安達太良ボルダーその2

   南東北春のボルダーめぐり第三段
2005年 5月27日記
 沼尻スキー場の上の駐車場で目を覚ます。夜中には霧雨が降っていたようだったが、朝にはすっかり霧は晴れている。既に安達太良登山者らしき人達の自動車が何台か登ってきていた。

 何時に無く早めに仲間が朝食の支度を始めたので、我々も慌てて朝食の支度を始める。晴れていて気持ちが良いから、当然外で炊事をする。

 一人のおじさんが、白糸の滝まではどれくらいかかるかと聞いてくる。白糸の滝までと言われてもどこが終点かははっきりしないから、仲間と10分か15分くらいと答えておく。すると、見る価値はありますかと聞かれる。これも返答に困る。まぁ、滝ですけどねと小生が答える。後で、仲間に笑われてしまった。

 滝を見に行ったはずのおじさんが直ぐに戻ってくる。やっぱり見に行くのを諦めたのだろうか。

 9時前には出発する。

 歩き始めて5分もしないうちに白糸の滝が見えてくる。そうか、こんな近くから滝が見えるんだ。それに、見るだけならここからで十分なんだ。それで、おじさんは直ぐに帰ってきたんだ。

 春先の山道だから、所々新しく崩れた場所がある。雪解け直後と言う感じだろうから、そういうところはまだ踏まれていないから、足を置くと僅かに潜って流れる。

 硫黄採取小屋に近付くと、前回は辛うじて建っていたトイレのある建物が完全に潰れている。あの、ドアの閉まらないトイレも使えなくなってしまっている。

 小屋の前に出ると、登山者が二人休んでいる。その人たちと先を歩いていた仲間は二言三言言葉を交わしている。

 特に休むことも無く先に進む。

 やっぱり、仲間から我々は遅れだす。小屋までも遅れ気味だったが、まだ道が平らだったから、それほど目立たなかったが、そこからは岩の道になるから、その差も開いてくる。

 沢が二つに分かれる辺りの沢床は雪がまだいっぱい残っている。その雪田を横切って、ボルダー大地の方に登って行く。

 ハイマツ帯に移る辺りで相棒を待っていたら、小屋の前で仲間と言葉を交わしていた二人組が小生にそっちに行くのかと聞いてくるから、こっちは違うと答える。そっちに行ってどうするのかと聞いてくるから、我々は安達太良山には登らないと答え、安達太良山はあっちだと答えておいた。

 そこまでは仲間の足跡が残っていたから、何とか付いて来れたが、そこからハイマツ帯に入ると足跡はわからなくなる。はっきりとした踏み跡もないから、前回の記憶を頼りに登って行く。

 ハイマツの切れ目の小砂利が敷き詰められた感じの場所を選んで登っていったら、人の声が聞こえてきた。見ると、「石の人」のある岩が見えてきた。こんなに近かったっけ。前回はもっと苦労して登っていったような気がするのだが。ハイマツ帯をトラバースして石の人の岩に行く。

 「石の人」の取り付き部分には僅かに雪が残っている。それは、丁度落下してくる場所である。大丈夫だろうか。

 この「石の人」だが、高さは3mくらいだが、平べったい大きな岩の結構被った面の左端辺りを登る課題である。リップ直下が少うし出っ張っていて、僅かなルーフ状を呈している。ある高名なボルダラーの雑誌に発表されたエッセイの題名にもされ、そのエッセイの中に写真入りで紹介されている課題である。そのためにそのボルダラーは「石の人」と言われたりもする、そういう課題なのである。

 今回の仲間の一人が何年か前にここを訪れ挑戦したらしいのだが、そのときは登れなかったらしい。また現在まで、登ったという事を殆ど聞かない、その仲間に言わせると、「最強の初段」と言う課題でもあるらしい。

 左端のカンテ近くのクラックからスタートし、リップ直下のホールドでマントルを返すという、手数にしておよそ7〜8手の課題である。しかし、リップ直下の懸かりが良いらしいホールドが遠いのである。ルーフ状のリップの下にピンチチックなホールドがあるのだが、そのホールドを右手で持つのは相当に悪いらしく、持っても動けないらしい。

 仲間も最初はムーブがなかなかわからず、そのホールドやらその左上の僅かなポケットやら、色々と探っていたが、結局は、最終的には左手はスタートホールドのクラックのままリップ直下のかかるらしいホールドを、「石の人」の写真の様に右手で取りに行くというムーブで登ることが出来た。その間、ピンチチックなホールドからポケットホールド、余りかからないらしいホールドと繋いで、右の遠いホールドを取りに行っていたようだ。

 まぁ、ムーブは判っても、先ずポケットがなかなか取れないし、そこから右の遠いホールドは尚取れないようだから、なかなか登れそうには無い課題の様だ。もう一人の仲間は、結局その日の殆どをその課題に費やしてしまったのだから。

 仲間が「石の人」にトライしている最中に、小生は「かえるクラック」とかいう課題を触っていた。

 最初は仲間の一人が登っていたのをまねをして登り出したのだが、なかなか上の水平クラックが取れなかった。むきになって何回もトライするのだが、結構力がいるようで、続けては出来ない。そういう課題である。

 丸い凹面状の面を持つ石の側壁なのだが、丸い感じの面で、そこに斜めに細いクラックが走っている。そのクラックの2箇所ほどが指が入り、そこを使って体を上げ、少し上の懸かりの悪い水平クラックを取ってマントルを返して行くと言う課題である。

 下のほうからスタートすると離陸が出来ないので、傍の石の上から直接そのクラックのホールドを取って離陸していたのだが、それでも全身の力を必要とするのである。おまけに指がすごく痛いから、余り力も入れられないのである。休んでは取り付き、「石の人」を見学しては取り付くという事を、何回やっただろうか。相当やったように思う。

 で、遂に、右人差し指の先を傷めてしまう。皮を抉ってしまったのだ。少し深かったのか、結構血が出て、持ち物の一部を汚してしまった程だったので、一時は諦めたが、テープを持参していることを思い出し、序に左手の小指と共にテープを巻いて、またまた懲りずに挑戦を開始したのである。

 なかなか快調である。テープの有る無しってこんなに違うのかと言うほど離陸が楽になったのだ。それまでは痛いから力を入れられなかったのだが、テープを巻いたらその痛みが和らぎ、大分力が入れられるようになったのだ。そのお陰と言うわけでもないだろうが、それまでは一回しか取れなかった、水平クラックが取れるようになってきたのである。

 もっとも、その水平クラックを取れるようになったのは、右足を右のカンテに回してフックするようにしてからなのだが、そうすると結構楽に水平クラックが取れるようになったのである。しかしである。そのムーブだと、身体が伸びきる感じになるから、その後のムーブが起こせないのである。確か最初の頃に水平クラックを取ったときはもう一歩足が上がっていたような気がすのだが、今は疲れがあるのか、その足フックでしか水平クラックが取れないのである。

 確かにテープで離陸は楽になったが、その先はやっぱり変わらなかったのである。仲間に水平クラックが取れるようになったと報告したら、じゃぁもう出来たようなものだといわれたが、上に述べた如く、チョンボチックなムーブで取っているから、取れても動けないのである。

 ふと空を見ると、太陽の周りにまん丸の虹が出ている。そんな虹ははじめてである。皆にも話し、太陽を岩陰で隠し、その虹の3/4程をデジカメに納める。上手く撮れたかどうかは判らないから、同じような写真を何枚か撮影する。

 その後も「かえるクラック」に休んでは取り付き、他のやさしい石を触ってみてはまた取り付くという事を何回か繰り返した。

 「石の人」を登った仲間が尾根の方に行くと言って下っていったので、我々も、「かえるクラック」を諦めて、少し遅れて尾根の方に移動していった。

 前回のときはこの尾根は一旦上のほう迄登り、それから降りながら遊んできたから、この尾根の取り付き付近の石は殆ど触っていなかったのである。ということから、今回は尾根の取り付きの石から触りだす。

 先ずはいつも通り、やさしいやつから始める。

 少し大き目のガチャガチャした面を登ってみる。意外と脆い。気を付けながら上に抜ける。

 易しそうなところを3箇所か4箇所登ってみる。ガバガバで被りの無いところばかりだから、全て一撃する。まぁ、10級クラスだから当たり前だが。

 少し登っていったら、丁度背の丈ほどの高さのリップの上に大きな穴を持った少し大き目の石があった。あの穴を取れば上は楽そうだ。早速取り付いてみる。

 今まで程簡単では無かったが、少し楽しく、何とか登ることが出来た。

 また少し登ると、「普通の人」の前に出た。前回は離陸も出来なかった気がするのだが。

 離陸してみたら、離陸は出来た。右手を右上のカチ様のホールドに飛ばしたら、指はかかったが保持が出来なかった。まぁ、少しは強くなったと言うことにしておこうか。

 「普通の人」は直ぐに諦め、その近くの石を触る。

 「普通の人」の右側のカンテやら、その右側面やら、チョコチョコ触ってみたが、結局は脆そうで恐かったり、バランスが悪くて離陸できなかったり、何時ものパターンを繰り返していたら、上から仲間が降りてきた。

 向かいの大地を見ると、もう一人の仲間は相変わらず「石の人」に取り付いているようだ。

 仲間はもう少し遊んで行くというので、我々は、既に3時だし、どうせ下山に時間もかかるし、寒くもなってきたからと、そこで仲間と別れ、先に降る事にした。

 尾根の取り付まで下ってゆくと、「石の人」をやっていたもう一人の仲間が上がってきた。仲間はまだ上だと伝え、我々はそのまま下って行った。

 小屋の近くまで下ると、川原の温泉に水着を着た人が二人と着物を着た人が一人いる。我々が以前浸かっていた場所より一段上の場所である。

 歩きながら、相棒が暖かいのかと聞くから、暖かいと答えたら、足湯でもしてみたいと言うから、小屋のまん前辺りの川原に下っていって、沢の水に手を浸したら、冷たいではないか。前回のときはこの辺での湯浴みをしていた人がいたから、当然暖かいと思ったのだが。多分、今は雪代が入るから、冷たいのだろうと勝手に解釈することにした。

 登山道まで戻ると、仲間が一人で下ってきた。もう一人の仲間が登っていったはずだと話すと、会わなかったという。途中であったからまだ上だと話したことを伝えると、探しに戻ってみると言うことで、また引き返していった。

 相変わらず相棒と二人でゆっくりと降り、自動車でゆっくりしていたのだが、仲間達はなかなか降りてこない。コーヒーでも沸かそうかと相棒と話したのだが、なんだか寒いからコーヒーを沸かす気にもならないから、そのままラジオを聞きながら仲間を待っていた。

 どれくらい待ったか、それほど長くはなかったが、仲間が降りてきたので、仲間を迎え、そこからは別々に帰ろうと言うことにして、我々は一足先に出発した。

 有料道路を使って郡山方面にでるか、猪苗代から高速に乗るかが普通の帰り方だろうが、我々は素直に猪苗代方面に下り、そのまま猪苗代湖の辺を回って、直接白河に出た。

 実は、途中、郡山辺りで夕食でもと思っていたのだが、そのコースだと白河まで夕食を取る場所は見当たらない。仕方がないしばらく我慢するか。と言いながら、飯屋を探しながら走ったが、結局は見つからなかった。

 白河に出て4号に合流して直ぐにレストランが現れる。しかし、気が付いたときには駐車場の入り口を僅かに過ぎていた。

 海鮮レストランのようなところがあったので入ってみる。しかし、いかにも高そうだったから、ウインドウを覗いただけで出てきてしまった。

 白河の4号バイパスをしばらく走ったのだが、適当な飯屋が現れない。もう直ぐインターである。サービスエリアででも食べるかと話していたら、大手スーパーの看板が現れる。こんな所まで。前回の山陰でもこのスーパーにはレストランがあったからとそのスーパーに寄って見る。

 でかい。駐車場が物凄くでかい。そして、鳥取だったかと同じくタクシー乗り場まで有る。最近のこのスーパーのスタイルの様だ。

 2階にレストラン街があるように書かれていたので、2階に行ったら、確かにレストランが2軒か3軒ある。その中の安そうな家の近くでは余り見ないチェーン店らしい方に入る。

 7時頃だから遅いと言うほどではない。確か「春かすみご膳」だか見たいな少しだけ豪華な食事にする。

 隣の家族連れの席を見たら、物凄く大きな器に盛られたフルーツパフェみたいなのが一つだけ置かれていて、それをその家族3人で食べていた。高さは優に40cmはある。器の直径も20cmはあっただろう。それを二人で眺めたら、それを食べていたお嬢ちゃんが誇らしげに我々の方に顔を向けた。それを見て相棒曰く、今日は母の日だから、お母さんのリクエストだと。そんなものかなぁ。メニューを見たら、3〜4人分のパフェがは入っているらしい。

 ウエイトレスの人が来て、タラの芽の天ぷらが切れてしまったからエビフライでよいかと聞いてくる。そうか、タラの芽が入っていたのか、その時知ったくらいだから別に異存は無い。

 のんびりしてしまったから、そこで一時間近く過ごしてしまった。

 白河のインターから高速に乗ったのだが、途中で相棒が調子が悪いと言うし、小生も少し眠くなっていたので、矢板北パーキングでしばらく仮眠することにした。

 気が付くと1時近い。自動車を停めたときは空いていたから、少し暗い大型の駐車場所に停めたのだが、起て見たら小型の駐車場は空いているのに、大型は満杯であった。悪いことをしてしまった。

 寝るとすっきりする。その後は眠気も無く、おまけに夜間割引も適用されて、快適に家に帰り着くことが出来た。因みに帰着は3時だった。

 これからも、一時仮眠を多用してみようかな。


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作成年月日 平成17年 5月27日
作 成 者 本庄 章