうかが分かりにくい感じがする。

 即ち、明らかに晴れてボルダリングが出来る場所とは、結局は、長くボルダリングが行われていて、今までどこからもお咎めの無かったエリアとしか言えないのかも知れない。そういう場所であっても、一市民からの通報、投書などによって、一変登攀禁止になってしまう、「北山公園」のような事例も無いわけではないから、そういう場所であっても安泰だとは言い切れないところもあるから、余計にややこしいわけだが。

 以上の様に、一番登りやすそうに思えた国有或いは公有地内のボルダーの場合でも、実は色々な分かりにくい、ややこしい問題が発生する可能性が多分にあると言える訳だ。特に「わが国においては」と敢えて言っておこうか。

 国有地、公有地の場合、要は、あまり派手ではなく、密かに潜行しながらボルダリングを行うと言うのが、トラブルを防ぐ唯一の手立てということか。となると、私有地のボルダーを所有者の許可を得て登ると言うのが一番に晴れてボルダリングの出来る唯一の場合なのかもしれない。

 そういう意味では、「どうして家の山の石は登ってくれないのか」と、地主がわざわざ他の山でボルダリングをしていたボルダラーに抗議に来たと言う、愛知県豊田市近郊のボルダリングエリアは、この世の天国なのかも知れない。まぁ、この件についてはそのうち考えてみたいとは思うが。

 それにしても、ボルダリングって、クライミングって、ハイキング或いは登山のようにすら、未だ一般には認知された行為ではないのだよなぁ。


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作成年月日 平成18年10月 5日
作 成 者 本庄 章