阿武隈のボルダーに行ってきました

   南東北ボルダー巡り第三弾その3
2005年 2月20日記
 8時ちょっと前に目を覚ます。さすが家の中は暖かい。羽毛服を着て寝たのだが、汗をかいてしまった。

 適当に準備をして、仙台市内の集合場所に向かう。今回も運転は仲間にお願いする。

 途中コンビニに寄ったのだが、幾つか空いていた駐車スペースを通り越してしまったので、仕方なく直ぐ先の脇道に入ったら、これが一方通行で、少し大きめに迂回させられて再びコンビニの前に戻る。

 集合場所で何人かの仙台の方々と合流し、3台の自動車で本日の目的地に向かう。

 本日は我々が帰るということで、一番関東に近い場所を選んで頂いたようだ。高速に乗って福島まで行った。

 高速の料金所で、我々の自動車はETCを搭載していたから、先導車を追い越して先に高速に入ってしまう。

 本線をゆっくりと走っていたら、後ろに仲間の自動車が見えてきた。しかし、なかなか追いついてこない。我々が遅れていると思って、待っていてくれているのだろうか。それくらいに遅いのである。

 そのままのスピードでしばらく走って、やっと追いついてきた。しかし、もう一台の自動車は、後ろに見えてはいるのだが、相変わらず追いついてこない。「なんだか物凄くゆっくりですね」と仲間に話すと、「我々と違って、岩場が近いから急ぐ必要がないのだろう」という。そんなものかなぁと一応は納得する。

 インターを降り、かねてよりのコンビニを目指す。しかし、片側2車線でそこそこ自動車が走っているから、間に別の自動車が挟まってくる。

 今回の目的地である公園をカーナビにセットしていたから、途中ではぐれても行き着ける自信はあったのだが、このペースなら少々離れても付いて行けるだろう。

 カーナビが左折を支持した交差点を直進する。

 このカーナビ、結構頓珍漢なナビをするから、今回もそうなんだろうと、先導車に従って走る。

 またカーナビの指示に従わずに直進する。まぁ、そんなものだろう。で、また直進する。

 このカーナビは目的地の方向を点線で地図上に表示するようになっているのだが、それによると、目的地は進行方向に対して真横の方向である。それでも直進する。目的地を誤って設定してしまったのだろうか。

 目的地の方向がやや後ろの方向になってようやく脇道にそれる。

 しばらく走ると、目的地の公園への案内板が現れる。その案内板に従って、先導車が曲がって行く。やっぱりその公園で間違いはなかったようだ。それにしても、結構な回り道になる感じではあるのだが。

 やっと目的地付近に到着する。確かに、この公園の近くには主要な道路は通ってはおらず、細い道をゴチョゴチョと走らなければならないようだから、主要道から案内板のあるこの道が一番わかりやすいのかも知れない。

 先導車が止まる。その先の道は真っ白である。雪が全面に積もっているのだ。普段なら、そこから坂道を下って公園の駐車場まで入れるらしいのだが、これでは先には進めない。

 小生の自動車のタイヤはノーマルである。もう一台の迫力のある音を出す自動車は、タイヤはスタッレスドだが、車高が本の少々低い。この場所に自動車を停めて歩くしかないようだ。

 雪で行き止まりではあったが、その脇が残土の捨て場のようになっていて、ブルが置いてあったりするので、一人の人が近所の家に挨拶がてら聞きに行ってくれる。

 一応路肩に停めても大丈夫なようなので、路肩に寄せて自動車を停める。

 男女の若そうなペアの乗った自動車が近づいてくる。お仲間なのだろうかと見ていたら、辺りを伺った後にUターンして帰っていってしまった。

 雪があるのは本の2〜30mだったのだが、結構硬く締まっていた。

 太い舗装路を降りてゆき、途中から林の中を川原まで降りる微かな踏み跡に入る。

 林の中だから基本的には雪は無いのだが、所々に残る雪に足を取られたりして、余り歩きやすくは無い。どちらかと言うと、こういう林の中の草付きの斜面は苦手である。

 川原に降りると、一面岩だらけである。大きな凹凸の激しい岩盤の上に大きな岩が折り重なっているという感じだから、結構歩きにくい。まぁ、土の上に大きな岩が折り重なっている狭い渓谷に比べれば幾らかは歩きやすい感じではあるが、やっぱり、こういう岩だらけの川原も好きではない。

 大きな岩が岩盤の上にデーンとある。その周りは一段高くなっていて、その高い場所にも大き目の岩がデーンと座っている。その一段高いところには垂直の2mくらいの壁を登って行かなければならない。太目のクラックがあったり、ホールドやスタンスはあるから、運動靴でも登れるのだが、傾斜は垂直だから、それなりに力がいる。こういうのもまぁ、余り好きではない。って、言いたい放題だが、本当はそれほど苦にするほどでもないから、どちらかといえば程度だから、全体評価としては、まさにすばらしいところである。で、余計にという感じでつい、と言うところである。余り気にしないで欲しい。

 実はこの場所、もう10年以上も前に一度来たことのある場所だったのである。

 郡山辺りからこの場所まで、3回か4回くらい泳ぎながら、カヌーで下ってきたことがあったのだ。そのときはその場所が、以前NHK杯だかなんだかのカヌーの大会が行われた場所だ位しか聞いておらず、その後もそこがどこだったかはっきりとはしていなかったのだが、今回来て見て、その当時の印象とは幾らか違うところもあったが、まさしくこの場所だったと思い出したのである。今もここで福島県のカヌースラローム競技が行われているらしく、以前よりは整備が行われているらしい。因みにそのとき上陸したのは今回の川原の対岸であった。

 大きなデーンとした岩の川淵のカンテを登る課題があるらしいのだが、その岩の上2/3位が大きなスラブ壁になっていて、そこにちょっとした雪田が残っているから、その雪融け水がそのカンテを濡らしているのである。

 高校生が、そのカンテをやりたいらしく、一生懸命そのカンテを拭いたり、水の流れを変えようと布切れを岩に貼り付けたりしている。

 他の人たちは、その一段高い岩盤の上の四角柱の岩に取り付いたり、その横の少し大きめの岩の少し被った面を触ったりしている。

 小生は、下が岩盤だったり石ころがあったりするところが多いから、その人たちの写真撮影に専念する。

 川原だから寒いのだが、日差しもあり、昨日の様に冷たい風も吹いてはいない。従って、そう寒くは感じない。

 仲間にくっついて、廻りの岩の偵察に出かける。

 仲間の一人が高さ1m足らずの壁にクラックを見つけ、早速SD課題の可能性を探り出す。それを偶々見ていた今回案内して下さった方が「ここまで来てそんな課題は作らないでください」と、冗談に声を掛けてくる。どうしても、クラックがあると手を入れたくなり、高さが無いと見ると直ぐに座ってしまうのが、我が関東勢の癖のようだ。因みにこのクラック、フィンガーサイズだったから、SDスタートは結構悪かったようだ。

 戻って、仲間の二人は岩盤の上の四角柱を触りだす。先ずは岸側のカンテから。

 アンダーホールドで目いっぱい伸びてリップ直下のガバホールドが取れれば登れる課題らしいのだが、そこのスタンスが水平の細かい皺だから、もうちょっとのところで届かないらしい。何回も何回も挑戦するのだが、最後が届かない。

 もう一人の仲間が登って、そこは飛びつけばよいとアドバイスする。しかし、アドバイスされた仲間も、パッドを使っていないから、なかなか飛びつけないでいる。で、結局どうやったのか、最後には登ることが出来た。

 仲間が、その四角柱の岩の奥にある、岩壁から少し離れて立ち上がるカンテを指して「シークレットアレート」という。本当のそれよりは遥かにスケールは小さいが、確かに、岩壁と岩壁の間の僅かに被り気味のすっきりしたカンテと、落ちたら後ろの壁にぶつかるとことろがアメリカのハッピーのシークレットアレートに似ている感じである。

 早速触ってみる。

 無理すればいきなりリップが取れてしまうが、それでは面白くないから、一応右手でカンテをもって離陸する。その体勢からリップに左手を出すのだが、僅かではあるが被っていて、左手のホールドもよくないし、スタンスも決して良くないから、これが意外と難しい。思い切りデッドでリップを取ってしまった。

 岩の上から降りるのも、シークレットアレートを真似して、そんなに放れてはいなかったが、隣の岩壁の上に飛び移ってしまった。

 仲間も四角柱の岩のいろんなところを登り、その左隣の岩に移る。

 この岩、そんなに高くは無いし、勿論被ってはいないし、途中に斜めクラックや、ちょっとしたバンドが走っているから、小生向けの岩である。

 小生、まだそんなに岩を登っていないから、仲間の登ったところの右側のバンドの走った易しいところを登ってみる。思ったとおり無茶苦茶易しかった。

 今度は、そのバンドの無い左の壁を仲間が登りだす。

 これが、途中から傾斜が寝るのだが、その傾斜が中途半端でホールドらしいものが無いらしいから、見た目よりは結構悪いらしい。

 そこから降りてきて、今度はそこをSDで取り付き始める。確かにSD用のホールドがあるらしい。

 なかなか腰が上がらない。何度か尻から岩盤に落ちる。右足を高く上げてヒールを架ける。両足を思い切り開いて腰を上げる。今度は左足を思い切り上げてヒールを掛ける。しかし、なかなか次のホールドを取るまでに至らない。スタートホールドを一つ上げてみたりと、色々やっていたが、結局プロジェクトになってしまったようだ。

 その仲間が、その岩の左側の少し高目の上のほうはガバホールドがあるのだが、真中辺のアンダーフレークを取るまでがいやらしそうに見えるところを登る。

 もう一人の仲間も少し前にそこを登っているのだが、登るところを見ていなかったので、登りたいけど、躊躇していた課題だったのだが、何となくラインが判ったので、思い切って取り付いてみる。

 下半分がくの字に切れ込んでいるそのくの字の下のほうのフレーク様のカンテを持ってスタートし、斜め横に走るリスを頼りに、右足を手で持っているカンテに掛けて思い切り伸び上がったら、上のほうのフレークのアンダーホールドに手が届いた。後は足を上げて行けばガバが続いているはずである。その辺から高さが出てくるが、完全にガバだから何とか上に抜ける。高さは4〜5mもあっただろうか。下が岩盤だから、少し恐かった。

 高校生が、大きな岩の上のほうのスラブに登り、その下のほうの雪を払いのけようとしだす。しかし、その岩は高いし、雪までは遠いしで、見ているほうが恐くなってしまう。で、やっぱり「止めろ」の声が飛ぶ。

 その物凄く大きな岩の手前のやっぱり大きな岩の少し被った壁に人が集まりだす。細かいカチで離陸して、変なポケットに右手を飛ばして、すごく悪そうなリップを取ろうと言う課題の様だ。そのリップも傾斜がきついから、そこからのマントルも難しそうである。

 小生は、一人だけで、先に見た、このエリアの入り口辺りの小さな易しそうな岩を触りに行く。

 先ずは高さの無い、しかし、被っている壁のマントルをやってみる。被ってはいてもスタンスはあったから簡単にマントルを返す。

 次はやっぱり低い、リップをいきなり掴める僅かに寝た壁である。これも一応SDでやることにする。

 こんなところは誰も写真を撮ってくれないから、セルフタイマーをセットしてから取り付いてみる。

 写真を見たら、デジカメを直接岩の上に置いたから、アングルがおかしかった。

 先程の四角柱の岩の近くに戻ってみたら、先程高校生が雪を落とそうとしていたスラブを、別の人が途中まで降りていって、長い竹竿で雪を払っている。高校生が、注意を受けてからも尚竹竿を使ったりしてしつこくトライしていたのだが、これによってやっと雪が払われたようだ。将に執念である。

 奥の斜面に綺麗なクラックを持った小さな、といっても3m弱はある岩が見える。仲間の一人が触っていたので、小生も触りたくなって、行ってみる。

 岩の下や前に竹が倒れていたから、その竹を取り除いてみる。

 クラックに手を入れてみたら、少し広めのハンドサイズで、表面はツルツルの感じである。入れた手に力を入れてみたら、すごく痛かった。

 そのクラックを仲間が登り始める。

 クラックの真中より少し上の内側にちょっとした段差になったカチホールドが見える。まぁ、こんなところで無理しても仕方がないからと、仲間はそれを有りとして登る。

 小生もやってみようかと聞いてみたら、クラック限定でやると悪い、下から出ると尚悪い、と言うことらしいので直ぐに諦めた。

 高校生が執念を燃やしていたすごく大きな岩の川の面を仲間の一人が登り始める。

 下1/3位が下部が少し被り気味の円く僅かに出っ張った壁になっているが、残りの2/3は傾斜の緩いスラブが続いている。下地は幅1mくらいの岩棚。その岩棚の1mくらい下は川で、丁度その岩から落ちた場合に着水するであろう場所に岩が2つ3つ顔を出している。要するに、無茶苦茶恐いところなのである。多分垂直の高度で10mはあるように見える。ルートの長さはもっとになるはずだ。

 その岩から降りてきたら、仙台の人が、「あそこを登ったのか」と聞いている。「恐いから今まで誰も取り付かなかった場所だ」とも言っている。

 その仲間が、もう一人の仲間に、「すごい簡単」「だまされたと思って登れ」と言っている。といわれても、普通の人ではない仲間だから「簡単」といわれても、俄かには信じられなかったらしい。でも、結局その仲間が第2登を決める。

 小生としては、とてもやりたい課題だったのだが、スラブの感じがわからなかったので、直ぐに登る気にはなれない。傾斜的には大丈夫に見えるのだが、何しろ高いし、落ちたら普通ではすまないから、どうしても踏み切れない。もう少し立っていて、ガバホールドが続く課題ならば直ぐにでも真似をしたのだが。

 それを見ていた仙台の人たちが何人か登る。それで、皆「騙された」と言いながら降りてくる。で、案内をしてくれた人に頻りと登れと勧める。

 結局その案内をしてくれた方も登ったので、登っていない人はあと3〜4人になった。

 こうなったら小生も登らざるを得まい。グレードを聞いたら8級くらいじゃないかと言う。それじゃーあと、意を決して取り付いてしまう。

 下の壁は確かにガバが続くから、難しくは無い。壁が終わってスラブに入る。

 リップから1mくらいのところに水平クラックが走っているから、そのクラックのガバを左手で持って、その手の横辺りに左足を上げて乗り込んでゆく。ここが少し恐いのである。でも、傾斜は無いから、下から見たよりは恐くは無い。

 既にスラブに乗ってしまった。もうクライムダウンの方が難しくなってしまった。そのクラックでスラブを少し観察する。

 スラブの右のほうが痘痕が多くて易しそうに見える。多分、傾斜が無いから、どこでも登れるのだろうが、恐いから一番やさしそうな所を選んで、そのクラックを右のほうにトラバースして、またスラブに乗り出す。でも、もうスタンスは直ぐ近くにあるし、手は痘痕の淵だから恐くは無い。2歩3歩位だったか、一段低くなったところのリップを掴む。やったー。もう落ちない。

 すごく楽しかった。もう一度登れといわれたら登るかどうか判らないが、絶対に人には勧めてしまう課題である。さぁ、これからはこの課題で東北の初級ボルダラーの根性が鍛えられるのだろう。多分そうだ。

 高校生が執念を燃やしたカンテは、その甲斐あって乾いたようで、高校生以外の何人かも挑戦し、そのうちの何人かが登ることが出来たようだ。勿論高校生も登れたようだ。

 岩棚の上のほうの課題に挑戦していた人たちも一段落ついたようで、引き上げる事にする。

 全国的に有名らしい幸○苑だったかのラーメン屋に皆でよって、そこで仙台の人たちと別れ、電車で来た関東の人を一人乗せて、4人で東京に向かった。

 帰りは渋滞は全く無く、10時頃には出発点に着くことが出来た。多分4時間ほどで帰ってこれたようだ。福島って、そんなに遠くはないようだ。


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作成年月日 平成17年 2月20日
作 成 者 本庄 章