南東北ボルダー巡り第二弾 その1

 安達太良に行ってきました

2003年11月 7日記
 三連休に、ジムの仲間一人が以前東北にいたことがあるので、その仲間を案内人に、他のジムの仲間2人と4人で東北のボルダーに行って来た。これはそのうちの安達太良編である。

 金曜日の夜何時もの駅に集合し、CDを何枚か借り出すため、ジムに寄ってから安達太良を目指す。

 3連休と言っても前日の夜だから、道は空いている。渋滞することなく、トニー谷のCDの「チャンバラ・マンボ」で盛り上がりながら、首都高から東北道に乗り、郡山から磐越道に入る。

 磐越道に入って最初の五百川というパーキングエリアで仮眠することにする。

 パーキングエリアは、何台かの自動車が停まっており、明るい綺麗な所である。芝生の上に良い天場を探すと、先客のテントが一張り看板の影の暗がりに張られている。場所的には目立たない場所で良さそうだったが、人のテントの横にテントを張るのもなんなので、反対側の広い芝生の奥にテントを張る。

 朝は例によって9時頃に起き出し朝ご飯にする。先客のテントは既に撤収されていた。

 沼尻温泉には磐梯熱海インターから母成グリーンラインとかいう有料道路を通ると近そうなのだが、カーナビによると、途中にコンビニがなさそうだったので、猪苗代磐梯高原まで行き、猪苗代町のコンビニで買い物をすることにして、カーナビを猪苗代町経由の沼尻スキー場に設定する。

 さすが連休の初日だから、115号線は少し自動車の量が多そうな感じである。沼尻温泉から沼尻スキー場の砂利道に入り、一番奥の駐車場に到着する。

 既に7〜8台の自動車が停まっている。首都圏ナンバーの自動車も何台かある。こんなにボルダラーが来ているのだろうかと一瞬考えてしまった。

 支度を整え、左側の沢沿いの少し広めの道に入る。少し進むと、荷物運搬用のリフトの発着場があり、そこからは普通の山道になる。

 道沿いに50cmくらいの太さの塩ビのパイプが通っている。触ると生暖かい。沼尻温泉まで温泉水を送っているのだろうか。左手の谷の奥には白糸の滝が落ちているのが見える。結構深い谷の側壁をほぼ水平に歩く様に作られた道だから、所々道が崩れ、木の橋が作られたりしているが、歩きやすい道である。

 10分くらい歩くと、塩ビの風呂桶が置かれ、そこから温泉水が溢れ出ている所がある。指にその湯を受けてみると物凄く熱い。多分まともに受ければ火傷するくらいである。

 程なく谷が開け、天空のラピュタだかなんだかのシーンに出てくる様な、岩がごろごろした赤茶けた谷底から木で組まれた結構高い足場の上を木の樋がくねくねと走っている光景が見えてくる。樋には蓋がされているのだが、その隙間から湯気が立ち上っている。谷底には湯気を上げた薄黄色の水、いやお湯が流れ下っている。それを横切るような木道も何本か作られている。日本の国の中とも思えない、なんとも不思議な光景である。

 斜面の中腹に崩れかけた小屋等が幾つか建っている。そのうちの1つの湯の花採取会社の作業員休息所を今夜は使わせてもらう予定なので、そこに宿泊用の荷物とわざわざ千葉から担いで持ってきたスコップを置き、さらに上を目指す。既に12時を廻っている。

 途中、送湯管に座った夫婦連れのハイカーと擦違う。その方から、岩登りですかと聞かれる。大きなマットをぶら下げたり、背負ったりしている異様な4人連れにそう問い掛けるのだから、多分何回もここを訪れている地元の方なのだろう。

 この小屋辺りからは既に稜線に数十メートルの高さで横に広がる胎内岩が見えている。その下のガレた斜面や這い松の斜面にも大きなボルダーが点々としている。

 安達太良山への登山道は、途中ガレた斜面を斜めに登ってゆくために左に分かれてゆくのだが、ボルダーへは、沢をそのまま少し遡り、尾根の突端から砂利混じりの潅木帯を登ってゆく。その尾根をボルダー尾根と言うらしい。

 その尾根の右側の方は亜硫酸ガスの噴出している沼の平という所に続く場所だから、現在は立ち入り禁止区域になっていて、尾根の取り付きの沢の左岸側には立ち入り禁止の立て札が立てられ、綱が張られている。

 尾根に取り付くと直ぐにボルダーが現れる。ふむふむ。また現れる。すっげーなぁ。多分1時くらいだったような気がするのだが。

 ボルダーを回り込むと、一瞬踏み跡を外す。斜面には這い松や多分石楠花とかツツジだろう潅木が生えており、その中に小さな石や砂利が現れている道のようなところが飛び飛びに存在する。従って、砂利や石の露出している場所はわかりやすいのだが、潅木帯の踏み跡が少々わかりにくくなる。

 暫く登って、以前東北にいた仲間が「普通の人」という課題のある岩を教えてくれる。

 これが「普通の人」か。ホールドを触って、先に進む。

 この「普通の人」の岩の直ぐ上に荷物を置き、周辺の岩を見て廻る。

 少し高い、綺麗なクラックの走った岩を見つける。あのクラックなら登れるかも。その直ぐ上にはやはり高くて細いクラックの走る四角い岩がある。分かりにくい踏み跡を時には外しながらも、大きくて目立つ岩を幾つか巡る。

 仲間が最初に見たクラックの岩を登り始めるから、それを写真に収める。暫くそのまま仲間の登る姿を幾つか撮影する。

 一通り目ぼしい岩の写真撮影を終わったので、小生も最初のクラックの岩のクラックを登ってみる。クラックは少し広めだし、凹角状に少し斜めに走っているから、ジャムではなく、殆どレイバックで、凹角登りみたいな感じで、なんでもありで上に抜ける。少し高いから少し楽しい。

 また少し上に登って行って、仲間の登る姿を撮影したり、周りの景色や胎内岩を撮影したりの合間に、ガチャガチャした面をもつ岩のガチャガチャした面を登ったり、適当にホールドのありそうなカンテを登ったりする。案内の仲間は、「石の人」という課題を登りに、沢向こうのボルダー台地といわれる所に一人で行ってしまったし、トポも無いので、適当に登れそうな岩を見つけて、適当に登る。

 小さな沢の反対側にドーム型をした岩の真中に真っ直ぐなクラックが見える。皆であそこに行ってみようか。

 小さな沢だが、側面がガレていて、傾斜もそこそこあるから、降りられそうな場所を探しながら、対岸に渡る。

 少し登ってゆくと、岩が見え出す。先行した仲間が、あまり面白くないかもという。クラックの幅が広いらしい。

 なるほど、クラックは幅が広く、その淵にはガバが幾つもある。一応、なんてことなくガバガバと普通に登る。

 岩を一回りすると、そのクラックはその岩を完全に二分しており、裏にも適当な広さのクラックを提供してくれている。しかし、正面よりは高さが無い。せいぜい2.5m位しかない。でも、一応、ジャミングを使ったりして、裏のクラックを上に抜ける。

 周りにはあまり良さそうな岩も無かったので、先ほどの尾根筋に戻る。

 向かいの「台地」に行った仲間の声が凄く近くに聞こえてくる。すぐそこに居るように聞こえてくる。「石の人」は手ごわいようだ。

 またまた岩を求めて上を目指す。

 被った面をもった適当な岩に遭遇する。その上には多分目ぼしい岩は大分上まで行かなければ無いだろうと思わせる場所の岩である。

 仲間は左端の所でトライを始める。もう一人の仲間が、その右側のリップに飛びつき、マントルを返す。

 一人の仲間が最初にトライを始めた左端の所を別の仲間が登る。リップが外傾しており、その他のホールドもあまり良さそうには見えない。その外傾したリップを掌の付け根辺りを使って押さえ込み登っていたことを確認する。そういうホールドの方法もあるのか。

 その左のカンテを回り込んだ面の真中辺りに、上のほうがV字型のちょっとした凹角状になっている所がある。見た目は易しそうだったので、仲間が登った後に小生も登ってみる。しかし、V字の下のほうの所に足を置いてから、そのV字のカンテをガストン持ちしてリップを取りに行く所が結構難しく、仲間をはらはらさせながら、リップ下の僅かなカチを使って体を上げ、やっとリップを掴む。仲間は落ちるかと思ったらしい。下地には石があり、落ちたら何かがありそうな所で、マットは敷いていなかったから、自分自身も少し怖かった。

 仲間がなおも左のところに挑戦していたから、小生はその右の先に仲間がマントルを返した所に飛びついて、マントルを返す。仲間に、リップのカチを教えてもらったので、そのカチは下からでは見えないから、何回か飛びついてそれを探った後に、マントルを返したのだが、思ったよりは楽だった。

 そろそろ時間ということで、下りはじめる。

 尾根の末端に近づくと、まだ見ていない様に見える岩がいくつか現れる。こんな所にもこんな岩があったのか。もしかすると、上りに見ていった岩かも知れないのだが。

 既に薄暗くなりかかった小屋の前で「台地」に行った仲間と合流する。リップのマントルまで持ち込んだらしい。

 小屋の板張りの土間にマットを敷き、夕食の準備を始める。既に辺りは暗くなっている。

 仲間の一人の高度に深い知識を皆で共有しあおうと、その仲間を中心とするセミナーが始まる。沢山楽しいことがあって、ああだこうだと夜が耽るのを忘れる。生まれて初めての貴重な経験もあったから、それはもう、楽しかった。

 二日目である。

 小屋の前を通り過ぎてゆく登山者であろう人の足音を聞きながら、仲間の一人の、昨夜、夜中に誰かが小屋の周りを歩く気配を感じ、目が覚めたという話を聞く。他の人たちは別に何も感じなかったらしいし、小生も何も感じなかった。まぁ、とかくなんかがあるような言われ方をしている場所だからなぁ・・・。

 朝食を済ませ、掃除をして、出発する。

 日が差して来ないから、曇っているのだとばっかり思っていたのだが、とってもすばらしい快晴であった。

 本日は、昨日仲間の一人が行っていた、「石の人」のある「ボルダー台地」と呼ばれるらしい場所に行くことにする。

 途中から沢を渡り、もう1つの尾根の末端から上り始める。こちらは昨日の尾根に比べ、踏み後が判然としない。もしかすると取り付きを外しているのだろうか。仲間に聞くと、昨日の「石の人」からの帰りも、踏み跡が判然としなかったとのことなので、こちらには余り人が入らないのだろうか。

 下草が濡れている。今朝早くには霧が濃かったらしい。そのせいらしい。

 「石の人」の岩に到着する。

 やはり岩の上は濡れている。岩全体も湿気ている様だ。荷物を置いて、ブッシュを漕ぎながら、近くの岩を見に行く。

 途中から結構しっかりした踏み跡が現れる。しかし、先にも書いたように、その前後が不明瞭になってしまうらしい。

 「石の人」の直ぐ上に、少し凹面をした面の真中に細いクラックが真っ直ぐに走る岩を見つける。下のほうにはホールドと思しき場所数箇所にチョーク跡が残っている。(後に調べて判明したのだが、この岩の側壁に「カエルクラック」という課題があるらしい。)

 「石の人」への挑戦をしばし見学する。しかし、今回はリップがまだ濡れていて、本気でのトライは出来ないらしい。

 この場所からは「ボルダー尾根」方面が非常に良く見える。することが無いから「ボルダー尾根」方向を眺めていたら、下からマットを背負ったボルダラーらしき人が登ってくるのが見える。見ていると、都合3人組らしい。もしかすると案内人の知り合いかもとか言いながら4人で暫く眺めていた。

 この「石の人」の岩だが、案内の仲間が、今まで来たことが無く、果たしてこの岩なのかどうかが分からないらしい。なんか易しすぎる気がするという。そういわれると、岩雪の写真はもっと下地が這い松でいっぱいだった気がする。また別の仲間が、某有名クライマーが「石の人」の横に二段の課題を作ったらしいと聞いたという。しかし、その横に二段の課題が作れそうな所は無い。写真を撮って後日確認しようということになる。

 その為の写真として、仲間がリップでマントルを返す所まで行ったシーンを写真に収めたはずなのだが、確認するとそのシーンが残っていない。失敗したらしい。再度暫し待ってそのシーンを撮影しなおす。

 「ボルダー尾根」方向から女性の声が聞こえてくる。あのボルダラー集団は女性連れだったようだ。しかし、その女性の声が複数聞こえてくる。男性の声は聞こえては来ない。もしかすると女性の3人連れなのだろうか。だとすると、間違いなく案内人の知り合いだろうということになる。

 一人の仲間は岩が乾くまでここで頑張るというので、別の仲間の一人は昨日やり残した課題をやりたいと、「ボルダー尾根」方面に転進することになり、下に降りてゆく。

 その岩の少し横の少し汚い垂壁を仲間の一人が登るというので付いて行く。仲間がその壁の左側を登ったので、小生はその右側を登る。苔がいっぱい付いていて、ホールドもなんか欠けそうで、易しいのだが、なんとなく怖かった。

 下に降りていった仲間が、その3人連れのボルダラー集団とコンタクトを取ったらしく、その女性の一人から、こちらに声がかかる。やはり、想像したとおりの集団だったらしい。

 その集団に、この岩が「石の人」の岩かと確認を取ると、「石の人」の岩で間違いが無いらしいことが分かる。

 その後、別の仲間は「石の人」の右側のリップでマントルを返したり、「石の人」を触ったりで、案内人と一緒に二人で登っていたが、小生は日向ぼっこをしながら、ゆっくりと2人のトライを眺め、時々写真を撮っていた。

 下に降りた仲間は、女性ボルダラー集団と分かれ、本来の目的の「普通の人」の岩に行ったらしい。途中遮る物が無いから、丸見えである。

 岩が乾いては来たようだが、中々進展が無いらしい。来週仙台に来るらしいその仲間に、来週また来なさいとしきりに勧めながら、下に降りた仲間と合流すべく我々も下に降りる。

 下に降りた仲間はさらに上に登っていったようで、「普通の人」の岩には女性集団しかいなかった。

 ブシュブシュの尾根を降りるのも大変だと、少し急では有るが、ガレた沢への側壁を下り、「ボルダー尾根」と「ボルダー台地」の間の沢に降りる。この沢は沼の平方面から流れ出している沢で、本来は立ち入り禁止区域に含まれているらしい。でも、ほんの入り口付近だから、少し遡って岩を捜してみる。

 大きかったり小さかったり、中々良さそうな岩は見つからないのだが、そんな中に、沢の真中に岩の上に乗った、真っ赤な、真ん丸いリップとカンテを持った手ごろな岩を見つける。下地が悪いから、出だしで落ちると怪我間違いなしという感じだが、関東者はここまで来ても結局は河原のボルダーかとか言いながら、仲間2人が触りだす。

 尾根側から手ぶらの一人のハイカーと思しき人が降りてきて、道はないかと聞くから、道は無いと答える。その人、沼尻からこの辺まで登ってきて、この辺りを一周してかえるつもりだったらしいのだ。その一周できる道はないかと聞いたらしい。稜線まで登って、安達太良山迄行けば、この向こうの尾根を下りる道があるから一周できるけども、この近くには一周できる道は無いはずだと答えると、もと来た方向らしい方向に帰っていった。他人のことは言えないが、確か、ここは立ち入り禁止区域の筈なのだが。

 一人が、何回かの試技で、リップを捕らえる。しかし、じゃりじゃりで、足も手も使えない状態らしい。そこまで行けば何とか下に飛び降りられるから、飛び降りてきて、スタンスになりそうなところとリップを歯ブラシで磨きだす。小生が丁度少し大きなナイロンブラシを持っていたので、それを使ってもう少し磨く。

 状況からして、最近は誰も登っていない感じらしい。これは「河原のジョリー」だなとか何とか冗談を言いながら何回か挑戦を繰り返す。

 仲間の一人がそこを登り、もう一人も程なく登る。結構面白い課題らしい。

 「ボルダー尾根」方面の側壁を登り返し、「普通の人」の石に行く。そこにはまだ仲間の知り合いの女性3人組のボルダラーがいた。

 仲間が暫しの挨拶をし、少しだけ世間話をして、もう一人の仲間がいるであろう少し上まで登る。

 踏み跡から少し離れた岩の近くに仲間は居り、呼ぶので、そちら方面に藪を漕いで進む。

 少し高いが、やや寝たポケットが幾つかある小生にも登れそうな面をもった岩である。仲間は、その面の左のカンテに挑戦している所らしい。小生は一応その易しそうな面を登ってみる。

 ところが、易しく降りる場所が無い。聞くと、奥の易しそうなところをクライムダウンしたというので、小生もそれらしい所をクライムダウンする。

 その岩の上の方に結構高い、ハート型をしたスラブ状の面をもった岩が見える。仲間はそのリップ直下まで行ったが、一手が出せなくて降りてきたらしい。小生も登りたいと思ったのだが、高いし、仲間が降りてきたということで、登る気は起こさず、暫く仲間の試技を眺めていた。

 他の仲間が、この岩の幾つかの面を登ったり、先にトライしていた仲間のラインを登ったり、そのスラブを登ったりするのを眺めていたが、遂に意を決して、その高いハート型のスラブを登りに行く。

 ブッシュを漕いで取り付きまで行くと、思ったよりはホールドもあり、傾斜もそんなに強くは無い。これなら降りても来られる。

 例によって、下のほんの数十センチ位が少し被っていたから,出だしの一手を少し悩んだが、出てしまえば適当にガバに近いホールドがあり、リップ近くでは剥がれそうな感じのホールドもあったが、傾斜も無かったので、苔の生えたスタンスも適当に何とかごまかしたりして、リップを掴む。

 上に抜けると、その上にまた大き目の岩が有り、序だからと、その岩迄行って、そのガバガバの面を登ってみる。

 戻ると、仲間は皆上に行ったようなので、再び靴を思って仲間のもとに合流する。

 もうそろそろ時間だから帰ろうかというと、先にこちらに来ていた仲間が、「普通の人」をまたやりたいということで、少し早めに下ってゆく。

 最初に荷物を置いたところに戻って、荷物を纏めていると、普段靴を入れている袋が出てくる。あれ、靴はどうしたと探したが、靴が無い。最後に行った上の岩のところに持っていったまま置き忘れてしまったらしい。行くときはガサガサとブッシュを漕いでいったが、今回は踏み跡まで出てきていたので、踏み跡を使って上の岩まで行ける。急いで上に行くと、平たい大きな岩の上に靴が置いてあった。

 「普通の人」の岩まで行くと仲間の他に3人ずれの女性ボルダラー集団がまだいる。再び、色々とお話をしながら仲間の試技やら、その3人連れの試技やらを暫し見物する。序に、仙台市内の適当なキャンプサイトも教わる。

 女性3人組はヘッデン覚悟でもう少し頑張るということだったので、我々4人組は先に下山する。

 小屋の前で荷物を纏めながら胎内岩方面を眺めると、夕日に赤く染まった胎内岩と、その脇の山の紅葉が美しかった。

 駐車場に着いて支度をしていたら程なく暗くなってきた。今回も上手い具合のタイミングだったようだ。女性ボルダラー集団は暗くなってもまだ降りてはこなかった。

 暗くなったスキー場の道を降りる途中で一箇所道を間違えてしまったが、無事、土湯温泉から福島に出て、仙台に入る。

 明日は大倉川のボルダーの予定なので、そのために夜のうちに仙台入りし、その序に仙台の牛タンを食べるという算段である。

 仙台駅の裏側の一昨年訪れた牛タン屋近くの駐車場に自動車を入れ、牛タン屋を目指す。ところが、仲間の一人が、ここ仙台で別の人と待ち合わせていたらしく、そこで別れ、明朝、今夜の天場まで歩いてくるという。どおりで途中でかかってきた携帯電話の後から急に元気になったわけだ。と、そこで納得する。

 牛タン屋の前には大勢の人たちが屯している。十数人は居たであろう。道路脇に座り込んだり、輪になって立ち話をしていたり。結構混んでいるようだ。でも、ここまで来たのだから待つしかない。仲間の一人が忘れてきたハッキーサックを自動車まで取りに戻る。

 ずいぶん待たされるのだろうと覚悟していたのだが、時間がもう8時を少し廻った所で、丁度入れ替わりのタイミングだったのか結構早めに人が店の中に入ってゆく。都合10分も待たされたかどうかという位で店の中に入る。

 席は若いカップルとの相席である。でも、どうせ関係の無いカップルだから、我々にとってはそんなことはどうでも良いことなのだが。

 3人とも牛タン定食を頼む。隣のカップルも同じ物を頼んでいた。再度、どうでも良いことなのだが。

 そのすばらしさは以前報告したとおり。今回も堪能して店を出る。

 自動車のガソリンが少なくなっている。給油をしなければ成らないのだが、市内の中心地は高いからと敬遠していたら、途端に寂しくなり、ガソリンスタンドも軒並み電気が消えている。やっと見つけたスタンドに入ると、「お客さん、もう営業は終わりました」と言われる。

 明日の支度もあるので、途中お酒の買えるコンビニを見つけ、序にガソリンスタンドの場所を教わる。

 その場所は、我々の行く方向から少し外れた所だったが、カーナビのお陰で、安心して道を外れることが出来る。

 24時間営業の、高速の乗り口近くのスタンドだったから、値段は少し高かったが、ガソリンを満タンにし、今夜の天場を目指す。

 その天場は、大倉ダムというダムの近くの公園である。トイレも有るし、水道も使えるし、青葉区という仙台駅と同じ区内とは思えない位い静かで素敵な場所である。芝生の広い広場があり、コロの入った長い滑り台まである。

 仲間の一人が、ヘッデンをつけて滑り台を滑ってくる。コロは露で濡れているから、中腰で滑ってきたらしい。まるでオートバイが走ってくるようだった。

 時々自動車は通るが、静かで快適な場所であった。


戻る

作成年月日 平成15年11月 7日
作 成 者 本庄 章